とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 3-978

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匿名ユーザー

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前日、午後9時00分。
学園都市の外にある神奈川県の焼き鳥がおいしいことで有名な居酒屋。帰りのサラリーマンや公務員、はたまた大学生の打ち上げなど、多くの客が賑わう中、そこに上条夫妻と御坂夫妻はいた。
奥の畳部屋に四人一同は座り、テーブルには沢山の焼き鳥が盛られた皿が置いてあり、片手には溢れんばかりに注がれたビールジョッキを持っている。
「かんぱーいー!!」
この声と同時にカチン!と音が鳴った。
一杯煽った四人は、早々と焼き鳥に手をつける。
「おっ、確かにこれはうまい」
「ふむ、美鈴がいうだけはあるなぁ」
「でっしょー?いい居酒屋って大学生の方がよく知ってたりするのよねー」
「あらあら、美鈴さんも大学生でしょ?」
4人とも年齢に大差はない夫婦なのだが、詩菜と美鈴は二十代前半の外見、旅掛と刀夜は年相応の外見のために、夫婦というより父とその娘にしか見えない。
焼き鳥と一口つまみながら、
「いやー、しかし御坂さんが美琴ちゃんのお父さんだと知ったときは驚きましたよ。家に帰ってきたら、奥さんが母さんとお茶をしていたし」
焼き鳥を一口つまみながら、
「そりゃあ、こっちのセリフだよ上条さん。娘に男ができたなんて聞いたもんだから、調べてみゃお宅の息子さんじゃないですか。家も近所だし、こりゃあただ事じゃないと慌てましたがね」
ビールを煽りながら、
「あらあら、その件は私も驚きましたよ。なんでも学園都市一の有名なカップルだとか。高校時代を思い出すわ、ねえ刀夜さん?」
ビールを煽りながら、
「そうですか?わたしは分かってましたけど。だって美琴ちゃんったら、お宅の当麻くんにメロメロなのまる分かりなんですもん。好きな人の前で素直になれないところなんて本当に昔の私にそっくり」
「あらあら、そうだったんですか?大学時代は有名な熱愛カップルだったと聞きましたが」
「はっはっはっ、そんなこっ恥ずかしい大学の時の話まで聞いたんですか。あの頃の美鈴はねー…いやっ、やっぱりこういう話は二人だけの秘密ってやつにしときましょう。俺の方が恥ずかしくなっちまう」
「そうですねぇ。昔話に花を咲かせる年でもないですし。御坂さん、今日はとことん飲みましょう。明後日には発つんでしょう?こういう機会は殆ど無いでしょうし、ね?」
「最初からそのつもりですよぉ、あ、お姉さん、ジョッキ二杯!」
「美鈴さん大丈夫?お酒は弱いんでしょう?」
「そのへんは考えて飲みますよー。だてに大学生やってるわけじゃないんですからー」
「…あらあら」

それから1時間後。
展開はピークに達した。御坂夫妻はすでに出来上がっていた。しかし、対照的に同じ量のアルコールを摂取しているのも関わらず上条夫妻は平然としていた。
「いやぁー、お宅の息子さんは本当にすごいっ!学園都市最強の能力者の上に、あの『大戦』の一番の立役者らしいじゃないですか。彼を『英雄』扱いしてる奴らも多いと聞いてますよぉ!」
「ははは…、当麻も有名人になったものだなー」
「ぷはー、美琴ちゃんと当麻くんがくっついてくれればねー、私としては大喜びなんだけどなー、詩菜さんもそう思いませーん?」
「うふふふ、私もそうなってくれると嬉しいですわねー。美琴ちゃんが当麻さんの…、あらあら、それはそれは」
「で、でもそういう話はまだ早いですし、当麻は女の子を泣かせるようなことはしないだろうから…」
「…怒らせるようなことはしますけどね?どっかの誰かさんのそっくり♪」
「か、母さん。ちょっと怖い!」
「俺はねぇ、息子さんに感謝してるんですよ。彼がいなかったら娘も無事では済まなかったし、私たちもこうして飲めることも無かった。心配事が全部吹っ飛んだし、それに「世界の英雄」が美琴の相手だったら認めてやらんことも無いしなァ!はっはーァ!」
「…でも大丈夫かしら、美琴ちゃん」
「そっかそっかー、当麻くんはすっごくモテるからねー。大覇星祭と一端覧祭の時なんてたくさんの女の子が周りにいましたよね。はー、美琴ちゃんウカウカしてられないなー」
「いや、そういうことじゃないの。当麻さん、もう他の女の子と一緒に住んでるのよ?」

「「………なに?」」
御坂夫妻の声が重なった。

「だって当麻さん。インデックスちゃんと同棲してるのよ♪」

「あのヤロォォオオオオオオオオおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!」
「ちょ、ちょっと御坂さん!?何で私の胸倉を掴むんですかっ!?」
「ウチの娘に手を出しただけでは無く、他のオンナにも手をだしてやがるだとォォお!!?あンの小僧!世界をまたにかけるフリのコンサルトタントをナメんじゃねえぞコラァ!」
「お、落ち着いて、落ち着いて!御坂さん!」
「これが落ち着いてられっかぁ!!…って、そういやアンタもちょくちょく女をひっかけてるよな?海外先もそうだったし、それに会社を訪ねた時に抱き合っていた人は何だったんですかい?当麻くんの浮気性もアンタの遺伝か?」
「!!?あ、あれはつまずきそうな部下を助けたときに起きたハプニングでしてね!そういう御坂さんこそナイジェリアのバーで飲み交わしていた女性は誰だったんです!?下の名前で呼び合うなんて、ただの知人ではないでしょう!?」
「っ!!それはだな…」

ガシッ!と刀夜の肩を掴む女性がいた。
「あらあら、刀夜さん。それは一体どうゆうことですか?」
「か、母さん!?」
刀夜が振り向くと、そこには風神も逃げ出す般若の顔があった。

ガシッ!と旅掛の肩を掴む女性がいた。
「ア・ナ・タ?」
「ヒィ!?お、おまっ、酔ってたんじゃ…」
旅掛が振り向くと、そこには雷神も逃げ出す悪鬼の顔があった。

「いや、ただ海外先で人助けをしただけでしてね!そのお礼にと言われて…」
「み、美鈴、これには複雑な事情があってだな…」
二人の美人妻はニッコリと笑って、


「「いいから、こっちに来いコラ」」


ズルズルと奥の方へ連行される中年男性二人。
その4人はその後どうなったか、などと聞くまでもないだろう。

彼らは知らない。
その日に『戦争』が起こることを。
そうして、夜は更けていった。

『魔神』はふいに手を向けた。
ただそれだけの動作に、
『魔王』は戦慄した。
「ッ!!!」
ベクトル操作で壁から思い切り体を上空に飛ばした。
体中には大きな風圧がかかった。
一瞬で上空200メートルまで舞い上がった。
そして、その判断は正しかった。

忽然と、街並みが消えた。

何の音も無く、ただ消えた。
魔神が手をかざした方向にあったものが全て、消え去った。
上空から見えるその方向にあったもの全てが、何か抉り取られたように無くなった。

バオォ!!と爆風が吹き荒れた。

突如現れた風に白髪の少年の体が揺さぶられる。
弾き飛ばすような爆風では無く、吸い込まれるような爆風。
ベクトル操作をうまくコントロールできず、地面に叩きつけられることを回避した彼は、なんとか上空に留まった。
(何あれ!?一体どうなってるの?ってミサカはミサカは彼の能力は説明がつかないってアドバイスしてみる!)
忠告になってねえよ、突っこむ余裕は『一方通行(アクセラレータ)』には無かった。
(桁違いの『空気圧縮(エアロプレス)』か?いや、それじゃあ爆風の風向きが説明つかねェ。だがヤツの能力は『魔術や超能力など』を打ち消してしまう力だ。…まさか『多重能力者(デュアルスキル)』か?)

「そこから高みの見物か?随分と余裕だな。『魔王』よ」

空中に浮いている『一方通行(アクセラレータ)』の100メートル下。長点上機学園の制服を着た『魔神』が悠然と立っていた。
彼が起こしたであろう惨状には目もくれず、白髪の少年をただ見上げていた。

「3キロ先のビルまで吹っ飛ばしておいて、よく平然としてられるなァ。『ドラゴン』」
「…ふむ、その言葉の趣旨は理解できぬが、余は手加減をしているのだぞ?」

「なら好都合だ」
白髪の少年は両手を大きく広げた。
突如、暴風が吹き荒れた。少年の真下に、『風』が一点に集中する。轟音とともに眩い光が誕生した。
高電離気体(プラズマ)
一点のみの光点は周囲の空気を飲み込み、一瞬で直径30メートルに膨れ上がる。摂氏一万度を超える高熱の余波が白髪の少年を襲った。
しかし、『反射』の前には何の意味も無い。
稲妻のような音が周囲に鳴り響いていた。『原子』を『陽イオン』と『電子』に分離し、莫大な電気量が渦巻いている。人がまとも当たれば、瞬時に体は蒸発し、骨すら残さない。
『打ち止め(ラストオーダー)』の代理演算のおかげで、原子単位で計算の狂いは無い。発生速度、圧縮密度、体積、威力ともに申し分は無かった。
その一撃を『魔神』に容赦なく振り下ろした。

「余裕ブッこいてンのはテメェのほうだろうがァ!!」

辺り一面がすさまじい光に包まれた。
その先に、白髪の少年は眼の端に捉えた。

『魔神』がこちらに左手をかざす瞬間を。

(!!危ないってミサ―――――――――――――――――)
刹那――――――――――――

フッ、と高電離気体(プラズマ)が消えた。

その一瞬を捉えることなく、白髪の少年は自分の意思とは関係なく体が『勝手に』脇にそれた。
遅れて、ドワァッ!!という爆風が吹き荒れた。
煙や埃は舞い、町中のガラスは割れ、看板や車などもが風に飲み込まれた。
『一方通行(アクセラレータ)』の元いた場所には巨大な旋風が生まれている。
あるもの全てを薙ぎ払い、全てを飲み込む。

西方一〇〇〇メートル先のビルの壁に白髪の少年は着地した。
「ラストオーダー!テメェ何勝手に操作してやがるッ!」
(あそこにいたら死んでたよ!ってミサカはミサカは貴方に力いっぱい叫んでみる!!)
「んだとォ!?あんなもんは全て『反射』してしまえばいいだろオ!」
(―――――――――――ッ!!?そ、空を見て!!)
「ああァ?」
空を見上げ、
白髪の少年は凍り付いた。

そこには、大きな穴が開いた雲があった。

その下では、巨大な竜巻のような光景が広がっていた。
まるで太陽に吸い寄せられるかの如く、あらゆる物体は舞い上がり、螺旋を形成していた。
轟音が鳴り響く中、砂利や土砂、根ごと引っこ抜かれた木々や機械の破片が吹き荒れ、白髪の少年にも降りかかってくる。
「チッ!」
呆けている暇も無く、『反射』で周囲のものを吹き飛ばす。周囲の大気を利用して、さらに一〇〇メートル上空に舞い上がった。
眼前には悲劇。
瞬く間に周辺の景色は荒廃した。
道路はひび割れ、建物は崩壊し、長点上機学園の正門は見る影も無くしている。車も周辺機械も粉々に砕け散り、炎上しているものもある。舞い上がった物体は、時を経て地面に落下している。
「畜生が…」
そんな光景の中、『魔神』は立っていた。
無傷。
それだけでは無い。
『一方通行(アクセラレータ)』が驚愕している点はそれだけでは無かった。
「…一歩も動いてねェ」
何事も無かったように『魔神』はその場にじっと立佇んでいたのだ。
真っ黒な瞳でこちらを見つめている。

白髪の少年は拳を強く握りしめた。
得体のしれない能力。得体のしれない恐怖。戦慄などでは無い。ただ不気味だった。『上条当麻』という存在が。
かつて右手だけで自分を殴り倒した存在が。手をかざしただけで『何か』をする存在が。

「『幻想殺し(イマジンブレイカー)』の本質はあらゆる魔術を打ち消すことではない」

唐突に『魔神』は口を開いた。

「上条当麻の本来の力は『消滅』だ。そこに例外は無い。魔術だろうが物体だろうが地脈だろうが触れたもの全てを消し去ってしまう」

「…ハッ、随分と御大層な能力だな」
『魔神』は人差し指を口にあて、また一言紡いだ。
「それともう一つ」

「貴様は絶対に私には勝てない」

「誰に向かって口をきいてやがる。『魔王』サマがテメェに勝てねえだと?空想の生物風情が人間サマに粋がってんじゃねェよ」




「勘違いするな、『魔王』。『宣言』では無い。これは『結果』だ。いいか、貴様は勝てない。そして死ねない。『絶対』にな」

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