とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 1-531

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匿名ユーザー

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…とあるビルの一室。二人の女性が向かい合っている。
二人とも動きを止めているものの、部屋中を走る無数の弾痕や断裂が、直前までの激しい闘争を物語っていた。
「腕を上げたね…シスター・アニェーゼ」
構えた二丁拳銃はそのままに、向かい合う一方――サングラスの女性が呟く。
「あの頃とは、違って…今は、戦う理由がありますんで」
対して、もう一方の赤毛の少女――アニェーゼ・サンクティスは、苦しそうに答えた。


ほぼ無傷に近い相手とは対照的に、彼女は満身創痍だった。
息は荒く、三つ編みはところどころほつれ、全身を裂傷と内出血痕が包んでいる。
ロータスワンド
『蓮の杖』に体を預けなければ立っていることすら出来ず、その杖も半ばから折れてしまっていた。


それでも。
それでも目だけは死んでいない。意志だけは折れていない。
まるで――どんな状況でも絶対に退かなかった、あの少年のように。


「…私の、部下達は、どうなっちまってんですかね」
「三分の一は捕まえたよ。だが…残りの捕縛は難航しそうだ。おまえが吐かなければ、ね」
  ・・・・・・・・                         ・・・・・・・・
「『私が吐かなければ』?何寝ぼけたこと言っちまってくれてんですかね、『私を壊さなければ』の間違いでしょうに」
「………」
言って、苦しげな、しかし凶暴な笑みを浮かべる。
「私は捕まっちまったりしません!三分の一もきっちり返してもらいます!!」
そう、高らかに宣言した。…自らに言い聞かせるように。
相手が怯んだ隙に、支えにしていた『蓮の杖』を振り上げ、地面に叩きつける。杖全体にひび割れが走った。
バランスを崩しそうになるが、なんとか堪える。


「………?」
サングラスの女は、それを訝しげに見ていた。
が、すぐに異変に気付く。ビルが震えていた。
(地震か?!…いや、これは……っ!!)


アニェーゼが渾身の力で『蓮の杖』を踏み砕き――
――同時に、ビルが崩れ落ちた。


「不幸だー…」
ホテルの一室で、上条当麻が呟く。
まあいつも通りといえばそれまでだが、今回は何があったかというと、財布を紛失してしまったのだった。
現金は数箇所に分けて保管していたため大事には至っていない。だがカードは停止させたし、無駄遣い不能。
おまけに連れの食費と友人達への土産代を考えれば、目当ての土産物屋以外へ下手に出歩くのは命取りになりかねなかった。


そんなわけで、彼はホテルから出られない。
せいぜい、向かいのビルから断続的に聞こえていた音(工事音だろうか?)をBGMに、
映らないテレビとの虚しい格闘を演じる程度しかすることがなかった。
そしてそれにも飽きたため、折角の海外旅行にも関わらず現在は昼間からベッドに潜り込んでいる。


…ちなみに、連れのシスターは一足先にふて寝の真っ最中。
怠惰は七つの大罪の一つじゃなかったか――上条はつかの間そんなことを考え、暴食がデフォルトの生活を思い出して溜息を吐いた。


――だが、しかし。向かいのビルでは、上条の普通で不幸な旅行を一発で吹っ飛ばす出来事が起きていたわけで。


ギゴゴゴゴゴ…
「…あ……?」


――上条がそれに巻き込まれるのも、それはそれである意味彼にとって不幸で普通なわけで。


不吉な音。窓から顔を出すと、向かいのビルが崩れていく様が鮮明に見て取れた。
そして、既に半ばまで崩れたビルの中に赤毛の少女が倒れているのも。
「くそ…っ!誰も気付いてねーのか!?」
目の前で崩れるビルに、しかし人々はちらりと目を向ける程度の反応しかしない。


――もし、上条が冷静だったなら。
何度もそれを経験した彼は、意識操作の魔術が掛けられている事くらい察したかもしれなかった。
が、今の彼にそんな余裕はない。
目の前で失われかけている命を救うため、上条当麻は走り出した――

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