とある休みの過ごし方 Oh_Happy_Day
何も無い。やることが無い。やりたいことが無い。やるべきことが無い。
魔術師と言う名のテロリストは出ていないし、血を吐く思いをして宿題はやり遂げたし、
大覇星祭の手伝いはまだ少しだけ先だし、ものすごく困っている知り合いも無い。
魔術師と言う名のテロリストは出ていないし、血を吐く思いをして宿題はやり遂げたし、
大覇星祭の手伝いはまだ少しだけ先だし、ものすごく困っている知り合いも無い。
今日は休日。暦の上でも、事実の上でも、休みの日だった。
(さて。何をしようか。ここんとこ気の休まる事が無かったし、一日昼寝としゃれ込もうか……)
何がしゃれ込む、なのかは分からないままに、上条は痛む背中をさすりながら体を起こす。
もう一月以上はここで寝ているとはいえ、やはりバスタブで寝るのは痛い。しいた布団越しにも
強化アクリルのかなり硬い感触が伝わってくる。かと言ってインデックスと添い寝と言うわけにも行かないから、
文句を言うつもりも無いが。
(あー、マットレスでも買いたいな)
暇が出来ると、手に入らないほど欲しくなるものだ。マットレスの値段は良く知らないが、
安い買い物ではないだろう。溜息と共に諦めて、立ち上がる。朝食を用意して、インデックスを起こすために。
ワンルームの部屋に出ると、小さくインデックスの寝息が聞こえる。直接姿を見ればドッキドキものだが、寝息だけな
何がしゃれ込む、なのかは分からないままに、上条は痛む背中をさすりながら体を起こす。
もう一月以上はここで寝ているとはいえ、やはりバスタブで寝るのは痛い。しいた布団越しにも
強化アクリルのかなり硬い感触が伝わってくる。かと言ってインデックスと添い寝と言うわけにも行かないから、
文句を言うつもりも無いが。
(あー、マットレスでも買いたいな)
暇が出来ると、手に入らないほど欲しくなるものだ。マットレスの値段は良く知らないが、
安い買い物ではないだろう。溜息と共に諦めて、立ち上がる。朝食を用意して、インデックスを起こすために。
ワンルームの部屋に出ると、小さくインデックスの寝息が聞こえる。直接姿を見ればドッキドキものだが、寝息だけな
ら
なんともほほえましい。思わず笑みがこぼれたところで、ふと自分の寝覚めがとてもいい事に気づいた。
(ちょうどレム催眠の時に目が覚めたか。こりゃあ、今日はいい日になるかもな?)
人生で今まで何度そう思ったか、なんてことは、記憶喪失の上条には知る由も無い。無いが、
とにかくそんな予感がした。
さて、朝食を用意してインデックスを起こす、と先ほど言ったが、正確に言うと
「朝食を用意するとインデックスが起きてくる」となる。上条は炊飯器にまだ米が三合ほどあることを確認して、
味噌汁の用意をし始めた。並行して昨日の残り物である肉じゃがを電子レンジで暖める。……残り物と言っても
朝食べるためにわざわざ残したものだ。朝一の調理は面倒くさいからなのだが、今のテンションなら後一品くらい
難なく作れる。昨日の晩のインデックスの恨めしそうな顔を思い出して、しかし平和だなあ、と一人微笑む。
(あと一品か。そもそも材料あったっけ?)
冷蔵庫の中身を見ると、きゅうり二本に長ネギ二分の一本、ジャガイモが三つにレタスが一玉。にんじん二本に
豚ばら肉が三切れほど。今使えそうなものはこんなところか。味噌汁の具はジャガイモとネギに決定。
(ふふふ……これだけあればあと後三日は戦える!)
自軍の物資供給状況は実際にはそこまで楽観できるものではないが、この時の上条は気が大きくなっていた。
なんともほほえましい。思わず笑みがこぼれたところで、ふと自分の寝覚めがとてもいい事に気づいた。
(ちょうどレム催眠の時に目が覚めたか。こりゃあ、今日はいい日になるかもな?)
人生で今まで何度そう思ったか、なんてことは、記憶喪失の上条には知る由も無い。無いが、
とにかくそんな予感がした。
さて、朝食を用意してインデックスを起こす、と先ほど言ったが、正確に言うと
「朝食を用意するとインデックスが起きてくる」となる。上条は炊飯器にまだ米が三合ほどあることを確認して、
味噌汁の用意をし始めた。並行して昨日の残り物である肉じゃがを電子レンジで暖める。……残り物と言っても
朝食べるためにわざわざ残したものだ。朝一の調理は面倒くさいからなのだが、今のテンションなら後一品くらい
難なく作れる。昨日の晩のインデックスの恨めしそうな顔を思い出して、しかし平和だなあ、と一人微笑む。
(あと一品か。そもそも材料あったっけ?)
冷蔵庫の中身を見ると、きゅうり二本に長ネギ二分の一本、ジャガイモが三つにレタスが一玉。にんじん二本に
豚ばら肉が三切れほど。今使えそうなものはこんなところか。味噌汁の具はジャガイモとネギに決定。
(ふふふ……これだけあればあと後三日は戦える!)
自軍の物資供給状況は実際にはそこまで楽観できるものではないが、この時の上条は気が大きくなっていた。
ちょうどいいや、とつぶやき、きゅうりを一本取り出す。適当に切って軽く塩もみすれば、立派に一品だ。
楽だし、何よりインデックスはこういうのに箸が伸びない。きゅうり自体は生でバリバリいくから、問題ないはずだ。
今日こそはきっちり食ってもらおうと心に決める。ついでに箸の扱いも教えてやるべきだろう。
などと考えつつ用意をしていると、後ろでインデックスの起きる気配がした。
「んー。とうまー。おはよ」
いつもはもうちょっと寝起きがいいように思ったが、今日はまだ眠気が抜けないようだ。
(俺の眠気が移ったかな)
こんな発想も、機嫌のいいときならではだった。電子レンジからもれる肉じゃがの匂いに反応して起きたに違いない
後ろの少女に、そのまま話しかける。振り返ると寝ぼけたままいつもの修道服に着替えるシーンを目撃して、
インデックスは上条の頭をおかずに朝ごはんを食べる事になる。
「おはよう。今日はやたら眠そうだな?」
ごそごそと衣擦れの音が聞こえる中、まだ覚醒しきっていない声で返事が来る。
「んー。ねむい」
「夜更かしでもしたか?」
衣擦れの音が止んだ。
「してないー」
こりゃほんとに眠気が移ったかと思いつつ、二人分の朝食をガラステーブルに運ぶ。
「あふ。ごめんね、手伝わなくて」
「いいって。さ、いただきます」
「いただきます」
二人して手を合わせて、いつもの朝食が始まる。シスターなのに、食前のお祈りとかしなくていいのか、
と前に訊いた事があるが、郷に入りては郷に従うものなんだよ、といい加減に返されてしまった。
「あ、一晩置いた肉じゃがってなかなかいい感じだね」
ジャガイモ一つ丸々口に放りこんで、あもあも言わせながらインデックス。
「だろ。お前を説得した甲斐があったな」
「ところで、どうしてきゅうりの塩もみがあるの?」
「お前に食わせるためだ」
「……とうま。前に言ったよね?きゅうりはナマをマヨネーズでイクのがいいんだよ」
「好き嫌い言わずに食べなさい」
「うー!大体この、形と、硬さと、大きさがっ!」
箸をグーで握っているインデックスには、横から見て台形になるように切ったきゅうりに刺しにくい。
それもそのはずで、上条は一番刺しにくい大きさに切ったつもりだった。大成功だ。次は煮豆を買ってこようと思う。
「これは私に対する挑戦なのかな?かな?」
「それ別のキャラだから。……そろそろ箸の使い方一つも覚えてみたらどうだ?完全記憶能力とか使って」
対するインデックスは小さな胸をそらせて、
「ふーんだ!わかってないなあとうまは。箸の使い方を習得するのに記憶は関係ないんだよ?」
まったくだ、と実体験として記憶喪失後もすんなり箸を使っている上条は気持ちだけうなずいておく。
楽だし、何よりインデックスはこういうのに箸が伸びない。きゅうり自体は生でバリバリいくから、問題ないはずだ。
今日こそはきっちり食ってもらおうと心に決める。ついでに箸の扱いも教えてやるべきだろう。
などと考えつつ用意をしていると、後ろでインデックスの起きる気配がした。
「んー。とうまー。おはよ」
いつもはもうちょっと寝起きがいいように思ったが、今日はまだ眠気が抜けないようだ。
(俺の眠気が移ったかな)
こんな発想も、機嫌のいいときならではだった。電子レンジからもれる肉じゃがの匂いに反応して起きたに違いない
後ろの少女に、そのまま話しかける。振り返ると寝ぼけたままいつもの修道服に着替えるシーンを目撃して、
インデックスは上条の頭をおかずに朝ごはんを食べる事になる。
「おはよう。今日はやたら眠そうだな?」
ごそごそと衣擦れの音が聞こえる中、まだ覚醒しきっていない声で返事が来る。
「んー。ねむい」
「夜更かしでもしたか?」
衣擦れの音が止んだ。
「してないー」
こりゃほんとに眠気が移ったかと思いつつ、二人分の朝食をガラステーブルに運ぶ。
「あふ。ごめんね、手伝わなくて」
「いいって。さ、いただきます」
「いただきます」
二人して手を合わせて、いつもの朝食が始まる。シスターなのに、食前のお祈りとかしなくていいのか、
と前に訊いた事があるが、郷に入りては郷に従うものなんだよ、といい加減に返されてしまった。
「あ、一晩置いた肉じゃがってなかなかいい感じだね」
ジャガイモ一つ丸々口に放りこんで、あもあも言わせながらインデックス。
「だろ。お前を説得した甲斐があったな」
「ところで、どうしてきゅうりの塩もみがあるの?」
「お前に食わせるためだ」
「……とうま。前に言ったよね?きゅうりはナマをマヨネーズでイクのがいいんだよ」
「好き嫌い言わずに食べなさい」
「うー!大体この、形と、硬さと、大きさがっ!」
箸をグーで握っているインデックスには、横から見て台形になるように切ったきゅうりに刺しにくい。
それもそのはずで、上条は一番刺しにくい大きさに切ったつもりだった。大成功だ。次は煮豆を買ってこようと思う。
「これは私に対する挑戦なのかな?かな?」
「それ別のキャラだから。……そろそろ箸の使い方一つも覚えてみたらどうだ?完全記憶能力とか使って」
対するインデックスは小さな胸をそらせて、
「ふーんだ!わかってないなあとうまは。箸の使い方を習得するのに記憶は関係ないんだよ?」
まったくだ、と実体験として記憶喪失後もすんなり箸を使っている上条は気持ちだけうなずいておく。