とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 2-589

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匿名ユーザー

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御坂美琴は廊下を歩いていた。
先ほどの青髪でピアスを付けている青年が指差した方向は長い廊下が続いていた。
御坂の格好は、上条の学校とは違い名門中の名門、常盤台女子中学の物。
廊下ですれ違うたび、この学校の生徒が振り向く。
別の制服という異質な存在は充分に周りの注目を浴びている。
しかも今は昼休み中とはいえ、遊びに来る様な時間では無いのだ。
何故、常盤台中学のレベル5の御坂美琴が居るのか? それは今から1時間半前に逆戻る。


「今日の家庭科では料理の勉強を致します。」
退屈そうに頬づえを付く美琴が今居る部屋は調理室。
何人かのペアに分けて常盤台のお嬢様達は、
真っ白な調理様のテーブルの周りの椅子に腰掛けている。
前の壇上では優しそうな笑みを見せている40台半ばの女性が料理について説明していた。
「将来的に殿方に素晴らしい料理を作る事こそが女性として完璧の証」


美琴は聞いていない。
帰ったら何をしようか、とぼんやりと考えていた。
今日は朝のホームルームで3時間だけと告げられていた。
理由は昨夜、何者かがこの学校都市に侵入して来たらしい。
それだけならいつものカリキュラム(時間割)でいいのだが、そ
の侵入者が現在常盤台の近辺にいるかもしれない。
という情報があったらしく、風紀委員(ジャッジメント)と警備員(アンチスキル)はご苦労な事に朝から飛び回っていた。
危険が伴う可能性の為、学校は午前中ですぐに終わって寮でジッとしておけ、
という意味合いが込められている気がしてならない。
常盤台近辺の学校も同じ様な状況らしい。
いつもなら常に御坂を狙う後輩の白井も風紀委員(ジャッジメント)の仕事で朝から不在。
常に警戒を怠らない様にしている御坂だが、その白井も居ないため、御坂はのんびりと学園生活を送っていた。
そんな御坂だが、ふと壇上の先生の一言が耳に入る
「料理をする女性は異性に好感を抱かれる事もあります」
御坂の頭の中で1つの言葉が思い浮かんだ。
『あの殿方も家庭的な女の子の方が好みではありませんの?』
いつかの病室で白井が言った言葉だ。
そして、御坂の脳裏に浮かぶもう一人の青年も過去に似たような事を言っていた。
(や…やっぱりそうなのかな……)
一人考え込むように白い机に目を落とす。
みるみる内に顔が赤くなる。
壇上の先生が手を叩くと、周りのお嬢様方も料理を作る為に動き出した。
御坂も慌てて立ち上がると、何処かぼうっとしながらも真剣な顔で料理作りへと向かう。



そして早目に学校が終ると上条の学校近くまで来ていた。
いつかの運動会で学校名は知っているのですぐに見つかった。
校門前で待っているはずだったが、小学生位の子に理由を聞かれ、答えると妙な顔つきになった後、軽くため息。
小さな女の子に後ろを押されて中へと連れて行かれてしまった。
上条のクラスを手っ取り早く言うとサッサと女の子は消えてしまった。
何故あんな小さな女の子がこの学校に居たかは疑問が残る。
そして現在に至る。
固い四角の革鞄には学校で作った料理が入っている小さなお弁当が一つ。
何と言って渡すかはここに来るまでに何度も考え直して決めた。
通路の先には狭い階段があった、場所的に屋上に続いていると考えたほうがいいだろう。
この先にあの青年が居る。
そう思うと早鐘の様に心臓の音が聞こえる、気に入ってもらえるだろうか、付き返されたらどうしよう、そんな言葉が頭に過ぎる。
お弁当を渡すだけのはずなのに、御坂は緊張していた。
固いアスファルトの階段を上がる度に響く靴音が耳に残る。
ドアの取っ手に手を掛けると少しだけ力を入れて回す。
ガチャっという音と共にドアが開き太陽の光が御坂の顔を照らす。
いきなりの光に目を細めるが徐々になれて行くと、広い真っ白な屋上が目の前に広がっていた。
そして、居た。
その青年は錆付いた今にも壊れそうなフェンスにもたれ掛かり真っ青な頭上を見上げていた。
御坂の早鐘が更に速くなる。
お弁当を入れた革鞄を隠すように後ろに回すと、小さく深呼吸。
何気ない調子で青年に近づいていく。
青年の前まで来たが青年は気づかない、頭上を見上げている。
御坂はいつもの調子で言った、悟られない様にさり気なく。
「何してんのよ?あんた」
青年がこちらを見ると驚いた表情を見せてから不思議そうに軽く首を傾げる。
「お前こそ、こんな所で何してんだ?」
――同時刻
上条の学校から少しだけ離れた所、真っ赤な太陽が射す公園は周りには誰もおらず不気味に見える。
そんな中ベンチに腰掛ける金髪の青年、普段はアロハシャツにサングラスだが、今は上条と同じ制服を着ているのでいつものイメージはもてる為に付けたサングラスだけ。
その男の名は土御門 元春(つちみかど もとはる)。
だらしなく座っている割に顔は真剣な面持ちで携帯を耳に当てていた。
「じゃあ腐敗子はもうこっちに……?」
土御門の声が緊張で押し殺される。
『ああ、僕たちも、もうすぐそっちに着く。
こちらが着くまでは戦闘は避けてくれ、間違っても戦うな、逃げる事だけを考えろ』
電話の相手は赤髪の神父、ステイル=マグヌス。
「特徴は無いのか?誰が腐敗子かわからなくちゃこちらも対処のし甲斐が無い」
土御門はあまり腐敗子の事を知らない、それは魔術界でも殆ど見られない存在だからだ。
『………そうだな』
神父は少し合間を空けた。
『僕も実際見てないから何とも言えない、神裂からの受け売りだが』
その時、誰いないはずの公園にジャリッという砂を踏む音がした。
何気なく土御門はそちらを向いた。
そんな事を知らない電話向こうのステイルは特徴を話し始める。
『真っ白な髪、それと同じ位白い純白の眼を持つ15歳位の男』
そこに、炎天下の中、見てるだけで暑苦しくなるような厚着の青年が居た。
真っ白なスウェットを上下共に揃え上のスウェットに付いているフードをすっぽりと被っている。
顔は俯いていて見えない。
『後、長い棒の様な物を持っているらしい』
青年の右手には白い布で覆われた2メートル弱の長い棒が握られている。
青年が開いている左手でフードを取った。
白すぎると言っても言い過ぎではない髪が現れ、青年が顔を上げると白い前髪が掛かった髪が揺れ、髪と同じくらいの純白の眼が見えた。
土御門の頬を冷たい者が流れた。
それは暑さのせいで出たものでは無い。
『土御門? 』
ステイルが何も喋らない土御門に不振そうな声を漏らす。
「ステイル・・・神裂を連れて早く来い! 」
それだけ言うと土御門は携帯を切った。


青年は口を開いた。
「貴様が土御門元春、か? 」
「そうだったら?」
土御門が慎重に立ち上がると握りこぶしを固めた。
「目的は何だ、禁書目録の強奪か? 」
土御門は男を睨み付けながら後ろに一歩下がる。
突然の事に土御門の頭が摸索する。
今はどう戦うか、どう逃げるか、考える為の時間稼ぎが必要と判断した。
「……禁書はついでだ、」
青年の低い声はある種の殺気を帯びていた。
(……ついでだと?)
土御門が青年の棒の範囲外にまた一歩下がる。
「まずは貴様達の排除からだ」
青年が土御門とは逆に足を一歩前に出す。
「貴様達……だと?」
男が上下にゆらゆらと揺らす長い棒の警戒心は怠らない。
揺れるたびに棒に被せている布がはためく。
「禁書の付き人のガキの所にも別の奴が行っている」
(――――かみやんっ! )
土御門の摸索が一瞬だけ止まる。
しかし、すぐに頭は動き出す。
(かみやんなら大丈夫だ、しかしコイツは何故こんな事を教える? こいつが俺に教える事にメリットがあるのか?)
質問を返したのは土御門だったが、答えるとは思わなかった。
以外にもすらすらと男は答えた。
(動揺を誘っているのか? 嘘を言ってこっちの判断を鈍らせるつもりか? )


男が片手で持っていた長い棒をゆっくりと肩に持っていく。
トントンと肩の上で、棒をはねらせているのはクセだろうか。
唯、別の状態に切り替えたというのだけは解った。
「ガキを苛める趣味は無いんだが、悪いがそろそろ……」
男はそこまで言うと大きくため息を付いた。
「排除する」
躊躇無く言った言葉は、何の感情も込められていない。
そこから土御門にはこの青年がプロで有る事が解った。
無表情な顔は何を考えているのかは判らない、
ただ吸い込まれそうになる純白の目は、ひたすら土御門を見据えていた。

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