「はいはい」
適当に答えて、食事を再開する。インデックスがムッとしているが、敢えて無視した。
ご飯、おかず、汁物、ご飯、おかず、汁物、ご飯、おかず、汁物。インデックスが来てからというもの、
上条は以前より食事のマナーがよくなったように思う。見られているから、と言うのもあるがそれ以上に
インデックスが反面教師になっているのだ。
確かに、この少女は何でも美味そうに食う。ちょっと悪くなったものでも平気でいくんじゃないだろうか。
だが、いつまでたっても箸はグー持ちだし、おかずを全部食べてからご飯に手を出したり、刺し箸はもちろん迷い箸
なんかもなかなかなおらない。それを指摘すると「とうまもやってる」と言われるため、自然とマナーが身についた、
と言うわけだ。この年にして子供のしつけの難しさを知って、少々ブルーになったりもした。
「……ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした。俺は片付けるから、インデックス、箸の持ち方練習しとけよな」
むー、と唸りながらも言われたとおりに練習を始めた。
洗い物を適当に済ませ、インデックスの様子を見てみる。
「う、ぬ、ぬ、ぬ。無理だよこんなの。手がつっちゃうよ」
予想どうりかなりダメな感じで、きゅうりに箸が触れてすらいない。
「やれやれ……箸ってのはな、こうもつんだよ」
上条はインデックスの右手を取り、箸を持つ手つきにしてやる。インデックスがぴくんと震えたが、
特に気にしなかった。
「いいか?動かすのは片方だけだ……」
二人羽織のような体勢で、インデックスの手を通して自分が箸を握るように、きゅうりを摘んでみる。
そのままインデックスの口の前に運ぶと、少しためらった後、それを食べた。
正面から見れば顔が赤くなっていたのだが、上条には分からなかった。
何かに耐え切れなくなったのか、少女は手を振り払ってやおら立ち上がると、
「と、とうま!今日はどこかにおでかけしようよ!」
背を見せたまま言った。
「お出かけ?こんな早くから……って、うそ! まだ七時!?」
普段より一時間以上早い。インデックスが眠そうだったのも道理か。
「時間なんてどうだっていいよ! さ、いこー! しゅっぱーつ!」
やっぱり顔を見せずに、玄関に向かって歩いていった。
「なんなんだか……ま、散歩も悪くないかな」
手早く着替えて財布を持って、上条も散歩に出る事にした。
適当に答えて、食事を再開する。インデックスがムッとしているが、敢えて無視した。
ご飯、おかず、汁物、ご飯、おかず、汁物、ご飯、おかず、汁物。インデックスが来てからというもの、
上条は以前より食事のマナーがよくなったように思う。見られているから、と言うのもあるがそれ以上に
インデックスが反面教師になっているのだ。
確かに、この少女は何でも美味そうに食う。ちょっと悪くなったものでも平気でいくんじゃないだろうか。
だが、いつまでたっても箸はグー持ちだし、おかずを全部食べてからご飯に手を出したり、刺し箸はもちろん迷い箸
なんかもなかなかなおらない。それを指摘すると「とうまもやってる」と言われるため、自然とマナーが身についた、
と言うわけだ。この年にして子供のしつけの難しさを知って、少々ブルーになったりもした。
「……ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした。俺は片付けるから、インデックス、箸の持ち方練習しとけよな」
むー、と唸りながらも言われたとおりに練習を始めた。
洗い物を適当に済ませ、インデックスの様子を見てみる。
「う、ぬ、ぬ、ぬ。無理だよこんなの。手がつっちゃうよ」
予想どうりかなりダメな感じで、きゅうりに箸が触れてすらいない。
「やれやれ……箸ってのはな、こうもつんだよ」
上条はインデックスの右手を取り、箸を持つ手つきにしてやる。インデックスがぴくんと震えたが、
特に気にしなかった。
「いいか?動かすのは片方だけだ……」
二人羽織のような体勢で、インデックスの手を通して自分が箸を握るように、きゅうりを摘んでみる。
そのままインデックスの口の前に運ぶと、少しためらった後、それを食べた。
正面から見れば顔が赤くなっていたのだが、上条には分からなかった。
何かに耐え切れなくなったのか、少女は手を振り払ってやおら立ち上がると、
「と、とうま!今日はどこかにおでかけしようよ!」
背を見せたまま言った。
「お出かけ?こんな早くから……って、うそ! まだ七時!?」
普段より一時間以上早い。インデックスが眠そうだったのも道理か。
「時間なんてどうだっていいよ! さ、いこー! しゅっぱーつ!」
やっぱり顔を見せずに、玄関に向かって歩いていった。
「なんなんだか……ま、散歩も悪くないかな」
手早く着替えて財布を持って、上条も散歩に出る事にした。
「で、どこ行く?」
「どこ行く? じゃないだろ。行きたいところがあるんじゃないのか?」
まだほんのり赤いインデックスの顔色には気づかずに、上条は呆れた声をだした。
「とうまはこの街の住人なんだから、とうまが決めてよ」
(ようやく来たな。こういう流れが……)
上条当麻は記憶喪失である。知識はあっても、思い出が無い。学園都市の地理は、どうやら
思い出と強く結びついていたようで、大雑把に学区の境がどうなっているか、位の記憶しかなかった。
記憶喪失を隠そうとしている上条にとっては、これは速やかに解決すべき問題だった。記憶喪失前に
「知っていたんじゃないか」と思うところはとりあえず地図を見て頭に叩き込んだのだった。まあ、
学園都市の携帯電話はGPSがついているので、知らなかったとしても誤魔化す事は出来るとは思うが。
「そうだな。河川敷にでも行ってみるか」
学園都市にも川はあった。排水を浄化する技術や河川による侵食から、魚の養殖の研究まで手広く行っている
それなりに大きな川だ。インデックスは何の迷いも無くうん、と肯く。
「今日は一日、静かに、平和に、過ごしたいな……」
その呟きが、それからの行動を左右する事になった。
「どこ行く? じゃないだろ。行きたいところがあるんじゃないのか?」
まだほんのり赤いインデックスの顔色には気づかずに、上条は呆れた声をだした。
「とうまはこの街の住人なんだから、とうまが決めてよ」
(ようやく来たな。こういう流れが……)
上条当麻は記憶喪失である。知識はあっても、思い出が無い。学園都市の地理は、どうやら
思い出と強く結びついていたようで、大雑把に学区の境がどうなっているか、位の記憶しかなかった。
記憶喪失を隠そうとしている上条にとっては、これは速やかに解決すべき問題だった。記憶喪失前に
「知っていたんじゃないか」と思うところはとりあえず地図を見て頭に叩き込んだのだった。まあ、
学園都市の携帯電話はGPSがついているので、知らなかったとしても誤魔化す事は出来るとは思うが。
「そうだな。河川敷にでも行ってみるか」
学園都市にも川はあった。排水を浄化する技術や河川による侵食から、魚の養殖の研究まで手広く行っている
それなりに大きな川だ。インデックスは何の迷いも無くうん、と肯く。
「今日は一日、静かに、平和に、過ごしたいな……」
その呟きが、それからの行動を左右する事になった。