とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 4-534

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匿名ユーザー

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「あっ、洗面器こっちに持ってくるの忘れてた……」
全裸になって浴室に入った時、美琴はそのことを思い出した。
濡れタオル用と身体拭く用に持っていった二つの洗面器は、リビングに置いてきたままだった。
というわけで、浴室には一つも洗面器がない。
とはいえ、今となっては取りに戻ることもできるわけない。
湯船に入ったお湯が使えないので、シャワーを使う事にする。
固定具かけてあるシャワーヘッドを取り、蛇口をひねった。
噴出したお湯の温度を適当に調整して、ちょうどいいくらいの温かさになると、一通り身体に浴びせる。
「はぁー……温かい……」
さすがに水浸し状態で長くいたので少し寒くなっていた。
シャワーのお湯が心地よい。。
近くにあった椅子にシャワーをかけると、シャワーヘッドを固定具に置き、椅子に腰を下ろす。
まずは髪から先に洗う事にした。
その辺にあったシャンプーを取ると、適量手の平に出して少し泡立ててから髪につける。
「(これってテレビのCMとかで見たことあるやつね。あいつこんなの使ってるんだ……)」
スーパーとかで安売りされてたから買って使ってるだけなので、上条自身には特にこだわりとかがあるわけではない。
とはいえ、美琴には自分が同じシャンプーを使って、同じ香りを纏っているのがちょっと嬉しかったり……。
「(あいつと同じ香り~♪ ……って、何考えてんのよー、私はー!)」
心の中で自分の思考に突っ込みを入れる。
なんだか調子が狂いっぱなしだ。
今はとにかく髪を洗う事にする。
変な思考を振り払うように、シャカシャカと念入りに髪を洗い、その後シャワーで泡を洗い流した。

同じようにリンスをした後、次に体を洗う。
上条はボディーソープなんて上等な物は使ってないようで、シャンプーの側に置いてある石鹸を手にする。
タオルに石鹸を塗り付け泡を立てると、丁寧に肌を洗っていく。
順々に身体を洗っていくが、胸の辺りに手がかかった時、
「(私の胸ってどうなんだろう……?)」
ふとそんな事を考えてしまった。
上条が自分の胸に顔を埋めていた時のことを思い出す。
頬擦りなんかして気持ちよさそうに……。
「だぁー! また何考えてるのよー! 私は―!」
またおかしな思考が働き始めたので、頭を左右にブンブン振って思考を中断させる。
余計な事を考えないよう黙々と身体を洗うのだが……。
「……小さくは…ないわよね? 年相応ではある…と思うのよ……」
やっぱり胸の事が気になるようで、結局胸の事を考えてしまう。
気になって気になって、最終的には泡まみれの胸元に自然に目が行ってしまう。
ぺたぺたとタオルを持ってないほうの手で胸をさわる。

むにぃ……

貧乳ではない……と思う。
しかし、美琴としてはもう少し胸が欲しかったり……。
「やっぱ…大きいほうがいいのかな……? 母がアレだから将来的には……」
身体を洗っていた手を止めると、タオルを膝に置き両手を胸元にやる。
そして、両手で胸を揉んでみて胸を大きくしようとしたり、胸の周りの肉を集めて寄せたり上げたりして大きく見せようとしてみたりと四苦八苦するのだが、
「……はぁー」
やっててなんだかむなしくなった。
「何やってんだか……」
再びタオルを手に取ると、再び身体を洗い始めるのだった。


一通り身体を洗うと、シャワーを手に取り流していく。
「……こんなもんかな?」
身体全体一通り流し終えると、湯船に手を入れて温度を確かめる。
少し熱いくらいかな、という感じだ。
熱い風呂が苦手な美琴だが、今は少し熱い湯に入りたい気分なので、そのまま湯船につかる。
「ふぅー……気持ちいい……」
大きく一息つくと、ゆったりとくつろぐ。
「(……何か今日はいろいろあったなぁ…)」
くつろぎながら、風呂の中で考え事をする。
どうも今日は変な方向に思考が行ってしまいがちだが、それでもやっぱり考えてしまう。
今日の出来事、今日上条と会ってからの事を思い返す。
「(いつもみたいにあいつを見かけたから、いつもみたいに声をかけて、いつもみたいにスルーされたから、いつもみたいに電撃ぶっ放したら……)」
今日はいつもと違う展開、本当に上条当麻がぶっ倒れた。
普段からぶっ倒されろと物騒なことを言ってはいたが、まさかこんな事になろうとは。
嬉しいような悲しいようなハプニングの連続な現在に至るわけである。
「はぁー……すっごく疲れた……」
大きな溜め息をつきながらぼやく。
お嬢様の美琴には他人の看病なんてあまり経験のない事、慣れない事の連続だ。
ましてやその看病の相手が、あの上条当麻。
肉体的にも精神的にも疲れるというものだ。
しかし何故だろうか、そんな言うほど苦行には感じない。
むしろ、上条の世話を焼けることが嬉しかったり、楽しかったり……。
「……」
自分でも頬が緩み顔が赤くなるのがわかったので、誤魔化すように湯船で顔をバシャバシャと洗った。
「……や、やっぱり慣れない熱いお風呂なんかに入るもんじゃないわねぇ。の、のぼせちゃった…かな……」
声に出して誤魔化すように湯船から出ると、温めのシャワーを少し身体に流してから浴室を出た。


「あ、下着どうするか考えてなかった……」
脱衣所で身体を拭き、服を着ようとしたところで、肝心な事を忘れていた事に気付いた。
風呂に入りながら考えればいいと思っていたが、思考が完全に脱線していた。
もう身体も拭いてしまったので、今更また浴室に戻るわけにもいかない。
しかも思った以上に長湯していたようで、結構な時間が経っていた。(入浴前のゴタゴタが時間を喰ってたり……)
替わりの下着を持ってきてもらうことは、ある意味不可能。
唯一頼めそうだった土御門舞夏が完全にダメ。(今度会った時は、ただじゃすまさない!)
あともう一人、頼めばほぼ確実に来てくれるであろう人物に心当たりがあるが、その人物は完全に除外。
きっとロクなことにならないと本能が告げている。(いろんな意味で……)


「はーっくしゅん!!!」 
「あれ、白井さん風邪ですか?」
「いえ、風邪ではありませんわ、初春。何かこう鼻がムズムズと……。誰か私の噂でもしてらっしゃるのかしら? はっ、もしやお姉さまが私のことを……!」
「はいはい、無駄口叩かずお仕事しましょうね。これ全部今日中に終わらせないといけないんですから」


というわけで別の手段を考えなければならないのだが……。
「……これ、穿くしかないの…かな?」
乾かす方法がないので、その考えに行き着く。
濡れ濡れ(水で)だった下着を手に取り、ためしに穿こうとしてみるが……。
「……無理ね……」
全くもって無理だった。
想像以上に濡れ濡れ下着の感触が気持ち悪かった。
となると、残された手段は……。
「何も付けずに服着る……?」
そういう結論に辿り着く。
しかし、
「…ダメでしょう、それは…」
と思う。
さすがにそれはもうなんて言っていいかわからないくらいまずい。
下着着けずに服を着るなんて……。
ましてやそれが、上条当麻の服。
いろいろとヤバくない?
「……かといって、唯一の下着がこれだし……」
手にしていた濡れ濡れ下着に視線を向ける。
「……考えてみれば、この濡れた下着を穿いた場合、着替えた服も濡れちゃわない……?」
ある程度の水分は絞ったとはいえ、それは十分にありえる。
折角着替えたのに、また濡らしてしまっては……。
というわけで……、
「このまま服を着るしかなさそうね……」


そんなこんなで、服を着るわけなのだが……。
「……あいつの匂いがする……じゃない! ブカブカねぇ……」
最初の感想はそんなものだった。
上条と美琴は性別も違えば学年も違う。
まして体格も違うわけなのだから当然である。
袖から手も出なければ、丈も美琴の膝近くまである。
「……大丈夫、かな?」
洗面台の鏡を映る自分の姿を、美琴は不安そうに眺める。
「……どうしてもズレるわねぇ……」
適当に選んで持ってきた上条のトレーナーは、少しでも動くとズズズッとズレて、襟口から美琴の肩と鎖骨の辺りを露出させる。
鏡を見ながら何度も直すが、結局動いたらズレて肌を露出させる。
「これ大丈夫か?」と心配する一方で、「なんかこれちょっと色っぽくない?」とか「どうせだったらYシャツ持ってくれば良かったんじゃねぇ?」という考えが過ぎってしまう。
数秒後、また何考えてんだー、とおかしな思考を必死に振り払うと、続いてズボンを手に取る。
「これを穿くのか……」
これも当然美琴のではなく、上条のズボンをである。
ノーパンで穿く事に多少の、いやかなりの躊躇いがある。
いろんな意味でヤバイような気が……。
とはいえ、何も穿かないよりはいいはずだ。
もうここまで来たら、意を決してズボンを穿く。
例によってズボンもブカブカ。
ズボンの裾も相当余る。
そしてやっぱり、ズリズリとズボンがズレ落ちる。
今度はもっと酷くて、動かなくてもズレる。
ほっといたら二〇秒もしないでズボンが重力に引かれて脱げる。
「こ、これは……」
『もしかして何も穿けない?』と最大級のピンチと思いきや、ズボンには紐が通っており、これで調整が出来るようになっていた。
「ほっ…」
何とか一安心。
ノーパンでズボンも穿けないという危険な状況は回避できたようだ。
「これで…よし!」
ひたすら紐を引っ張ってズボンを締めると、長く伸びた紐を結ぶ。
紐は絶対に解けないよう固く結んだ。
上条の前で解けようものなら大変な事になる。
もしもそんな事になろうものなら……。
なろうものなら……!
「(///////////)」
ちょっと、物凄い状況を想像しそうになった。
風呂から出たばかりだが、洗面台でバシャバシャ顔を洗ってしまう。
「ふぅー……」
気持ちを落ち着けると、余計な事を考えるのをやめて、余ったズボンの裾の処理をする。
余った裾を踏んで脱げる可能性もあるわけで、そんなことにならないよう丁寧に折って上げる。
「……よし!」
上げた部分が崩れないか足を動かして確認する。
崩れる気配はない、問題なさそうだ。
「大丈夫そうね……」
着替え終了、と改めて鏡の前に直る。
おかしくはない。
ノーパンノーブラなため肌に多少変な感触があるが、とりあえず問題ない、と強引ではあるが納得させる。
ここまでやったらもう今更だ、開き直るしかない。
「さて……あいつどうしてるかしら?」
脱いだ衣服、荷物を手にすると、美琴は風呂場をあとにした。


風呂場を出た美琴は、身を隠すようにして部屋の様子を窺いながら部屋に戻る。
風呂上りであることと、格好にそれなりの恥ずかしさがあるため、部屋に普通に入れなかった。
上条の様子を窺うと、美琴の入浴中に再び眠っていたようで寝息を立てていた。
ほっと一息つくと、都合がいいと上条が寝ている間に衣服を干すことにした。
制服や短パンについては、部屋のその辺にかけておいて問題ないのだが、問題は下着である。
こんな物上条の視界に入るところに干す事なんて出来るわけがないし、今自分がノーパンノーブラ状態でいることを知られたくなかったので、下着を隠しながら干さなければならなかった。
出来ればさっさと乾いて欲しかったりもするわけで。
上条の視界に入らないところに干して尚且つ早く乾かす、と条件は非常に厳しい。
何かいい方法はないかな、と部屋を見渡しながら考えていると、
「……んん……あぁ……」
呻き声を上げながら目を開けた上条とバッタリ目が合った。
美琴の姿を確認した上条は、
「ああ……わりぃ…少し寝てた……」
なんて言った。
「!?」
寝ていた上条が急に目を覚ましたことに驚いた美琴は、悲鳴こそ上げなかったが、ビクッとしてしまった。
その際、ポロっと手に持っていた下着を落としてしまう。
「……ん? なんか…落としたぞ……」
「!? ちょ、ちょっと待って!」
視線を床の方に向けようとしたので、美琴は慌てて止めようとして上条の視界を塞ごうと手を伸ばし、

ガシッ!

上条の顔面におもいっきりアイアンクローを決めてしまった。
手加減無用のプラス何故か微電撃入りで。
「うぎゃぁぁぁぁぁぁっ!?」
「うわぁー、ご、ごめんー!」
上条の絶叫を聞いた美琴は慌てて手を外すと、わたわたとしてしまう。
上条のダメージは相当デカい。
頭痛に加えてアイアンクロー(微電撃入り)により、上条さんは死にそうです。
「ミ、ミサカサン……何故…このような……」
奇跡的に気を失わなかった上条が、美琴に弁明を求めようとしていると、

ポスッ……

何かが上条の顔の上に落ちてきた。
「!?」
「ん…? な、なんだ…?」
湿り気を帯びた何かが、上条の視界と鼻と口を塞ぐ。
鼻と口を上手い具合に塞がれ、酸素の補給ができない。
ダメージの大きい上条には手を動かす事も一苦労で、視界を塞ぐそれを手に取るまでに時間を要する。
「あー、み……」
美琴に取ってもらおうと声をかけようとしたが、上条が何も言わずとも美琴がそれを物凄い速さで取り上げ視界が開けた。
そして開けた視線の先には、上条の視界を塞いでいた物体、『ブラジャー』を手に握り締めている美琴の姿があった。


「……はい?」

一瞬、上条は何がなんだかわからなかった。
「(…えーっと、つまり今上条さんの顔に被さっていたのは……もしかしなくても美琴さんのブラジャーってわけですか?)」
「殺される、絶対殺される」、と上条は死を覚悟しそうになったが、美琴の様子がおかしい。
「……」
顔を真っ赤にして涙目でプルプル震え、周りがバチバチと帯電している。
そんなのいつもの事なのだが、上条の中の何かが告げる。
非常にヤバイ、危険だと……!


美琴はもう爆発寸前だった。
怒りではなく、恥ずかしさのである。
これまでのドキドキイベントやらなんやらかんやらで、美琴の精神も限界ギリギリだった。
そして今の下着。
もうダメ、限界です……。
もう何がなんだかわかりません……。


「う……」
美琴が呻いている、今にも泣くなり絶叫するなりしそうだ。
それに合わせて、美琴の周りのバチバチが徐々に増している。
少しずつ少しずつどんどん激しくなり、最後の最後泣くなり絶叫するなりしたと同時に大爆発しそうだ。
その威力を想像するのも恐ろしい。
爆発したら最後、部屋の電気製品がおしゃかになるのはもちろん、何もかも全てフッ飛ばして部屋が跡形もなくなくなるのではないだろうか?
非常に危険だ。
なんとか美琴を落ち着かせたいところだが、これはもう止められない。
ならばやることは一つ。
この『幻想殺し』で暴発を止めればいい―――!
上条は動かない身体に何とか力を込める。
この危機的状況下に陥った事で、火事場の馬鹿力というものが働いたのか、上条の身体は動いてくれた。
右手を、右手をなんとか美琴の身体のどこでもいいから触れられれば暴発は止められると信じ、とにかく右手を伸ばした。

「うわぁぁぁぁぁんー!!!」

これでもかというほどの盛大な絶叫が響き渡り、上条の意識はそこで途切れた。


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