とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 4-252

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集


「お、姫神じゃねーか。珍しいな」
「……!」
 声をかけると、姫神は首だけで勢い良くこちらを振り向いた。歩いてくる上条を見つけて身体ごと向き合う。
「姫神もここ利用してたんだな。その割には今まで会わなかったけど」
 ここ、とは二人がいる業務用スーパーだ。最寄のスーパーからさらに歩くが、なんたって量が多く安い。ジャガイモが大袋で売られていたり、冷凍肉がキロ単位で売られていたり。一升瓶のようなマヨネーズはいつみても度肝を抜かれる。
「……上条君。どうしてここに」
「どうしてって、買い物以外ないだろ。この上条さんちの家計ははらぺこシスターまで居やがるからエンゲル係数増大中なんです」
 上条はいつもどおりの学生服だ。ボタンは全て外しており、中からオレンジのTシャツが覗いている。
 一方、姫神はいつもどおりの巫女服……ではなく、トップスにTシャツと薄手の白ジャケットを合わせ、ボトムスは細身のデニム。長い髪は髪留めでひとまとめにされていた。どことなく所帯くさいが、
(……いっつも長いスカート履いてっけど、脚キレーだなこいつ……)
「……どこを。見ているの?」
「いっ、いや別に! ……そういう非女神さんはなんでここに? 実はインデックス並みに食うとか?」
「……違う。家に近いのと、あと純粋にお得」
「お得って、お前こんなに食えるの? ……それとも自宅で食い倒れる気か?」
 姫神の隣にあるカートは、やたらデカイ玉葱の袋やほうれん草の山が出来ている。明らかに一人で食べる量では無かった。
「……玉葱は。お味噌汁にもカレーにも使える万能野菜。ほうれん草は。一度茹でてから冷凍すると便利」
「ふぅん……やっぱりお前家事出来るんだな」
「……その反応は。そこはかとなく馬鹿にされてる気がする」
「してねーって。弁当も美味かったし」
「……………………」
 姫神さんが背中をかばったのは何故だろう。
「……そういう上条君は。なんで学生服」
 訝しげに上条の格好を眺める。
「いつも学ランじゃないと。駄目な人?」
「昭和の応援団か。いや、学校帰りにちょっとドタバタに巻き込まれてな」
「……やっぱり。貴方はそういう人」
「どういう人だオイ。……いやゴメン、聞きたくない」
 頬に擦り傷があったり、学ランの裾に銃弾が抜けたような跡があるのはそういうことなのだろう。
 上条が姫神の隣に並んで、なんとなく二人で店内を物色する。
「ていうか、お前金はあるんじゃねーの? そんな主婦の節約術みたいなことしなくてもいいんじゃ?」
 姫神は少し考え、
「お洒落。したいから」
「……はい?」
「いつも。巫女服ばかり。だったから」
「……趣味で着てたわけじゃなかったんだな、巫女服。ならバイトとかはして……いや、いい」
「やっぱり。そこはかとなく馬鹿にされてる。バイトは。お正月だけなら」
「正月?」
「巫女さん」
「……そーですか。いや、別にどーでもいいけど。俺もしてねーし」
 というか、そこに居るだけで店が敷地ごと抉られる程の攻撃をされたり大量のシスターが流れ込んできたり女の子が落ちてくるような人間を採用する職場もないだろう。
 上条はワゴンに乗っていた二キロくらいありそうなジャガイモの袋手に取り、姫神のカートに乗せた。


「……なんで。私のカートに」
「いや、とってくるのめんどくせーし、俺が持つからいいだろ?」
 姫神の持つカートの取ってを奪い取り、その時少し、手が触れた。
「……。そう」
「……姫神? お前、顔赤くなってないか?」
「……そんなこと。ない」
 そう言う姫神は上条から顔を背け、ぼぅっとした目で化物みたいな豆腐を見ている。
「……お前、家はこの近くなんだよな?」
「……そう。だけど」
「風邪引いたときとか呼べよ。折角近場に引っ越したんだし。看病くらいしてやるから」
 姫神が、足を止めた。
「……迷惑に。なるから」
「そんなこと気にしてんじゃねーよ」
「……でも」
「でもじゃねぇ、困った時はお互い様だろ。俺が風邪ひいた時は助けてもらうかもしれねーし」
「……。分かった」
「あのシスターさんに看病任せたら酷いことになりそうだし……って姫神!? 早足でどこにいかれるのですか!? 上条さんはもう少し野菜コーナーを見て行きたいのですがー!?」



「そういや姫神、弁当のてんぷら、あれのレシピ教えてくれねえ?」
「……。そう」
「お、姫神、コンソメが特売だってよ」
「……。そう」
「……ジェームズ・ワン監督のサイコホラーと言えば?」
「……。そう」
「…………」
 鮮魚コーナーを越え、冷凍食品の棚が並ぶあたり。姫神はぼんやりとカートを押していた。
「……俺、何かしたか?」
「……え。なんて。聞こえてなかった」
「俺、何かお前に嫌われるようなことしたかって聞いてるんだけど」
「し。してない。大丈夫。気にしないで」
「……いや、明らかに何かおかしーだろ、お前」
「……大丈夫。だから」
「ふぅん……そうそう、今日の弁当のてんぷらだけどさ、あれレシピ教えてくれない?」
「……。てんぷら?」
「ほら、アレって弁当なのにサクサクしてただろ。レシピ気になって」
「……あれは。小麦粉と卵に。炭酸水を混ぜてる」
「炭酸水って……コーラか何かでも入れるのか」
「違う。お酒を割るための。味の無い炭酸水が売ってる」
「ふぅん……今度試してみるか」
 上条は冷凍コーナーの中から凍った肉まんの徳用袋を手に取り、
「……。なら」
「? なんだ姫神?」
「てんぷら。教えてあげるから。……部屋。来る?」


続かない。


タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
ウィキ募集バナー