上条は声のしたほうを見る。そこには、短い金髪をツンツンに尖らせ、アロハシャツにサングラスといういつもの格好の、
上条の隣人にして科学側と魔術側双方のスパイである土御門元春がこちらに向かって走ってくる。
「土御門!ちょうどいいや今からお前の部屋に行こうとしてたんだ」
土御門は上条の所まで来ると、まったく息切れせずに、
「こっちとしてもちょうどいいぜい。オレとしてもカミやんに用があったからにゃー」
「俺に?」
「ああ」
土御門は頷き、
上条の隣人にして科学側と魔術側双方のスパイである土御門元春がこちらに向かって走ってくる。
「土御門!ちょうどいいや今からお前の部屋に行こうとしてたんだ」
土御門は上条の所まで来ると、まったく息切れせずに、
「こっちとしてもちょうどいいぜい。オレとしてもカミやんに用があったからにゃー」
「俺に?」
「ああ」
土御門は頷き、
「カミやんにも学園都市に入り込んだ魔術師の撃退を頼みたい」
上条は少し驚いた。魔術師が入り込んだ事にではない、『プロ』である土御門が『素人』である上条を戦闘に巻き込む事に驚いたのだ。
「いいのか?お前(プロ)が俺(素人)にそんなことを頼んで?」
土御門はいつものにやけた笑みを浮かべながら、
「プロが素人を巻き込まないようにするってのは、いわばプライドの問題だぜい。オレみたいにあまり気にしないやつには関係ないにゃー」
「そーゆーもんなのか・・・?」
「ま、それだけじゃないんだが。とにかく色々あるってことぜよ。―――ところでカミやん、後ろの巫女さんはほったらかしでいいのかにゃー?」
「・・・あ」
上条が思い出して恐る恐るふりかえると、いつもの表情と変わらないように見えるが、ちょっと寂しげな顔をしている姫神がいた。
「・・・悪い姫神」
「いいの。君にとって。私はそれだけの女」
「ダメだぜカミやーん。一度旗立てたは回収しないと」
「やかましい!今はそんな事よりもやるべきことがあるだろ!」
姫神が後ろで「そんなこと・・・」と言っているが、上条には聞こえていない。
「んで土御門、魔術師の撃退って言ってたけどまたリドヴィアみたいなのが現れたのか?それともインデックスを狙ったやつらか?」
手助けは頼まれたものの、実際に何が起こっているかは分からないので、超能力にも魔術師にも精通した土御門に聞いてみた。姫神も、やはり小萌先生を巻き込んだのが気になるようで、真剣な目で土御門を見ている。
「んー、どちらでもないというのが正しいかにゃー。―――奴の狙いは学園都市全てだからな。」
―――空気が、一瞬にして凍りついた。
「―――それって、本気で言ってるのか?」
「ああ、本気と書いてマジと読むほど本気だぜい」
大変な状況なはずなのに、土御門の口調は普段と変わらない。
「だったら!」
「焦ったら。ダメ」
土御門に文句を言おうとしたところで姫神がそれを制止する。
「非常時は。まず落ち着くこと」
「案外姫神は魔術師とかに向いてるかもにゃー」
「私。魔法使い」
「あー、はいはいわかったわかった……」
土御門は「魔法使いはまた別なんだがにゃー」と呟きつつ生返事を返す。
「それよりも」
姫神は真剣な目つきに戻り、
「もっと情報がほしい。学園都市全体を狙うだけなら。私だけが魔術師に狙われる理由もわからない。」
「そ、そうだ土御門。姫神の話じゃ魔術師は玄関から堂々と来たらしいし、それに狙いが学園都市全てなら小萌先生がやばい!」
「何っ!?カミやん、そのときの状況を詳しく教えて欲しい」
姫神が上条の前に出て、
「それは。私が」
姫神は土御門に魔術師が姫神を狙っていたこと、小萌先生が魔術師を引き止めていることなどを話した。
「うーん、断定はできないがそれは『埋葬機関』の『代行者』だぜい」
「『埋葬機関』?『代行者』」?」
聞きなれない単語を聞いた上条は首をかしげる。
「埋葬機関ってのは簡単に言っちまえば『必要悪の教会(ネセサリウス)』みたいなもんだにゃー。オレらみたいなのはどこにでもあるからな。代行者は埋葬機関の異端審問員、オレやステイルみたいなもんだ」
「そいつらが学園都市を潰そうとしてるのか?」
上条が聞くと、
「いや、奴らは逆に学園都市に来た魔術師を排除しに来たんだろう。異端の排除がやつらの優先事項だからにゃー」
「だったら。なぜ。私が狙われたの?」
「まあ、とりあえずそれも含めて今回の魔術師の説明をするぜい。とりあえず今まではわかりやすいように魔術師と言っていたが、正確にはアレは錬金術師だ」
「錬金術師っていうとあのアウレオルスみたいなやつか?」
「ああ、奴の本名はズェピア・エルトナム・オベローン。アウレオルスがいたチューリッヒ学派とは別の、アトラス院って所で院長をしていた魔術師だ」
「あいつとは別の勢力なのか、でも院長ってことは、結構偉い奴じゃないのか!?」
上条が聞き返すと、土御門は薄笑いを浮かべて、
「確かに全生徒に命令ができるほどの権力を持つ、オレらの戦力と比べると・・・・・・」
「待って」
と、唐突に姫神が説明を遮る。
「どうしたんだよ姫神、小萌先生の様子も見に行きたいから早く事態を理解しないと・・・・・・」
「だからこそ。回りくどい説明は要らない。土御門くん。ズェピアの名前は。私が三沢塾にいた頃に聞いたことがある」
「いいのか?お前(プロ)が俺(素人)にそんなことを頼んで?」
土御門はいつものにやけた笑みを浮かべながら、
「プロが素人を巻き込まないようにするってのは、いわばプライドの問題だぜい。オレみたいにあまり気にしないやつには関係ないにゃー」
「そーゆーもんなのか・・・?」
「ま、それだけじゃないんだが。とにかく色々あるってことぜよ。―――ところでカミやん、後ろの巫女さんはほったらかしでいいのかにゃー?」
「・・・あ」
上条が思い出して恐る恐るふりかえると、いつもの表情と変わらないように見えるが、ちょっと寂しげな顔をしている姫神がいた。
「・・・悪い姫神」
「いいの。君にとって。私はそれだけの女」
「ダメだぜカミやーん。一度旗立てたは回収しないと」
「やかましい!今はそんな事よりもやるべきことがあるだろ!」
姫神が後ろで「そんなこと・・・」と言っているが、上条には聞こえていない。
「んで土御門、魔術師の撃退って言ってたけどまたリドヴィアみたいなのが現れたのか?それともインデックスを狙ったやつらか?」
手助けは頼まれたものの、実際に何が起こっているかは分からないので、超能力にも魔術師にも精通した土御門に聞いてみた。姫神も、やはり小萌先生を巻き込んだのが気になるようで、真剣な目で土御門を見ている。
「んー、どちらでもないというのが正しいかにゃー。―――奴の狙いは学園都市全てだからな。」
―――空気が、一瞬にして凍りついた。
「―――それって、本気で言ってるのか?」
「ああ、本気と書いてマジと読むほど本気だぜい」
大変な状況なはずなのに、土御門の口調は普段と変わらない。
「だったら!」
「焦ったら。ダメ」
土御門に文句を言おうとしたところで姫神がそれを制止する。
「非常時は。まず落ち着くこと」
「案外姫神は魔術師とかに向いてるかもにゃー」
「私。魔法使い」
「あー、はいはいわかったわかった……」
土御門は「魔法使いはまた別なんだがにゃー」と呟きつつ生返事を返す。
「それよりも」
姫神は真剣な目つきに戻り、
「もっと情報がほしい。学園都市全体を狙うだけなら。私だけが魔術師に狙われる理由もわからない。」
「そ、そうだ土御門。姫神の話じゃ魔術師は玄関から堂々と来たらしいし、それに狙いが学園都市全てなら小萌先生がやばい!」
「何っ!?カミやん、そのときの状況を詳しく教えて欲しい」
姫神が上条の前に出て、
「それは。私が」
姫神は土御門に魔術師が姫神を狙っていたこと、小萌先生が魔術師を引き止めていることなどを話した。
「うーん、断定はできないがそれは『埋葬機関』の『代行者』だぜい」
「『埋葬機関』?『代行者』」?」
聞きなれない単語を聞いた上条は首をかしげる。
「埋葬機関ってのは簡単に言っちまえば『必要悪の教会(ネセサリウス)』みたいなもんだにゃー。オレらみたいなのはどこにでもあるからな。代行者は埋葬機関の異端審問員、オレやステイルみたいなもんだ」
「そいつらが学園都市を潰そうとしてるのか?」
上条が聞くと、
「いや、奴らは逆に学園都市に来た魔術師を排除しに来たんだろう。異端の排除がやつらの優先事項だからにゃー」
「だったら。なぜ。私が狙われたの?」
「まあ、とりあえずそれも含めて今回の魔術師の説明をするぜい。とりあえず今まではわかりやすいように魔術師と言っていたが、正確にはアレは錬金術師だ」
「錬金術師っていうとあのアウレオルスみたいなやつか?」
「ああ、奴の本名はズェピア・エルトナム・オベローン。アウレオルスがいたチューリッヒ学派とは別の、アトラス院って所で院長をしていた魔術師だ」
「あいつとは別の勢力なのか、でも院長ってことは、結構偉い奴じゃないのか!?」
上条が聞き返すと、土御門は薄笑いを浮かべて、
「確かに全生徒に命令ができるほどの権力を持つ、オレらの戦力と比べると・・・・・・」
「待って」
と、唐突に姫神が説明を遮る。
「どうしたんだよ姫神、小萌先生の様子も見に行きたいから早く事態を理解しないと・・・・・・」
「だからこそ。回りくどい説明は要らない。土御門くん。ズェピアの名前は。私が三沢塾にいた頃に聞いたことがある」
三沢塾とは、姫神が錬金術師であるアウレオルス=イザードに軟禁されていた場所である。同じ錬金術師であるズェピアの名前を聞いていたのかもしれない。
「―――彼は。五百年程前の人物のはず。生きているはずが。ない」
「なっ!?」と上条は驚き土御門を見る。土御門はばつが悪そうに頭をかきながら「知っていたか・・・・・・」と呟いている。
「どういうことだ土御門!御使堕し(エンゼルフォール)」の時みたいにまたなにか隠してるのか!?」
「隠してたわけじゃない、これから話すとこだったんだぜい」
土御門は今までの口調を変えることなくそんなことを言う。
「その前に姫神、お前はズェピアについてどれだけ知っているか知りたい。そのほうが説明の手間も省けるぜい」
姫神はまだ土御門を信用できないようだったが、こちらが話さないと相手も話さないと悟ったのか、自分が知っている情報について話し始めた。
「私が知っているのは少しだけ。ズェピアは数百年前の院長だったこと。そして強大な力に立ち向かい敗れたこと。それぐらい。アウレオルスは彼の残した技術を探していたけど。結局見つからなかったみたい」
「まあ、それは当たり前だにゃー。アトラスの錬金術師は自分の技術を外に漏らすことを禁忌(タブー)としている。」
「それより土御門、早く本当のことを話してくれないか?」
「んー、本当の事も何もオレの情報も姫神の情報も間違いはないにゃー。お前らが矛盾だと感じてるのはズェピアが数百年前の人物だったってだけだろ?」
土御門の言い分に、上条は少し考えて、
「じゃああれか?『ズェピア・エルトナム・オベローン』ってのは屋号みたいなものなのか?」
「いや、エルトナムは確かに屋号だが『ズェピア』はちゃんとした名だ。カミやんは何で一番簡単な可能性を否定するかにゃー?」
「一番簡単な可能性ってまさか・・・・・・?」
上条はひとつの結果に思い当たったが、それを口にすることができない。
「―――ズェピアは。まだ生きている?」
しかし姫神はあっさりと言った。
「大当たりだぜい」
さらに追い討ちをかけるように土御門が肯定する。
「・・・・・・どういうことだよ?魔術ってそんなことまでできるのか!?」
「―――魔術とは限らない。」
唐突に姫神が口を挟む。
「どういうことだ姫神。生命維持装置みたいな科学技術だって言いたいのか?それでもかなり無茶があるぞ」
「そうでもない。確かに人間では普通五百年は生きられない。」
そこで姫神はいったん言葉を区切る。そして
「なら。人間じゃなくなればいい」
姫神はいきなりとんでもないことを言い出した。
「ほう、姫神はもう気づいたか。さすがは『吸血殺し(ディープブラッド)』ってところかにゃー。カミやんも知ってるはずだ、姫神と関係があり、なおかつ不老不死である怪物の名を」
「―――彼は。五百年程前の人物のはず。生きているはずが。ない」
「なっ!?」と上条は驚き土御門を見る。土御門はばつが悪そうに頭をかきながら「知っていたか・・・・・・」と呟いている。
「どういうことだ土御門!御使堕し(エンゼルフォール)」の時みたいにまたなにか隠してるのか!?」
「隠してたわけじゃない、これから話すとこだったんだぜい」
土御門は今までの口調を変えることなくそんなことを言う。
「その前に姫神、お前はズェピアについてどれだけ知っているか知りたい。そのほうが説明の手間も省けるぜい」
姫神はまだ土御門を信用できないようだったが、こちらが話さないと相手も話さないと悟ったのか、自分が知っている情報について話し始めた。
「私が知っているのは少しだけ。ズェピアは数百年前の院長だったこと。そして強大な力に立ち向かい敗れたこと。それぐらい。アウレオルスは彼の残した技術を探していたけど。結局見つからなかったみたい」
「まあ、それは当たり前だにゃー。アトラスの錬金術師は自分の技術を外に漏らすことを禁忌(タブー)としている。」
「それより土御門、早く本当のことを話してくれないか?」
「んー、本当の事も何もオレの情報も姫神の情報も間違いはないにゃー。お前らが矛盾だと感じてるのはズェピアが数百年前の人物だったってだけだろ?」
土御門の言い分に、上条は少し考えて、
「じゃああれか?『ズェピア・エルトナム・オベローン』ってのは屋号みたいなものなのか?」
「いや、エルトナムは確かに屋号だが『ズェピア』はちゃんとした名だ。カミやんは何で一番簡単な可能性を否定するかにゃー?」
「一番簡単な可能性ってまさか・・・・・・?」
上条はひとつの結果に思い当たったが、それを口にすることができない。
「―――ズェピアは。まだ生きている?」
しかし姫神はあっさりと言った。
「大当たりだぜい」
さらに追い討ちをかけるように土御門が肯定する。
「・・・・・・どういうことだよ?魔術ってそんなことまでできるのか!?」
「―――魔術とは限らない。」
唐突に姫神が口を挟む。
「どういうことだ姫神。生命維持装置みたいな科学技術だって言いたいのか?それでもかなり無茶があるぞ」
「そうでもない。確かに人間では普通五百年は生きられない。」
そこで姫神はいったん言葉を区切る。そして
「なら。人間じゃなくなればいい」
姫神はいきなりとんでもないことを言い出した。
「ほう、姫神はもう気づいたか。さすがは『吸血殺し(ディープブラッド)』ってところかにゃー。カミやんも知ってるはずだ、姫神と関係があり、なおかつ不老不死である怪物の名を」