(二日目)10時55分
核シェルターR-177にある三つの非常エレベータの一つ、第二エレベータがあるフロア。トラックなども運搬可能のように設計されており、100人程度の人数を乗せられる大型エレベータである。
そのエレベータの重厚な扉が開かれ、老若男女問わず、多くの人々が溢れ出してきた。つまりは、主要な学校の生徒は全て避難が完了し、民間人の避難を優先しているということだ。重装備をしている『警備員(アンチスキル)』の要員も、一般人に交じってちらほらと避難している。このフロアから巨大ホールへと繋がる通路に、先ほどこのシェルターに来た人々はぞろぞろと移動する。しかし、巨大ホールには戻らず、エレベータの前で屯っている数百人の人々がいた。十数人の『警備員(アンチスキル)』がエレベータの重厚な扉の前に立っている。
数百人の人々は多くの罵声を彼らに浴びせていた。一発で人間を沈黙させるゴム弾を装備した自動小銃を装備していても、誰一人として怯む気配は無い。
「おいっ、勝手に避難させて何でワケ分かんねえトコロに連れてきてんだよ!」「我が子は、我が子は無事なんですか!?」「君ぃ、私を誰だと思っとるんだ!そこを開けて私を帰さんか!」などという様々な身勝手な発言が繰り返されていた。
無理もない、と思う。
突然の『第一級警報(コードレッド)』の発令。迅速すぎる『警備員(アンチスキル)』の連携。原因を全く説明されないまま、多くの人々は強制的に核シェルターへの避難へと移されたのだ。そして先ほどの地上の凄惨な光景。我が身に降りかかっている危機も分からない。パニックは徐々に広がりつつあった。
核シェルターR-177にある三つの非常エレベータの一つ、第二エレベータがあるフロア。トラックなども運搬可能のように設計されており、100人程度の人数を乗せられる大型エレベータである。
そのエレベータの重厚な扉が開かれ、老若男女問わず、多くの人々が溢れ出してきた。つまりは、主要な学校の生徒は全て避難が完了し、民間人の避難を優先しているということだ。重装備をしている『警備員(アンチスキル)』の要員も、一般人に交じってちらほらと避難している。このフロアから巨大ホールへと繋がる通路に、先ほどこのシェルターに来た人々はぞろぞろと移動する。しかし、巨大ホールには戻らず、エレベータの前で屯っている数百人の人々がいた。十数人の『警備員(アンチスキル)』がエレベータの重厚な扉の前に立っている。
数百人の人々は多くの罵声を彼らに浴びせていた。一発で人間を沈黙させるゴム弾を装備した自動小銃を装備していても、誰一人として怯む気配は無い。
「おいっ、勝手に避難させて何でワケ分かんねえトコロに連れてきてんだよ!」「我が子は、我が子は無事なんですか!?」「君ぃ、私を誰だと思っとるんだ!そこを開けて私を帰さんか!」などという様々な身勝手な発言が繰り返されていた。
無理もない、と思う。
突然の『第一級警報(コードレッド)』の発令。迅速すぎる『警備員(アンチスキル)』の連携。原因を全く説明されないまま、多くの人々は強制的に核シェルターへの避難へと移されたのだ。そして先ほどの地上の凄惨な光景。我が身に降りかかっている危機も分からない。パニックは徐々に広がりつつあった。
パァン!
唐突に、一発の銃声が鳴り響いた。その音によって、周囲には静寂が生まれる。
エレベータの扉を囲む『警備員(アンチスキル)』の中心に立つ小柄な男が、天井に向けて拳銃を発砲した。左手に携帯電話ほどの大きさの通信機に口をあてた。このフロアに設置されているスピーカーから、低い男の声が流れた。
『静かにしろ。これ以上の行為は緊急処置として、手段を選ばない』
『警備員(アンチスキル)』らしからぬ、取り繕う素振りすら無い命令口調が響き渡った。
その言葉を理解するや否や、人々は敵意ある視線を『警備員(アンチスキル)』に送った。
一人、威勢のいい不良少年が、「てめえぇ!!」と叫びながら、その声の主に掴みかかろうとした。その瞬間、
パァン、と。
唐突に、一発の銃声が鳴り響いた。その音によって、周囲には静寂が生まれる。
エレベータの扉を囲む『警備員(アンチスキル)』の中心に立つ小柄な男が、天井に向けて拳銃を発砲した。左手に携帯電話ほどの大きさの通信機に口をあてた。このフロアに設置されているスピーカーから、低い男の声が流れた。
『静かにしろ。これ以上の行為は緊急処置として、手段を選ばない』
『警備員(アンチスキル)』らしからぬ、取り繕う素振りすら無い命令口調が響き渡った。
その言葉を理解するや否や、人々は敵意ある視線を『警備員(アンチスキル)』に送った。
一人、威勢のいい不良少年が、「てめえぇ!!」と叫びながら、その声の主に掴みかかろうとした。その瞬間、
パァン、と。
少年の右足が撃ち抜かれた。
再度の発砲と、崩れ堕ちる少年の姿に、周囲の人々は声を上げた。
「きゃあああああああああああああああああ!!」
地面に這いつくばる少年。風体に似合わない醜態を曝しながら、右足を押さえて悲鳴を上げていた。押さえている右足から赤い血が溢れ出した。
「お、おいっ!!何してんだ!なぜ撃った!?」
数人の男女が負傷した少年のもとに駆けつけ、発砲した『警備員(アンチスキル)』を睨みつけた。しかし、少年を撃った人間を見るや否や、背筋に悪寒が走った。
まるで動物の死骸を見るような視線。
その少年に見向きもせずに、一人の『警備員(アンチスキル)』は硝煙を吹く拳銃を前方に向けた。その後に続くように、他のメンバーは腰を下げ、一斉に自動小銃を人々に構える。突如として沈黙していた『警備員(アンチスキル)』が牙をむいた。
凍り付いた人々に、機械音の低い声が静寂を支配した。
「きゃあああああああああああああああああ!!」
地面に這いつくばる少年。風体に似合わない醜態を曝しながら、右足を押さえて悲鳴を上げていた。押さえている右足から赤い血が溢れ出した。
「お、おいっ!!何してんだ!なぜ撃った!?」
数人の男女が負傷した少年のもとに駆けつけ、発砲した『警備員(アンチスキル)』を睨みつけた。しかし、少年を撃った人間を見るや否や、背筋に悪寒が走った。
まるで動物の死骸を見るような視線。
その少年に見向きもせずに、一人の『警備員(アンチスキル)』は硝煙を吹く拳銃を前方に向けた。その後に続くように、他のメンバーは腰を下げ、一斉に自動小銃を人々に構える。突如として沈黙していた『警備員(アンチスキル)』が牙をむいた。
凍り付いた人々に、機械音の低い声が静寂を支配した。
『緊急措置としての発砲許可が下されている。すなわち、それほどの未曽有の事態だということだ。直ちにホールに戻れ。二度の警告は無い。』
発砲許可。
その言葉に、人々は息を飲んだ。銃を構える『警備員(アンチスキル)』の顔にも動揺の表情が浮かんでいない。兵士のように、ただ、人々を冷たい瞳で見つめていた。人差し指にかかるトリガーがいつ引かれてもおかしくない。
その光景に、武器を持たない人々は成す術も無かった。耳を塞ぎたくなるほどの大声や罵声が一瞬にして消えた。足を撃たれた少年でさえ、声を殺して必死に痛みに耐えていた。その嗚咽だけが、この巨大なフロアに響き渡っていた。
その言葉に、人々は息を飲んだ。銃を構える『警備員(アンチスキル)』の顔にも動揺の表情が浮かんでいない。兵士のように、ただ、人々を冷たい瞳で見つめていた。人差し指にかかるトリガーがいつ引かれてもおかしくない。
その光景に、武器を持たない人々は成す術も無かった。耳を塞ぎたくなるほどの大声や罵声が一瞬にして消えた。足を撃たれた少年でさえ、声を殺して必死に痛みに耐えていた。その嗚咽だけが、この巨大なフロアに響き渡っていた。
しかし、その静寂は一瞬の内にして、打ち砕かれることになる。
ズドン!
青白い電撃の槍が、中心にいた一人の『警備員(アンチスキル)』に直撃した。周囲にいた『警備員(アンチスキル)』よりも一回り小さい男であるが、まるで風に吹かれた紙キレのように吹き飛ばされる。鈍い音を立てて、エレベータの重厚な壁に激突し、崩れ落ちた。
機械音に変換された衝撃音が、スピーカーから流れ、途中で切れた。
吹き飛ばされた男は『警備員(アンチスキル)』のこの場の指揮官であり、先ほど少年を撃った人物である。頭を垂れ、装備の貴金属からは、小さな煙が上がっていた。
「なっ……!!」
突然の事態に、周りの民衆どころか『警備員(アンチスキル)』まで動揺した。遅れて空気を切る衝撃波が生じた。その危険を本能で察知した人々は、悲鳴を上げながら、その場を離れた。
一瞬の内にパニックに陥った。
子供は泣きだし、甲高い悲鳴を上げる女もいた。大の男たちも何が何だか分からずに、大声を上げた。『警備員(アンチスキル)』も、指揮官の負傷で、指揮系統が乱れ、銃を人々に向けながらも、それ以上の行動を起こすことが出来なかった。
青白い電撃の槍が、中心にいた一人の『警備員(アンチスキル)』に直撃した。周囲にいた『警備員(アンチスキル)』よりも一回り小さい男であるが、まるで風に吹かれた紙キレのように吹き飛ばされる。鈍い音を立てて、エレベータの重厚な壁に激突し、崩れ落ちた。
機械音に変換された衝撃音が、スピーカーから流れ、途中で切れた。
吹き飛ばされた男は『警備員(アンチスキル)』のこの場の指揮官であり、先ほど少年を撃った人物である。頭を垂れ、装備の貴金属からは、小さな煙が上がっていた。
「なっ……!!」
突然の事態に、周りの民衆どころか『警備員(アンチスキル)』まで動揺した。遅れて空気を切る衝撃波が生じた。その危険を本能で察知した人々は、悲鳴を上げながら、その場を離れた。
一瞬の内にパニックに陥った。
子供は泣きだし、甲高い悲鳴を上げる女もいた。大の男たちも何が何だか分からずに、大声を上げた。『警備員(アンチスキル)』も、指揮官の負傷で、指揮系統が乱れ、銃を人々に向けながらも、それ以上の行動を起こすことが出来なかった。
そんな中、数百人という人間で犇めき合っていた空間に、一筋の通路が形成される。
その道を、悠然と歩く一人の少女がいた。
背丈ほどの長い漆黒のマントを纏う一人の少女が。
背丈ほどの長い漆黒のマントを纏う一人の少女が。
少女の頭に、青白い火花が散った。
その光景を見た『警備員(アンチスキル)』が、即座に反応する。
自動小銃を構え、グリップを強く握りながら腰を落とした。『警備員(アンチスキル)』たちの間に緊張が走る。
その光景を見た『警備員(アンチスキル)』が、即座に反応する。
自動小銃を構え、グリップを強く握りながら腰を落とした。『警備員(アンチスキル)』たちの間に緊張が走る。
『止まれ!!』
大声に反応したのはその少女でなく、周囲の人々だった。ビクリ、と肩を震わせ、その場に立ちすくむ。大声を上げていた人々もすぐに声を殺した。
しかし、その少女は歩みを止めなかった。
歩調を緩めることなく、悠然と、ただ前に進み、淡々と距離を縮めていく。
『警備員(アンチスキル)』は歯を食いしばり、大声を張り上げた。
『そこの女子生徒!お前だ!止まれ!!それ以上近づくと撃つぞ!!』
初めて気づいたのか。いや、そうではなく、自分の意思で、その少女は足を止めた。
その声の先に立つ一人の少女に『警備員(アンチスキル)』だけでは無く、周りにいた人々も一斉に目を向けた。視線の先に立つのは、一人の美少女。
しかし、その少女は歩みを止めなかった。
歩調を緩めることなく、悠然と、ただ前に進み、淡々と距離を縮めていく。
『警備員(アンチスキル)』は歯を食いしばり、大声を張り上げた。
『そこの女子生徒!お前だ!止まれ!!それ以上近づくと撃つぞ!!』
初めて気づいたのか。いや、そうではなく、自分の意思で、その少女は足を止めた。
その声の先に立つ一人の少女に『警備員(アンチスキル)』だけでは無く、周りにいた人々も一斉に目を向けた。視線の先に立つのは、一人の美少女。
腰まである茶色いロングヘアーを靡かせ、身長は一七〇センチ弱の背丈。ベージュ色のブレザーに紺色のプリーツスカートを穿いている。マントのような黒のコートを羽織っている。茶色の瞳に強い意志を宿した、可憐な美少女がそこにいた。
一瞬、人々は息を止めてその姿に見とれてしまった。それほどまでに彼女は。御坂美琴は美しかったのだ。
そんな空気を壊すように、一人の『警備員(アンチスキル)』が声を上げる。
『その制服、常盤台だな?『電撃使い(エレクトロマスター)』の高位能力者か。さっき攻撃を仕掛けたのは、お前か?』
底冷えのする言葉と共に、強い視線を少女に向けた。
だが、表情を変えずに美琴は返事をした。
そんな空気を壊すように、一人の『警備員(アンチスキル)』が声を上げる。
『その制服、常盤台だな?『電撃使い(エレクトロマスター)』の高位能力者か。さっき攻撃を仕掛けたのは、お前か?』
底冷えのする言葉と共に、強い視線を少女に向けた。
だが、表情を変えずに美琴は返事をした。
「ええ、そうよ。私がやったわ」
あまりにも素直な返事に、人々は呆気にとられた。誰も言葉を投げかけられなかった。『警備員(アンチスキル)』も一瞬呆けていたが即座に敵を認識し、言葉を紡ぐ。
『…なぜ能力が使える?AIMジャマーが作動しているこのエリアで』
避難などといった突発的な事態に人々は強いストレスに晒される。その時、力のある能力者がパニックに陥り、暴走を起こさぬよう、シェルター内の制御機器装置のあるエリアや避難エレベータ付近の周囲はAIMジャマーが施されている。それは複雑な演算を用いる高位能力者であればあるほど、その影響は大きい。しかし、その状況下で、御坂美琴は大規模な能力の使用を行ったのだ。当然の疑問である。
その言葉を聞いた御坂美琴は右手を腰に当てると、溜息をついた。
「…貴方、周りを見てみなさいよ」
この大きなフロアの端に設置されているAIMジャマーを行う電波装置を見た。メーターが表示されるディスプレイの電源が落ちており、作動している気配は無い。
そして、今の目の前にいる少女は『電撃使い(エレクトロマスター)』の高位能力者。
すなわち、
『お前、自分が何をしているのか、分かっているのか?これはもうイタズラ程度ではすまされないんだぞ』
明らかに怒気を含んだ言葉。しかし、美琴はそんなことにも臆せず、平然と言葉を返した。
「ええ、私が何をしたのか。それが一体どのような事なのか。自分の立場も分かった上で言っているわ」
御坂美琴は少し首を傾げると、誰もが惹かれるような笑顔で言った。
『…なぜ能力が使える?AIMジャマーが作動しているこのエリアで』
避難などといった突発的な事態に人々は強いストレスに晒される。その時、力のある能力者がパニックに陥り、暴走を起こさぬよう、シェルター内の制御機器装置のあるエリアや避難エレベータ付近の周囲はAIMジャマーが施されている。それは複雑な演算を用いる高位能力者であればあるほど、その影響は大きい。しかし、その状況下で、御坂美琴は大規模な能力の使用を行ったのだ。当然の疑問である。
その言葉を聞いた御坂美琴は右手を腰に当てると、溜息をついた。
「…貴方、周りを見てみなさいよ」
この大きなフロアの端に設置されているAIMジャマーを行う電波装置を見た。メーターが表示されるディスプレイの電源が落ちており、作動している気配は無い。
そして、今の目の前にいる少女は『電撃使い(エレクトロマスター)』の高位能力者。
すなわち、
『お前、自分が何をしているのか、分かっているのか?これはもうイタズラ程度ではすまされないんだぞ』
明らかに怒気を含んだ言葉。しかし、美琴はそんなことにも臆せず、平然と言葉を返した。
「ええ、私が何をしたのか。それが一体どのような事なのか。自分の立場も分かった上で言っているわ」
御坂美琴は少し首を傾げると、誰もが惹かれるような笑顔で言った。
「そこをどいていただけますか?」
今度こそ、人々は絶句した。『警備員(アンチスキル)』にも、彼女を説得するのは無理だと理解した。周囲の人々は巻き込まれるのを恐れ、大ホールに繋がる道を美琴が阻むように立っているので逃れることも出来ない。人々は文句を言うのも忘れ、左右の壁際に散らばった。『警備員(アンチスキル)』が銃口を向ける直線上にいるのは御坂美琴ただ一人。
自分が置かれている状況を把握すると、美琴は思わず笑ってしまった。
『何か可笑しい!気でも狂ったか!?』
男の叫び声ですら、美琴の嘲笑は消えない。
本当に笑ってしまう。銃という武器で、優位性に浸る大人たちがあまりにも滑稽だったのだ。『異能力者(レベル2)』で粋がる不良たちはまだ分かる。彼らは子供なのだ。手に入れた力で身勝手な行動をしたい気持ちは少しは理解できる。しかし、今目の前にいる武装をした人々は立派な大人なのだ。そんな分別のある大人が、銃という武器を持っているせいで、『暴力としての優位性が一体どちらにあるのか』ということを見誤っているという現実に笑いがこらえきれなかった。
御坂美琴はその現実を、大人たちに突き付けた。
自分が置かれている状況を把握すると、美琴は思わず笑ってしまった。
『何か可笑しい!気でも狂ったか!?』
男の叫び声ですら、美琴の嘲笑は消えない。
本当に笑ってしまう。銃という武器で、優位性に浸る大人たちがあまりにも滑稽だったのだ。『異能力者(レベル2)』で粋がる不良たちはまだ分かる。彼らは子供なのだ。手に入れた力で身勝手な行動をしたい気持ちは少しは理解できる。しかし、今目の前にいる武装をした人々は立派な大人なのだ。そんな分別のある大人が、銃という武器を持っているせいで、『暴力としての優位性が一体どちらにあるのか』ということを見誤っているという現実に笑いがこらえきれなかった。
御坂美琴はその現実を、大人たちに突き付けた。
「ハッ。『警備員(アンチスキル)』ごときが。『超能力者(レベル5)』第一位のこの私を止められるとでも?」
その言葉に、周囲は驚愕の声を上げた。
『だ、第一位!?まさかお前、『超電磁砲(レールガン)』か!?』
ザワッ!!と、その言葉に周囲が騒ぎだした。
それもそのはず。能力開発が行われる学園都市で『超能力者(レベル5)』は、全ての人々が憧れる存在。今年に入って『絶対能力者(レベル6)』の存在が報道されたが、上条当麻と『一方通行(アクセラレータ)』の事が機密事項であるため、一般の人々には今一理解にかけていた。大多数の人々にとっては『超能力者(レベル5)』こそ学園都市最強の称号だった。その第一位となれば、なおさらである。
「あ、あの人が第一位?」「うっそ、マジ?」「あの娘が?マジかよ!めっちゃカワいくね!?」「写メ、写メ!」「『超能力者(レベル5)』って初めて見た…」
そんな声が周囲に飛び交っていた。好奇な視線に晒される中、御坂美琴は顔色一つ変えなかった。
『だ、第一位!?まさかお前、『超電磁砲(レールガン)』か!?』
ザワッ!!と、その言葉に周囲が騒ぎだした。
それもそのはず。能力開発が行われる学園都市で『超能力者(レベル5)』は、全ての人々が憧れる存在。今年に入って『絶対能力者(レベル6)』の存在が報道されたが、上条当麻と『一方通行(アクセラレータ)』の事が機密事項であるため、一般の人々には今一理解にかけていた。大多数の人々にとっては『超能力者(レベル5)』こそ学園都市最強の称号だった。その第一位となれば、なおさらである。
「あ、あの人が第一位?」「うっそ、マジ?」「あの娘が?マジかよ!めっちゃカワいくね!?」「写メ、写メ!」「『超能力者(レベル5)』って初めて見た…」
そんな声が周囲に飛び交っていた。好奇な視線に晒される中、御坂美琴は顔色一つ変えなかった。
戦慄する『警備員(アンチスキル)』たち。だが、エレベータの警備を任されている以上、身を引くわけにはいかない。結果は目に見えていた。しかし、自分たちではどうすることも出来ない。
ならば、交渉しかない。言葉だけで彼女を説得するしかない。それ以上の手段は残されていなかった。けれど、頭でそれを理解していても、感情を抑えることは容易では無い。
『お前、今何をしようとしているのか分かっているのか!?』
思わず、叫んでしまった。それが相手に不快感を与えることが分かっていても、力では敵わない相手だと分かっていても。
ならば、交渉しかない。言葉だけで彼女を説得するしかない。それ以上の手段は残されていなかった。けれど、頭でそれを理解していても、感情を抑えることは容易では無い。
『お前、今何をしようとしているのか分かっているのか!?』
思わず、叫んでしまった。それが相手に不快感を与えることが分かっていても、力では敵わない相手だと分かっていても。
御坂美琴はそれを察していた。
『警備員(アンチスキル)』たちも、今起きている事態がどんなものかを把握していない。説明しても納得できないだろう。上層部の命令に従っているだけだ。『警備員(アンチスキル)』の人々も不安で胸が押しつぶされそうになっているはずだ。
けれど御坂美琴は違う。彼女はその情報を知っている当事者なのだ。そしてそれを知っている以上、私は関わらねばならない。愛しい彼がまた巻き込まれているのだ。そこでただ指を咥えているだけの女など、彼には相応しくない。そんな想いが、彼女を突き動かしていた。
そんな我儘で自己中心的な意見を推し進めるには、この方法を取らざるを得なかったのだ。
白井黒子の『空間移動(テレポート)』を使ってエレベータ内に侵入し、美琴の能力で勝手に動かすつもりだったのだが、エレベータ内にもAIMジャマーが設置されているので、容易に入ることは不可能だった。だからこそ、正面からの実力行使しか無かったのである。内心で、『警備員(アンチスキル)』に詫びを入れつつも、行動に出たのだ。刻々と事態が変化している中、安全な場所で手をこまねいている暇などない。一秒でも早く、地上に戻らねば。人々を運び終えるまで、地上に上がる機会を待っていたのだ。
だが、そんなことは表情には決して出さず、美琴は不敵な笑みを浮かべた。
「もう一度言います」
身構える『警備員(アンチスキル)』。けれど、自分の道を邪魔するやつは容赦しない。彼への想いだけが、彼女の強靭な理性や良心を押し潰し、行動に走らせた。心の隅に宿る、道義に反する行為の背徳感に身が震えつつも、彼女は言葉を紡いだ。
『警備員(アンチスキル)』たちも、今起きている事態がどんなものかを把握していない。説明しても納得できないだろう。上層部の命令に従っているだけだ。『警備員(アンチスキル)』の人々も不安で胸が押しつぶされそうになっているはずだ。
けれど御坂美琴は違う。彼女はその情報を知っている当事者なのだ。そしてそれを知っている以上、私は関わらねばならない。愛しい彼がまた巻き込まれているのだ。そこでただ指を咥えているだけの女など、彼には相応しくない。そんな想いが、彼女を突き動かしていた。
そんな我儘で自己中心的な意見を推し進めるには、この方法を取らざるを得なかったのだ。
白井黒子の『空間移動(テレポート)』を使ってエレベータ内に侵入し、美琴の能力で勝手に動かすつもりだったのだが、エレベータ内にもAIMジャマーが設置されているので、容易に入ることは不可能だった。だからこそ、正面からの実力行使しか無かったのである。内心で、『警備員(アンチスキル)』に詫びを入れつつも、行動に出たのだ。刻々と事態が変化している中、安全な場所で手をこまねいている暇などない。一秒でも早く、地上に戻らねば。人々を運び終えるまで、地上に上がる機会を待っていたのだ。
だが、そんなことは表情には決して出さず、美琴は不敵な笑みを浮かべた。
「もう一度言います」
身構える『警備員(アンチスキル)』。けれど、自分の道を邪魔するやつは容赦しない。彼への想いだけが、彼女の強靭な理性や良心を押し潰し、行動に走らせた。心の隅に宿る、道義に反する行為の背徳感に身が震えつつも、彼女は言葉を紡いだ。
「そこをどいていただけますか?」
引き金を引いた。
その瞬間、無数の銃声が鳴り響いた。
その瞬間、無数の銃声が鳴り響いた。