とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 2-14

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匿名ユーザー

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    ◇◇◇

!!!!!!!!!

予想外の感触に白井黒子の思考は混乱の極みだった。

「「―――!?」」

超至近距離で驚愕してるお互いの目を見つめながら声にならない声はやはり同時にあげる。

(な、なんですとおおおおおおお!!)

いつものお嬢様口調はどこへやら心の叫びはちっともお嬢様っぽくなかった。

(いきなり!!?いきなり!!?)

突然の事故で混乱していた白井は思わず上条のよく鍛えられた胸板に両手を当てて、




ドンッ!!と自分の上半身の筋肉を総動員して超至近距離の上条を突き飛ばした。




「あどぁ!?」

上条の全身が突き飛ばされた胸部の慣性に従って仰け反る。

反動でオレンジ色のスポーツ車椅子が少し下がった。 自分の顔の熱が上がるのが分かる、 見えないけど恐らく林檎のように真っ赤だろう。

上条の方はいまだに混乱しているのか顔色の変化はあまり見られない。

(せめて、せめてもっとムードというか順序というものがおありでしょうに)

自分の中で不思議な感情が沸きあがってくるが白井はそれを押さえ込みながらその原因の少年に向かって

「人がちょっと心配してみれば・・・やはり殿方はみんなケダモノですのね!」

「違うのに!! 俺だって真面目に考え事してたのにー!」

「問答無用、ですわ!」

「うう、白井のいつもの白井に戻った気がする!!」

 上条が思わず叫ぶと、白井が真っ赤なままの顔に軽く涙目になって自分の履いていた革靴を手元に空間移動(テレポート) で移動させて

ブンっ!と振りかぶって上条の顔目掛けて投げつけた。


『スパァァン』


固い靴底が見事に命中し、痛そうな音をあたりに響かせた。上条の顔にクリーンヒットした革靴はアスファルト舗装された地面に落ちて上条の顔にくっきりと

赤い靴跡が残された。 肩で息をしながらハァハァと革靴を投げた体勢の白井を見て顔を擦りながら

上条が落ちた靴を拾おうとして地面に落ちた革靴に手を伸ばしたとき、白井のすぐ横を誰かが通り過ぎて、上条が丁度下げた頭とその人物が激突して

悲鳴を上げる。


「おわぁ!?」

「――!?」

◇◇◇


 ぽふっ


白井が投げつけてきた常盤台中学指定の革靴を拾おうとして頭を下げる形で手を伸ばしたら、下げた頭になんだか柔らかいものがぶつかった。

(ぽふ?)

両手を自分の顔の横に持ってきてみる。


ぽふ・・・・柔らかい

!!

「おわぁ!?」

冷静に確かめてみるとそれは女性の胸だった。

上条は慌てて身を退く。 

(さっきから次から次へと何が起こってんだ!?)

ついさっきの白井との事に加えて見知らぬ女性の胸に顔を埋めてしまったのである

健全な男子高校生である上条には刺激が強くてさっきから心臓がバクバクしっぱなしであった。

意外にもぶつかった女性は悲鳴を上げたり殴りかかってきたりはせず

「おっとっと・・・・」とあんまり気にしていないような適当な声をだしていた。

むしろその女性より更に奥に見える白井の「・・・・・・殿方」という低い声の方がよっぽど怨念が籠もっているように聞こえる。

 ぶつかってきたのは地味な作業服を着た18か19歳ぐらいの女性だった。

身長は上条よりやや高い。日本人にしては高い、と評価したいところだが、色の強い金髪や青い瞳を見る限りそれは正しい意見とは言えなそうだ。

 まるで神話などに出てくる女神が抜け出てきたような印象を受ける。

単純に胸や腰などの体つきが良いのはもちろんだがそれ以外にも目に見えない妖艶さをまちわりつかせているような気がする。

 その女性の長い金髪はワックスや巻き髪用のアイロンなどで相当手を入れてあるようだ。

全体的には髪を細い束ごとにアイロンでクセをつけ、小さな巻き髪を互いに絡めるように3本の太い束に分けている。その他にも細かい所に様々な手が

入り、一回セットするのが大変そうだ。

一方でアクセサリーの類はつけていないようだ、まるでその髪そのものを加工して黄金の装飾品を作ってる感じだ。

 女性は塗装業の関係者なのか作業服のあちこちに加工したペンキがこびりついており、脇には真っ白な布で覆われた長さ1.5m幅70センチぐらいの看板を

挟んでいる。

ピンと伸ばした手の先がかろうじて看板の下部を掴んでいた。

とここまでなら普通の[美人の看板屋のお姉様]で済むのだが、その女性の作業服のボタンは丁度胸辺りにあるボタンが一個止まってるだけで他の部分を止めていなかった。

(うはぁ、胸の谷間とかおへそとか丸見えでなんかもう・・・水着?)そんなことを考えていたら


パッコーーーーン


突然革靴が上条の顔にめり込んだ。

「ッてぇぇぇぇ!?いきなりなぁにすんだぁぁぁ!?」

革靴は先ほどと同じように白井が投げつけたものらしくオレンジ色のスポーツ車椅子に座る彼女の足元は白いルーズソックスだけがぷらぷらとしていた。

白井はふん!、と言ってそっぽを向いてしまった。

 上条が二度にわたる革靴の攻撃に傷んだ鼻を擦っていると塗装業のお姉さんは意外と流暢な日本語で

「ああーっと、ごめんねごめんね。 こんな人混みはあんまり慣れていなくて、どこか痛い所とかないかしら?。 あ、ここ?鼻が痛いの?」

「う、うう。実は違うんだけど優しさが身にしみすぎて、このままからだを預けてしまいそう・・・・」

ほとんど涙混じりの上条の対応に空間移動(テレポート) を発動させた白井黒子は上条の背後に現れてその後頭部にチョップを振り下ろした。

その拍子に再びお姉さんの胸へとダイブしていく。 お姉さんは特に悲鳴をあげる事もなく、片手で上条を引き剥がすと

「よいしょっと。ほら、大丈夫?あんまりケンカとかしては、ダ・メ・よ☆。 せっかくのお祭りなんだからそこの彼女のご機嫌をとって楽しい思い出
を残せるようにしたほうが賢明よね?」

 ぶわッ、と上条は顔全体を使って今にも泣き出しそうな表情になり、

「器が大きすぎる! どっかのお嬢様とは比べ物にならないっ! 上条さんはこの優しさにおぼれてしまいそうです!!」

「あらまぁ。 自分のメリットばかりを見て好きだって言うのは、くどき文句としてちょっと幼すぎるかな」

 スカートの下に取り付けられたベルトから金属矢を取り出しジト目で上条を睨んでいる白井に、塗装業者のお姉さんは薄く笑って小さく頭を下げる。
「そっちのお嬢ちゃんもごめんなさいね」

意表をつかれて慌てて金属矢を自分の後ろに隠しながら白井は

「な、なんであなたが謝るんですの?」

「彼氏。からかっちゃってごめんなさいね。怒ってる原因にお姉さんが関係してるからではダメかしら?」

か、彼氏なんかじゃありませんわ、と抗議して大人の女性が放つ余裕のある台詞にたじろぐ。

「(ホラ見ろあれが大人の女性ってヤツなんだよ見たか見習え参考にしろ)」

「(殿方・・・・あとで覚えてろ、ですの)」

「あーもう大丈夫かしら? はいこれお嬢ちゃんのでしょ?」

 ヒソヒソと小声で会話する少年と少女にお姉さんが話しかけた。 それから地面に落ちていた革靴を拾って白井に手渡してから

手をごしごしと作業服で擦り上条に差し出してくる。 握手の形だ。

「ぶつかってしまったお詫びに、ね。 日本じゃ頭を下げるみたいだけど、こちらではこういうやり方が一般的ね」

「はぁ・・・・そういうもんなの?」と握手を求めるお姉さんに合わせて右手を出そうとし、

「あら?キスの方が良い?」お姉さんが爆弾発言を放った。

ぶっ!! と上条は思わず吹き出した。

 純情で健全な高校生上条当麻はぶるぶると震えた後に、

「キスでお願いしますッ!!」

 そう叫んだ瞬間に白井黒子が上条の顔目掛けて拾ってもらったばかりの革靴を投げつけた。

◇◇◇

 再び赤くなった鼻を押さえて涙目になる上条に塗装業者のお姉さんは笑いながら、再び握手を求めてきた。

ああ、世界にはまだこんな優しい人がいたんだなぁ、と差し出された右手を同じく右手で握り返す。



『バギン!!』



何かが砕けるような奇妙な音が響いた。


「はっ?なにを固まっておられるのですのお二人とも」

最初に声を出したのは上条でもなくお姉さんでもなく、それを見ていた白井黒子だ。

当事者の2人はそれぞれ何が起きたのか理解している為、無言のままだ。

上条当麻は自分の右手に宿る能力について思い出している最中であり

塗装業者のお姉さんは自分の右手の何が破壊されたのかを確認している最中だ。

「そろそろお姉さんはお仕事にもどるわね。お二人さんケンカしちゃ駄目よ」

言うだけ言うとこちらの品返事も聞かずに走り去ってしまった。

 仕草や動きは変わらないのにさっきまであった『余裕』のような雰囲気がなくなっている。

自分の右手を見つめる上条に首をかしげて白井が

「殿方、いつまでも未練がましく握手の感触に酔ってないでわたくしの靴を拾ってくださいな」

「拾うと投げてくるから断る!?ってごぁぁぁやめろ、金属矢はやめろぉぉ」

「寝言は寝て言え、ですの!」

白井に異常な雰囲気を悟られないようにと気を使ってみる上条だったが逆効果だったようで

金属矢を投げてもいいんですわよ、というツインテールのお嬢様の言葉に渋々と革靴を拾う上条だった。

◇◇◇

「殿方、さきほどのことなのですが―」

靴を履かせろ、ということなのかスポーツ車椅子の足板から白いルーズソックスに包まれた足を上条に向かって、にゅっ、と突き出して白井が言う。

なんだ?、上条が革靴を片手にその少女の前に膝立ちになって白井の足に革靴を履かせながら答えると

「実はさっきから狙ってやってませんこと? もしそうなのだとしたらわたくしもアナタに対する対応を変更しないといけないのですけれども」

 少女は革靴を履かせる上条をスポーツ車椅子の上から見下ろして言う。 その顔がなんだか少し赤い。

 「そのもうちょっと」 「ムードが」 「というか責任を」 

声が小さすぎてよく聞こえない白井の呟きを聞きながら上条は考える。

さきほど自分の右手が打ち消したのは[超能力]か「魔術」。

 ともに共通する項目はただひとつ、その力が[異能]によって生み出させる超常現象だということだ。

そして自分の右手に宿る能力―[幻想殺し]はそれが[異能]によるものならば、たとえ神様が創った奇跡だろうとたやすく消滅させる。

 上条は少し考えて[超能力]の線は薄いと考えた。 [超能力]を使う学園都市の能力者とは、つまるところ目の前の少女や自分のような学生である。

大覇星祭という大イベントである、普通はそっちに参加するだろう。 中には例外もいるだろうから断言は出来ないがさっきの塗装業者のお姉さんが来ていた作業服

は、メーカーのCMなどでよく見かける[外からやってきた業者]のものであるような気がする。 TVのCMで見たことがある気がした。

 当然ながら元々学園都市の内部にいる学生にはそんなものを手にする機会は無い。

だとすると、上条当麻は携帯電話を取り出して画面を開き

「聞いてますの?殿方」 そこで白井が上条の頭に正面から空手チョップをかました。

「ッタ!?」

「ですからわたくしの話を聞いてますの?と質問しておりますの」

 ベシベシ、上条の脳天にさらに攻撃する白井

「仮にもお嬢様が無抵抗の年上の男性に延々と攻撃を加える、そんなことがあっていいんでしょうか?白井さん」

 上条の抗議を受けて白井は、ねぇ殿方さん、と切って

「疑問文に疑問文で答えるな、とアナタは学校で教わりませんでしたの!!」

なんだか怒った様子で

 大胆にスカートの裾をまくって太ももに装着されたベルトから金属矢を抜こうとしたので

「聞いてます!?聞いてます!! 聞く聞くとき聞けば 聞け 聞こう!!!!!!!」

 上条は、それだけ勘弁してください、と全力の聞くの五段活用で金属矢の投擲を阻止する。

(そうだ・・・白井がいたんだったこいつの前で土御門とかに連絡しても大丈夫なんだろうか・・・)

 目の前の少女、白井黒子は風紀委員である。 今回の件は警備員や風紀委員に動かれるとまずい、微妙なパワーバランスの上で成り立っている科学と魔術の両サイド、

もし[科学]サイドの組織である[警備員]や[風紀委員]が[魔術]サイドの[魔術師]を攻撃なんてした日には、裏の世界に取って大スキャンダルである。

 だからこそ[魔術]側の不始末は同じ[魔術]側の[魔術師]が始末をつける。逆もまたしかり

学園都市の一員でありながらも能力者としてはまったくの無能力者(レベル0)の上条や土御門はともかく彼女は能力開発の名門常盤台中学に在学する超エリートで

空間移動(テレポート) という希少な能力を持つ大能力者(レベル4)、そのうえ学生だけで構成される対能力者用治安組織[風紀委員]の一員。

 もし上条達のやっていることが彼女の耳に入れば見逃すだろうか? 

(いや・・・絶対無いな、うん。 美琴もこいつも事件があればどこからともなく出てくるからし)

 しかし塗装業者のお姉さんが消えた方向には雑踏があるだけでもうその金髪の後姿は見当たらない。

いまから追いかければあるいは、でも土御門達にも連絡しないと、でも白井がとか上条が頭を捻って考え悩んでいると

 白井が自分のスカートのポケットから銀色の口紅の筒みたいなものを取り出すと上条に渡して

なんだこれ?、不思議な顔をする上条に

「殿方にはどうしても気になる事がおありのようですわね、でもわたくしとしても他の事に気をとられていられるのはいい気がしませんの」

ですから、と言葉を切ってニコリと極上の微笑みを浮かべた少女は

「先にその気になる事情を解決してきていただけます? だからといって連絡が取れなくなっても困りますのでアナタの携帯電話の番号をソレに登録しておいてくださいな」

 上条の手にある銀色の筒―どうも携帯電話らいいが、指差しながら言った。

「ってこれ携帯電話かよ!? こんなに小さくてどうやって使うんだよ・・・・ボタンとか画面とかないんだけどさすがは近未来学園都市だな!って使い方わかんね~!?」

 銀色の筒を下から覗き込んだり軽く振ってみたりしながら悪戦苦闘する上条を見て、白井はクスリと笑って銀色の筒の上についているボタンのような突起を指差した。

上条がそのボタンをカチッと押すと筒の側面からスルスルと薄いシート状のものが引っ張り出された。

「うわ、ボタンちっちぇー、しかも薄くて押しにくい・・・お前らみんなこんな携帯使ってるのか? すっげぇ使いにくいんだけど」

あまりにも操作性が低い白井の携帯にアドレス帳に自分の携帯の情報を打ち込んで白井に返す。

操作シートが収納された銀色の口紅型の携帯電話を受け取ってアドレス帳を確認し

「この携帯電話はボタン押しにくい、画面見づらい、そのうえ失くしやすいと3拍子そろってますのよ」

でもオシャレでしょう?、と口紅みたいな携帯を自分の口に当てて少女は上条へ向かってもう一度微笑んだ。

◇◇◇

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