とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 4-582

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匿名ユーザー

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「……不幸だ」
上条当麻はいつもの口癖を呟いた。
また例によって、彼の不幸体質が招いた不幸にげんなりしていた。
しかし、今の彼の状況を見てこれが不幸と賛同してくれる者はどのくらいいるだろうか?
きっと、男性一〇〇人に問えば一〇〇人とも賛同しないであろう。
というか、この状況を不幸という上条は間違えなくフルボッコ確実であろう。


「ねぇねぇ、とうま~♪」
上条の右腕に腕を絡めて柔らかな胸を押し付けつつ、甘いスイートボイスで上条の名を呼ぶ少女、その名は……、
「あー、はい……なんですか、御坂さん?」
名門常盤台中学のお嬢様、学園都市第三位・『超電磁砲』の異名を持つ少女、御坂美琴その人であった。
「むぅー! み・こ・と! みことってよんでよ~、とうま~♪」
名前で呼んでくれない上条に対して、可愛らしく頬を膨らませてむくれる美琴さん。
しかし、上条さん的にははっきり言って不気味です。
可愛い、ムチャクチャ可愛いんですけど、なんていうか普段の御坂美琴をよく知る上条さん的には、いつもの美琴とキャラが違いすぎて正直引きます。
とはいえ、彼女の機嫌を損ねるわけにはいかないので、上条さんは彼女に従います。
「あー、はいはい、わかりました……み、美琴…」
「はい、よくできまちた~♪ じゃあ、ごほうびの……」
といって、上条の腕を引っ張って彼の顔を美琴に引き寄せようとする。
「キ、キスはもういいです!」
キスを阻止しようと上条も何とか踏ん張る。
「むぅー……そんにゃに、わたしとキスしゅるのいやにゃの……?」
上条の断固たる態度に美琴は悲しそうな顔をして、上目遣いに上条に熱視線を向ける。
「あ、いや…その……なんていうか……」
そんな顔をされると、上条さんは大変困ってしまいます。
その一瞬のスキをついて……、
「ちゅきあり~♪」

チュッ~♪

「!?」
また、唇を奪われてしまいました……。
「(……ま、またやられた……)」
これで一体何度同じ手で同じ目にあったことだろうかと、上条は全く学習していなかった。
「えへへ~♪」
げんなりしている上条さんの気持ちを知ってか知らずか、美琴さんは心底嬉しそうです。
「と~う~ま~♪」
「……なんですか?」
「だいちゅき~♪」

チュッ~♪

今度は頬にキス。
上条さんは半ば投げやり気味に、
「……ああ、ありがとう……」
とだけ答えた。
上条の返事に満足したのか、美琴は上条の右腕をギュッと自分の胸に押し付けるように身を寄せる。
なんかもうどう表現したらいいのかわからないくらい幸せそうな顔をしていた。
そんな美琴と対照的に、上条はとにかくこの状況から早く解放される事を願っていた。
「(早く……早く正気に戻ってくれー! なんで、なんでこんなことになっちまったんだー!?)」



今を去る事三〇分前……。

「てぇりゃぁー!」

ガスゥン!!!

ふざけた叫び声とともに、御坂美琴は自動販売機に蹴りを入れていた。
普段からよく自動販売機に蹴りを入れてはジュースを拝借している。
いや、もうある意味日課と化していると言ってもいいだろう。
はっきり言って、お嬢様らしからぬ行為である以前に、ヘタをすれば犯罪である。(いや、もう既に犯罪か?)
そんなことも気にする事無く、美琴は自販機から出て来た戦利品を取り出すと、ブツを確認する。
珍しい事に、今日は三本もジュースが出てきていた。
さすがに三本も飲めないがラッキーである。
しかし、三本もジュースが出てきたといっても素直に喜べない。
学園都市の自動販売機には実験的な試作品が大量に含まれており、その試作品にもピンからキリまであるため、いいモノに当たればラッキーだが、悪いモノは本当に最悪なのである。
で、美琴が手に入れた戦利品は……、

『未成年のためのノンアルコールビール』

というブツだった。
しかも三本とも同じ、『未成年のためのノンアルコールビール』で、それぞれ『スッキリレモン味』『ピリッとスパイシー南国風味』『キリリと辛口大人の味』という怪しさ満点の代物だった。
「……何これ?」
はっきり言って、「全部はずれじゃねぇ?」と思ったのは言うまでもない……。
とはいえ、折角手に入れた戦利品、全く手をつけずに再び自動販売機に蹴りを入れて他の商品を手に入れるのも気が引ける。
喉も渇いていたし、これで我慢する事にした。
さて、そうなるとどれを飲むか選ばなければならないが……。
「まあ、これが一番まともそうよね……」
選んだのは、『スッキリレモン味』。
三本の中で一番安全そうだ。
とりあえず、『スッキリレモン味』と味も判明しているので、それほど危険性を感じない。
残りの二つは味の想像が全く付かない恐怖感があった。
とはいえ、作っているところは一緒のところ。
多少の不安を抱えながらも、美琴は栓を開けるとおずおずと缶に口をつける。

「んん!?」
ひと口、口に含んだ感想は……。
「……意外にいけるわねぇ……」
予想に反して好感触だった。
とくに変な感じはなく、スッキリさわやかなレモン味だ。
これなら問題ないと、喉も渇いていたのでグビグビと飲んだ。
飲んでしまった……。


これが、全ての始まりだった……。

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