そして。
「アルスマグナ…んなもん本当にできたらそいつはどうすんだろうなー」
「さあね。世界の覇権でも何でも手に入るからな…。まあ、欲しいものならすべて手に入る」
黄金錬成。世界の全てが自分の物になる技。
「……おれの、記憶喪失もなおるんだろうか」
上条当麻は寂しげにわらって言った。
「さあね。世界の覇権でも何でも手に入るからな…。まあ、欲しいものならすべて手に入る」
黄金錬成。世界の全てが自分の物になる技。
「……おれの、記憶喪失もなおるんだろうか」
上条当麻は寂しげにわらって言った。
「…直したいのか?体がぶっ壊れるぞ。いや、それ以前の問題だな、君の右手がある限り不可能だ。
それにきっと『君』は消えるぞ。一日でも体験した事柄が違えば人は変わるのだから」
「…………直せるものなら直したい。体が壊れても、おれが消えても」
どうして、と目顔で尋ねた魔術師にこたえていう。
それにきっと『君』は消えるぞ。一日でも体験した事柄が違えば人は変わるのだから」
「…………直せるものなら直したい。体が壊れても、おれが消えても」
どうして、と目顔で尋ねた魔術師にこたえていう。
「おれさ、どうしてもあの子のことが思い出せない。
知識はあるのにな。時々あの子、ふっと誰かを探すように眼が彷徨うんだよ。
あの子、病院でおれを見てぼろぼろ泣いた。…泣きながら笑ったんだ。それこそぼろぼろで完璧な笑顔でさ」
知識はあるのにな。時々あの子、ふっと誰かを探すように眼が彷徨うんだよ。
あの子、病院でおれを見てぼろぼろ泣いた。…泣きながら笑ったんだ。それこそぼろぼろで完璧な笑顔でさ」
当麻はそこで一旦言葉を切った。
何かを思い出すように瞑目する。
何かを思い出すように瞑目する。
まるで、それは祈る様でもあって。
「おれが救ったって言っても、な。あの子ってさ、記憶一年周期で消してたんだろ?」
「ああ」
「一人友達ができたら一人仲間を失う、そんな生活だったんだろ?」
「ああ」
「一人友達ができたら一人仲間を失う、そんな生活だったんだろ?」
ステイルは思う。
この少年はどこまで聞いたのだろう。それともまだ覚えているのだろうか。
無言を肯定とし、かつて自らをフォックスワード、偽善使いと呼んだ少年は、話を続ける。
この少年はどこまで聞いたのだろう。それともまだ覚えているのだろうか。
無言を肯定とし、かつて自らをフォックスワード、偽善使いと呼んだ少年は、話を続ける。
「おれは、あの子といる資格があるのかな。おれが今いるこの場所はきっとたくさんの人が立ったところだろう。
ああ、お前もだっけ?それで、おれがあの子の記憶を消さないで済むようにしたって言ったけど」
ああ、お前もだっけ?それで、おれがあの子の記憶を消さないで済むようにしたって言ったけど」
「それはおれじゃない。『上条当麻』という別人だ。
今まであの子が出会った人の思いを踏みにじってるようで…。
あの子と一緒にいると楽しい。だけど、それはおれが持ってていい幸福か?」
今まであの子が出会った人の思いを踏みにじってるようで…。
あの子と一緒にいると楽しい。だけど、それはおれが持ってていい幸福か?」
当麻は、目を細めた。手に届かない眩しすぎる光でも見るように。
その様子を見て、魔術師は感じる。
少年は時々全ての色がかき消える。もしあっても透明な色にしかならない。
今は、蒼だ。蒼くて透明な色。
その様子を見て、魔術師は感じる。
少年は時々全ての色がかき消える。もしあっても透明な色にしかならない。
今は、蒼だ。蒼くて透明な色。
「怖いんだ。今立ってる道が間違ってないか。人を踏みつけてるんじゃないかって」
少年は、そこまで言うと、笑って、一雫だけ地面に涙をこぼした。
たった、一滴だけだったけれど。それはとても悲しくて。
悲しいのに透明な少年は、笑った。
涙の一雫はアスファルトに落ちて、ぽつんと雨に打たれたように黒く。
悲しいのに透明な少年は、笑った。
涙の一雫はアスファルトに落ちて、ぽつんと雨に打たれたように黒く。