不幸の中の一つ An_Accident_from_DAIHASEISAI
大覇星祭二日目。
来場者が初日より飛躍的に増え、各競技はより一層ヒートアップしている中、上条当麻は一人、早くもクールダウンして
いた。
いや、クールダウンというより目の前の現実にどう対処していいのか分からず、ただ呆然としているような感じだ。
つまり彼は今不幸な目に遭っているという事である。
「……なんだ、この理不尽イベントのオンパレードは」
所々に包帯を巻いた上条の傷だらけの体を横切るように生暖かい風が吹き抜ける。このような事は彼の人生上致し方ない
とはいえ、これはあまりに酷すぎる、と上条は思う。
朝っぱらから本当についてなかった。
昨日の使徒十字(クローチェディピエトロ)発動阻止戦での傷が完治していないというのに、小萌先生の着替えをうっか
り目撃して吹寄制理に『人間のクズめ!』とか言われながらデコに思いっ切り頭突きされるわ、その件に関してインデック
スに頭蓋骨を砕くほどの勢いで噛み付かれるわ、姫神秋沙にゴムボールのマシンガンをお見舞いされるわ、責任を取るため
に吹寄命令で大覇星祭の競技に参加させられる事になるわ、もう散々なのだ。
しかもカエル顔の医者にまで『もう退院しても大丈夫だよ。“大覇星祭程度の運動くらいなら”可能だろうからね?』と
か笑いながら言われた。
詰まるところ、現在上条当麻の味方でいる人間は〇人だった。
それでもなお、めげずに這い上がってくるところが彼の特異体質(すごいところ)なのだが、今回ばかりは流石にめげそ
うである。
それは何故かというと、
「何ぶつくさ言ってんのよ。そんなに私とやりたくない訳?」
目の前で不機嫌そうに腕を組んで攻撃機能の付いてる城壁の如く立ち塞がっている少女―――御坂美琴が今度のお相手
(しゅうげきしゃ)だからだ。
次の競技まで時間に少し余裕があり、競技場から自宅に帰還する途中で“不幸にも”彼女に捕まった上条は強制的に常盤
台中学まで連行され、“不幸にも”そこで開催される行事(イベント)に強制的に参加させられ、そして“不幸にも”最初
の相手が美琴なのである。
いくら上条が『地獄のような不幸が続いても常にそれを乗り越えていく』特異体質を持っていても、これでは精神の方が
先に果ててしまうと思う。
今の上条の心境を例えると、どこにいくつの地雷が埋まっているか分からない数十エーカーの草原の中心にいる一人の戦
士といったところか。それも手負いの。
状況的にはこれほど最悪なシチュエーションはないだろう。ホオジロザメの泳ぐ海に放り出された方がまだマシかもしれ
ない。
とにかく今はその草原から一刻も早く脱出するのが得策だ。
言葉という草木の罠を掻き分けながら、戦士・上条当麻は慎重に歩を進めていく。
「いや、別に是が非でもやりたくない訳じゃありませんのことよ。ただ上条さんの事情も少しは考えて欲しいかなー、と思
っているのです」
「む、無理矢理連れて来たのは謝るわよ。でも相手がアンタしか見つかんなかったんだし、しょうがないじゃない」
頬を少し赤く染めながらそっぽ向いた美琴に上条は余計うんざりとした顔になった。
常盤台中学での次の競技はフォークダンスである。常盤台中学の理事長が『他校の男子生徒との交流を深める為に』とい
う名目で毎年行っているものらしい。箱入り娘防止策もここまで来るとただの親バカみたいに思えてくる。
しかも彼女達のお相手は彼女達自身で決めて良い事になっており、上条以外にも彼女達に突然連れてこられ、どぎまぎし
ている者も少なくない。
選択相手の年齢などに制限はないらしく、中学生や高校生は当たり前、大学生や浪人生、中には小学生も混じっていたり
した。選り取り見取りとはまさしくこの事を言うのだろう。
ちなみに上条は何故、美琴が自分を選んだのかは言及するつもりはない。言及すれば確実に地雷を踏む事になるからだ。
いくら上条が不幸な人間だといっても、自ら墓穴を掘るような真似はしない。
「……ったく。共闘なんてありえねえ、赤白混合など論外だと思ってたけど、やっぱ例外ってのはつき物なのか。あー、ち
くしょう!朝からどたばただわ傷治らないまま競技に駆り出されるわおまけにお次は死亡率高いミッション・インポッシブ
ル!俺に安息の間も与えてくれないのか、神様ァ!!」
「???ナニ独りで叫んでんの?」
「……、不幸だー!!」
さり気無くスルーという最大の地雷を踏んだが不発だったらしく、美琴は気にも留めなかった。
そんなこんなで。上条当麻の最後の叫び声と同時、運命のフォークダンスが幕を開けた。
来場者が初日より飛躍的に増え、各競技はより一層ヒートアップしている中、上条当麻は一人、早くもクールダウンして
いた。
いや、クールダウンというより目の前の現実にどう対処していいのか分からず、ただ呆然としているような感じだ。
つまり彼は今不幸な目に遭っているという事である。
「……なんだ、この理不尽イベントのオンパレードは」
所々に包帯を巻いた上条の傷だらけの体を横切るように生暖かい風が吹き抜ける。このような事は彼の人生上致し方ない
とはいえ、これはあまりに酷すぎる、と上条は思う。
朝っぱらから本当についてなかった。
昨日の使徒十字(クローチェディピエトロ)発動阻止戦での傷が完治していないというのに、小萌先生の着替えをうっか
り目撃して吹寄制理に『人間のクズめ!』とか言われながらデコに思いっ切り頭突きされるわ、その件に関してインデック
スに頭蓋骨を砕くほどの勢いで噛み付かれるわ、姫神秋沙にゴムボールのマシンガンをお見舞いされるわ、責任を取るため
に吹寄命令で大覇星祭の競技に参加させられる事になるわ、もう散々なのだ。
しかもカエル顔の医者にまで『もう退院しても大丈夫だよ。“大覇星祭程度の運動くらいなら”可能だろうからね?』と
か笑いながら言われた。
詰まるところ、現在上条当麻の味方でいる人間は〇人だった。
それでもなお、めげずに這い上がってくるところが彼の特異体質(すごいところ)なのだが、今回ばかりは流石にめげそ
うである。
それは何故かというと、
「何ぶつくさ言ってんのよ。そんなに私とやりたくない訳?」
目の前で不機嫌そうに腕を組んで攻撃機能の付いてる城壁の如く立ち塞がっている少女―――御坂美琴が今度のお相手
(しゅうげきしゃ)だからだ。
次の競技まで時間に少し余裕があり、競技場から自宅に帰還する途中で“不幸にも”彼女に捕まった上条は強制的に常盤
台中学まで連行され、“不幸にも”そこで開催される行事(イベント)に強制的に参加させられ、そして“不幸にも”最初
の相手が美琴なのである。
いくら上条が『地獄のような不幸が続いても常にそれを乗り越えていく』特異体質を持っていても、これでは精神の方が
先に果ててしまうと思う。
今の上条の心境を例えると、どこにいくつの地雷が埋まっているか分からない数十エーカーの草原の中心にいる一人の戦
士といったところか。それも手負いの。
状況的にはこれほど最悪なシチュエーションはないだろう。ホオジロザメの泳ぐ海に放り出された方がまだマシかもしれ
ない。
とにかく今はその草原から一刻も早く脱出するのが得策だ。
言葉という草木の罠を掻き分けながら、戦士・上条当麻は慎重に歩を進めていく。
「いや、別に是が非でもやりたくない訳じゃありませんのことよ。ただ上条さんの事情も少しは考えて欲しいかなー、と思
っているのです」
「む、無理矢理連れて来たのは謝るわよ。でも相手がアンタしか見つかんなかったんだし、しょうがないじゃない」
頬を少し赤く染めながらそっぽ向いた美琴に上条は余計うんざりとした顔になった。
常盤台中学での次の競技はフォークダンスである。常盤台中学の理事長が『他校の男子生徒との交流を深める為に』とい
う名目で毎年行っているものらしい。箱入り娘防止策もここまで来るとただの親バカみたいに思えてくる。
しかも彼女達のお相手は彼女達自身で決めて良い事になっており、上条以外にも彼女達に突然連れてこられ、どぎまぎし
ている者も少なくない。
選択相手の年齢などに制限はないらしく、中学生や高校生は当たり前、大学生や浪人生、中には小学生も混じっていたり
した。選り取り見取りとはまさしくこの事を言うのだろう。
ちなみに上条は何故、美琴が自分を選んだのかは言及するつもりはない。言及すれば確実に地雷を踏む事になるからだ。
いくら上条が不幸な人間だといっても、自ら墓穴を掘るような真似はしない。
「……ったく。共闘なんてありえねえ、赤白混合など論外だと思ってたけど、やっぱ例外ってのはつき物なのか。あー、ち
くしょう!朝からどたばただわ傷治らないまま競技に駆り出されるわおまけにお次は死亡率高いミッション・インポッシブ
ル!俺に安息の間も与えてくれないのか、神様ァ!!」
「???ナニ独りで叫んでんの?」
「……、不幸だー!!」
さり気無くスルーという最大の地雷を踏んだが不発だったらしく、美琴は気にも留めなかった。
そんなこんなで。上条当麻の最後の叫び声と同時、運命のフォークダンスが幕を開けた。