とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 2-829

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匿名ユーザー

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 (な……)

 ――――薄暗く調整された部屋の中――――

 (なっ……)

 ――――前方からの光が淡く顔を照らす――――

 (ちょ……)

 ――――流れてくる音は自然な感じで耳に入り――――

 (ちょっと……)

 ――――預けている体には柔らかい弾力と心地良い布地が触れて――――

 (ちょっと待ってよ……)

 ――――そして、隣に目をやれば一つ年上の気になる男子生徒がいて――――

 (だから……)

 ――――目を瞑り、顔を僅かに傾けながら俯かせて――――





 静かに寝息を立てながら眠りこけていた。


「何であんたはそうなのよぉ……」


 上映中の映画館の暗がりの中、自分の隣に座りながら盛大に眠り込んでいる上条当麻を見ながら、

御坂美琴はなんだ
か泣きそうになって、盛大にため息をついた。


                        ◇                    

     ◇                    


 そもそも、事の始まりは数時間前に遡る。
 学校での授業が終了した後、寮へと帰宅しようとしていた美琴は同じく帰宅途中の上条とバッタリ

出くわした。
 いつもならば、授業が終われば真っ先に自分のところに飛んでくる、少々じゃれ付き過ぎではある

が憎めない後輩が即座
に前面に躍り出て迎撃体制に出るのだが、生憎と今日は風紀委員(ジャッジメント)の関係でどうしても外

せない仕事があるらしく、
 『お姉さまにお一人で帰宅していただくのは非常に心苦しいのですが、すぐに片付けてまいります

から帰ったらいっぱい
甘えて下さいませ』、と言って立ち去っていったために一人だったのだ。
 (ちなみに、そう言いながら隙あり、とばかりに抱きつこうとしてきた後輩に関してはきっちり電

撃で追い返している)
 いきなり出くわしたものだから、心の準備などない。
 思わずいつもの様に喧嘩ごしに話しかけてしまいそうになった矢先、上条の方から 『こないだは

悪かったな』と謝ってきた。
 いつものおざなりな上条の反応とはあまりにも違う態度に、御坂の方が戸惑ってしまう。
 それが顔に出ていたのか、上条は言う。
「いや、こないだの罰ゲームのときのことなんだけど、あんときは結局学園都市中がえらい騒ぎにな

ってたし、おまけに、
お前まで巻き込んじまってさ………。ほんと、悪かった」
 いつも自分に向けるのとは全く違う真剣な態度で謝ってくる上条に対し、けれど美琴は素直な態度

に出ることが出来ず、
つい、いつものように天邪鬼な反応をしてしまう。
「っ、ほ、ほんとよねー。なんか訳の分かんない奴らはいっぱい出てくるし、あいつらの相手をして

たせいで雨に濡られるし、
そうそう、おまけにアンタは罰ゲームの途中だってのにどっかいっちゃうんだから、結局、くたびれ

損の散々な一日だった
わよ」

 口をついて出てくる言葉。
 ―――本当は、そんなことが言いたいんじゃない。
 ―――自分だけが、大変な思いをしたんじゃない。
 大体、自分が相手をした奴らなんか大したことは無かった。
 ―――そんなことを言い出したら、コイツの方がもっと大変な思いをしていたに違いないのに。



 でも、そんな美琴の思いとは別に、言葉は止まらない。
「大体さぁ、アタシと罰ゲームしてる最中にいなくなったと思ってたら、今度はあのシスターのコと

一緒にいたってのは実際
どうなのよ?!」

 違う。
 ―――会って尋ねたかったのはそんな事じゃない。
 あのとき、『友達を助けるため』に走っていったコイツはきっとまた自分の身も省みず、危険な目

に遭っていたんだろう。
 ―――だから、心配だったのだ。
 ―――本当は無事だったのかどうか訊きたかった筈なのにどうして自分はこんな事を喋ってしまう

んだろう?

「だから……っ、何で……っ、アンタはっ……!!」

 気持ちとは裏腹の言葉が止められない。
 上条に投げる言葉がどんどん鋭くなっていき、最後には叫ぶように叩き付ける。

「一体どういうつもりなのよっっ!!」

 叫び終わったまま息を荒げている美琴。
 それと共に周囲に静けさが戻ってくる。
 そして、美琴の思考にも冷静さが戻ってくる。
 ―――自分は、何を口走ってしまったのか。
 ―――理不尽な言葉をただ投げつけただけ。
 ―――これでは、ただの八つ当たりですらないではないか。
 見れば、美琴の目の前では上条が何も言わずに俯いたまま立っていた。
 それこそ、自らの上を通り過ぎる嵐をやり過ごすかのように。

「あ………」

 自分が取り返しのつかない決定的な一線を踏み越えてしまってのではないかと危惧する美琴。
 おずおずと上条のほうに手を伸ばそうとする。
 その時、上条が小さく息を吐いた。
 びくり、と慌てて手を引っ込める美琴。
 そしてそのまま後ずさり、上条の前から逃げ去ろうとする。
 だが、美琴が走り去ろうとしたまさにその瞬間、

「わかったよ、御坂。なら、罰ゲームをやり直そうぜ」

 そんな上条の言葉が届いたのだった。





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