「その子を帰してもらおうか」
「……何故止めようとする? 貴様がルーンを刻む目的、それこそが禁書目録を守り助け救うためだけだろうに」
哀れなアウレオルスにステイルは目を向けた。
アウレオルスの目的はもう達せられている。きっと最も望まない方法で最も望まない風にしてインデックスは救われてしまっている。
「……何故止めようとする? 貴様がルーンを刻む目的、それこそが禁書目録を守り助け救うためだけだろうに」
哀れなアウレオルスにステイルは目を向けた。
アウレオルスの目的はもう達せられている。きっと最も望まない方法で最も望まない風にしてインデックスは救われてしまっている。
「…………なぁ、アウレオルスだっけか。お前は」
「しばらく君は黙ってろ。こいつは」
止めようとしたステイルを無視して当麻は告げた。
少女の為に全てを捨てた、錬金術師に。
止めようとしたステイルを無視して当麻は告げた。
少女の為に全てを捨てた、錬金術師に。
「もう、それは無理なんだ。インデックスは、もう救われてんだよ」
残酷すぎる真実。
「……なんだ、と? それは一体」
アウレオルスの動きが止まる。当麻はそれを、悲しみと罪悪感を感じながら見つめた。
ステイルは舌打ちすると、当麻の言葉の補足説明をした。
「……ああ、そうだ。残念ながら三年も離れてた君には分からないだろうがこいつは今代のパートナーで、あの子を救ったんだよ。だからあの子はもう永遠にこっちを振り向かない」
「馬鹿な……、ありえん! いかなる方法にて禁書目録を救う方法がある!? 人の身で、それも魔術師でもなければ錬金術師でもない人間にいったい何ができると言うのだ!」
当麻はただ首を振った。ステイルは口を開いて、ふとインデックスに目をやる。
「……その子は、今君の望んだとおり、パートナーといてとても幸せそうだよ」
アウレオルスが愕然として、それから狂ったように笑い始めた。
当麻は何も言えなかった。ただ俯いて、そちらの方向がどうしても見れなかった。
だって、当麻は何も覚えていないのに、どうしてインデックスの側に在りつづけることができるのだ。
アウレオルスは三年間ずっとインデックスの為に————。
「……なんだ、と? それは一体」
アウレオルスの動きが止まる。当麻はそれを、悲しみと罪悪感を感じながら見つめた。
ステイルは舌打ちすると、当麻の言葉の補足説明をした。
「……ああ、そうだ。残念ながら三年も離れてた君には分からないだろうがこいつは今代のパートナーで、あの子を救ったんだよ。だからあの子はもう永遠にこっちを振り向かない」
「馬鹿な……、ありえん! いかなる方法にて禁書目録を救う方法がある!? 人の身で、それも魔術師でもなければ錬金術師でもない人間にいったい何ができると言うのだ!」
当麻はただ首を振った。ステイルは口を開いて、ふとインデックスに目をやる。
「……その子は、今君の望んだとおり、パートナーといてとても幸せそうだよ」
アウレオルスが愕然として、それから狂ったように笑い始めた。
当麻は何も言えなかった。ただ俯いて、そちらの方向がどうしても見れなかった。
だって、当麻は何も覚えていないのに、どうしてインデックスの側に在りつづけることができるのだ。
アウレオルスは三年間ずっとインデックスの為に————。
「とうま?」
「……イン、デックス」
どうしていいか分からなかった。不安そうにこちらを見つめてくるインデックスに、笑いかける事も、何か安心させられる言葉をかけてやる事も全くできなかった。
ただ首を振って、見つめ返して。それくらいしかできなかった。
アウレオルスが凍りつく。感情を失った目が、インデックスへと向けられる。
ただ首を振って、見つめ返して。それくらいしかできなかった。
アウレオルスが凍りつく。感情を失った目が、インデックスへと向けられる。
そしてやがて、それは強い炎をともして、アウレオルスは腕をインデックスに向けて振り上げた。
ステイルの口から煙草が落ちる。ジジジ、と小さく音がした。
当麻は必死でインデックスの元へと駆け寄ろうとした。インデックスはこちらを真っ直ぐに見つめて、不安そうに首を傾げて、でも他の方向を見もしない。
それがアウレオルスの心を炙る。振り上げられた手に力がこもり、当麻を見て笑った。
けれどその手は、振り下ろされることはなく。
少女の為に全てを捨てた男は、少女にもうかえりみられることがなくても傷つけることなどできなかった。
動けなかった。当麻に何ができる。アウレオルスはずっと、インデックスのことだけを思ってきたのに、上条当麻に何ができる。
当麻は。インデックスを救ってはいないのに。
ステイルの口から煙草が落ちる。ジジジ、と小さく音がした。
当麻は必死でインデックスの元へと駆け寄ろうとした。インデックスはこちらを真っ直ぐに見つめて、不安そうに首を傾げて、でも他の方向を見もしない。
それがアウレオルスの心を炙る。振り上げられた手に力がこもり、当麻を見て笑った。
けれどその手は、振り下ろされることはなく。
少女の為に全てを捨てた男は、少女にもうかえりみられることがなくても傷つけることなどできなかった。
動けなかった。当麻に何ができる。アウレオルスはずっと、インデックスのことだけを思ってきたのに、上条当麻に何ができる。
当麻は。インデックスを救ってはいないのに。
「倒れ伏せ、侵入者共!」
怒りが、当麻とステイルの二人に向けられた。冷たい床の感触が伝わり、叩きつけられた体に痛みが走る。
右手をゆっくりと体に引き寄せる。その遅さにイライラしつつも、それでも他に方法はない。
けれど、これを解いて何をしようというのだろう、と頭の片隅で考えていた。
怒りが、当麻とステイルの二人に向けられた。冷たい床の感触が伝わり、叩きつけられた体に痛みが走る。
右手をゆっくりと体に引き寄せる。その遅さにイライラしつつも、それでも他に方法はない。
けれど、これを解いて何をしようというのだろう、と頭の片隅で考えていた。
インデックスが立ち上がり、こちらに来ようとするのを見て叫んだ。
「動くなよ、インデックス!」
「動くなよ、インデックス!」
それと同時に、目の前に立ちふさがる影があった。
「待って」
姫神が、アウレオルスに向かい合う。
当麻がその背に声をかけようとして、そして何も言えなかった。
その背中から、姫神が本気で心配してるのが分かったから、もう姫神秋沙にも吸血殺しにもアウレオルスは興味がないという残酷な真実、言えなかった。
「待って」
姫神が、アウレオルスに向かい合う。
当麻がその背に声をかけようとして、そして何も言えなかった。
その背中から、姫神が本気で心配してるのが分かったから、もう姫神秋沙にも吸血殺しにもアウレオルスは興味がないという残酷な真実、言えなかった。
そして、それこそが、間違いだったのだ。
アウレオルスがその言葉を告げるのとどっちが早かったか遅かったのか。
「死ね」
体の戒めが外れた当麻は、姫神に駆け寄った。
倒れる寸前にその体を抱きとめ、息があるのを確認する。もう、壊れた錬金術師などどうでもよかった。
「……ふざけんなよ」
錬金術師が何かを喋ってるが、聞こえない。
倒れる寸前にその体を抱きとめ、息があるのを確認する。もう、壊れた錬金術師などどうでもよかった。
「……ふざけんなよ」
錬金術師が何かを喋ってるが、聞こえない。
どうして、姫神を巻き込んだのだ。当麻は罰されるべきだったのかもしれないし、謝らなければならなかったかもしれない。
でも、何故、姫神にその思いをぶつける。
許せなかった。それだけは。だって、姫神は何もしていない。人を助けるために、ただあの錬金術師に協力しただけだ。
でも、何故、姫神にその思いをぶつける。
許せなかった。それだけは。だって、姫神は何もしていない。人を助けるために、ただあの錬金術師に協力しただけだ。
「……ふざけんな、こんなお前の幻想は俺がぶち殺す!」
ふと、消えてしまった上条当麻もこんな風だったのかもしれないな、と思った。
誰かの為とかかっこいいこと言えないけど。それでもゆずれないモノの為に、上条当麻は戦ったのかも知れなかった。
ふと、消えてしまった上条当麻もこんな風だったのかもしれないな、と思った。
誰かの為とかかっこいいこと言えないけど。それでもゆずれないモノの為に、上条当麻は戦ったのかも知れなかった。