とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 3-912

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匿名ユーザー

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その後、さんざんな目に遭った。
コスプレ衣装は没収された。描写不可能な形相をした白井に追い掛け回され助けを求めた他の常盤台中学生は敵に周り、上条当麻は『学舎の園』の中を走り回った。休む暇も無く、針や2000℃を超す灼熱やカマイタチが襲ってくる。周囲はそんな光景を目のあたりにしながらもいたって驚くそぶりも見せない。つまりこれは上条当麻が起こす『普通の光景』なのだろう。常盤台中学の能力開発の優秀さ感心しつつも敵に回すとこれほど恐ろしいものはないということを上条は実感していた。

もっとも、上条当麻の敵ではないのだけれども。





命からがら逃げ出し、通学路の途中にある人気の無い公園のベンチで少年は項垂れていた。
3時間ほど走り続け、彼女たちを撒いてたどり着いた先がこの公園である。いくら体力のある年頃と言えど足に疲労を感じていた。空はすでに夜。下校時間を過ぎているので人通りは極端に少ない。携帯で時刻を確認すると7時を過ぎている。
この状況を端的に表すとこの一言に尽きるだろう。

「…不幸だー」

不幸な少年は真っ暗な空を見上げて呟いた。夜空に輝く流れ星(実際は廃棄処分された人工衛星のデブリ)に心奪われながら、先ほど自販機で購入した缶ジュースに口をつけた。
「ぶわっ!?不味っ!」
口に広がる不快な味覚に上条は思わず吐き出した。口元を袖で拭いながら缶シュースの銘柄を見る。
「ゴホッゴホッ…んー、何々…抹茶ストロベリー味のサイダー!?て何だこりゃあ?しかもホットだし!缶コーヒーを買ったはずなのに、また入れ間違いかよ!」
さらには缶の種類、サイズ、デザインの色合いも似ており、薄暗い公園で確認できなかったのも無理は無い。
ようやく訪れた静かなひと時を堪能したかった上条だが、ジュース一本でその雰囲気はものの見事に崩れ去ってしまった。カクテルバーで粗茶を飲むようなものである。

「うう、不幸すぎますー」

「不幸不幸と言っておるとまた味あわせてやるぞ?上条」

後ろからふいに声をかけられた。
振り返ろうとすると頬に暖かいものが押し付けられた。缶ジュースである。
「おしるこは嫌いか貴様?私は気に入っているのだがな」
見覚えがある。『今』の上条当麻にとってはつい最近会ったばかりだ。

「バードウェイ!?何でここに!?」

「……ふむ。私がここにいることがそんなに不思議か?」
先日帰ったばかりだろ!とは言えなかった。ここは一年後の未来。あの時から会っていないとすれば、一年ぶりの再会といえる。
しかし、上条は妙な親近感を覚えた。
高級感ある紺色のコートに白のプリーツブラウス。デザインの良い薔薇の刺繍が入った黒のストレッチベロアパンツを履いていて大人びた印象を受ける。
だが、その容姿はまるで変わっていなかった。可愛らしい容姿にひそむ鋭い目つきが。
「ひ、久しぶりだなー。突然の再開に少し驚いているだけだよ」
「ああ、それだ。それだよ。その日本語を忘れしまってな。貴様にどう話しかけようか思考を巡らせていたところだ」
「…また何かあったのか?」
外見は十二歳前後の少女とはいえ、『明け色の陽射し』のボスとして君臨する魔術師である。
この学園都市に観光目的で来日していないのは明白だ。さらに彼女ほどの実力と地位を持つ者が入ってくる事自体、ただ事ではない。
バードウェイは上条の変化を察したらしく、にやあ、と口を大きく引きつらせながら言った。
「なあに、大それた用事ではない。確かにここに来た目的は仕事の為だが、貴様には用の無いな瑣末ごとで安易に完遂できるモノだ。私が貴様を訪ねたのは kotatsuをもう一度堪能しくなっただけだ。ウチにもあれを取り寄せたのだがな。アンティークが並ぶリビングでは案外つまらなくてな。その時の鬱憤晴らしに部屋ごと吹き飛ばしてしまった」
上条当麻はギョッとした。片目を閉じながら、いつの間にか右手に持っている杖をクルクルまわしている。何かの拍子で術式が発動するかもしれない。
「そ、そうですか。今はまだコタツは出していないんでー、サヨナッ!?」
ガシイッ!襟首をつかまれた。かなり強い力で。
「貴様、どこに行く気だ?」
悪意たっぷりの笑顔を浮かべながらバードウェイは言う。
「い、いやー、カミジョーさんはただ家に帰ろうとしただけですよ?インデックスが腹を空かせてるかもしれないから、早く家に帰って夕飯の準備をしなくちゃならないのでェッ!?!
足のつま先を踏まれた。かなり強い力で。
「それは奇遇だな。私もまだ夕食が済んでいないんだよ」
「…つまり」
「そこまで言ってもまだ分からぬか。やはり貴様は私の下僕にしてやったほうがいいな」
「…つまりつまり」

「喰わせろ」
ハイ、ワカリマシタ。

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