序章〜白い部屋の少年は〜
その白い部屋で、透明な少年は白いシスターに告げた。
「…ごめん…」
謝らないで。少年は、とうまは自分の所為で記憶を失ったのにそんなのだめだ。
シスターはボロボロの笑顔を透明な少年に向ける。
泣くのはだめだと思った。誰より辛いのは、その少年自身なのだから。
「…ごめん…」
謝らないで。少年は、とうまは自分の所為で記憶を失ったのにそんなのだめだ。
シスターはボロボロの笑顔を透明な少年に向ける。
泣くのはだめだと思った。誰より辛いのは、その少年自身なのだから。
……思い出して、欲しい。彼の為にも、誰より自分の為に。
けど、それは無理なのだ。少年が幻想殺しである限り。
回復魔術さえ、打ち消してしまう。
覚えてないが、彼が記憶を失ったのはインデックスの放った、
光の攻撃の所為である、らしい。
回復魔術さえ、打ち消してしまう。
覚えてないが、彼が記憶を失ったのはインデックスの放った、
光の攻撃の所為である、らしい。
こらえきれなかった涙がポロリと頬を伝った。
けれど、それでもインデックスはボロボロの笑顔を向けた。
「…ありがとう、とうま…。そして、ごめんね…」
そういって、病室を去ろうとした。けど、その足を少年が止めた。
けれど、それでもインデックスはボロボロの笑顔を向けた。
「…ありがとう、とうま…。そして、ごめんね…」
そういって、病室を去ろうとした。けど、その足を少年が止めた。
「まって!君、きっとおれの知り合いだったんだろ?」
振り返ることも、出ていく事も出来やしなかった。
「教えてほしいんだ、おれの事。…嫌だったら…いいから」
インデックスは振り返る。病室のベット脇の椅子に腰かける。
振り返ることも、出ていく事も出来やしなかった。
「教えてほしいんだ、おれの事。…嫌だったら…いいから」
インデックスは振り返る。病室のベット脇の椅子に腰かける。
「じゃあ…自己紹介から…私の名前はね、インデックスっていうんだよ?」
「…偽名?」
「見ての通り、協会の者です、ここ重要。あ、バチカンの方じゃなくてイギリス清教の方だね」
「え、無視?意味もわからないんだけど…」
「…偽名?」
「見ての通り、協会の者です、ここ重要。あ、バチカンの方じゃなくてイギリス清教の方だね」
「え、無視?意味もわからないんだけど…」
インデックスは前にとうまに説明した内容を繰り返す。
「うーん、禁書目録のことなんだけど。あ、魔法名ならDedicatus505だね」
「えー…。じゃあ、おれの名前は?」
「えー…。じゃあ、おれの名前は?」
…それも、言ってあげなきゃ分からないんだ。
その言葉を口にするのは辛かった。
その言葉を口にするのは辛かった。
「か…上条、当麻…。とうまっていうんだよ?」
「上条当麻…。なあ、どうやって知り合ったの?」
「上条当麻…。なあ、どうやって知り合ったの?」
なにも覚えてないことが悲しくて、色がついてきたのが少しだけ嬉しくて。
その少年に、薄く、薄く、色がついていた。
でも、とても薄い色だ。
その少年に、薄く、薄く、色がついていた。
でも、とても薄い色だ。
「私がとうまのベランダに引っかかってたんだよ?」
「おれ、何処に住んでたの?」
「学生寮の七階のベランダで、インデックスととうまは出会ったんだよ」
「おれ、何処に住んでたの?」
「学生寮の七階のベランダで、インデックスととうまは出会ったんだよ」
何も覚えてない少年。だからインデックスはとうまの為に、傍についていようと思った。
彼が自分の事を覚えてなくても、彼は「上条当麻」。インデックスの大好きだったとうま。
覚えてないからそれでバイバイというのは悲しすぎる。
彼が自分の事を覚えてなくても、彼は「上条当麻」。インデックスの大好きだったとうま。
覚えてないからそれでバイバイというのは悲しすぎる。
「おなかがへったって言ってるのにとうまはね………」
…。
…。
その様子を、冥土返し…カエル顔の医者はドアの向こうで聞いていた。
(まあ、頑張るんだね?上条当麻クン?)
(まあ、頑張るんだね?上条当麻クン?)
幕間〜隣人との出会い〜
ぴーんぽーん、と上条宅のチャイムが鳴った。
それを聞き、今までギャーギャー騒いでたインデックスと上条当麻がビシッと固まった。
それを聞き、今までギャーギャー騒いでたインデックスと上条当麻がビシッと固まった。
「カミや〜ん?ちょっとご飯余ったからいらにゃいかにゃー?」
「(どうしよう、インデックス。相手はおれの知り合いっぽいんだが)」
「(うーん。わ、私が応対しようか?)」
「(…わりい、自分で行く)」
「(と、とうまっ!?なにそのお前には任せられねえ的な顔は!?)」
「(うーん。わ、私が応対しようか?)」
「(…わりい、自分で行く)」
「(と、とうまっ!?なにそのお前には任せられねえ的な顔は!?)」
けど、どうやって言えばいい?
記憶喪失なんて。
ガチャリとドアを開ける。手が震える。
「今日はシチューなんだにゃー!…カミやん?どうしたにゃ?」
どう、告げればいい。
口を開いたのは、インデックスだった。
「誰?」
「にゃ?上条当麻の隣人、土御門元春だぜい。このシスターはっ!?カミやん!?」
「ちょっと言わなくちゃならないことがあるから中に入って。いいよね、とうま」
インデックスが普段より硬い声でいう。
「??」
「にゃ?上条当麻の隣人、土御門元春だぜい。このシスターはっ!?カミやん!?」
「ちょっと言わなくちゃならないことがあるから中に入って。いいよね、とうま」
インデックスが普段より硬い声でいう。
「??」
インデックスが金髪サングラスを引っ張って行った。
いわなきゃ、いけないこと……。
(やっぱ、おれが言うんだよな……)
いわなきゃ、いけないこと……。
(やっぱ、おれが言うんだよな……)
「言わなきゃならないことって…なんだにゃー?」
「………えっと………き…くそ…しつ…」
「聞こえないぜよ。はっきりいうんだにゃー」
「………えっと………き…くそ…しつ…」
「聞こえないぜよ。はっきりいうんだにゃー」
「…おれは、何も覚えてないんだ」
「…にゃ?」
土御門がわけがわからないといった風に眉をひそめた。
「…にゃ?」
土御門がわけがわからないといった風に眉をひそめた。
「つまり、とうまは記憶喪失なんだよ」
「…。カミやんは何も覚えてないと」
「ああ」
「おれの事も、そうなった原因も」
「そう」
「ああ」
「おれの事も、そうなった原因も」
「そう」
…………。
「とりあえず…シチュー食べるぜよー!」
インデックスと当麻が眼を白黒させる。
「ブルーなのとか土御門さんは嫌いですたい。舞夏の料理は激ウマだにゃー!」
「…誰?」
「ふっふっふっ…我が義妹だにゃー!」
「妹?お前、妹がいるのか」
「いもうとはいもうとでも義理の妹だにゃー。さて、二人は喰らうか!?」
「食らうー!」
「…誰?」
「ふっふっふっ…我が義妹だにゃー!」
「妹?お前、妹がいるのか」
「いもうとはいもうとでも義理の妹だにゃー。さて、二人は喰らうか!?」
「食らうー!」
インデックスが即答し、土御門宅に向かう。
「舞夏のやつがにゃ、『作りすぎたから隣人にでもあげるんだぞー』っていってたんだにゃ」
「へえ…」
「へえ…」
「あ、カミやん明日から一人で補習だぜい」
「うわっ、マジかよ…不幸だー」
「にゃー…、今回のは自己責任だと思うんだがにゃー…」
「だって、知らない間に起こったのと同じだもん!カミジョーさん初耳だもん!」
「うわっ、マジかよ…不幸だー」
「にゃー…、今回のは自己責任だと思うんだがにゃー…」
「だって、知らない間に起こったのと同じだもん!カミジョーさん初耳だもん!」
「あ、学校ってどこにあるんだ…」
「……明日、忘れもの取りに行くから一緒にいくかにゃー…?」
「まじでか、ありがとう土御門!」
「……明日、忘れもの取りに行くから一緒にいくかにゃー…?」
「まじでか、ありがとう土御門!」
喋ってる間、インデックスはずっと食べていた。一心不乱に。
シスターがこんなんでいいんだろうか、教会。
シスターがこんなんでいいんだろうか、教会。
さてさて、二人が帰った後。
土御門は、顔を手で覆った。
(まさか、記憶喪失だとは…)
土御門は、顔を手で覆った。
(まさか、記憶喪失だとは…)
プライベートに仕事は持ち込まない。
だから、必要な情報を調べた後、スパイとしては動かなかった。
知る必要のないことだと、調べなかった。
だから、必要な情報を調べた後、スパイとしては動かなかった。
知る必要のないことだと、調べなかった。
(オレも…参戦したかったにゃー)
そしたらもしかしたらあの少年は。覚えていたかもしれないのに。
そう考え、土御門は口を歪めた。今更、そんな事を言ったってしょうがない。
そう考え、土御門は口を歪めた。今更、そんな事を言ったってしょうがない。
(カミやん…頑張るんだにゃー……)