上条は考える。姫神に宿る力『吸血殺し(ディープブラッド)』はある生き物を惹きつけ、殺すことのできる能力だ。その生き物の名とは―――
「まさか吸血鬼―――か?」
「そのとおりだぜい」
「相手が吸血鬼なら。私が狙われるのにも説明がつく」
二人はあっさりと認めるが、
「ちょっと待てよ、吸血鬼はいないんじゃなかったのか?」
前にステイルがそんなことを言っていた気がする。
「確認されなかっただけだ。だから奴は俺たちが確認した最初の吸血鬼ってことになるにゃー」
「それに。私は吸血鬼を見たことがある。見た目は人間と変わらないから。わからないだけ」
土御門は少し真剣な顔になって、
「たぶんそれだけじゃないはずだぜい。吸血鬼によって殺されたり、埋葬機関が口封じをした例もあるだろう。少なくとも奴はその情報を媒体にして発生する吸血鬼だからにゃー」
「どういうことだ?」
上条はわけがわからず聞き返す。
「奴は吸血鬼の中でも特殊な例ってことだにゃー、今の奴は普通の吸血鬼と違い、台風や竜巻みたいな『タタリ』と呼ばれる『現象』に成り下がってる・・・・・・いや、逆に成り上がったと言ったほうが正しいか」
「?それと吸血鬼の噂が広まることと何の関係があるんだ?」
「手っ取り早く簡単に説明しちまうと今の奴に元となる形はない、人の噂を集めてそのカタチになって現れる、だからズェピアがとっくに死んでいるというのはあながち間違いじゃない。
今の奴に決まった形はないからにゃー。奴の名もズェピアではなく、奴が最初に発生した町の名にちなんで『ワラキアの夜』と呼ぶ奴や、能力である『タタリ』と呼ぶ奴が多い」
「うーん、つまり人の噂によってその『ワラキアの夜』の姿は違うってことか?」
「ああ、あるときは山に住むといわれる大きな山神の姿で現れたり、もともといる人間に成り代わったりしていることもあるみたいだにゃー」
それを聞いていた上条の頭に一抹の不安がよぎる。
「じゃあ小萌先生のところに来た魔術師ってのがワラキアの夜かもしれないんじゃないか!?」
だが土御門は冷静に、
「いや、その確立は低いぜい。そいつがタタリによって発生したものだったら真っ先に姫神の所に行く理由がわからない。姫神の力は『歩く教会』によって完全に封じられてるはずだからにゃー」
「でも」
姫神が胸元に下がった十字架を見つめながらつぶやく。
「歩く教会(これ)を外せば。吸血殺し(ディープブラッド)は発動する。だから魔術師には狙われる理由がある」
「そういうことだぜい。どこまで知っているかは知らないが、吸血殺しの能力と姫神の居場所、外見ぐらいは知ってるみたいだがにゃー。だから小萌先生に危害が及ぶ確立も低いぜい」
しかし上条には不安が残る。
「でもゼロってわけじゃないんだろ?だったら・・・・・・」
「大丈夫ですよ。一般人を巻き込むつもりはありませんから」
その女性の声は唐突に聞こえた。バッ!と三人は声のしたほうを向く。しかし、その方向には誰もいない。
「どこだ・・・・・・?」
「上だカミやん!」
言われて上条は上を見る。上条たちより少し離れたところに街灯が立っている。その街灯の上、足場と呼ぶにはあまりにも心もとないところに誰かが立っている。
すでにあたりは暗いうえに、相手が街灯の上にいるため細かいところまでは確認できないが、シスター服のようなものを着ているのはわかった。
「このタイミングにその格好、おまえが『代行者』だにゃー?」
土御門が問う。
「ええ、―――初めまして、埋葬機関第7位『弓』のシエルです。私はそこの『吸血殺し(ディープブラッド)』の姫神秋沙に話があるのですが」
シエルと名乗る女性は淡々と要件だけを告げる。
「私の力を。借りたいのね」
「そうです、あなたの詳しい力はわかりませんが、吸血鬼に対しては絶大な効果があることは知っています。ですからこの学園都市に入り込んだ吸血鬼の排除の手伝いをしてほしいのです」
「魔術師が一般人に助力を求めていいのかよ?」
上条は土御門に聞いたのと同じ質問をする。
「私としても巻き込みたくはありませんよ。ですが、今回の敵は特殊であり強力です。一般人とはいえ、協力が得られるならそれに越したことはないんですよ」
そういうこともあるかもしれないとは思ったが、一つ気になったことを聞いてみる。
「協力が得られなかったらどうするつもりだ?」
ピリピリと空気が張り詰める、しかしそれも一瞬のこと、
「安心してください、協力が得られなかったからといって強制連行はしませんよ。
私たちの目的はあくまで吸血鬼の排除、人攫いではないのですから。―――それで姫神秋沙、私たちに協力してくれますか?」
完全に信用できるわけではないが、強制的に連れて行くわけではないと聞いて上条は少し警戒を解く。
「・・・・・・どうしても。私の力が必要なの?」
姫神はシエルに向かって聞く。シエルは相変わらず街灯の上から、
「私一人の力ではどうにもならないから協力を頼んでいるのです。ワラキアは一晩しか存在することができませんが、その力は一晩で町の人間の血を吸い尽くす程です。
そのような事態になる前にどうにかしたいのです。それに、先ほども言ったように私もなるべく一般人を巻き込む気はありません」
「なら。小萌先生はどうして私に逃げてって言ったの?」
―――沈黙が空間を支配した。街灯の上に立つ影はこちらを向いたまま沈黙している。陰になっているので表情はわからないが、それが不安を掻き立てる。
その沈黙を破ったのはシエルからの返事。
「ああ、あの子供ですか。『先生』なんて言うから誰かと思ったじゃないですか」
「は?」
上条は間抜けな声を出す。
「あの子に自己紹介をしたときに、素直に魔術師と名乗ったのがまずかったんでしょうね。子供といえど、姫神秋沙と一緒にいるから少しは魔術師のことを知っていると思ったのですが、子供は子供ということですかねー」
シエルは、小萌先生が聞いたら怒りそうなことを平気で言う。それが今までのシリアスな空気を完全にぶち壊していく。
小萌先生、アンタぁすげぇよ。 と心の中でここにはいない、見た目12歳年齢不詳の担任教師に賞賛を送る。
「あの子には何も危害を加えていませんよ、何度も言うように私は一般人を巻き込むつもりはありません。まあ、今回は特例としてあなたに協力を求めていますが。
さて、姫神秋沙。何度目になるか忘れましたが確認します、私たちに協力してくれますか?」
上条は後ろに立っている姫神を見つめる。これから先は姫神が決めることだ。
前に姫神は言った。『吸血鬼は私達と変わらない。泣いて。笑って。怒って。喜んで。誰かのために笑い。誰かのために行動できる。そんな人達』 だと
確かにワラキアは学園都市を狙っているようだが、だからといって殺していいことにはならないと上条は思う。それに姫神の能力を開放すれば、
ほかの吸血鬼も呼び寄せて殺してしまう、それこそ無関係の吸血鬼を。それが嫌だからこそ姫神は『歩く教会』で吸血殺しを封じているはずだ。
だから上条は特に口を出さずに姫神のほうを見る。
姫神は拳を胸元に寄せ、うつむいて何かを考えていたようだが、何かを決したように顔を上げ、
「私は・・・・・・」
「ちょっとまった」
姫神の声を遮ったのは土御門の声。
「どうしたんだよ土御か、ど・・・・・・?」
うまく声が出ない、それほど土御門の顔は険しかった。
「今連絡があったんだが、学園都市側は代行者の受け入れを拒否したらしいな?そうだとすると貴様は何故ここにいる?」
「まさか吸血鬼―――か?」
「そのとおりだぜい」
「相手が吸血鬼なら。私が狙われるのにも説明がつく」
二人はあっさりと認めるが、
「ちょっと待てよ、吸血鬼はいないんじゃなかったのか?」
前にステイルがそんなことを言っていた気がする。
「確認されなかっただけだ。だから奴は俺たちが確認した最初の吸血鬼ってことになるにゃー」
「それに。私は吸血鬼を見たことがある。見た目は人間と変わらないから。わからないだけ」
土御門は少し真剣な顔になって、
「たぶんそれだけじゃないはずだぜい。吸血鬼によって殺されたり、埋葬機関が口封じをした例もあるだろう。少なくとも奴はその情報を媒体にして発生する吸血鬼だからにゃー」
「どういうことだ?」
上条はわけがわからず聞き返す。
「奴は吸血鬼の中でも特殊な例ってことだにゃー、今の奴は普通の吸血鬼と違い、台風や竜巻みたいな『タタリ』と呼ばれる『現象』に成り下がってる・・・・・・いや、逆に成り上がったと言ったほうが正しいか」
「?それと吸血鬼の噂が広まることと何の関係があるんだ?」
「手っ取り早く簡単に説明しちまうと今の奴に元となる形はない、人の噂を集めてそのカタチになって現れる、だからズェピアがとっくに死んでいるというのはあながち間違いじゃない。
今の奴に決まった形はないからにゃー。奴の名もズェピアではなく、奴が最初に発生した町の名にちなんで『ワラキアの夜』と呼ぶ奴や、能力である『タタリ』と呼ぶ奴が多い」
「うーん、つまり人の噂によってその『ワラキアの夜』の姿は違うってことか?」
「ああ、あるときは山に住むといわれる大きな山神の姿で現れたり、もともといる人間に成り代わったりしていることもあるみたいだにゃー」
それを聞いていた上条の頭に一抹の不安がよぎる。
「じゃあ小萌先生のところに来た魔術師ってのがワラキアの夜かもしれないんじゃないか!?」
だが土御門は冷静に、
「いや、その確立は低いぜい。そいつがタタリによって発生したものだったら真っ先に姫神の所に行く理由がわからない。姫神の力は『歩く教会』によって完全に封じられてるはずだからにゃー」
「でも」
姫神が胸元に下がった十字架を見つめながらつぶやく。
「歩く教会(これ)を外せば。吸血殺し(ディープブラッド)は発動する。だから魔術師には狙われる理由がある」
「そういうことだぜい。どこまで知っているかは知らないが、吸血殺しの能力と姫神の居場所、外見ぐらいは知ってるみたいだがにゃー。だから小萌先生に危害が及ぶ確立も低いぜい」
しかし上条には不安が残る。
「でもゼロってわけじゃないんだろ?だったら・・・・・・」
「大丈夫ですよ。一般人を巻き込むつもりはありませんから」
その女性の声は唐突に聞こえた。バッ!と三人は声のしたほうを向く。しかし、その方向には誰もいない。
「どこだ・・・・・・?」
「上だカミやん!」
言われて上条は上を見る。上条たちより少し離れたところに街灯が立っている。その街灯の上、足場と呼ぶにはあまりにも心もとないところに誰かが立っている。
すでにあたりは暗いうえに、相手が街灯の上にいるため細かいところまでは確認できないが、シスター服のようなものを着ているのはわかった。
「このタイミングにその格好、おまえが『代行者』だにゃー?」
土御門が問う。
「ええ、―――初めまして、埋葬機関第7位『弓』のシエルです。私はそこの『吸血殺し(ディープブラッド)』の姫神秋沙に話があるのですが」
シエルと名乗る女性は淡々と要件だけを告げる。
「私の力を。借りたいのね」
「そうです、あなたの詳しい力はわかりませんが、吸血鬼に対しては絶大な効果があることは知っています。ですからこの学園都市に入り込んだ吸血鬼の排除の手伝いをしてほしいのです」
「魔術師が一般人に助力を求めていいのかよ?」
上条は土御門に聞いたのと同じ質問をする。
「私としても巻き込みたくはありませんよ。ですが、今回の敵は特殊であり強力です。一般人とはいえ、協力が得られるならそれに越したことはないんですよ」
そういうこともあるかもしれないとは思ったが、一つ気になったことを聞いてみる。
「協力が得られなかったらどうするつもりだ?」
ピリピリと空気が張り詰める、しかしそれも一瞬のこと、
「安心してください、協力が得られなかったからといって強制連行はしませんよ。
私たちの目的はあくまで吸血鬼の排除、人攫いではないのですから。―――それで姫神秋沙、私たちに協力してくれますか?」
完全に信用できるわけではないが、強制的に連れて行くわけではないと聞いて上条は少し警戒を解く。
「・・・・・・どうしても。私の力が必要なの?」
姫神はシエルに向かって聞く。シエルは相変わらず街灯の上から、
「私一人の力ではどうにもならないから協力を頼んでいるのです。ワラキアは一晩しか存在することができませんが、その力は一晩で町の人間の血を吸い尽くす程です。
そのような事態になる前にどうにかしたいのです。それに、先ほども言ったように私もなるべく一般人を巻き込む気はありません」
「なら。小萌先生はどうして私に逃げてって言ったの?」
―――沈黙が空間を支配した。街灯の上に立つ影はこちらを向いたまま沈黙している。陰になっているので表情はわからないが、それが不安を掻き立てる。
その沈黙を破ったのはシエルからの返事。
「ああ、あの子供ですか。『先生』なんて言うから誰かと思ったじゃないですか」
「は?」
上条は間抜けな声を出す。
「あの子に自己紹介をしたときに、素直に魔術師と名乗ったのがまずかったんでしょうね。子供といえど、姫神秋沙と一緒にいるから少しは魔術師のことを知っていると思ったのですが、子供は子供ということですかねー」
シエルは、小萌先生が聞いたら怒りそうなことを平気で言う。それが今までのシリアスな空気を完全にぶち壊していく。
小萌先生、アンタぁすげぇよ。 と心の中でここにはいない、見た目12歳年齢不詳の担任教師に賞賛を送る。
「あの子には何も危害を加えていませんよ、何度も言うように私は一般人を巻き込むつもりはありません。まあ、今回は特例としてあなたに協力を求めていますが。
さて、姫神秋沙。何度目になるか忘れましたが確認します、私たちに協力してくれますか?」
上条は後ろに立っている姫神を見つめる。これから先は姫神が決めることだ。
前に姫神は言った。『吸血鬼は私達と変わらない。泣いて。笑って。怒って。喜んで。誰かのために笑い。誰かのために行動できる。そんな人達』 だと
確かにワラキアは学園都市を狙っているようだが、だからといって殺していいことにはならないと上条は思う。それに姫神の能力を開放すれば、
ほかの吸血鬼も呼び寄せて殺してしまう、それこそ無関係の吸血鬼を。それが嫌だからこそ姫神は『歩く教会』で吸血殺しを封じているはずだ。
だから上条は特に口を出さずに姫神のほうを見る。
姫神は拳を胸元に寄せ、うつむいて何かを考えていたようだが、何かを決したように顔を上げ、
「私は・・・・・・」
「ちょっとまった」
姫神の声を遮ったのは土御門の声。
「どうしたんだよ土御か、ど・・・・・・?」
うまく声が出ない、それほど土御門の顔は険しかった。
「今連絡があったんだが、学園都市側は代行者の受け入れを拒否したらしいな?そうだとすると貴様は何故ここにいる?」
上条は、いつものおちゃらけた口調がまったくない土御門に驚いたが、聞かされたことはもっと驚愕すべきだった。
「その情報が正しいという確信はあるのですか?タタリにとっては情報操作など簡単なのですよ?」
土御門の言葉にもまったく動じずに、シエルは淡々と問いかける。
「そんなことはわかっている、だが魔術師である以上あの男(アレイスター)がそんなものに引っかかるわけがない。それより答えてもらおうか?学園都市に入ることを断られた代行者(にんげん)がここにいる理由を」
土御門もあくまで冷静に問いかける。
「じゃあ、もしかしてあいつがワラキアの夜か?」
人の不安を具現化し、どんなカタチにもなれるワラキアの夜だったら、代行者とやらに姿を変えるのも簡単かもしれない。しかしシエルはため息をつき、
「私はタタリではありません―――、といっても信じられないでしょうけどそれはもうどうでもいいことです。所詮タタリに関しては二の次ですからね」
「本命は姫神の誘拐というわけか?」
「ええ、もちろん。彼女の力は埋葬機関では重宝されますからね、そのためにここの警備も無理やり突破しましたし、そこの吸血殺しを連れて帰らなければ骨折り損の何とやらです」
シエルともう隠す必要は無いとばかりに話し始める。
「どういうことだよ・・・・・・、さっきの一般人を巻き込みたくないってのは全部嘘か!?」
「嘘ではありません。一般人(普通の人)は巻き込む気はありませんよ。それとも、吸血鬼を殺せるほどの力を持ったものを一般人と呼ぶのですか?」
「愚問だな、学園都市ではそれも一般人のうちだぜい?まあ確かに姫神の能力は吸血鬼に関係はあるがな」
「でも。私の能力(ちから)を利用されるのは嫌。私は。殺しの道具になんてなりたくないから。だから私はあなたたちと協力することはできない」
姫神が前に進み出て、強い意思のこもった目で街頭の上にたたずむ影に向かって言い放つ。
シエルはしばらく沈黙した後に、
「やはり、こうなりましたか」
シエルはそう言うと両手をゆっくりと上げる。
「仕方ありません。姫神秋沙、あなたを強制連行します」
シエルが両手を顔の前で交差させると、いつの間にか片手に三本、計六本の剣が握られていた。そして、陰になっているはずの顔から怪しげな眼光が見える。
「後ろの二人に言っておきますが、邪魔しなければ手を出しませんよ?私の目的はあくまで吸血殺しなのですから」
シエルが警告を発するが、そんなものはこの二人にとっては逆効果である。
「クラスメイトがさらわれそうなのに黙って見てる道理はないぜい!」
「そうだ!それに、戦いたくないやつを無理やり巻き込まなきゃならないってんなら――――――」
上条は右拳を突き上げて叫ぶ!
「――――――まずはその幻想をぶち殺す!」
まったく人気のない大通りで、上条たちと代行者の戦いが始まった
「その情報が正しいという確信はあるのですか?タタリにとっては情報操作など簡単なのですよ?」
土御門の言葉にもまったく動じずに、シエルは淡々と問いかける。
「そんなことはわかっている、だが魔術師である以上あの男(アレイスター)がそんなものに引っかかるわけがない。それより答えてもらおうか?学園都市に入ることを断られた代行者(にんげん)がここにいる理由を」
土御門もあくまで冷静に問いかける。
「じゃあ、もしかしてあいつがワラキアの夜か?」
人の不安を具現化し、どんなカタチにもなれるワラキアの夜だったら、代行者とやらに姿を変えるのも簡単かもしれない。しかしシエルはため息をつき、
「私はタタリではありません―――、といっても信じられないでしょうけどそれはもうどうでもいいことです。所詮タタリに関しては二の次ですからね」
「本命は姫神の誘拐というわけか?」
「ええ、もちろん。彼女の力は埋葬機関では重宝されますからね、そのためにここの警備も無理やり突破しましたし、そこの吸血殺しを連れて帰らなければ骨折り損の何とやらです」
シエルともう隠す必要は無いとばかりに話し始める。
「どういうことだよ・・・・・・、さっきの一般人を巻き込みたくないってのは全部嘘か!?」
「嘘ではありません。一般人(普通の人)は巻き込む気はありませんよ。それとも、吸血鬼を殺せるほどの力を持ったものを一般人と呼ぶのですか?」
「愚問だな、学園都市ではそれも一般人のうちだぜい?まあ確かに姫神の能力は吸血鬼に関係はあるがな」
「でも。私の能力(ちから)を利用されるのは嫌。私は。殺しの道具になんてなりたくないから。だから私はあなたたちと協力することはできない」
姫神が前に進み出て、強い意思のこもった目で街頭の上にたたずむ影に向かって言い放つ。
シエルはしばらく沈黙した後に、
「やはり、こうなりましたか」
シエルはそう言うと両手をゆっくりと上げる。
「仕方ありません。姫神秋沙、あなたを強制連行します」
シエルが両手を顔の前で交差させると、いつの間にか片手に三本、計六本の剣が握られていた。そして、陰になっているはずの顔から怪しげな眼光が見える。
「後ろの二人に言っておきますが、邪魔しなければ手を出しませんよ?私の目的はあくまで吸血殺しなのですから」
シエルが警告を発するが、そんなものはこの二人にとっては逆効果である。
「クラスメイトがさらわれそうなのに黙って見てる道理はないぜい!」
「そうだ!それに、戦いたくないやつを無理やり巻き込まなきゃならないってんなら――――――」
上条は右拳を突き上げて叫ぶ!
「――――――まずはその幻想をぶち殺す!」
まったく人気のない大通りで、上条たちと代行者の戦いが始まった
行間一
シエルと戦闘を開始する少し前―――――シエルが代行者だと確認した後、土御門は考え事をしていた。
(何で代行者がここにいる?オレらの組織でも埋葬機関を確認したのは最近のこと、そんなやつらを簡単に学園都市に入れるとは思えんが・・・・・・)
『土御門、聞こえるか?』
いきなり土御門の脳内に響く声があった。その声の主はアレイスター=クロウリー、学園都市の長である。
『ああ、聞こえている。念話(これ)を使うってことはかなり緊急の用事か?』
彼自身の能力なのか能力者を使っているのかは知らないが、アレイスターはたまにこの方法で通信を行う。普通の念話と違い、こちらも思うだけで相手に声を送ることができる。
『そういうことだ。―――――君は今、代行者と会っているな?』
『ああ、代行者の侵入を許可するとは何を考えている?これも手順の短縮か?』
怒りを隠さずアレイスターに問いかける。
『たしかに短縮はできるが、故意に狙ったわけではない。実際、入れる予定はなかった』
『で、利用できそうだから警備をまわさなかった、と?』
土御門は皮肉混じりに聞く。
『それもあるがな、今は警備員(アンチスキル)を割く訳にはいかない』
『どういうことだ?』
『警備員(アンチスキル)は別のことで動いている。だがそれゆえに今は学園都市全域に戒厳令も出ている、わざわざ人払い(魔術)を使わなくてもいいということだ』
ちっ と土御門は舌打ちをし、
―――私は・・・・・・―――
―――ちょっとまった―――
(やつの狙いが姫神なら、緊張感のない今の状態はまずい。とりあえずやつを敵だと認識させるか)
―――今連絡があったんだが、学園都市側は代行者の受け入れを拒否したらしいな?―――
あえていつもの口調ではなく、仕事の時の口調でしゃべる。
(これで少しはましになるだろう。ついでにもうひとつ聞いておくか)
―――所詮タタリに関しては二の次ですからね―――
―――本命は姫神の誘拐というわけか?―――
―――ええ、もちろん。―――
(かなりあっさり喋ったな)
『彼女の言葉は本当だろうな、もう隠す必要が無くなったということだ』
『そんなことはわかっている。さて、どうやってどうしたらいい?』
土御門はアレイスターに指示を仰ぐが、
『姫神秋沙を置いて逃げろ』
(何で代行者がここにいる?オレらの組織でも埋葬機関を確認したのは最近のこと、そんなやつらを簡単に学園都市に入れるとは思えんが・・・・・・)
『土御門、聞こえるか?』
いきなり土御門の脳内に響く声があった。その声の主はアレイスター=クロウリー、学園都市の長である。
『ああ、聞こえている。念話(これ)を使うってことはかなり緊急の用事か?』
彼自身の能力なのか能力者を使っているのかは知らないが、アレイスターはたまにこの方法で通信を行う。普通の念話と違い、こちらも思うだけで相手に声を送ることができる。
『そういうことだ。―――――君は今、代行者と会っているな?』
『ああ、代行者の侵入を許可するとは何を考えている?これも手順の短縮か?』
怒りを隠さずアレイスターに問いかける。
『たしかに短縮はできるが、故意に狙ったわけではない。実際、入れる予定はなかった』
『で、利用できそうだから警備をまわさなかった、と?』
土御門は皮肉混じりに聞く。
『それもあるがな、今は警備員(アンチスキル)を割く訳にはいかない』
『どういうことだ?』
『警備員(アンチスキル)は別のことで動いている。だがそれゆえに今は学園都市全域に戒厳令も出ている、わざわざ人払い(魔術)を使わなくてもいいということだ』
ちっ と土御門は舌打ちをし、
―――私は・・・・・・―――
―――ちょっとまった―――
(やつの狙いが姫神なら、緊張感のない今の状態はまずい。とりあえずやつを敵だと認識させるか)
―――今連絡があったんだが、学園都市側は代行者の受け入れを拒否したらしいな?―――
あえていつもの口調ではなく、仕事の時の口調でしゃべる。
(これで少しはましになるだろう。ついでにもうひとつ聞いておくか)
―――所詮タタリに関しては二の次ですからね―――
―――本命は姫神の誘拐というわけか?―――
―――ええ、もちろん。―――
(かなりあっさり喋ったな)
『彼女の言葉は本当だろうな、もう隠す必要が無くなったということだ』
『そんなことはわかっている。さて、どうやってどうしたらいい?』
土御門はアレイスターに指示を仰ぐが、
『姫神秋沙を置いて逃げろ』
『っ!?、ふざけるな、吸血殺しを代行者に渡してもいいって言うのか・・・・・・?』
『あまりよくはないがな、吸血殺し一人のために君たちを失うわけにはいかない』
『――――――そんなに強いのか、やつは?』
土御門はシエルを見る。
―――仕方ありません。姫神秋沙、あなたを強制連行します―――
『ああ、君じゃかなわないだろう。たとえ、君たち3人が束になったとしてもな。逃げたほうがいいぞ』
シエルについてはある程度の情報はある。だが、情報があれば勝てるというわけではない。それに彼女の力についての情報はあまりない。
彼が持っているのは彼女の人格などについての情報だ。しかし、そういう情報があるからこそ彼女の行動はつじつまが合わない。
『逃げるわけには行かない。確かめたいこともあるしな、それに―――――』
土御門はアレイスターにではなく、シエルを睨み、
「クラスメイトがさらわれそうなのに黙って見てる道理はないぜい!」
多重スパイの土御門ではなく、姫神のクラスメイトの土御門元春として言い放つ。
『仕方あるまい。手順を変更するか』
ブツッという音とともにアレイスターの声が消える。
(やはり、手順の短縮を狙っていたか。よくやるぜい)
土御門はため息をつく。
「巻き込まなきゃならないってんなら――――――」
(アレイスターも言っていたことには嘘があった。シエルも嘘をいっていたし、本物かどうかもわからない。それに満月の夜に発生するはずのワラキアの夜がなぜ新月の今日に発生したのか)
「――――――まずはその幻想をぶち殺す!」
(さて、何が嘘で何が本当かわからない、『虚言の夜(ミッドナイトカーニバル)』の始まりだぜい!)
ちらほらと見える星明りの中、一夜限りの祭りが始まる。
『あまりよくはないがな、吸血殺し一人のために君たちを失うわけにはいかない』
『――――――そんなに強いのか、やつは?』
土御門はシエルを見る。
―――仕方ありません。姫神秋沙、あなたを強制連行します―――
『ああ、君じゃかなわないだろう。たとえ、君たち3人が束になったとしてもな。逃げたほうがいいぞ』
シエルについてはある程度の情報はある。だが、情報があれば勝てるというわけではない。それに彼女の力についての情報はあまりない。
彼が持っているのは彼女の人格などについての情報だ。しかし、そういう情報があるからこそ彼女の行動はつじつまが合わない。
『逃げるわけには行かない。確かめたいこともあるしな、それに―――――』
土御門はアレイスターにではなく、シエルを睨み、
「クラスメイトがさらわれそうなのに黙って見てる道理はないぜい!」
多重スパイの土御門ではなく、姫神のクラスメイトの土御門元春として言い放つ。
『仕方あるまい。手順を変更するか』
ブツッという音とともにアレイスターの声が消える。
(やはり、手順の短縮を狙っていたか。よくやるぜい)
土御門はため息をつく。
「巻き込まなきゃならないってんなら――――――」
(アレイスターも言っていたことには嘘があった。シエルも嘘をいっていたし、本物かどうかもわからない。それに満月の夜に発生するはずのワラキアの夜がなぜ新月の今日に発生したのか)
「――――――まずはその幻想をぶち殺す!」
(さて、何が嘘で何が本当かわからない、『虚言の夜(ミッドナイトカーニバル)』の始まりだぜい!)
ちらほらと見える星明りの中、一夜限りの祭りが始まる。
.上条&姫神&土御門 VS シエル
FIGHT!!!