かつん、と男の後ろから音が響いた。
男はありていに言えば、スパイ。医療の情報を盗みだし、金に変える稼業を営んでいた。
この学園都市に入ったのもビジネスのひとつ。世界最高峰と呼ばれる医療技術を盗み出すためだ。
男には疑問があった。
学園都市で開発された医療機器、薬剤、そして技術はすべて余すことなく『外』へと送り出されている。
しかし、その全てを駆使しても救えない患者がいるのも確かだ。
それではなぜ――なぜこの病院に入った者は、余すことなく助かっているのか?
男は考える。もしも学園都市が医療技術を隠していたら、と。
ならば救える人間を見殺しにしたのは、この学園都市なのではないか?
安い正義感だと思う。動機も金だ。だが、これで救われる人間は必ず、そう、必ずいる。
男は割りきりながらカルテとおぼしき書類に手をかけ―――背中に浴びせられた音に振り返る。
「うん?久しぶりだねスパイってのはさ?」
そこにいたのは、いかにも冴えなさそうなカエル面の医者だった。
懐に手を伸ばし、銃の感触を確かめる。幸い相手は一人だ脅して気絶させるだけで―――
男はありていに言えば、スパイ。医療の情報を盗みだし、金に変える稼業を営んでいた。
この学園都市に入ったのもビジネスのひとつ。世界最高峰と呼ばれる医療技術を盗み出すためだ。
男には疑問があった。
学園都市で開発された医療機器、薬剤、そして技術はすべて余すことなく『外』へと送り出されている。
しかし、その全てを駆使しても救えない患者がいるのも確かだ。
それではなぜ――なぜこの病院に入った者は、余すことなく助かっているのか?
男は考える。もしも学園都市が医療技術を隠していたら、と。
ならば救える人間を見殺しにしたのは、この学園都市なのではないか?
安い正義感だと思う。動機も金だ。だが、これで救われる人間は必ず、そう、必ずいる。
男は割りきりながらカルテとおぼしき書類に手をかけ―――背中に浴びせられた音に振り返る。
「うん?久しぶりだねスパイってのはさ?」
そこにいたのは、いかにも冴えなさそうなカエル面の医者だった。
懐に手を伸ばし、銃の感触を確かめる。幸い相手は一人だ脅して気絶させるだけで―――
「でもね?残念だけど患者のカルテは他の人に見せられないんだよ?」
両手が、落ちた。
肩から先の感覚が全く無いことに恐怖した男は、尻餅をつく。
「うん?不思議かな?ちょっと神経をいじらせてもらっただけだから安心していいよ?」
なんとか体を起こそうとする。足を動かそうとして、再度の恐怖を感じた。
四肢に力が入らないのだ。いや、体全てが麻痺したかのように動かない。
「あまり知られていないんだけどね?僕だって学園都市の住人だよ?開発を受けたことがあるんだよ?」
かつ、かつと無機質に無慈悲に響く足音。
「僕の力は『冥土返し(ヘヴンキャンセラー)』。生命活動を自由自在に操るレベル5」
かつん。動かない男を見下ろし、カエルの医者は最後にこう言った。
「安心していいよ?僕は医者だ。傷付けたり、ましてや殺すなんて真似はしないよ?」
ただ―――
「少しだけ記憶は失ってもらうけどね?」
そう言うと同時、男の意識は途絶えた―――
両手が、落ちた。
肩から先の感覚が全く無いことに恐怖した男は、尻餅をつく。
「うん?不思議かな?ちょっと神経をいじらせてもらっただけだから安心していいよ?」
なんとか体を起こそうとする。足を動かそうとして、再度の恐怖を感じた。
四肢に力が入らないのだ。いや、体全てが麻痺したかのように動かない。
「あまり知られていないんだけどね?僕だって学園都市の住人だよ?開発を受けたことがあるんだよ?」
かつ、かつと無機質に無慈悲に響く足音。
「僕の力は『冥土返し(ヘヴンキャンセラー)』。生命活動を自由自在に操るレベル5」
かつん。動かない男を見下ろし、カエルの医者は最後にこう言った。
「安心していいよ?僕は医者だ。傷付けたり、ましてや殺すなんて真似はしないよ?」
ただ―――
「少しだけ記憶は失ってもらうけどね?」
そう言うと同時、男の意識は途絶えた―――