とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 3-139

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匿名ユーザー

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「べ、別に殿方にお逢いになりたくて来たわけじゃありませんのよ? 今日は、その——そう! 風紀委員(ジャッジメント)の仕事
ですの! まったく……こんなに忙しいわたくしが貴方のようなお暇な方に時間を使ってあげてるのですから、少しくらいは感謝して
ほしいですわ!!」
 白井はそうぼやきながら、今日も上条の前でたくさんの書類とにらめっこをしている。
 またしても初春が面倒そうな内容のものばかりを回してきたのだ。ここ最近、どうも白井への対応に嫌がらせな雰囲気をビシビシと
感じてしまう。一度これでもかというほど地獄を見せた方がいいかもしれない。
「いや、だったら俺のことはほっといていいんだけど……」
 上条は上条で小萌先生から出された山のような宿題を前に悪戦苦闘している。
「かまいませんわ。一般高校レベルの宿題の一つや二つ……それに九月のお礼がまだですのよ? わたくし、借りは返さないとすっき
りしませんの。——ほらそこ、そうではなくて……この方が簡単に解けますの」
 常盤台中学は世界有数のお嬢様学校であり、『学園都市』でも五本の指に入る名門だ。上条が通っている高校の内容などとっくの昔
に履修済みなのだ。
 土曜の昼下がり、小さな喫茶店のテラスには上条と白井の二人しかいない。
 冷たいアイスティーの甘い香りを楽しみながら、白井は上条を眺める。
(まったく……いつからわたくしは変わってしまったのかしら? お姉様に憧れ、その高みを目指しているというのに——)
 白井にとってはどうということはない問題に真剣に悩んでいる表情は、あのときに見た真剣なまなざしとはかなり違う。熱心で、で
も少し抜けているような、どちらかと言えば子供っぽい顔立ち。
 自分の胸の高鳴りが信じられなくて、実はただの病気なのでは、と思ってしまう。
 それでも……数日前に感じた、体温はとても心地よかった。
 手を握られたくらいで——そこまで初心だったのか、と自分でも思う。
(もしかして、わたくしってちょっとくらい強引でも引っ張ってくれる殿方に弱いんですの? なんとゆうか……自分で言うのもなん
ですけど、ひどく女の子っぽいですわ)
 『女の子っぽい』
 その言葉から、休みを合わせて予定を立てて、鏡の前で何時間もかけて洋服を選んで、一緒に恋愛ものの映画を見たり、たくさんの
買い物をしたり——そんなふうに過ごす自分の姿を想像してしまう。
 発想が貧困ですの、正直そう思ってしまった。
 でも——、
 そういうのも悪くない。
 だた、場合によっては美琴と上条を取り合わなければならないかもしれない。それにあのシスター姿の少女のこともある。
 ライバルは多いが、目的地はわかっているのだ。
(ふふっ、目的地を知った黒子は速いですわよ。たとえお姉様であろうと追いつかせませんの。殿方は驚くかもしれませんけど……鈍
い方が悪いんですのよ?)
 白井はおだやかな微笑を上条に送る。
「——なぁ白井、ここってどうなってるんだ? 開発ってのはどうしても苦手でさ」
 上条が視線を落としたまま疑問をぶつけた。
「まったく……殿方はしかたありませんですの。いいですか? この場合は……」
 うんざりと、でも表情は笑顔のまま白井は説明を始める。

 もう少しくらいは今のまま——そう、ただの知り合い程度の関係でもかまわない。
 美琴や、上条のいる場所に自分が登りつめるまでは。
 背を預け、隣を歩き、手を握り、鼓動を感る。
 自分が——白井黒子が目指しているのは世界中でただ一人の、上条当麻にもっとも近い場所なのだから。

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