「はぁっ、はぁっ、はぁっ…」
息が苦しい。肺が傷ついているのか、呼吸の度に血を吐いてしまう。
「…シスター・ハインケル、は」
――死んだのだろうか。
そんな言葉が頭を過ぎったが、直ぐに否定する。
あの程度で彼女が死ぬはずがない。それは自分が一番よく分かっているつもりだ。
「逃、げな、い、と…っ」
立ち上がり、踏み出そうとする。が、右足と左手の感覚が無い。足が出せなかった。
更に倒壊時の爆音にやられたのか耳は遠く、額からの出血に染まった紅い視界はぼんやりとした世界しか示してくれない。
息が苦しい。肺が傷ついているのか、呼吸の度に血を吐いてしまう。
「…シスター・ハインケル、は」
――死んだのだろうか。
そんな言葉が頭を過ぎったが、直ぐに否定する。
あの程度で彼女が死ぬはずがない。それは自分が一番よく分かっているつもりだ。
「逃、げな、い、と…っ」
立ち上がり、踏み出そうとする。が、右足と左手の感覚が無い。足が出せなかった。
更に倒壊時の爆音にやられたのか耳は遠く、額からの出血に染まった紅い視界はぼんやりとした世界しか示してくれない。
「少し、無茶、しちまい、ました、か…、ね」
・・・・・・・・・・・・・
今回、アニェーゼはわざと安全圏を作らなかった。
自分の周囲だけ崩れなくても結局崩壊するのだから意味は無いし、何より二丁の銃のみで数多の魔術師を屠ってきた相手に生半可な罠は通じない。
彼女の逃げ場を無くすには、これしかなかったのだ。
・・・・・・・・・・・・・
今回、アニェーゼはわざと安全圏を作らなかった。
自分の周囲だけ崩れなくても結局崩壊するのだから意味は無いし、何より二丁の銃のみで数多の魔術師を屠ってきた相手に生半可な罠は通じない。
彼女の逃げ場を無くすには、これしかなかったのだ。
と。
がらり、と音がして。
アニェーゼの紅い視界に、黒い女性が現れた。
一見して重傷だと判る。多分、このままだと助からない。
(…それは、お互い様、ってやつですか)
傷だらけで、構えるのも辛そうで、手は震えていて。
それでも彼女はアニェーゼの頭を正確にポイントする。
「…ふ、ふふ。」
笑いが漏れた。
「あ、はは。ははははは…っ」
逆流した血で息が詰まる。たが、そんなことは大した問題ではない。
「あははははははははっ!」
「ふふ…ははは」
血まみれで笑うアニェーゼに、応えるかのように。
「あはははははっ!」
「ははははははっ!!」
哄笑。
「「あーっはっはっはっはっはっ!!!」」
何が可笑しいのかは分からない、そんな事はどうだっていい。
師弟関係にあった筈の二人は、涙で顔をぐしゃぐしゃにして、それでも笑う。悲しそうに。哀しそうに。
一見して重傷だと判る。多分、このままだと助からない。
(…それは、お互い様、ってやつですか)
傷だらけで、構えるのも辛そうで、手は震えていて。
それでも彼女はアニェーゼの頭を正確にポイントする。
「…ふ、ふふ。」
笑いが漏れた。
「あ、はは。ははははは…っ」
逆流した血で息が詰まる。たが、そんなことは大した問題ではない。
「あははははははははっ!」
「ふふ…ははは」
血まみれで笑うアニェーゼに、応えるかのように。
「あはははははっ!」
「ははははははっ!!」
哄笑。
「「あーっはっはっはっはっはっ!!!」」
何が可笑しいのかは分からない、そんな事はどうだっていい。
師弟関係にあった筈の二人は、涙で顔をぐしゃぐしゃにして、それでも笑う。悲しそうに。哀しそうに。
そして。
「くっ、ははは…。…さよなら、シスター・アニェーゼ。地獄で会おう」
「残り数十分の命、せいぜい大事に生きやがりなさい、シスター・ハインケル。」
――ドン、という音と、紅い視界の真っ白な背中。
それを最後に、アニェーゼ・サンクティスの意識は暗転した。
「残り数十分の命、せいぜい大事に生きやがりなさい、シスター・ハインケル。」
――ドン、という音と、紅い視界の真っ白な背中。
それを最後に、アニェーゼ・サンクティスの意識は暗転した。