(二日目)11時22分
第三学区にある、とある大企業の高層ビルの一室。第三学区の全景を見渡せるガラス張りの大きな部屋。モダンな家具やデスクが備えられている。
避難が完了し、外部にもビルの内部にも人はいない、はずだ。
だが、その一室に人はいた。
大きなデスクに、幾つものパソコンや電子機器を置いてあり、大きなソファには、制服を着た一人の黒髪の少女が寝そべっていた。
名前を雲川芹亜という。
第三学区にある、とある大企業の高層ビルの一室。第三学区の全景を見渡せるガラス張りの大きな部屋。モダンな家具やデスクが備えられている。
避難が完了し、外部にもビルの内部にも人はいない、はずだ。
だが、その一室に人はいた。
大きなデスクに、幾つものパソコンや電子機器を置いてあり、大きなソファには、制服を着た一人の黒髪の少女が寝そべっていた。
名前を雲川芹亜という。
彼女は携帯電話を片手に、ソファに悠然と体を傾けていた。
電話越しに男の怒号が聞こえた。その声が部屋中に響き渡っていた。
相手の男は貝積継敏。学園都市統括理事会のメンバーである。
『一体どうなっている!?なぜここまでの大規模な『戦争』を私は知らされなかったのだ!?』
片手で髪をかき上げならが雲川芹亜は言う。
「貴方だけじゃ無い。他の10人の統括理事会のメンバーも知らなかった。まさに寝耳に水ってやつだけど」
『…統括理事長の独断なのか?』
「いいや。彼もスケープゴートだ」
電話越しに男の怒号が聞こえた。その声が部屋中に響き渡っていた。
相手の男は貝積継敏。学園都市統括理事会のメンバーである。
『一体どうなっている!?なぜここまでの大規模な『戦争』を私は知らされなかったのだ!?』
片手で髪をかき上げならが雲川芹亜は言う。
「貴方だけじゃ無い。他の10人の統括理事会のメンバーも知らなかった。まさに寝耳に水ってやつだけど」
『…統括理事長の独断なのか?』
「いいや。彼もスケープゴートだ」
「今回の件は学園長と親船最中で極秘裏に進められた『避難』にしか過ぎない」
電話の先では大声を上げる。学園都市統括理事会の一員でもある大物が。
『何だと!?』
「はっはっは。最中の権力は随分と強くなったものだな。彼女の預かり知らぬ所で権力が増してしまったことなど知りもせずに、な」
雲川に本当のことを言われて、相手は押し黙るしか無かった。
「結局、正攻法でやってきた者が勝つのかね。小細工を好まない親船最中がアレイスターの次に強力な権力を持ってしまったのは統括理事会の不測の事態らしいけど。一般的に見てしまえば当然の帰結とも言えるけど」
大人相手に人生を諭すような哲学を聞かせ、雲川は皮肉交じりに相手を笑った。
『…何故、私に知らせなかった?』
声に秘められた怒気が電話ごしに伝わってくる。
遊び過ぎたかな。と心で雲川は思いつつも、平坦な声で返事をした。
「少し冷静になれ。いつものお前なら安易に想像がつくはずだけど」
『何だと!?』
「はっはっは。最中の権力は随分と強くなったものだな。彼女の預かり知らぬ所で権力が増してしまったことなど知りもせずに、な」
雲川に本当のことを言われて、相手は押し黙るしか無かった。
「結局、正攻法でやってきた者が勝つのかね。小細工を好まない親船最中がアレイスターの次に強力な権力を持ってしまったのは統括理事会の不測の事態らしいけど。一般的に見てしまえば当然の帰結とも言えるけど」
大人相手に人生を諭すような哲学を聞かせ、雲川は皮肉交じりに相手を笑った。
『…何故、私に知らせなかった?』
声に秘められた怒気が電話ごしに伝わってくる。
遊び過ぎたかな。と心で雲川は思いつつも、平坦な声で返事をした。
「少し冷静になれ。いつものお前なら安易に想像がつくはずだけど」
『…また『幻想殺し(イマジンブレイカー)』か!』
「そういうこと。今は『魔神』で通ってるけど」
雲川は話を続ける。
雲川は話を続ける。
「『幻想殺し(イマジンブレイカー)』は『原石』というより『パンドラの箱』だったな」
『…ああ、確かにな。先の『戦争』にしてもそうだったな。『一方通行(アクセラレータ)』は『絶対能力者(レベル6)』というには不十分だが…』
「逆に上条当麻は『絶対能力者(レベル6)』という範囲を逸脱している。それほど彼は強い。この二人の戦いを『戦争』といわずして何と呼ぶ?」
『この被害状況から見てもそうだな…』
「逆に上条当麻は『絶対能力者(レベル6)』という範囲を逸脱している。それほど彼は強い。この二人の戦いを『戦争』といわずして何と呼ぶ?」
『この被害状況から見てもそうだな…』
雲川は送られてきた被害状況をモニターとグラフで確認していた。
第二三学区の壊滅的な被害。第一八学区の被害も再建の目途すら立たないほどの状況。
それに続いて第一〇、一一、二二学区の被害も余波で深刻だ。
「そっちはどうなっている?」
『困惑しているよ。『神の世界(ヴァルハラ)』の『干渉者(コンタクター)』同士の戦いを止められるものなど、この世に存在しないからな』
第二三学区の壊滅的な被害。第一八学区の被害も再建の目途すら立たないほどの状況。
それに続いて第一〇、一一、二二学区の被害も余波で深刻だ。
「そっちはどうなっている?」
『困惑しているよ。『神の世界(ヴァルハラ)』の『干渉者(コンタクター)』同士の戦いを止められるものなど、この世に存在しないからな』
その言葉に、雲川芹亜は笑い出してしまった。
「ああっはははははははっ!!『神の世界(ヴァルハラ)』の『干渉者(コンタクター)』だと?そんな不可解な理屈でお前らは納得しているのか?統括理事会も落ちぶれたものだな」
『…何を言っている?』
「まさか本当に、あの二人が『神の世界(ヴァルハラ)』の『干渉者(コンタクター)』だから重宝されているとでも思っているのか?」
雲川は口を大きく開いて言った。
「逆だ」
『逆、だと?』
「ああっはははははははっ!!『神の世界(ヴァルハラ)』の『干渉者(コンタクター)』だと?そんな不可解な理屈でお前らは納得しているのか?統括理事会も落ちぶれたものだな」
『…何を言っている?』
「まさか本当に、あの二人が『神の世界(ヴァルハラ)』の『干渉者(コンタクター)』だから重宝されているとでも思っているのか?」
雲川は口を大きく開いて言った。
「逆だ」
『逆、だと?』
「能力者全員は『神の世界(ヴァルハラ)』の『干渉者(コンタクター)』だ」
次の瞬間、相手側が叫んだ。
『ふざけるな!貴様こそ何を根拠に言っている!?』
彼の反応を予測出来ていた雲川は淡々とした口調で言葉を紡いだ。
『ふざけるな!貴様こそ何を根拠に言っている!?』
彼の反応を予測出来ていた雲川は淡々とした口調で言葉を紡いだ。
「『幻想殺し(イマジンブレイカー)』だ」
『ッ!?』
「彼の能力は特に奇妙だとは思わなかったか?例えばだ。魔術であれ機械であれ、生み出された炎は何の違いもない。火は酸素の助燃性の下に可燃物を燃焼する。生み出された電気や水もプロセスの違いはあれ、性質は同様だ。
超能力や魔術で発生した火は打ち消せるが、燃えうつった火や、ライターの火では打ち消せないどころか、火傷をしてしまう。では一体『幻想殺し(イマジンブレイカー)』は何を打ち消しているのか」
「彼の能力は特に奇妙だとは思わなかったか?例えばだ。魔術であれ機械であれ、生み出された炎は何の違いもない。火は酸素の助燃性の下に可燃物を燃焼する。生み出された電気や水もプロセスの違いはあれ、性質は同様だ。
超能力や魔術で発生した火は打ち消せるが、燃えうつった火や、ライターの火では打ち消せないどころか、火傷をしてしまう。では一体『幻想殺し(イマジンブレイカー)』は何を打ち消しているのか」
「それは簡単。『幻想殺し(イマジンブレイカー)』は『神の物質(ゴッドマター)』を打ち消しているんだよ」
『何だと!?』
「やはり知らなかったか。それでは『幻想殺し(イマジンブレイカー)』の真の能力も。魔術と超能力が何たるか。それすらも知らないようだな」
『『幻想殺し(イマジンブレイカー)』の真の能力だと!?異能の力を打ち消すだけでは無いのか!?』
雲川芹亜は首を横に振った。
「いいや。『幻想殺し(イマジンブレイカー)』は『神の物質(ゴッドマター)』を打ち消す能力しか無い」
彼女は笑いを含ませながら言った。
口に飴を一つ入れた。カリ、コリと小さな音がする。
「やはり知らなかったか。それでは『幻想殺し(イマジンブレイカー)』の真の能力も。魔術と超能力が何たるか。それすらも知らないようだな」
『『幻想殺し(イマジンブレイカー)』の真の能力だと!?異能の力を打ち消すだけでは無いのか!?』
雲川芹亜は首を横に振った。
「いいや。『幻想殺し(イマジンブレイカー)』は『神の物質(ゴッドマター)』を打ち消す能力しか無い」
彼女は笑いを含ませながら言った。
口に飴を一つ入れた。カリ、コリと小さな音がする。
「…まあいい。一から説明してやろう。まず魔術と超能力についてだ。超能力は魔術回路を固定した固有魔術と(カリ)言われているが、これは本当だ。しかしな。アレイスターと同様の魔術回路が開(カリ)発されているわけじゃない。
カリキュラムは『神の世界(ヴァルハラ)』と『接続(アクセス)』す(コリ)るための魔術回路を脳に刻み込むた(パキ)めのものだ」
『…早く飲み込め。それで、『神の世界(ヴァルハラ)』との『接続(アクセス)』だと?そんなことをしてしまえば、開発を受けた人間は皆、魂が『神の世界(ヴァルハラ)』に取り込まれてしまい、死んでしまうのではないのか?』
「(ゴックン)その通りだ。『一方通行(アクセラレータ)』ですら巨大コンピュター『マザー』のプログラムを使用しなければ、すぐに取り込まれてしまう。シンクロ率も2,0パーセントが限界。
だから、『神の世界(ヴァルハラ)』に近づくだけでもいいのさ。近づけばそれだけで能力が発現し、また『神の世界(ヴァルハラ)』に近かければ近いほど、能力の質と威力はあがる」
『…ますます理解に苦しむな。では能力の差異はどうやって決まるというのだ?』
「魂の形だ。人の形成する人格に反映する。この時点ですでに能力がどのようなものかは決まっているんだ。いくら『無能力者(レベル0)』でも多少の能力は発現するだろう?
『幻想殺し(イマジンブレイカー)』を除く『原石』はすでに魔術回路が固定されているから、開発を受けても変化することは無い。
また、能力の発現だが、これは魂が『神の世界(ヴァルハラ)』との共振によって『神の世界(ヴァルハラ)』から漏れ出した『神の物質(ゴッドマター)』を、魂によって変換させる。それが炎であったり電気であったりするわけで、そうして初めて現実世界に発生する」
『?『神の物質(ゴッドマター)』は現実には存在できないのか?』
「ああ、特例を除いてね。
『神の物質(ゴッドマター)』の性質は名の通りだ。
『人の思考によって性質が変化する』物質だ。人はこれを『賢者の石』とも呼ぶな。しかし、これは色に例えるなら無だ。何か着色しなければそれは無いのものと同じだからな」
「特例というのは何だ?」
カリキュラムは『神の世界(ヴァルハラ)』と『接続(アクセス)』す(コリ)るための魔術回路を脳に刻み込むた(パキ)めのものだ」
『…早く飲み込め。それで、『神の世界(ヴァルハラ)』との『接続(アクセス)』だと?そんなことをしてしまえば、開発を受けた人間は皆、魂が『神の世界(ヴァルハラ)』に取り込まれてしまい、死んでしまうのではないのか?』
「(ゴックン)その通りだ。『一方通行(アクセラレータ)』ですら巨大コンピュター『マザー』のプログラムを使用しなければ、すぐに取り込まれてしまう。シンクロ率も2,0パーセントが限界。
だから、『神の世界(ヴァルハラ)』に近づくだけでもいいのさ。近づけばそれだけで能力が発現し、また『神の世界(ヴァルハラ)』に近かければ近いほど、能力の質と威力はあがる」
『…ますます理解に苦しむな。では能力の差異はどうやって決まるというのだ?』
「魂の形だ。人の形成する人格に反映する。この時点ですでに能力がどのようなものかは決まっているんだ。いくら『無能力者(レベル0)』でも多少の能力は発現するだろう?
『幻想殺し(イマジンブレイカー)』を除く『原石』はすでに魔術回路が固定されているから、開発を受けても変化することは無い。
また、能力の発現だが、これは魂が『神の世界(ヴァルハラ)』との共振によって『神の世界(ヴァルハラ)』から漏れ出した『神の物質(ゴッドマター)』を、魂によって変換させる。それが炎であったり電気であったりするわけで、そうして初めて現実世界に発生する」
『?『神の物質(ゴッドマター)』は現実には存在できないのか?』
「ああ、特例を除いてね。
『神の物質(ゴッドマター)』の性質は名の通りだ。
『人の思考によって性質が変化する』物質だ。人はこれを『賢者の石』とも呼ぶな。しかし、これは色に例えるなら無だ。何か着色しなければそれは無いのものと同じだからな」
「特例というのは何だ?」
「その特例こそが『絶対能力(レベル6)』の正体さ。『絶対能力(レベル6)』とは『神の物質(ゴッドマター)』を無色のまま、現実に引き出せる能力を指すんだ」
『……ふむ』
「『神の物質(ゴッドマター)』で自身の周囲を満たし、物事を自分の思い通りに動かし、作り変えることができる。これが『絶対能力(レベル6)』だ」
『だから『一方通行(アクセラレータ)』は不完全な『絶対能力(レベル6)』と言われているわけか…』
「『超能力者(レベル5)』としては優秀だよ。『神の物質(ゴッドマター)』をベクトルという応用性の高い『物理法則』に変換する彼の魂の形は逸材だがらな。それにこの能力は一八〇万人の能力者の中で、最も『神の世界(ヴァルハラ)』に近く、無色に近い『神の物質(ゴッドマター)』を引き出せていたからな」
「『神の物質(ゴッドマター)』で自身の周囲を満たし、物事を自分の思い通りに動かし、作り変えることができる。これが『絶対能力(レベル6)』だ」
『だから『一方通行(アクセラレータ)』は不完全な『絶対能力(レベル6)』と言われているわけか…』
「『超能力者(レベル5)』としては優秀だよ。『神の物質(ゴッドマター)』をベクトルという応用性の高い『物理法則』に変換する彼の魂の形は逸材だがらな。それにこの能力は一八〇万人の能力者の中で、最も『神の世界(ヴァルハラ)』に近く、無色に近い『神の物質(ゴッドマター)』を引き出せていたからな」
「これは余談だが、虚数学区・五行機関は人工的な『天界』だ。あれは『ドラゴン』の『檻』だ。ヒューズ・カザキリを媒体とした『天使』がそれを証明しているだろう。天使は『神の御使い』でしかない。ではその『神』たる存在は一体何が代理するのか。自ずと答えは見えてくるだろうよ」
『…だから『絶対能力者(レベル6)』ではなく『絶対能力(レベル6)』だったのか。『ドラゴン』という神の力があれば、そこに人格や肉体はいらない。むしろ不純物でさえある』
「まあ、その計画が頓挫した今となって、笑い話で済むんだろうがな。完成していたらこの世は名実ともに『アレイスター』のものだった」
声は殺しているが、内心では驚愕に満ちているだろう。子供の意見にいちいち驚いていると大人としての面子が無い、というプライドが動いていることを雲川は感じとっていた。
その事を察しつつも、雲川は口を動かした。
「次に、魔術についてだが、これは開発で魔術回路が固定されていない人間が使用できる。
術式で魔術回路を固定し、魔力を流して発動させる。
では、魔力とは何か。これは魂から流れ出るノコリカスのようなものだ。
魔力は魂そのものといっても過言ではない。
そして魂とは現実と『神の世界(ヴァルハラ)』を繋ぐものとも言えるし、ここでは『神の物質(ゴッドマター)』を現実に引き出すための変換機と言った方がいいだろう。
さっきも言ったとおり、
超能力は『神の世界(ヴァルハラ)』から得た『神の物質(ゴッドマター)』というガソリンを使って『魂』という変換機と使って現象を発生させる。
それに対して魔術は『魔力』というガソリンを使って、『術式』という変換機を持って現象を引き起こすのさ」
『?ちょっと待て。『幻想殺し(イマジンブレイカー)』は魔力も打ち消せるのか?』
『…だから『絶対能力者(レベル6)』ではなく『絶対能力(レベル6)』だったのか。『ドラゴン』という神の力があれば、そこに人格や肉体はいらない。むしろ不純物でさえある』
「まあ、その計画が頓挫した今となって、笑い話で済むんだろうがな。完成していたらこの世は名実ともに『アレイスター』のものだった」
声は殺しているが、内心では驚愕に満ちているだろう。子供の意見にいちいち驚いていると大人としての面子が無い、というプライドが動いていることを雲川は感じとっていた。
その事を察しつつも、雲川は口を動かした。
「次に、魔術についてだが、これは開発で魔術回路が固定されていない人間が使用できる。
術式で魔術回路を固定し、魔力を流して発動させる。
では、魔力とは何か。これは魂から流れ出るノコリカスのようなものだ。
魔力は魂そのものといっても過言ではない。
そして魂とは現実と『神の世界(ヴァルハラ)』を繋ぐものとも言えるし、ここでは『神の物質(ゴッドマター)』を現実に引き出すための変換機と言った方がいいだろう。
さっきも言ったとおり、
超能力は『神の世界(ヴァルハラ)』から得た『神の物質(ゴッドマター)』というガソリンを使って『魂』という変換機と使って現象を発生させる。
それに対して魔術は『魔力』というガソリンを使って、『術式』という変換機を持って現象を引き起こすのさ」
『?ちょっと待て。『幻想殺し(イマジンブレイカー)』は魔力も打ち消せるのか?』
「いや、『魔力』は打ち消せない。何故なら『魔力』は現実(リアル)だからだ」
『なんだと!?』
貝積継敏の予想通りの反応に、雲川は口元がニヤけてしまった。
「これは理論的な話だよ。『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が『魔力』を打ち消せるなら、魂も消してしまえることになる。しかし、できない。まあ、魔力の泉とも言われる自然界の『地脈』などといったものには反応しないからな」
『では、魔術は何を打ち消されているのだ?』
貝積継敏の予想通りの反応に、雲川は口元がニヤけてしまった。
「これは理論的な話だよ。『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が『魔力』を打ち消せるなら、魂も消してしまえることになる。しかし、できない。まあ、魔力の泉とも言われる自然界の『地脈』などといったものには反応しないからな」
『では、魔術は何を打ち消されているのだ?』
「術式だ」
雲川は言葉を続けた。
「術式という変換機が『神の物質(ゴッドマター)』を呼び込み、変換機としての役割を果たすのさ。
だから神器や聖具といった、大がかりな術式、つまりは大量の『神の物質(ゴッドマター)』を内包した物に、『幻想殺し(イマジンブレイカー)』は反応する。だからだ。ただの絵を描いて、それが魔術的な力を持つものなら、それは発動せずとも『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が触れただけでただの絵になってしまうのさ」
電話の相手の反応が鈍い。
確かにこれだけの情報を一気に理解できるほうが普通では無い。
しかし、これくらいのことが一度で呑み込むだけの理解力を持っていないと、『ブレイン』という役割はこなせないのだ。
一時の時間を待って、貝積継敏の合図を待った。
そして雲川は話を紡ぐ。
「では話そう。『幻想殺し(イマジンブレイカー)』の真の能力をな。それは———」
「術式という変換機が『神の物質(ゴッドマター)』を呼び込み、変換機としての役割を果たすのさ。
だから神器や聖具といった、大がかりな術式、つまりは大量の『神の物質(ゴッドマター)』を内包した物に、『幻想殺し(イマジンブレイカー)』は反応する。だからだ。ただの絵を描いて、それが魔術的な力を持つものなら、それは発動せずとも『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が触れただけでただの絵になってしまうのさ」
電話の相手の反応が鈍い。
確かにこれだけの情報を一気に理解できるほうが普通では無い。
しかし、これくらいのことが一度で呑み込むだけの理解力を持っていないと、『ブレイン』という役割はこなせないのだ。
一時の時間を待って、貝積継敏の合図を待った。
そして雲川は話を紡ぐ。
「では話そう。『幻想殺し(イマジンブレイカー)』の真の能力をな。それは———」
「『幻想殺し(イマジンブレイカー)』は『死の運命』を打ち消せるんだよ」
『なっっ!!?』
貝積継敏は驚愕に声を震わせてしまった。
「そして、もっと興味深いことが出てくる。それは『運命』そのものが『神の物質(ゴッドマター)』で出来ていることになるのさ」
相手は声すら出せない。雲川は彼の驚く顔が頭に浮かんだ。
「くっくっく。面白いだろう?これを知ったとき、私は笑いが堪えきれなかったよ。なんせ『人の運命は神のみぞ知る』なんていう諺が、はるか一〇〇〇年の時を越えて、『科学的』に証明されたんだ。
人類の新たな発見に私は立ち会えたんだよ。科学者が新たなる境地を見出したい欲望が理解できたね。確かに、あれは忘れられん。一種の麻薬だ」
『……』
「もうこれは確証を得ている。彼が関わった戦いで、死者は一人も出ていない。
先の『戦争』でそれは分かっているだろう?あれだけの大規模な戦いが繰り広げられたこの地で、死者は両方共にゼロだ。
≪なんという茶番。まるで観客に見せる大掛かりな『ショー』ではないか≫と、お前も言っていたではないか」
『そ、そんな事が信じられるか!!死の運命を打ち消すだと!冗談でもいいかげんにしろ!!』
貝積継敏は驚愕に声を震わせてしまった。
「そして、もっと興味深いことが出てくる。それは『運命』そのものが『神の物質(ゴッドマター)』で出来ていることになるのさ」
相手は声すら出せない。雲川は彼の驚く顔が頭に浮かんだ。
「くっくっく。面白いだろう?これを知ったとき、私は笑いが堪えきれなかったよ。なんせ『人の運命は神のみぞ知る』なんていう諺が、はるか一〇〇〇年の時を越えて、『科学的』に証明されたんだ。
人類の新たな発見に私は立ち会えたんだよ。科学者が新たなる境地を見出したい欲望が理解できたね。確かに、あれは忘れられん。一種の麻薬だ」
『……』
「もうこれは確証を得ている。彼が関わった戦いで、死者は一人も出ていない。
先の『戦争』でそれは分かっているだろう?あれだけの大規模な戦いが繰り広げられたこの地で、死者は両方共にゼロだ。
≪なんという茶番。まるで観客に見せる大掛かりな『ショー』ではないか≫と、お前も言っていたではないか」
『そ、そんな事が信じられるか!!死の運命を打ち消すだと!冗談でもいいかげんにしろ!!』
365 :toto:2009/02/05(木) 00:43:58 ID:vFaX9zPM
「だがな。その奇跡は『偶然』じゃないんだよ。『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が引き起こした『必然』だったんだよ
…ならば、イギリスに送り込んだ『妹達』はどうなった?四〇〇〇体もの無残な死体が転がっただけだろう?それだけじゃない。『強能力者(レベル3)』、『大能力者(レベル4)』は一〇〇名以上、そして『超能力者(レベル5)』を二人も失ってしまった」
『ぐっ…』
「もし、『幻想殺し(イマジンブレイカー)』をイギリスに送り込んでいたら、彼らが生き残るかわりに、私たちは死んでいたさ。いや、それどころか学園都市そのものが存在しているかどうかさえあやしい」
『だが、『戦争』は『終結』したのではなく、『中止』になったのだぞ!?』
「ああ、そうだ。我々は暴走した『ドラゴン』という『神上』を抑え込むために、戦争を『中止』して魔術側と手を組んだ。そのお蔭で莫大な学園都市の敷地と、いくつかの島が消滅しただけで事が済んだ」
「だがその『偶然』のおかげで、で私たちが手を組み、誰一人血を流すこと無く、和解しえたという『奇跡』が起きたのだろう?」
『…っ!』
「だがら、お前らも甘い。彼が重要な事件の当事者にさせられていた本当の意味を見抜けなかった。
それは両者の間に犠牲者を出さないためだ。
死者さえださなければ、双方は和解できる可能性もより高いからな。そして被害を受けるのは彼だけ。」
『…被害を受ける、だと?』
「だがな。その奇跡は『偶然』じゃないんだよ。『幻想殺し(イマジンブレイカー)』が引き起こした『必然』だったんだよ
…ならば、イギリスに送り込んだ『妹達』はどうなった?四〇〇〇体もの無残な死体が転がっただけだろう?それだけじゃない。『強能力者(レベル3)』、『大能力者(レベル4)』は一〇〇名以上、そして『超能力者(レベル5)』を二人も失ってしまった」
『ぐっ…』
「もし、『幻想殺し(イマジンブレイカー)』をイギリスに送り込んでいたら、彼らが生き残るかわりに、私たちは死んでいたさ。いや、それどころか学園都市そのものが存在しているかどうかさえあやしい」
『だが、『戦争』は『終結』したのではなく、『中止』になったのだぞ!?』
「ああ、そうだ。我々は暴走した『ドラゴン』という『神上』を抑え込むために、戦争を『中止』して魔術側と手を組んだ。そのお蔭で莫大な学園都市の敷地と、いくつかの島が消滅しただけで事が済んだ」
「だがその『偶然』のおかげで、で私たちが手を組み、誰一人血を流すこと無く、和解しえたという『奇跡』が起きたのだろう?」
『…っ!』
「だがら、お前らも甘い。彼が重要な事件の当事者にさせられていた本当の意味を見抜けなかった。
それは両者の間に犠牲者を出さないためだ。
死者さえださなければ、双方は和解できる可能性もより高いからな。そして被害を受けるのは彼だけ。」
『…被害を受ける、だと?』
「あいつの『不幸』さ。それは他人の『死の運命』を打ち消す代償なのさ」
『そ、それでは彼は…』
「そうだ。あいつは、いつも他人の『不幸』を肩代わりしているのさ。まあ、魂が内包する『死』は、流石に『幻想殺し(イマジンブレイカー)』でも打ち消せないみたいだがな。
「そうだ。あいつは、いつも他人の『不幸』を肩代わりしているのさ。まあ、魂が内包する『死』は、流石に『幻想殺し(イマジンブレイカー)』でも打ち消せないみたいだがな。
…誰からも感謝されることなく、それどころか他人に近寄ることさえ嫌がられていても、彼は『赤の他人の命』を救っているんだ。
それを私が彼に話した時、彼は泣きながらこう言ったさ。
それを私が彼に話した時、彼は泣きながらこう言ったさ。
『よかった』
…とな」
絶句している貝積を無視して、雲川は話を続けた。
「やつは他人のために命をかけるお人よしだがな。人を動かすのは心だ。人を動かすのは金でも権力でもない。心だよ。心を揺り動かされた者に、人はついていくものさ。命すら惜しまずにね。
だからこの件はお前は関与するな。何か小細工をしかけようとした時、私は動く」
絶句している貝積を無視して、雲川は話を続けた。
「やつは他人のために命をかけるお人よしだがな。人を動かすのは心だ。人を動かすのは金でも権力でもない。心だよ。心を揺り動かされた者に、人はついていくものさ。命すら惜しまずにね。
だからこの件はお前は関与するな。何か小細工をしかけようとした時、私は動く」
『…お前も、上条勢力の一員だったとはな』
「不服か?」
『いや、羨ましいんだよ』
「?」
『いや、羨ましいんだよ』
「?」
『嫉妬しているのさ。私は。誰からも好かれる、『上条当麻』という男に』
「…そうか」
予想外の言葉に雲川は少し驚いていた。
しかし、そんなことは声に微塵も出さない。
「では切るぞ。これはサービスだ。私の長い独り言だと思ってもらっても構わない」
『…これは驚いたな。君がそんなことを言うとは』
「では、ごきげんよう」
そう言って、雲川は携帯を閉じた。
一度、体を伸ばして体をほぐしてした。
予想外の言葉に雲川は少し驚いていた。
しかし、そんなことは声に微塵も出さない。
「では切るぞ。これはサービスだ。私の長い独り言だと思ってもらっても構わない」
『…これは驚いたな。君がそんなことを言うとは』
「では、ごきげんよう」
そう言って、雲川は携帯を閉じた。
一度、体を伸ばして体をほぐしてした。
そして、机に置いてあるもう一つの携帯を取り、電話をかけた。
雲川は寝そべった態勢を崩さず、電話の相手を待った。
3コール後、相手が電話に出る。
『グループだ』
「なあ、土御門」
『何だ』
「パンドーラーは好奇心を抑えきれず、神々から授かった箱を開けてしまった。そして、世界に災いをもたらした」
『…いきなり何を言っている?『パンドラの箱』がどうかしたのか?』
「まあ、黙って答えろ。その箱の底に何が残ったか、知っているか?」
電話越しに、当たり前だと言わんばかりの返答が返ってきた。
雲川は寝そべった態勢を崩さず、電話の相手を待った。
3コール後、相手が電話に出る。
『グループだ』
「なあ、土御門」
『何だ』
「パンドーラーは好奇心を抑えきれず、神々から授かった箱を開けてしまった。そして、世界に災いをもたらした」
『…いきなり何を言っている?『パンドラの箱』がどうかしたのか?』
「まあ、黙って答えろ。その箱の底に何が残ったか、知っているか?」
電話越しに、当たり前だと言わんばかりの返答が返ってきた。
『『希望』—————————だろ?』