天災は忘れた頃にやってくる……と言う事で何の意味も前フリも無く再開。
いつのものだろうと、早朝の空気は凛として澄み切っているものだ、という期待を裏切らない気候だった。
夏休みが終わったばかりのまだまだ残暑厳しい季節だったが、川原沿いの三人を
照らす太陽も、肌寒さを感じるようなこの時間帯にあってはじんわりと温かい、やさしい光に思えた。
上条は、インデックスと、途中でであった御坂妹と共に歩いていた。
「いい天気ですね、とミサカは空を見上げて感想を述べます」
「ああ。本当、気持ちのいい天気だよな。早起きは三文の得って奴かな」
「正しくは『早起きは三文の徳』ですよ、とミサカは訂正してみます」
「お、そうなのか? ……っつーか発音同じなのになんで分かるんだ?」
「それは企業秘密です、とミサカはミステリアスな少女を演出します」
「別に演じなくても……それに企業秘密でミステリアスって……」
「演出です、とミサカは強調します。ついでに、女心が分かっていませんよ、とたしなめてみます」
「今のは女心関係あったのか……分からん……」
「諦めたらそこで試合終了ですよ、とミサカは覚えたての台詞で激励します」
某有名漫画の台詞が、目の前の不思議っ娘(ミステリアスな少女です、とミサカはあくまで訂正します)
から出てくるとは思わなかった。
「お前も漫画とか読むのか?」
「お姉様が薦めてくれるものを、少し。なかなか面白いものですね、とミサカは素直な感想を述べます」
「そうか……アイツも結構マメだな。そういえばインデックスも漫画好きだったよな。なあインデッ」
ックス、とは続けられなかった。どんよりと雷雲色のオーラをまとったインデックスが、
地獄の深淵のような、状況から考えると深すぎる闇をたたえた瞳を上条に向けている。
「あ、あれ……? インデックスさん? どうしたんでせう?」
「どうして……」
声も心なしか低い。
「ど、う、し、て! 私がいるというのに二人っきりで朝も早よから楽しげに談笑しているのかな!」
「いやいやいや二人っきりじゃないし! 今話題ふったよ! お前ほら、漫画とかアニメとかよく見てるじゃねえか!
今一番はまってるのはあれだ、マジカル、」
「あーーー! あーーー!!」
声をかき消さんとして両手を振り回す。
「なんだ!今度はどうした!?」
「どうしてそういうことをペラペラ言っちゃうのかな当麻は!」
「だからそういう流れだろ!」
「言われるのはやなの!」
「なんだよもう……分かったよ。じゃあ自分で言うならいいんだろ」
上条はずい、とインデックスの背を押して御坂妹の前に出してやる。
「あ……」
「……、とミサカは黙して相手の目を見つめます」
それ黙してないから、と心の中だけでつっ込んでおく。
「や……」
「……や?、とミサカは鸚鵡返しをします」
インデックスは、蚊の鳴くような声でぼそぼそと呟いた。ほんのり赤くなったうなじを見つめて
上条がなんとなくどきどきしていると、
「……?すいません、聞こえませんでした。これでも聴力には自信が、」
「やっぱり恥ずかしいーーーー!!」
一年の逃亡生活は伊達じゃない、と言わんばかりの逃げ足で駆けていく。
夏休みが終わったばかりのまだまだ残暑厳しい季節だったが、川原沿いの三人を
照らす太陽も、肌寒さを感じるようなこの時間帯にあってはじんわりと温かい、やさしい光に思えた。
上条は、インデックスと、途中でであった御坂妹と共に歩いていた。
「いい天気ですね、とミサカは空を見上げて感想を述べます」
「ああ。本当、気持ちのいい天気だよな。早起きは三文の得って奴かな」
「正しくは『早起きは三文の徳』ですよ、とミサカは訂正してみます」
「お、そうなのか? ……っつーか発音同じなのになんで分かるんだ?」
「それは企業秘密です、とミサカはミステリアスな少女を演出します」
「別に演じなくても……それに企業秘密でミステリアスって……」
「演出です、とミサカは強調します。ついでに、女心が分かっていませんよ、とたしなめてみます」
「今のは女心関係あったのか……分からん……」
「諦めたらそこで試合終了ですよ、とミサカは覚えたての台詞で激励します」
某有名漫画の台詞が、目の前の不思議っ娘(ミステリアスな少女です、とミサカはあくまで訂正します)
から出てくるとは思わなかった。
「お前も漫画とか読むのか?」
「お姉様が薦めてくれるものを、少し。なかなか面白いものですね、とミサカは素直な感想を述べます」
「そうか……アイツも結構マメだな。そういえばインデックスも漫画好きだったよな。なあインデッ」
ックス、とは続けられなかった。どんよりと雷雲色のオーラをまとったインデックスが、
地獄の深淵のような、状況から考えると深すぎる闇をたたえた瞳を上条に向けている。
「あ、あれ……? インデックスさん? どうしたんでせう?」
「どうして……」
声も心なしか低い。
「ど、う、し、て! 私がいるというのに二人っきりで朝も早よから楽しげに談笑しているのかな!」
「いやいやいや二人っきりじゃないし! 今話題ふったよ! お前ほら、漫画とかアニメとかよく見てるじゃねえか!
今一番はまってるのはあれだ、マジカル、」
「あーーー! あーーー!!」
声をかき消さんとして両手を振り回す。
「なんだ!今度はどうした!?」
「どうしてそういうことをペラペラ言っちゃうのかな当麻は!」
「だからそういう流れだろ!」
「言われるのはやなの!」
「なんだよもう……分かったよ。じゃあ自分で言うならいいんだろ」
上条はずい、とインデックスの背を押して御坂妹の前に出してやる。
「あ……」
「……、とミサカは黙して相手の目を見つめます」
それ黙してないから、と心の中だけでつっ込んでおく。
「や……」
「……や?、とミサカは鸚鵡返しをします」
インデックスは、蚊の鳴くような声でぼそぼそと呟いた。ほんのり赤くなったうなじを見つめて
上条がなんとなくどきどきしていると、
「……?すいません、聞こえませんでした。これでも聴力には自信が、」
「やっぱり恥ずかしいーーーー!!」
一年の逃亡生活は伊達じゃない、と言わんばかりの逃げ足で駆けていく。
「脱兎の勢い……と、ミサカは先ほどのあなたを見習ってことわざを使って表現してみます」
「余裕だな……ま、白くて小さいからな」
俺もずいぶんな余裕だな、と上条は一人ごちた。
「余裕だな……ま、白くて小さいからな」
俺もずいぶんな余裕だな、と上条は一人ごちた。
「ま、そう離れては無いだろ」
「追いかけなくていいんですか? とミサカは問います」
「大丈夫だって。第一、お前いま走ったりするのダメなんだろ? のんびり行こうぜ」
「……はい。と、ミサカは笑みで返します」
しょうがねえな、という呟きは、すぐ傍で聞こえた。歩き始める。
「あいつの感覚ってのもよく分からんなあ……夕飯時はテレビにかじりついてるのに」
どこまで行ったかな、という呟きが、一歩前から聞こえる。
「あいつはさ、割と律儀な方で、週刊誌とか立ち読みせずにきっちり買うんだよな。……俺の金だけど」
みつからねえな、という呟きが、さっきよりも少しはなれたところから聞こえる。
「……すこし、歩調を緩めてくれますか、とミサカは提案します」
振り向く顔は、三歩先にある。
「あっ! 悪い、ペース速すぎたな。大丈夫か?」
「はい、だいじょ……いえ、少し疲れました」
「そっか、ごめんな。ここらで少し休もうか?」
「いえ。彼女も探さなくてはならないし……そこで、とミサカは提案します」
何を、と問う前に答えを示された。御坂妹が、ひじの少し上辺りをつかみ、腕全体に体を預けるようにして
密着したのである。
「はウッ!?」
「このまま、歩いてもいいですか? とミサカは許可を求めます」
さっきよりもかなり近い位置から見つめられて、上条は混乱した。
(落ち着け俺! ときめくな俺! 相手は御坂美琴の妹だぞ! 中学生以下なんだぞ!)
(いや、でもこの胸は姉のものに僅差で勝利して……)
(相手は保育園に行ってる様な実年齢なんだぞ!)
(柔らかい、暖かい……)
(だからやばいって!)
「……だめ、ですか?」
「い……いや。行こうぜ」
これが健全な男子高校生たる上条当麻の選択だった。
「追いかけなくていいんですか? とミサカは問います」
「大丈夫だって。第一、お前いま走ったりするのダメなんだろ? のんびり行こうぜ」
「……はい。と、ミサカは笑みで返します」
しょうがねえな、という呟きは、すぐ傍で聞こえた。歩き始める。
「あいつの感覚ってのもよく分からんなあ……夕飯時はテレビにかじりついてるのに」
どこまで行ったかな、という呟きが、一歩前から聞こえる。
「あいつはさ、割と律儀な方で、週刊誌とか立ち読みせずにきっちり買うんだよな。……俺の金だけど」
みつからねえな、という呟きが、さっきよりも少しはなれたところから聞こえる。
「……すこし、歩調を緩めてくれますか、とミサカは提案します」
振り向く顔は、三歩先にある。
「あっ! 悪い、ペース速すぎたな。大丈夫か?」
「はい、だいじょ……いえ、少し疲れました」
「そっか、ごめんな。ここらで少し休もうか?」
「いえ。彼女も探さなくてはならないし……そこで、とミサカは提案します」
何を、と問う前に答えを示された。御坂妹が、ひじの少し上辺りをつかみ、腕全体に体を預けるようにして
密着したのである。
「はウッ!?」
「このまま、歩いてもいいですか? とミサカは許可を求めます」
さっきよりもかなり近い位置から見つめられて、上条は混乱した。
(落ち着け俺! ときめくな俺! 相手は御坂美琴の妹だぞ! 中学生以下なんだぞ!)
(いや、でもこの胸は姉のものに僅差で勝利して……)
(相手は保育園に行ってる様な実年齢なんだぞ!)
(柔らかい、暖かい……)
(だからやばいって!)
「……だめ、ですか?」
「い……いや。行こうぜ」
これが健全な男子高校生たる上条当麻の選択だった。