とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 2-741

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匿名ユーザー

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本スレで出てた話題を拾ってきたので【高圧的なインデックス】ってのに刺激されて嘘予告って言うか嘘っぽい場面をでっち上げてみる。

【五月五日は子供の日企画 小さい人達を活躍させてみよう―インデックス編】
                    ◇     ◆     ◇

 漆黒の闇を淡く照らす満月の光の中、対峙する純白と漆黒の少女。
 二つの青い瞳、二つの白銀の髪。二つの同じ顔。だが彼女達を象徴する色は互いに真逆。
 片や魔術勢力の一角を担うイギリス清教の最終兵器『十万三千冊』のインデックス。
 雪のような純白の修道服に身を包み、暗がりでもやたらと目立つ。
 方や科学的にクローニングされたインデックスのコピー。名前は無く、強いて言うなら黒インデックス。
 全身黒尽くめ、高圧的な口調、そしてオリジナルより高い身体能力。
 更には学習装置によって拳銃などの扱いも可能と至れり尽くせり。
 目的はインデックスの中に眠る十万三千冊の魔道書の知識だ。
 学園都市の郊外に位置するコンテナ倉庫ではあちこちで火花が散り、無慈悲な弾丸が飛び交う。
「アハハハハハ、お姉様(オリジナル)どうしたの?動きが鈍ってるわよぉ。無様ね、ざまぁないわ」
 高いソプラノが冷えた大気を震わせる。
 戦いの主導権は始まってからこっち、一度も黒い少女の元を離れていない。
 一方的に銃撃し、一方的に追い詰めて、一方的に命を、記憶を、大切な物を奪う戦い。
 ゴシックロリータ風の衣装に身を包んだ少女の手には不釣合いな程大きな自動拳銃が握られていた。
 月明かりを妖しく跳ね返し、鈍く光る黒い銃身からマズルフラッシュの閃光と共に無慈悲な弾丸が吐き出される。
 螺旋回転で空気を掻き分けて進む弾丸が風斬り音を立てて飛んで行き、重たい金属音を響かせて弾痕を穿つ。
 着弾音に遅れて数瞬、カツンと軽い金属音。鈍色の空薬莢がコンクリートの地面を跳ね返った。
「そうやっていつまでも惨めに隠れているといいわぁ。もっともその前に蜂の巣になっちゃうと思うけどね」
 普通、拳銃を発射すると大きな反動が起こる。四十四口径もある『告死天使(アズライール)』ならなおさらだ。
 本来大男が撃っても両手両足で踏ん張っていないと反動で自分の肩が外れてしまう。
 だがそれを黒い少女はモデルガンでも扱うかの様に自由自在に操ってみせる。ひとえに対衝撃用術式のおかげだ。
「まっしろしろすけでておいで?でないとめんたまほじくるっぞっと」
 黒い少女が歌い、トリガーを引く。
 ガァン。
 硝煙がたなびき、銃声と共にコンテナの角に弾痕が増えた。 
 勿論蜂の巣にする気は無い。コンテナを狙ったのは威嚇射撃。殺してしまってはインデックスの脳を手に入れる事が出来ないからだ。
 だからこそインデックスは下手に動けないのだろう。わかっているからだ。その体を晒せば狙い撃ちにされる事が。
 だが黒い少女にも方法が無いわけでは無い。
 殺してはいけない。
 逆に言えば"死んでなければいい"のだから、呼吸をしていて心臓が動いていて脳が死滅してなければいいのだ。
 方法なんていくらでも思いつく。
 自分と同じ色の瞳を黒い銃身の下部に仕込まれた跳ね上げ式の銃剣で刳り抜いてやっても良い。
 膝を弾丸で撃ち抜いても容易く行動不能にできる。抵抗する意思を削ぐだけならあの細い指をことごとく銃底で叩き砕くのも有効だ。
 自分と同じ存在を否定する。何という矛盾。何という狂気。そして何より何という得がたい優越感だろう。
(楽しいわぁ、私なんだか楽しくて仕方が無いわぁ)
「くっ、とうまをどこにやったの!?」
 あまり当てには出来ないコンテナ越しにインデックスが吼える。
 表情にも声にも余裕の色は無い。
 黒い少女は少し不機嫌になった。
(いまはそんな事どうだっていいでしょう?自分の事より他人の心配ばかり。虫唾がはしるわ)
「トウマァ?あぁ、あのツンツンした頭の男の子の事ォ?」
 黒い少女は余裕しゃくしゃくといった様子でもったいぶった口調を返す。
「そんなのアナタが気にする事じゃないでしょぅ?どうしても知りたいって言うんだったら、私を倒して聞き出しせばいいじゃなぁい」
 若干の険を含んだ声が飛び交う。
 双方共に同じ声帯を用いて声を発しているのにも関わらず、もたらす印象はまるで違う。
 正反対。光と影。白と黒。
「お姉様ってばつまんなぁいのぉ」
「答えなさい!」
「ばぁか、そこで顔見せたら駄目でしょう」
 形の良い唇が残虐に歪む。
 黒い少女はそこでおもむろに引き金を引いた。
 フルオートマチックの機構によりマガジンに残された弾丸が次々と発射される。
 かちんかちん、と空撃ちの音が残響の残る空間に虚しく響く。
 全弾命中。でも肝心のインデックスにはただの一発も命中しない。命中させていないのだ。
 ろくに狙いもつけずに発射された弾丸は本来の役目を発揮する事無く、ただ騒音と残骸を撒き散らすだけだった。
 硝煙の煙を従えて、黒い少女は月を背に悠々と空になったマガジンを排出。スカートの中、丁度太腿の部分にベルトで固定された予備
マガジンを取り出す。そこで空のマガジンが地面に転がった。
 ずしりと重たいマガジンを大型拳銃のグリップの底に押し当て、勢い良く押し込む。
 ガコンとパーツ同士が噛み合う金属音。
 白い左手でチャンバーを引き、薬室に初弾を装填してリロード完了。
 この瞬間が銃使いにとってはもっとも無防備になる瞬間だった。にも係わらず攻撃が来ない。
「ふふふ、どうしたの白いの。今が絶好のチャンスだったのに、もしかして怖気づいたのかしら?一応武器はあるでしょう?
私の『告死天使』に比べれば随分と貧弱な武器だけど。なんだっけソレ。霊装とか言ったかしら、お姉様にはお似合いよ」
 インデックスの手に握られているのは一つの霊装。蓮の杖(ロータスワンド)
 それは一級品の霊装であり、使う者が使えば強力な武装と化すのだが魔力の無いインデックスにはこの霊装を発動させる事が出来ない。
 ただの貧弱な武器。これなら普通に金槌や包丁の方が武器としては役に立つ。
 それにこれは玩具だ。カナミンの魔法の杖。
 頼り無いにも程がある。
「インデックスの名前と知識は私が貰ってあげるわ」
「アナタにはとうまも十万三千冊も渡さない!」
「忘れてた。トウマも、ね」
 インデックスが身を隠すコンテナに轟音と共に弾痕が穿たれる。辛うじて貫通はしてない。
 だが破片がインデックスの頬を浅く切った。つぅ、と白い頬を流れる赤。
「やってごらんなさいなオリジナル、今のアナタに味方はいない。肝心の上条当麻はここにはいないし、
本来敵地であるこの場所では孤立無援。必要悪の教会(ネセサリウス)から新たに援軍も呼べない。
これでまだ私に勝って生き延びようっていうのは少々難しくない?考えがシュークリームみたいに甘いわよ。
あ……わかったわ、わかったわ、お姉様、トウマが心配なんでしょう?
お姉様から知識を貰ったらお姉様は始末するけどお姉様の代わりにトウマと幸せになって、あ・げ・る。
どう?優しいでしょう?婚約指輪は給料の三ヵ月分。石の種類はトルコ石以外なら何でもいいわ、
瞳の色と同じサファイアなんか贈られたらきっと素敵ね。そして友人を呼んで六月に式を挙げてお色直しは二回。
やがて生まれるだろう子供には姓名判断でもっとも最適な名前をつけて、やや苦しいながらも幸せな家庭を築く
わぁ、これで満足?お姉様。残念な事に感動のエンドロールには名前載らないけどね、それは許して頂戴ね」
 だってインデックスは二人も要らないもの――、これは口の動きだけ。
 黒い少女は半身になり片手で照準をつける。標的はコンテナからはみ出ている白い修道服の裾から少し中に入った辺り。
 あの位置だとコンテナを貫通した弾丸があの白い修道女のふくらはぎあたりを砕くだろう、と黒い少女は予想をつけた。
「死ななければいいんだから、手足の一本や二本は覚悟してねぇ。まぁ、どうせ後で死ぬからどうでもいいんで
しょうけどね、ともかくこれでお姉様も見納めかと思うと少しだけ寂しいわぁ」
 と少し目の下を拭う黒い少女。水分なんて一滴もついてない顔で自分の根源に別れを告げる。
「かくれんぼは終わり――インデックス。願わくば悲鳴の一つでもあげて頂戴」 
 引き金が引かれ、閃光が閃いた。続いて爆竹の音を何倍にも増幅したような音。
 連続した銃声が轟く。コンテナ倉庫の灰色の床に大量の空薬莢が散乱しチリンチリンと軽やかな鈴の音を奏でた。
 火薬と鉄錆の匂いが漂う。
 非日常の世界でしか出会えない嫌な匂い。それがやたらと近く感じられた。

 少女の口元から血の塊が吐き出された。
 靴底を濡らす液体は暗闇の世界でもはっきりと赤く、止まる事を知らず灰色の床を紅に染める。
 そして青い瞳もまた朱に染まったのだった。
 世界が紅く染まっていく。世界が黒く塗りつぶされていく。
「あ、あ、あはははは、はアーハッハハハハハハハ」
 狂ったような笑い声が夜に木霊した。

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