御坂美琴は走りながら、目の前が真っ暗になった。
そんな表現は小説や漫画、架空の物語の中にだけ使われると思っていた。つい先程までは。
美琴は静かに溜息を吐いた。
(あぁ、何故こんなことになったのだろう。)
そんな後悔を抱えながら、美琴は青く雄大な空を見上げた。
そんな表現は小説や漫画、架空の物語の中にだけ使われると思っていた。つい先程までは。
美琴は静かに溜息を吐いた。
(あぁ、何故こんなことになったのだろう。)
そんな後悔を抱えながら、美琴は青く雄大な空を見上げた。
それは些細なことだった。
御坂美琴は上条当麻の通うとある高校の校門前に来ていた。
昨夜、当麻とのメールで休日であるにも関わらず補習があるとの言葉に、最初はデートに誘おうと画策していた美琴の計画はあっさりと破綻。
当麻の申し訳なさそうな声に文句など言えるはずもなく、不承不承といった感じで納得し、ケータイを閉じた。
が、唐突に浮かんだ考え。
それは、
『補習が終ってからデートする』
思わず浮かんだ妙案に、美琴は笑みを浮かべ実行することに決めた。
当麻にそのことを伝えなかったのは唯偏に当麻の驚いた表情が見たかっただけ。
付け加えるならば、喩えごく僅かな時間でさえ一緒にいたいという恋人なら同然ともいえる欲求だった。
御坂美琴は上条当麻の通うとある高校の校門前に来ていた。
昨夜、当麻とのメールで休日であるにも関わらず補習があるとの言葉に、最初はデートに誘おうと画策していた美琴の計画はあっさりと破綻。
当麻の申し訳なさそうな声に文句など言えるはずもなく、不承不承といった感じで納得し、ケータイを閉じた。
が、唐突に浮かんだ考え。
それは、
『補習が終ってからデートする』
思わず浮かんだ妙案に、美琴は笑みを浮かべ実行することに決めた。
当麻にそのことを伝えなかったのは唯偏に当麻の驚いた表情が見たかっただけ。
付け加えるならば、喩えごく僅かな時間でさえ一緒にいたいという恋人なら同然ともいえる欲求だった。
そして、美琴は計画通りに当麻の通う高校の校門前で待った。
時々ポツリポツリと通り過ぎる生徒の奇異の瞳に晒されながら、それでも美琴は当麻を待ち続けた。
———…そして。
「あれ? 美琴……?」
当麻はやって来た。
酷く小柄な、それこそ小学生のように幼くみえる少女と一緒に。
チクリ、と痛みがはしる。
恐らくその小学生のような少女が、偶に当麻が話す『小萌先生』だと理解したのに、
それでも、美琴は湧き上がる苛立ちを抑えられなかった。
不思議そうに見詰める当麻を睨むように一瞥し、美琴はその場から走り出し、否、逃げ出してしまった。
時々ポツリポツリと通り過ぎる生徒の奇異の瞳に晒されながら、それでも美琴は当麻を待ち続けた。
———…そして。
「あれ? 美琴……?」
当麻はやって来た。
酷く小柄な、それこそ小学生のように幼くみえる少女と一緒に。
チクリ、と痛みがはしる。
恐らくその小学生のような少女が、偶に当麻が話す『小萌先生』だと理解したのに、
それでも、美琴は湧き上がる苛立ちを抑えられなかった。
不思議そうに見詰める当麻を睨むように一瞥し、美琴はその場から走り出し、否、逃げ出してしまった。
「おい!ま、待て、待てって。———美琴っ」
一向に止まる気配がなく走り続ける美琴の腕を掴み、当麻は無理矢理に美琴を制止させた。
「——ッ、は、放してっ」
当麻には振り向かずに前を向いたまま、美琴は手を乱暴に振り、なんとか当麻の掴まれた手から逃げようとした。
「校門に美琴が居ると思ったらイキナリ走り出すし、なぁ、一体どーしたんだよ?」
「ぅ、うるさいっ」
「体調でも悪いのか。
それとも、また俺がなんかしちまったのか?」
酷く困惑した声色に美琴は当麻へと振り返った。
———最悪だ……。
美琴の瞳に映ったのは、肩を落とし酷く落ち込んだ様子の当麻の姿だった。
当麻にはいつも笑っていて欲しいのに。
悲しませたくないのに。
それなのに、今現在、当麻は悲しそうに、落ち込んだ様子で、申し訳なさそうに俯いていた。
……美琴の突発的な行動によって。
「……ごめん。俺、自分が気付かない内にまた美琴になんか———」
「違うっ!」
気が付けば、美琴自身でも驚くような大声で叫んでいた。
「ち、違うもん……。
わ、私が悪いの……」
せき止めていた感情が、溢れ出て行く。
喩えるならば、黒く暗い負の激情。
……その名は、嫉妬。
「アンタが、私以外の女と一緒にいるのが、嫌……」
溢れる。
溢れ溢れて無限に湧き出す。
「会話するのが、嫌」
もう、止まらない。
「私以外の子と視線を合わせるのもイヤ」
解って欲しい。
喩え、百分の1でも伝わって欲しい。
「私だけを観ててよ」
この気持ちを。
「私だけを想っていてよ」
如何に貴方を想っているか。
「私は———」
どうか解って欲しい。
「当麻のことが好き! 大好きなのっ!」
この真摯なる恋情を。
叫んだ後、美琴の頬を一筋の雫が流れ落ちた。
その美しい雫が悠然と物語る。
美琴の想いを。感情を。
暫しの沈黙。
繋がれた掌が互いの体温を伝え、やがて当麻は戸惑いながら口を開いた。
一向に止まる気配がなく走り続ける美琴の腕を掴み、当麻は無理矢理に美琴を制止させた。
「——ッ、は、放してっ」
当麻には振り向かずに前を向いたまま、美琴は手を乱暴に振り、なんとか当麻の掴まれた手から逃げようとした。
「校門に美琴が居ると思ったらイキナリ走り出すし、なぁ、一体どーしたんだよ?」
「ぅ、うるさいっ」
「体調でも悪いのか。
それとも、また俺がなんかしちまったのか?」
酷く困惑した声色に美琴は当麻へと振り返った。
———最悪だ……。
美琴の瞳に映ったのは、肩を落とし酷く落ち込んだ様子の当麻の姿だった。
当麻にはいつも笑っていて欲しいのに。
悲しませたくないのに。
それなのに、今現在、当麻は悲しそうに、落ち込んだ様子で、申し訳なさそうに俯いていた。
……美琴の突発的な行動によって。
「……ごめん。俺、自分が気付かない内にまた美琴になんか———」
「違うっ!」
気が付けば、美琴自身でも驚くような大声で叫んでいた。
「ち、違うもん……。
わ、私が悪いの……」
せき止めていた感情が、溢れ出て行く。
喩えるならば、黒く暗い負の激情。
……その名は、嫉妬。
「アンタが、私以外の女と一緒にいるのが、嫌……」
溢れる。
溢れ溢れて無限に湧き出す。
「会話するのが、嫌」
もう、止まらない。
「私以外の子と視線を合わせるのもイヤ」
解って欲しい。
喩え、百分の1でも伝わって欲しい。
「私だけを観ててよ」
この気持ちを。
「私だけを想っていてよ」
如何に貴方を想っているか。
「私は———」
どうか解って欲しい。
「当麻のことが好き! 大好きなのっ!」
この真摯なる恋情を。
叫んだ後、美琴の頬を一筋の雫が流れ落ちた。
その美しい雫が悠然と物語る。
美琴の想いを。感情を。
暫しの沈黙。
繋がれた掌が互いの体温を伝え、やがて当麻は戸惑いながら口を開いた。
「———ごめん」
それは、何に対しての謝罪の言葉だったのだろうか。
もし、もし美琴と当麻の関係を解消する決別の謝罪だったら?
そう考えただけで美琴の両脚は恐怖によって震えだしていた。
「ゴメン。美琴には悪いけど、
今俺、すっげー嬉しい」
表情全体が嬉々として染まり、にっこりと当麻はやや乱暴に美琴を抱き締めた。
「なっ!」
「だってそうだろ?
そんだけ美琴は俺のこと想っててくれたんだから。 だから俺すっげー嬉しい」
「……ッ…」
「それに、俺が好きなのは美琴。お前ひとりだけだ」
腕の中にいる美琴の耳元に口を寄せ、甘く甘く囁く。
「……大好きだ」
その呪文のような魔法の言葉に一瞬身体を硬直させ、やがてその細くしなやかな両腕を当麻の背中へと回し、抱き締める。力強く。
「———バカ」
腕の中にいる美琴の顔は見事に真っ赤だったのは言うまでもないが。
それは、何に対しての謝罪の言葉だったのだろうか。
もし、もし美琴と当麻の関係を解消する決別の謝罪だったら?
そう考えただけで美琴の両脚は恐怖によって震えだしていた。
「ゴメン。美琴には悪いけど、
今俺、すっげー嬉しい」
表情全体が嬉々として染まり、にっこりと当麻はやや乱暴に美琴を抱き締めた。
「なっ!」
「だってそうだろ?
そんだけ美琴は俺のこと想っててくれたんだから。 だから俺すっげー嬉しい」
「……ッ…」
「それに、俺が好きなのは美琴。お前ひとりだけだ」
腕の中にいる美琴の耳元に口を寄せ、甘く甘く囁く。
「……大好きだ」
その呪文のような魔法の言葉に一瞬身体を硬直させ、やがてその細くしなやかな両腕を当麻の背中へと回し、抱き締める。力強く。
「———バカ」
腕の中にいる美琴の顔は見事に真っ赤だったのは言うまでもないが。
終