とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 3-881

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匿名ユーザー

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(――――――――ということなの。信じてもらえたかな?とミサカはミ…)
ガッシャーン!とテーブルにあった一枚の皿が、触れられること無く天井に叩きつけられた。

「っるせぇなあ……」
(…でも、本当のこと。ミサカはミサカは真剣に告げてみる)

「ッ!!…だからァ、うるせぇって言ってんだよおおおおォ!!」

白髪の少年は、感情のままにガラス窓に思いきり頭をぶつけた。
鈍い衝撃音と共に頭に激痛が走る。
このアパートの窓は防弾用に作られている。一人の少年が頭突きした程度では傷一つつかない。しかし、タンパク質でできた彼の額の皮膚は衝撃に耐えられず、赤い血が滲み出してきた。
だが、そんなことは瑣末な傷など痛くも痒くもない。
先ほど、彼の心を貫いた大きな傷跡に比べれば―――

―――――二時間前に遡る。

「……おい、かくれんぼはナシにしようぜェ。俺は色々聞きたいことあンだよ」
「一方通行(アクセラレータ)」は状況に混乱していた上に、近くからは間抜けなラストオーダーの声が聞こえた。今回はどれほど手の込んだイタズラを仕掛けてくれたのか。大脳の感覚器にダイレクトに電気の疑似伝達を促し、今のビジョンと感覚を見せているのだろうと考え、こんな素敵なお遊びのお返しに、このアパートの最上階からパラシュート無しのスカイダイビングをさせてあげようと思考し――――

要するに「一方通行(アクレラレータ)」は今にもブチ切れそうだった。

しかし、待っても一向に「打ち止め(ラストオーダー)」が姿を見せる気配は無い。
「お嬢ちゃァん。隠れないで出ておいでェー。さもねぇと、辺り一面ハチの巣になるぜェ?」
聞かれただけで通報されそうなセリフを吐いたが、
返事は無い。

「…ほォ。こりゃお仕置きが必要みてェだなァ」
何の躊躇もなくM93R-βカスタムのセーフティを外し、スライドを引いた。ガチャリと銃弾を装填する金属音が鳴る。
「十数える間に出てこォい。ラストオーダー」
と言いつつ、先ほど声がしたドアの方面に銃を向けた。
(…降参する気は、無ぇみてえだな。朝っぱらからとはイイ度胸してやがる)
「じゅう、きゅう、…いっちぃ、ぜーろぉ」
十全部数えるのも面倒なので、トリガーに力を込めようとした時――――――

(朝っぱらから笑えないセルフジョークをかましてるのは貴方だよー!!!ってミサカはミサカは現在の前頭葉に配信される定期型電気信号の正常機能にリサーチをかけてみたりー!?)

大声で叫ぶラストオーダーの声が「聞こえた」。

「ァッア!?どっから叫んでんだぁ!?」
脳に響くほどの大声。声は銃口を向けている方向の逆。つまり居間のほうから聞こえた。「打ち止め(ラストオーダー)」はすぐ近くにいる。それは間違いない。しかし、辺りを見回しても誰もいない。

(ミサカはいないに決まってるじゃん!って当り前のことを言わせないでってミサカはミサカは朝から緊急時の演算アプリケーションを起動させられたことにプンプン怒ってみる!)

「うおおぉオッ!?」
「一方通行(アクレラレータ)」の体がフワリと宙に舞った。
さらには右手にあった拳銃は、ユラユラと元にあった下から二番目の戸棚へ飛んでいきながら、空中でカチャリカチャリと安全装置などがかかっていく。まるで透明人間がそこにいるが如く。

「お、おいっ!これはお前の仕業かッ?とっと下ろしやがれこのクソガキがァ!」
(俺の能力が「打ち止め(ラストオーダー)」に操作されてるだと?しかも、拳銃みてェな小さい物体にあんな細かい動作も同時に演算できンのか!?最強じゃねえか!)
大気の流れを組む大規模な高速演算も困難な部類に入るが、実は微小な「ベクトル」演算の方が難しい。
重い物質を動かす時にはその物体が動くほどの「ベクトル」を加えればいいし、人を吹き飛ばすほどの風圧を生み出すためには人間が吹き飛ばされ、かつ人間が死なない範囲の「ベクトル」量を加えればいいだけのことだ。しかし、空中で携帯電話のボタンを的確に押すような精密な演算は困難を極める。拳銃の場合なら些細な演算誤差で安全装置をかけるどころか引き金に「ベクトル」が向き、誤って発砲してしまうかもしれない。
地面から一メートル程の高さで何のなす術もなく浮上している彼だが、現在の状況を冷静に分析していた。

(…………ッ!!)

いきなり、大きな音をたてながら彼は地面に叩きつけられた。
「がっ!…あっ」
たかだか100センチ程の高さとはいえ、受け身もとれずに仰向けに倒れると痛い。
(クソガキって言った言ったぁ!!絶対言わないって約束したのにぃー!『貴方のこと、信じてたのに!』とミサカはミサカは人気ドラマの手塚かなめの名ゼリフを真似してみりぃー!?)
頭が割れそうなくらいの大声が「一方通行(アクレラレータ)」に「聞こえた」。
(何なんだァ?こいつの声は直接脳に響くみてぇに…)


ちょっと待て。直接、脳に響くだと?―――――――――


「……ラストオーダー。お前、俺のアタマに何埋め込みやがった」
腑に落ちた。姿を見せない少女の声が「聞こえた」ワケが。
しかし、疑問は募るばかりだ。

「一体何処からこのメッセージを流してンだ?…「連中」にヤられたのか?」
ドス黒い怒りが彼の心に湧きあがってくる。
だが、彼の心の闇をさらに濃く染め上げたのは他ならぬ彼女本人の言葉だった。



(何を言ってるのかなー?ミサカの肉体はとうの昔に無くなってるよー、ってミサカはミサカは呆れながら貴方に呟いてみる)


「…確かになァ。ここは俺が知ってる「時」とは丸一年違う」
(貴方の脳波には何の変化も無いんだけど、心拍数に乱れも無くこんな笑えない嘘を貴方がミサカに言うとは思えないって、ミサカはミサカは真面目に思ってみたり)

第七学区にある、ビルが立ち並ぶ大通り。現在は午後5時あたりを過ぎたころであり、多くの中高生が歩いている。その中に「一方通行(アクレラレータ)」はいた。白髪の少年は紅い瞳をギョロギョロと動かし、周囲を分析していた。彼の鋭い視線に、目があってしまった通行人が震えていたりもするが。
「『artist』?ここの『shericker』は潰れたのか。以外に気に入ってたンだがな。あの店の服のセンスはよォ」
彼と目があった「artist」の定員が営業スマイルで会釈しようとし、そのまま固まっていた。
それを察した「一方通行(アクレラレータ)」は軽く舌打ちした。
(これからどうするの?ってミサカはミサカは情報分析中はあまり動かないほうが得策だと思うけど…)



「決まってンだろ。会いに行くんだよ。――――――『ドラゴン』によ」



そう言い切ると白髪の少年は歩調を早めた。着慣れない長点上機学園の制服を身に纏って―――

午後3時17分。
白髪の少年は部屋にあるディスクやUSBチップ。スキャニングノートを徹底的に調べていた。Aクラスの『書庫(バンク)』閲覧はもちろんのこと、『グループ』が使用する極秘ソースからの情報までくまなく目を通していた。
パソコン画面から離れずに素早いタイピングをしながら少年はつぶやいた。

「ラストオーダー。俺の置かれている状況は把握できたか?」
(うーん、貴方の脳から体の隅々までスキャンをかけているんだけど何の異常もないよ、ってミサカはミサカは貴方の言動にいまだ半信半疑だったりー…)
「…俺だって今の状況が信じらんねぇンだよ」
(……そうだね。貴方が一年前までの記憶が無いとしたら、今の現状は理解できないのも無理ないってミサカはミサカは考える)
「俺の意識が一年後に跳ンだってことは有り得ねェのか?」
(そう考えるよりも「ここ一年間の記憶を喪失した」と考えたほうが納得がいくって意見にミサカはミサカは賛成の一票を投じてみたり)
「けどよォ…俺は丁度一年前の昨日のことをハッキリと覚えてんだぜぇ?ここ一年の記憶だけ抜け落ちたって言うには不審な点が多すぎる」
(それは私もひっかかる。たかだか一年前の記憶ならミサカのネットワークを通して情報を引き出すことは出来るけど、それはあくまでワタシ『達』の視点から通した情報であって、貴方の忘却された記憶を呼び起こすことはできない。って、ミサカはミサカは人の脳の働きについての謎にググーッっと首をかしげてみたりー)
「っておい!人のアタマを傾げさせンなッ!」
自分の意識とは反する体の動きに「一方通行(アクレラレータ)」は戸惑うばかりだった。
「ってアア!?パスワード間違えちまったじゃねぇかァア!!」
(ごめんなさーい!!ってミサカはミサカは少し落ち着いた貴方にちょっとしたジョークをかけようと思っただけなのにーって、アマーい言い訳を言ってみたりー?)
「ぶっ殺すぞテメェ!」

(ワタシが死んだときは貴方も死ぬよん、って可愛くミサカはミサカは残酷なことをケロッと言ってみたりっ)

「…………………糞が」
ピーッというノイズがなると画面上に『PASSWORD ERROR』と赤い文字が点滅し、既存のデータが消滅した。これは第一級機密情報のチップであり、パスワード入力を二回間違えると強制的にデータが消されるようになっている。
(!!!?それってとっても重要なチップって言ってなかったけぇ!?そんなことで破棄しちゃっていいの!?ってミサカはミサカは貴方に問いただしてみる!)
「…いいンだよ。『今』の俺には関係ねぇ」
彼の脳波を感知したのか、「打ち止め(ラストオーダー)」は黙った。

「……なぁ、ラストオーダー」
彼女は答えない。



「――――――――――――――――――――――――俺はお前を、守れなかったのか?」

(そんなことないっ!!)
「打ち止め(ラストオーダー)」は「叫んだ」。今の彼女は肉体すら無いけれど、
(貴方はよくやった。頑張った!私を助けるために多くの人を犠牲にしたけど、それでも貴方はワタシですら不可能と思った絶体絶命の状況からワタシを救ってくれたっ!)

(貴方は、貴方は、そのせいで死にかけていた。ワタシは息すらしていなかった。でもでもっ、私は貴方を死なせたくなかった!ワタシは貴方と共に生きたかった!だからだからっ、損傷した貴方の脳にワタシの脳とミサカネットワークを可能にするチップを移植したの!これはワタシの望んだ結末。だからワタシは貴方の傍にずっといられる。……だからだからぁ、貴方は自分を責めないでぇ。ミ、ミサ、ミサカはミサカはっ!)

バン!

白髪の少年は強く握りしめた拳をキーボードに叩きつけた。画面上には規則性のない文字が表示された。奥歯を強く強く噛みしめながら。
「『この』俺はよォ………一体、何やってたんだ」


(貴方は、できることをした。いや、それ以上のことをして、今のワタシたちがある。だから貴方は、誇っていいんだよ?)


「………………納得できるかよ」
白髪の少年は呟いた。
これ以上の言い合いは先ほどの繰り返しになってしまって怒り以外の何も生みださない。

守るべきものも守れなかった自分の無力さに、嘆いたのだ。



(…あの時はどうしようも無かった。ローマ正教を主とする勢力の総攻撃に加えて十人の「聖人」を相手に「絶対能力者(レベル6)」の貴方でも絶望的な戦力差があったから…)




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――は?


今、聞き逃せないことをラストオーダーが告げた。
「おい、ラストオーダー。今、何ていった?」
(え?だから「絶対能力者(レベル6)」の貴方でも絶望的な戦力差があったからって…)
「それだ!俺は、「絶対能力者(レベル6)」なのか?」

(……うん、この学園都市に二人しかいない「絶対能力者(レベル6)」の一人。学園都市第二位の能力者「神如き存在(ルシフェル)」。人類史上初、人の身でありながら努力によって到達した「神人」の領域に位置する人間。それが今の貴方だよ?)

「……基準は一体何だ?二位のメルヘン野郎も相手にならなかったが、どうゆうことで格上げになったんだよォ、俺は」
(…そこのところも記憶が無いんだね貴方は。ってミサカはミサカは貴方の脳の深刻なダメージに危機感を募らせてみる)
「まだそう決まったワケじゃ無ェだろがよぉ。ンなことより教えろ。全部だ」
(学園都市での『超能力』開発が魔術の一つだってことは説明したよね?ってミサカはミサカは情報確認をとってみる)
「あァ。アレイスターは元魔術師で、脳開発ってェのは術式?だっけか?それを脳に直接ブチ込むことによって、魔術に用いる詠唱や文字が必要無しに非科学的な現象を任意で発動できる固有魔術。それが『超能力』の正体なんだろ?別に驚きはしねェが…」
(そうゆうこと。魔術は魔力というガソリンの下に詠唱や文字によって『この世』の世界の力を利用する『凡人が使うために作られた技術』。でもその習得には膨大な知識と長期間の鍛練が必要になる。その上、その力は生まれ持った才能やその日の精神の強弱によることが大きい不安定な代物。それに比べて科学の方は誰でも扱うことができてその用途、応用も幅が広く、その力は魔術より強大。だから科学は産業革命以降、全世界に普及したんだけど、一方で科学を嫌う宗教国家やその地域では魔術の開発が進んでいた。最も、科学の方が圧倒的に強いけどね。ってミサカはミサカは慣れない口調にミサカキャラの崩壊の危機が!って心配してみたりー)

「…………………で?」

(ちょ!?それヒドッ!)
「分かった分かった―――――って、オイィッ!また体を浮かすんじゃネェ!」
(説明続けるね。って自己承諾を取ってみる。
… 学園長アレイスターは自身の魔術回路を元に、今行われている『超能力』開発を立案した。人間の肉体にある魔力の流れ方や魔力量や質、一人一人違うから学園都市の脳開発の適合者と非適合者が出てくるのは当然であって、強い能力を引き出せるほど、その人の魔術回路はアレイスターの魔術回路に似ているということ。そして、同じ術式をしても、人によってその効果が十人十色なのと同じように、同じような魔術回路で同じ術式を組み込んでも一人一人全く異なってくる。これが能力の『性質』と『強弱』の差違が発生する理由」
「……じゃあ、何だ?俺はアレイスターとよく似た人間だったってことか?」


(うん。異常なまでに似すぎていた。同じ遺伝子を持つ人間が100億人の中に一人存在するように)


白髪の少年は沈黙した。
(彼が一番得意とした魔術は風や水、はたまたは人の意識すら範疇に入る『流れ』を読み取り、それ操作し、干渉する魔術『神の真似事(マスター オブ アカシック)』。貴方の『ベクトル操作』の汎用性は彼の魔術には劣るけど、その威力はアレイスター以上のものだった。そして『神物質(ゴッドマター)』の発現。貴方はアレイスターにとって、アレイスターが『神人』を超える『神』や『魔神』となるための道筋を示すキャラクターだった)

「アァ?『神物質(ゴッドマター)』ってのは一体…」

(かつての学園都市第2位の超能力『未元物質(ダークマター)』の正式名称。あれは本当にこの世に存在しない物質で、人の『心』のみが干渉できる『神の世界(ヴァルハラ)』に存在すると言われている物質なの。時折、貴方が強烈な感情によって『神の世界(ヴァルハラ)』に干渉した際に引き出す『黒い翼』もそう。それが『神物質(ゴッドマター)』。今回の『戦争』で貴方はある程度の『神物質(ゴッドマター)』の制御方法を得た。今でもその実態は謎に包まれたままだけど…)
学園都市最高峰の頭脳開発を受けた「一方通行(アクレラレータ)」ですら会話に付いていけなくなってきた。魔術だの神だのと宗教側の存在は知っていたが情報量は圧倒的に少ない。機密情報にすら載っていなかった情報をこの「打ち止め(ラストオーダー)」が湯水のように垂れ流してくるのだ。真偽を確かめることよりも内容の咀嚼で精一杯だった。

(その物質の発現と制御方法を知ることがアレイスターの真の狙いであり、貴方の『役目』だった。そしてこの存在こそが一つ存在の証明となった)
白髪の少年はふと思いつく。一つの仮説を。
「おいオイオイ!…………まさか」



(そう―――――――すなわち、『魂』の存在の証明)

(足の先から髪の毛一本まで『超能力者(レベル5)』の御坂美琴と同じ『欠陥電気(レディオノイズ)』を二万体量産してもお姉様(オリジナル)と同等の力を持つ個体は一つも出来なかった。それは製造過程に問題があったわけでは無く、『魂』の影響が一番強い『精神力』や『心』といったものを計算に入れていなかったから。元は『低能力者(レベル1)』だったお姉様(オリジナル)が学園都市第3位、今は『超能力者(レベル5)』の第一位だけど、そこまで上り詰めることが出来たのは、心の内に秘められた向上心と『自分だけの現実(パーソナルリアリティ)』が人一倍強かっただけのこと。
現在、一〇〇三二号のミサカは『とある』感情の出現で強い自我が形成されて、『大能力者(レベル4)』クラスの能力を有してる。ミサカネットワークの新たな管理者としての責任感もあるみたいだけど、これは些細なことだと思う。

そして私たちが量産された理由は、軍事的な意味合いも大きかったけれど、それはお姉様(オリジナル)を含む私たちミサカシリーズが絶対に『絶対能力者(レベル6)』に到達できない優秀な『欠陥品』だったから。

「力」というのは自分の意思で『物事を動かす』もの。火や物質をそこに結集させるだけ自然界では存在しない物質を生み出すことが出来ても、それは所詮、物と物との『合成』であって、詰まるところ「力」というのは荷物を運ぶローラーのようなものでしかない。その点に関して言えば、それは魔術も同じ。魔力と術式をブレンドして、世界の理に準じた現象を発生させているだけ。『有』と『有』から『有』を生み出しているにすぎない。

しかし、『神物質(ゴッドマター)』は違う。『この世』では無いところから引き出される『モノ』。
『無』から『有』を生み出すような神の如きチカラ。
貴方と垣根帝督は230万の能力者を有する学園都市の中で、唯一『神の世界(ヴァルハラ)』に干渉できる能力者。だから貴方たちの能力は『格』が違うの。もし彼らが量産されていたら2万人の『絶対能力者(レベル6)』が登場する可能性が出てくる。これを科学兵器に例えるなら、意志を持つ『核』兵器を2万個作り出すことになる。そんなことになればいくらアレイスターでも制御しきれない。だからミサカたちの量産は『魂』の存在の証明と、貴方の『絶対能力者(レベル6)』へのシフトの供物という役目だけで十分だった。

もう分かるよね?『絶対能力者(レベル6)』とは『神の世界(ヴァルハラ)』に干渉でき、かつそこから引き出したモノを制御できる能力者。すなわち『神上』と呼ばれる領域に到達した人のことだよ)

「………大体は把握できた」
(ホントに―!?ミサカの知識は主に、今魔術にハマってるエジプト在住のミサカ一七七五〇号の知識とミサカ―〇〇三二号が集めた情報を分析したもので信憑性はかなり高いかもーってミサカはミサカは自分の優秀さを自慢しつつ貴方の情報処理能力の速さを疑問視してみたりー!)

「ようするに『この問題』とは何の関係も無い話だったってことだ」

(ちょっとー!?あれだけワタシに喋らせておいて、『そんなの関係ねえ!』なんて何処かの芸人の一発ギャグ的な発言で完結されるのはムカツクー!ってミサカはミサカはー!!)
「うおおおっ!?逆サマにすんじゃねぇ!アブねえだろうがァ!大体そのタリィ話を聞いてる最中もずっと俺を宙吊りにしたまんまだっただろォオ!?」
パソコンがある書斎で、空中でタロットカードのハングマンのようになっている白髪の少年は叫んでいた。
(うがー!!貴方の記億だけを1年後に跳ばしてしまうだなんて、そんな非科学的なことを出来る人が一人いるって言おうとしたのにー!もう教えてやんない!ってミサカはミサカはプリプリ怒ってみるー!)
「…ンだとォオ!!?じゃあ前置き無しに言えってんだ!ってオイッ!ベッドまで持ち上げてんじゃねェ!俺を殺す気かァ!?」

それからが凄まじかった。ベクトル操作の主導権を握られた「一方通行(アクセラレータ)」
は三〇分間も地面に着地できずに、空中で少女の思いのままに動かされていた。

ようやく、ベッドの上に戻してもらった白髪の少年は
「ヒイ、ヒィ…ハア、ハア、ハアァ…な、なかなか、やるじゃ、ねーか。ラスト、オーダーァ。ハア、ハァ…」
(まだまだ序の口だよー?ってミサカはミサカは貴方の疲労ぎみな姿にちょっぴり優越感に浸ってみたりー)
「…テメェは、サドか、フゥ、フゥ、フゥ―――ッ!ゴホッ!」
彼は自身の強力な能力のあまり、生身の人間としての身体能力は極端に低い。その上、無重力状態のような感覚で、何回も体を回転されたり、壁に超特急で激突させられそうになるなどハードな悪戯は肉体よりも精神的ダメージが大きかった。
「フゥー、ハァー…。ハァー」
(…何かいうことは?)
何も無ぇよ、と言ってしまいたかったが、そうすると先程の二の舞になることは明らかだった。自分のプライドなんか殴り捨てて、チッ!っと舌打ちすると覚悟を決めた。

「…かった」

(んー?何て言ったのかなー?ってミサカはミサカは悪戯心たっぷりな口調で貴方に聞いてみたりー?)

「……なかった」

(んんー?聞っこえないなー?ってミっサカはミっサカは~)











「……………………………………………………………………………………すまなかった…」


(うん!許す!)
「打ち止め(ラストオーダー)」は即答した。

(でね!そんなことが出来る人物ってのはね、貴方と同じ『絶対能力者(レベル6)』で!貴方のクラスメイトで!お姉様(オリジナル)の恋人で!そしてそしてワタシ『達』の命の恩人!

上条当麻―――――――――――『ドラゴン』を宿す『神人』だよっ!)



「………………」

(あれー?ビックリしたー?って仕方無いよねー。彼はミサカシリーズ全員の想い人だしー。能力なんて貴方が一〇〇人いようが勝てっこないしー。天然の『神上』だもんねーって、ミサカはミサカは反則すぎる彼の設定に世界の不条理を訴えてみたりー)

「………………」
(あ、あれー?大丈夫―?ってミサカはミサカは貴方の驚きっぷりに少々…)

「ラストオーダー」

(な、な、なに?)
唐突に名前を呼ばれたことで危機感を覚える「打ち止め(ラストオーダー)」だったが
次に来る彼の一言は、彼女の予想の遥か斜め上を行っていた。








「ありがとよ。愛してるぜ」

「ちょ、ちょっと待て土御門。まだ状況をよく飲みきれてない。……つまり俺の中には「龍(ドラゴン)」がいて、その力が強大だから俺は「絶対能力者(レベル6)」で、「幻想殺し(イマジンブレイカー)」はその力を抑えるフタみたいなもので…
そして、その力によって魔術世界と学園都市との戦争を止めた「英雄」でもあるってことで…いいのか?」

「その通りだにゃー。表だっては報道されてはいないけど、すでに周知の事実みたいになってる。特にイギリス正教の連中にはカミやんを英雄どころか「神」扱いしている奴らもいるくらいだからにゃー、まさに「神やん」ってカンジだにゃー」
「…寒いオヤジギャグはどうでもいいけどよ。俺が「風紀委員(ジャッジメント)」の委員長ってのもそのせいなのか?」
「っ!カミやんがその気になれば学園都市上層部の幹部になれるどころか、教会や学園都市に匹敵する第3勢力を作れる程なんだぜい!?それくらいドでかい功績が学園都市「風紀委員(ジャッジメント)」の一学区の委員長のポストだなんて割に合っていないのにも程がある。イギリス清教にいけば「必要悪の教会(ネセサリウス)」よりも強大な武力を持つ上条派閥が出来上がるし、ローマ正教にいたっては「神の右席」の席を用意しているなんて話があるぐらいだぜい?」
朝から驚きの連続であったのに、先ほどから語られる唐突でかつあまりにスケールのでかい上に身に覚えがない自分の過去話に付いていけなくなった上条は、

「………………………………………………………………………あー、えーっと……マジ?」

マジだにゃー!と叫ぶ土御門のリアクションに上条当麻の脳みそはオーバーヒート寸前だった。
「未来」に意識が跳んだだけでは無く、身の回りの著しすぎる変貌。恋人の存在。「風紀委員(ジャッジメント)」という地位。一年前には妄想を脹らませても辿り着けないような場所に、自分はいる―――――――

なーんて夢オチでした。テヘッ。

と、上条当麻は叫んでみたいくらいだった。

気持ちを整理して落ち着きたいところでもあったが、土御門との会話が繋がらなくなるのも癪なので、上条当麻は少し気なることを聞いた。
「…ところで土御門。何でそんなに震えてるんだ?風邪か?」
「……カミやん、「風紀委員(ジャッジメント)」にカミやんが入るって学園都市の理事長の前面で言ったときのことを覚えてるかにゃー?」
「覚えてるも何も、さっき言っ…」

「だぁー!!!まるまる一年記憶が跳んでてもそれくらい予知ってほしかったにゃー!理事長にその理由を聞かれたときのカミやんは何て答えたと思うっ!?」
「知らねぇよ!」
知る由もない未来や前世の記憶などを覚えてるやつがいたとしたらそれはただの嘘つきか結婚詐欺師だ。
「カミやんはこう言ったんだぜ!こう言ったんだぜ!?」
土御門のあまりのリアクションに上条の額に嫌な汗が流れる。



「『守りたい女(ひと)がいるから』―――――――だぜぃ!!」


「は、はいいいいいいいいいいい――っ!!?」
何言ってんだ未来の俺は!?(現在からすると過去となるが)最近の少年マンガ家ですら描くことに躊躇いを覚えるほど歯の浮くようなセリフに上条はただ驚くしかなかった。
そんな上条のことを無視して若干壊れ気味に金髪グラサンは一気にまくし立てる。
「カミやんのそんな強さと謙虚さに上条フラグが4桁を突破し、しかもしかも!選択肢イッパツでグッドアンドトゥルーエンド直行の重要フラグばかりを立てやがってェー!カミやんに助けられた巨乳シスターさんやロリっ子シスター率いるシスター軍団やありとあらゆる属性を持つカワイイ女の子たちが東西南北どこからともなく次々とカミやん目当てで学園都市に入ってくるわでそんな報告を淡々と受け取るしかなかった俺の気持ちを考えろや!!青髪ピアスを筆頭とするクラスメイトは俺でもビックリするような練りに練った『カミやん暗殺計画』を実行する寸前だったし、カミやんを慕う女たちにそれを気づかれた青髪ピアスたちは一人残らず粛清されて天に召される一歩手前だったし!それから『あの』常盤台のエース様をメロメロ(貴方なしじゃ生きられない)レベルまで落としやがって!!アーッ!思い出しただけでもムカついてきたにゃァア!!!モテナイ男たちの代表として一発殴らせろー!カミや――――んっ!!」
「ええええええ ――――――!?ちょっと待ってー!?なんでカミジョーさんは勝手に思い出し逆ギレされて殴られなきゃならないワケ―???俺は身に覚えがないし何よりモテナイ男軍団から彼女が出来たってことで卒業の祝福されてもいいと思うのですが間違ってないよね間違ってますかすみませんごめんなさいって二発目じゃんよ俺って不幸だー!!」
理不尽かつ強烈な土御門の鉄拳を哀れな(?)上条は――――――



「ッ!―――――――――――――させませんッ!!」
「!?ブへァアッ――――――!!」



とはならずに、第三者の介入によって上条に危害を加えようとした金髪グラサンは、紺色の長点上機学園の制服を着た金髪でウエーブがかかったロングヘアーの少女に『文字通り』ブッ飛ばされた。

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