とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 3-115

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匿名ユーザー

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「あ、あぁ……ぁ……」
 ほんのコンマ数秒前までミサカ一三五一〇号に抱きしめられていた美琴は、急にその支えを失い——目の前を銃弾が通りすぎたこと
に腰を抜かしていた。
(とっさに回避しなければ完全にミサカの鼻を消し飛ばすコースでした、とミサカは冷静さを取り戻すために思考を状況把握に徹底、
周囲を警戒します。……それにしてもせっかくのチャンスを奪ったのはどこのどいつですか、とミサカは美琴お姉様の唇が奪えなかっ
たのでかなり苛立ちながらも犯人を——)
 ミサカ一三五一〇号は視界の片隅に見知った人物がいることに気づいた。
 御坂美琴でも、上条当麻でもない。それ以上によく知る——同じ顔を持った異なる人間。
『——ミサカ一〇〇三二号、これはいったいどうゆうことですか、とミサカは——いえ、ミサカ一三五一〇号は路地裏から歩いてくる
あなたに説明を要求します』
『あなたが足蹴にするなどという粗末な扱いをしていたその人に会いに来ただけです、とミサカ一〇〇三二号は命の恩人へのひどい対
応が許せないですが大人になって静かに返答します』
 距離が離れているので口頭ではなくネットワークを使用する。これでは他のミサカにも聞こえてしまうがこの状況ではしかたない。
 ミサカ一〇〇三二号はしっかりとした足取りでミサカ一三五一〇号に歩み寄る。
 ——先刻の銃撃。
 人ごみの中で他人に危害を加えず標的を狙うほどの技術。
 それを周囲の人間、更には各種の警報機(アラーム)に悟られないだけの振舞い方。
(——ですが、一番の理由はそれが可能な銃器です、とミサカは犯人に突き出す証拠を発見した探偵のような気分に浸ってみます)
 悠然と歩を進めるミサカ一〇〇三二号に立ちはだかる。
「そこをどいてあの人のところへ行かせなさい、とミサカ一〇〇三二号は進路をふさぐあなたに毅然とした態度をとります」
「さきほどの説明に答えてもらっていません、とミサカ一三五一〇号はあなたの説明不足を指摘します。あなたがここへ来た理由では
なく、発砲した理由を聞いているのです、とミサカ一三五一〇号は補足しつつ思考がそこへ至らないミサカ一〇〇三二号の能力に疑問
を持ってみます」
 五メートルほどの距離をとって対峙する。
 基本的に長距離からの狙撃や銃器、電撃を使用した中距離戦闘などが得意な姉妹(シスターズ)だが、それでも一般人とは比較にな
らないほどの接近戦の技術を保有している。
 ミサカ一〇〇三二号を視認できた時点で油断などできるはずもない。
 けれど、ミサカ一三五一〇号はありもしない余裕を見せつける。
「——言っておきますが、あなたが撃っていないなどの誤魔化しは不必要です、とミサカ一三五一〇号は念入りに釘を刺しておきます。
あのようなことができる銃器などスキルアウトが持っていはずはないですし、学園都市に存在する正規部隊に狙われる可能性、まして
や外部犯など侵入すらできないでしょう、とミサカ一三五一〇号はあなたに言い逃れができないように追い詰めます」
 ミサカ一〇〇三二号はこれに大仰な溜息をつく。
「疑問を持つのはミサカの方です、とミサカ一〇〇三二号はあなたの発言に呆れて言い返します。ミサカたち姉妹(シスターズ)にと
ってお姉様(オリジナル)がその人と同等……とは言いませんが、それでもとても大切な人であることはあなたもわかっていると思い
ます、とミサカ一〇〇三二号はもったいぶって遠まわしに言ってみます。まぁ、ミサカが想定した事態よりも不可思議な現象が発生し
ていたため不本意でしたが、発砲とゆう原始的な方法をもってあなたの行動を阻止したのです、とミサカ一〇〇三二号はあなたにもよ
くわかるように詳細に説明してやります」
 新たに同一の容姿を持ったミサカ一〇〇三二号の登場に不穏な気配を察し、周囲にできていた人ごみが少しづつ距離をとり始めた。
 目の前の姉妹(シスターズ)は上条を、そして美琴を守るためにこの場所へ来たらしい。
 それは即ち、ミサカ一三五一〇号の想いを妨げる壁となることだ。


(あのゴミ野郎を引きずって、さっさと帰ってくれるならミサカもこの場は下がろうと思いましたが、ミサカ一〇〇三二号がそのつもり
なら仕方ありません、とミサカは自分の決意を固め最後の手段にでます)
 ゆっくりとした動作で電子ゴーグルを引き下げる。
「それは戦闘の意思ありとして対処してかまいませんね、とミサカ一〇〇三二号は自分もゴーグルをかけながら確認します」
 確認とはよく言ったものだ。
 電子ゴーグルをかけるということはミサカ一三五一〇号を受けて立つことと同じ。
 決闘などではない。そんな高尚なものではない。
 ミサカ一三五一〇号はもっと美琴と近しい存在になりたい。ミサカ一〇〇三二号はその行為に納得がいかない。
 これはただの姉妹喧嘩なのだ。
 ネットワークはすでに切断済み。もはや後戻りなどできない。
「今現在一番生まれが早いからと言って偉そうにしないでください、ただの年増ではないですか、とミサカ一三五一〇号は障害となる
あなたに言い返してやります。早速ですが——戦闘開始です、とミサカは宣言します!!」
 その声と同時にオモチャの兵隊(トイソルジャー)を抜き放ちミサカ一〇〇三二号に駆け出す。
 通行人などに被害を出さないため、また一気に勝負を決めるためにも接近戦による短期決戦を選択した。同じようにミサカ一〇〇三
二号も距離を詰めてくる——がその手には銃器などの武器はなに一つない。
(格闘ですか、とミサカは相手の出方を予想します。銃を持っているミサカにはその方が有効と判断したのでしょうが——)
 距離が零になる前に、オモチャの兵隊(トイソルジャー)を——ミサカ一〇〇三二号の目の前に投げつける。
 一瞬の目くらましになればかまわない。その隙に懐へ入り込めばいい。
「——想定済みですっ、とミサカは落ち着いて対処します!」
 ミサカ一〇〇三二号は飛んできたオモチャの兵隊(トイソルジャー)を右手で受け止め、地面へ払いのける。
 身体をかがめて、飛び込もうとした瞬間——。
 払い落とされたその向こう、突き出されたミサカ一〇〇三二号の左手に——高強度の電界の歪みがあった。
 それは馴染み深い欠陥電気(レディオノイズ)による雷撃の予兆。
 集約された『力』が紫電の雷光を生み、一振りの槍となって襲いかかる。
「くっ!!」
 電場を操作し、その矛先を地面へと向けさせる。
 それでも全てを受け流しきれず余波で右腕に痺れがあるが、腕をかばって戦える相手ではない。
 逆に不意をついてきたミサカ一〇〇三二号が一足で懐に入り込んできた。
 鳩尾を狙って右拳が繰り出される。
(調子に乗らないでください、とミサカは真っ向から迎え討ちます)
 一歩を踏み込み、完全に速度が乗る前の拳をいまだ力の入らない右腕で受ける。
 右腕をクッションにして衝撃を軽くしたので、痺れのおかげだとしても軽い痛みだけなの体勢を崩すほどではなかった。
 防御と同時に、がら空きになったミサカ一〇〇三二号の脇腹に右膝をえぐりこむ。
「ごほっ!」
 ミサカ一〇〇三二号が顔を歪め息をもらす。
 追い討ちをかけるために左拳をはなつ——が、ミサカ一〇〇三二号に届く寸前にその軌道がズレた。
「——なっ!?」
 視界が揺れ、足首に弱い衝撃を感じる。
 立っているのはコンクリートのはずなのに、力を込めて踏みしめようとした右足に確かな感触が存在しない。
(足を払われて——)
 体勢を立て直そうと思考が追いつく前に鈍い衝撃と焼けるような痛みが腹部に走る。
 崩れ落ちそうな体勢では打撃の回避も、衝撃の緩和も不可能だった。
「がはっ!!」
 今度こそミサカ一〇〇三二号の右拳が突き刺さった。
 さっきのお返しとばかりにくの字に折れ曲がったミサカ一三五一〇号に膝を叩きこもうとする。
(そう簡単にはくらいません、とミサカは右手の感覚を確かめ待ち構えます)
 両腕を交差する形で膝蹴りを受け止め、衝撃を受け流すと同時にバックステップで間合をはかる。
 狙いを定めるように左手を伸ばし、ミサカ一三五一〇号の全身から空気の爆ぜる音とともに青白い火花が撒き散らされる。
 さながら鏡ごしの存在のように、ミサカ一〇〇三二号も雷撃の槍を構えていた。
 刹那。
 空気を突き破るような轟音とともに二人の欠陥電気(レディオノイズ)が力を解き放った。

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