初出
【 とある乙女の恋愛革命 】
ミサカ一三五一〇号は沸き起こる感情に思考が追いつかなかった。
「ミサカはどうしてしまったのでしょう、とミサカは新調された冬服を試着しつつも考察します」
学園都市のとある病院。
目の前にはさきほど支給された冬服を着た自分の姿が映っている。
肩口まで伸びている髪は鮮やかな茶色で、窓から入ってくる穏やかな秋の空気にふんわりとたなびいている。常盤台中学の制服はな
んだか自分には少し不自然に思えてしまう。
お姉様(オリジナル)と同じ容姿であるというのに、そこに明らかな差異を感じてしまうのは……やはり自分の感情のせいだろうか、
とミサカ一三五一〇号は鏡に映る自分の顔を覗き込んだ。
最近はお姉様(オリジナル)である御坂美琴のことを考えると自分の体温、心拍、挙動が不安定になることは自覚している。
それでもミサカ一三五一〇号は美琴のことを考えてしまう。どうしようもなかった。
(もはやミサカにはお姉様(オリジナル)という無粋な呼び方などできないのです、とミサカは自分の感情を抑制することに耐えられ
ずついに行動してしまいます)
小さく、何度も深呼吸を繰り返す。
そしてミサカ一三五一〇号は小さく呟いた。
「——美琴、お姉様」
自分で言った言葉なのにその響きがひどく甘美なものだったので、ミサカ一三五一〇号はすぐに自分のベットに飛び乗って奇声を発
しながらゴロゴロと悶絶するのであった。
「ミサカはどうしてしまったのでしょう、とミサカは新調された冬服を試着しつつも考察します」
学園都市のとある病院。
目の前にはさきほど支給された冬服を着た自分の姿が映っている。
肩口まで伸びている髪は鮮やかな茶色で、窓から入ってくる穏やかな秋の空気にふんわりとたなびいている。常盤台中学の制服はな
んだか自分には少し不自然に思えてしまう。
お姉様(オリジナル)と同じ容姿であるというのに、そこに明らかな差異を感じてしまうのは……やはり自分の感情のせいだろうか、
とミサカ一三五一〇号は鏡に映る自分の顔を覗き込んだ。
最近はお姉様(オリジナル)である御坂美琴のことを考えると自分の体温、心拍、挙動が不安定になることは自覚している。
それでもミサカ一三五一〇号は美琴のことを考えてしまう。どうしようもなかった。
(もはやミサカにはお姉様(オリジナル)という無粋な呼び方などできないのです、とミサカは自分の感情を抑制することに耐えられ
ずついに行動してしまいます)
小さく、何度も深呼吸を繰り返す。
そしてミサカ一三五一〇号は小さく呟いた。
「——美琴、お姉様」
自分で言った言葉なのにその響きがひどく甘美なものだったので、ミサカ一三五一〇号はすぐに自分のベットに飛び乗って奇声を発
しながらゴロゴロと悶絶するのであった。
ミサカ一三五一〇号はネットワーク内であの人の話題を聞いていた。
『あの人はもう退院したのでしょうか、とミサカ一四四七三号は同じ病院にいるミサカたちに回答を求めます』
『九月三〇日現在ではもう退院して今日は登校しているでしょうし、ここの医者の技術は確かなのであの人はもう心配ありません、と
ミサカ一〇〇三二号は心底丁寧に教えてあげます』
『……それは自分たちで直接確認したのですか、とミサカ一〇七八三号は質問を掘り下げます』
『い、いえ、ミサカたちが確認したのではなくあの医者に事実を聞いただけです、とミサカ一九〇九〇号は着衣の乱れを直しながら返
事をします』
どうして自分は他のミサカのようにならないのだろう、とつい思ってしまう。
自分にとってもあの人はミサカたちの価値を命をかけて教えてくれたとても大事な人物である。それでもミサカ一三五一〇号は他の
ミサカのようにあの人に感情を向けることができなかった。
(クローンでも個体差はある、とあの医者は言っていましたとミサカは記憶を引っ張り出します)
だとしたらこの感情も個体差になるのだろうか。
どうにも相談しにくいこの感情をどうしたらいいのか、と悩みミサカ一三五一〇号は大きくため息をついた。
『ならば病院にいるミサカたちはあの人を看病するせっかくの機会(チャンス)をみすみす逃したのですね、とミサカ一〇七二三号は
間抜けな姉妹(シスターズ)を嘲います』
『そのような作戦はまったく考えていませんでした、とミサカ一三五七七号は自らの失敗に歯軋りしているようすを演じます』
『こうなったら今からでも……どうして嘘がばれそうな犯罪者のような顔をしているのですか、とミサカ一〇〇三二号はミサカ一九〇
九〇号ににじり寄って詰問します』
『もしかしたらまたしても抜け駆けをしていたのでは、とミサカ一〇〇三九号はさきほどの汚い真似(ダイエット)を思い出し疑いま
す』
『こ、今度はなにもしていません、とミサカ一九〇九〇号は生命の危機を感じつつ姉妹(シスターズ)の優しさを信じてみます。それ
に抜け駆けと言うなら何度もあの人と直接会っているミサカ一〇〇三二号の方ではないですか、とミサカ一九〇九〇号は羨ましさをひ
た隠しながら形勢逆転を狙います』
抜け駆け? 直接……会う?
ネットワークからは相変わらず姉妹(シスターズ)の騒ぎ声が聞こえてくるがもはやミサカ一三五一〇号には関係なかった。
不意に思いついた不安についてネットワーク上からいくつもの情報を集めて検討する。
(……やはり、美琴お姉様はあの人に少なからず好意が……あの人自身は特になにも思ってはいないようですけど、どの観点から見て
も体質的にあの人は……)
ミサカ一三五一〇号の様子に気づいたのか、ネットワーク上ではさっきまでの喧騒がおとなしくなっていた。
『ところでミサカ一三五一〇号はお姉様(オリジナル)やあの人、更にはその友人たちの情報を収集してなにをしているのですか、と
ミサカ一五〇〇一号は疑問に思い問いかけます』
その声にもなに一つ反応しない。今、ミサカ一三五一〇号に大事なことは美琴のことだけである。
そしてはじき出された結論は——、
「美琴お姉様が危ないっ!!」
自分のベットから飛び降り、さも遅刻しそうな学生のごとく着替えを始める。
『美琴お姉様とはお姉様(オリジナル)のことですか、とミサカ一〇七二三号は慣れない呼び方に確認をとります』
『危ないとはどうゆうことか説明してください、とミサカ一〇〇三二号はミサカ一三五一〇号の慌てっぷりに驚きつつ冷静な判断を求
めます』
姉妹(シスターズ)が色々と質問してくるが今はそれどころではなかった。すぐにでも美琴のところへ向かわなければいけない。
『ミサカが使用した情報と、その結論はネットワーク上に残しておくので各自で参照してください、とミサカ一三五一〇号は提案し病
院から外出する準備を進めます』
すべての仕度を終えるとミサカ一三五一〇号は戦地へおもむくような表情をして病室をでた。
『あの人はもう退院したのでしょうか、とミサカ一四四七三号は同じ病院にいるミサカたちに回答を求めます』
『九月三〇日現在ではもう退院して今日は登校しているでしょうし、ここの医者の技術は確かなのであの人はもう心配ありません、と
ミサカ一〇〇三二号は心底丁寧に教えてあげます』
『……それは自分たちで直接確認したのですか、とミサカ一〇七八三号は質問を掘り下げます』
『い、いえ、ミサカたちが確認したのではなくあの医者に事実を聞いただけです、とミサカ一九〇九〇号は着衣の乱れを直しながら返
事をします』
どうして自分は他のミサカのようにならないのだろう、とつい思ってしまう。
自分にとってもあの人はミサカたちの価値を命をかけて教えてくれたとても大事な人物である。それでもミサカ一三五一〇号は他の
ミサカのようにあの人に感情を向けることができなかった。
(クローンでも個体差はある、とあの医者は言っていましたとミサカは記憶を引っ張り出します)
だとしたらこの感情も個体差になるのだろうか。
どうにも相談しにくいこの感情をどうしたらいいのか、と悩みミサカ一三五一〇号は大きくため息をついた。
『ならば病院にいるミサカたちはあの人を看病するせっかくの機会(チャンス)をみすみす逃したのですね、とミサカ一〇七二三号は
間抜けな姉妹(シスターズ)を嘲います』
『そのような作戦はまったく考えていませんでした、とミサカ一三五七七号は自らの失敗に歯軋りしているようすを演じます』
『こうなったら今からでも……どうして嘘がばれそうな犯罪者のような顔をしているのですか、とミサカ一〇〇三二号はミサカ一九〇
九〇号ににじり寄って詰問します』
『もしかしたらまたしても抜け駆けをしていたのでは、とミサカ一〇〇三九号はさきほどの汚い真似(ダイエット)を思い出し疑いま
す』
『こ、今度はなにもしていません、とミサカ一九〇九〇号は生命の危機を感じつつ姉妹(シスターズ)の優しさを信じてみます。それ
に抜け駆けと言うなら何度もあの人と直接会っているミサカ一〇〇三二号の方ではないですか、とミサカ一九〇九〇号は羨ましさをひ
た隠しながら形勢逆転を狙います』
抜け駆け? 直接……会う?
ネットワークからは相変わらず姉妹(シスターズ)の騒ぎ声が聞こえてくるがもはやミサカ一三五一〇号には関係なかった。
不意に思いついた不安についてネットワーク上からいくつもの情報を集めて検討する。
(……やはり、美琴お姉様はあの人に少なからず好意が……あの人自身は特になにも思ってはいないようですけど、どの観点から見て
も体質的にあの人は……)
ミサカ一三五一〇号の様子に気づいたのか、ネットワーク上ではさっきまでの喧騒がおとなしくなっていた。
『ところでミサカ一三五一〇号はお姉様(オリジナル)やあの人、更にはその友人たちの情報を収集してなにをしているのですか、と
ミサカ一五〇〇一号は疑問に思い問いかけます』
その声にもなに一つ反応しない。今、ミサカ一三五一〇号に大事なことは美琴のことだけである。
そしてはじき出された結論は——、
「美琴お姉様が危ないっ!!」
自分のベットから飛び降り、さも遅刻しそうな学生のごとく着替えを始める。
『美琴お姉様とはお姉様(オリジナル)のことですか、とミサカ一〇七二三号は慣れない呼び方に確認をとります』
『危ないとはどうゆうことか説明してください、とミサカ一〇〇三二号はミサカ一三五一〇号の慌てっぷりに驚きつつ冷静な判断を求
めます』
姉妹(シスターズ)が色々と質問してくるが今はそれどころではなかった。すぐにでも美琴のところへ向かわなければいけない。
『ミサカが使用した情報と、その結論はネットワーク上に残しておくので各自で参照してください、とミサカ一三五一〇号は提案し病
院から外出する準備を進めます』
すべての仕度を終えるとミサカ一三五一〇号は戦地へおもむくような表情をして病室をでた。