とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 3-37

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匿名ユーザー

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とある忘却の再認識 Prologue(予告)

 退院当日、彼はインデックス、というおよそ人につけられるようなモノとは思えない名前を持つ少女が『上条当麻』の住居に居候していることを知った。ここは学園都市であるからして『上条当麻』は高確率で男子寮に居住していたはずなのだが。
『上条当麻』は、どうしてそんな状況に陥ったのだろうか。
そんな彼の疑問が顔に出ていたのだろうか。横にいるインデックスが、心配そうな顔でこちらを覗き込む。
 「とうま?」
その口から出てきた言葉に、彼は再認識する。
 ――自分の名前は、『上条当麻』、なのだと。
次の瞬間、螺子を巻くイメージで、彼――上条当麻は『上条当麻』になった。

 上条当麻は記憶喪失である。人物、学園都市内の地理などの情報を含む自らの記憶の一切をとある事情により忘却した。
知らないコトばかり。知らないモノばかり。
ただ、インデックスが泣くのは哀しい、と何故か思えたから。
 上条当麻は形骸となった自分に中身を注ぎ、『上条当麻』になりきることにした。
結果、インデックスは未だに笑顔を振りまいている。
そのこと自体は歓迎すべきことだ。上条当麻は自身の偽りから生まれたそれを何の迷いもなく許容する。
 (――だけど)
上条当麻は時折思う。
目覚めた頃から、その疑問は常について回った。
 即ち――自分は本当に上条当麻なのだろうか、と。

 記憶がない。
最初は、生活に不便が出るだけだ、何とかやっていける、などと上条は思っていた。
 違った。
 ガランドウだった。何もかも、知識として知っているだけ。だから何もかもがあやふやで、上条には自分というモノが、酷く薄っぺらく感じられた。
そんな過酷な状況の中、感情の揺れ動きを、上条は確実に制御しなければならなかった。
 『上条当麻』と大きな齟齬があってはならないから。

 上条は朝早く起きて郵便物の束を取りに行く。
それらは全て、転入の案内書。
 これほど学園があれば、無能力者でも受け入れてくれるところがあるのではなかろうか。
夏休みが終われば学校が始まってしまう。そうなれば流石に月詠先生にも誤魔化しきれなくなってしまうだろう。
 ――だから、その前に人間関係をリセットする。

 今日も上条は螺子を巻く。『上条当麻』に成るために。
それは間違った行動ではないはずだ。
過去の自分を追っているだけのこと。
上条もまた『上条当麻』なのだから。そうであるはずなのだから。
偶に、上条はどうしようもなく泣きたくなるときがある。そんなとき、上条は誰もいない所へ行くのだ。
 『上条当麻』の知り合いが、誰もいない所へ。

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