とある魔術の 堕落天使(コラプト)corrupt.
序章
ヒーローとは何だと思いますか?
誰にでも優しく、力強くて、どんな人間でも守る事が出来る人間。
それがヒーローだと信じた少年が居た。
そんなヒーローに憧れていた。
ドロドロの雨の中、少年は絵本を読んでいた。
体が濡れるの気にせず、熱心に絵本を読み続ける。
赤い手はページをめくる。
雨とは違う、べっとりと付いた赤
絵本には男が沢山の悪役を倒している姿の絵が。
少年はその絵で手を止めた。
強くて
強くて
強くて
それでこのヒーローは何を手に入れたのだろう?
強くて
強くて
それでこのヒーローは何を手に入れたのだろう?
ある少年はヒーローに憧れた。
誰にでも優しく、力強くて、どんな人間でも守る事が出来る人間に。
誰にでも優しく、力強くて、どんな人間でも守る事が出来る人間に。
とある魔術の 堕落天使(コラプト)corrupt.
イギリス清教、必要悪(ネセサリウス)の女子寮の一角。
夜遅くの寮はシン…と静まり返り、殆どの住人が寝入っていた。
そんな中、燭の灯りが照る部屋があった。
その部屋の主は洋風の部屋に似合わない着物を着た女性であった。
背中まで伸びた長い黒髪は纏められており、その女性、神裂火織はベッドに腰掛けていた。
太腿に乗せられた絵本をペラペラと捲っているが、その目は絵本を読んでいるわけではなく。
唯、懐かしそうに見つめているだけであった。
身長のある女性は端から見ればモデルの様なスタイルを持っている。
その女性に更に不釣り合いな異常なまでに長い日本刀、『七天七刀』が近くのタンスの立て掛けてある。
夜遅くの寮はシン…と静まり返り、殆どの住人が寝入っていた。
そんな中、燭の灯りが照る部屋があった。
その部屋の主は洋風の部屋に似合わない着物を着た女性であった。
背中まで伸びた長い黒髪は纏められており、その女性、神裂火織はベッドに腰掛けていた。
太腿に乗せられた絵本をペラペラと捲っているが、その目は絵本を読んでいるわけではなく。
唯、懐かしそうに見つめているだけであった。
身長のある女性は端から見ればモデルの様なスタイルを持っている。
その女性に更に不釣り合いな異常なまでに長い日本刀、『七天七刀』が近くのタンスの立て掛けてある。
「元気でしょうか……」
ボソッと呟く言葉は誰に向けるわけでもなく自然に口から出ていた。
ボソッと呟く言葉は誰に向けるわけでもなく自然に口から出ていた。
その瞬間、突然体中を妙な物が駆け巡った。
洗練され、鍛えられた体が反射的に魔術を感知したのだ。
妙に懐かしい感覚の魔術に体が知っている事には気づかない。
とっさにタンスに立て掛けていた刀を取るとベッドから飛んだ。
足が床に付くと直ぐに刀を抜く体制に入る。
部屋のドアと丁度、正反対の灰色の壁に紫色の線が走っていた。
その線は角が付かないように半径1M程の円を作っていた。
神裂はまだ構えている。
紫の線で囲まれた円の中から一つの映像が浮かび上がってきていた。
浮かび上がった物がみるみるうちに輪郭を作り、はっきりとした映像に変る。
(………これは通信用の術式?)
映像には真っ白なフードを被った人間が現れた。
すっぽりと被ったフードで目は見ることができない。
『警戒を解いてくれ、戦う気は無い』
映像に映る人間の口の動きと共に神裂の耳に声が聞こえる。
少し低い、男の声だ。
イギリス語では無く、久々に聞くなまりの無い日本語。
「!」
その声を聞いた時、神裂の顔色が変わった。
「あ……あなたは」
戸惑いと迷い、そして喜びが浮かんだ。
「今どこにいるんですか!?心配したんですよ!!」
その男は神裂にとって知り合い以上の存在であった。
自分の幸福に巻き込まれた男が目の前に居た。
「何で今まで連絡が無かったんですか!?」
神裂の声に男は何も言わない。
神裂は気にせず言葉を出す。
「それに、何故こんな所に通信術式を!?」
この寮には様々な魔術師が存在する。
そんな所に魔術で通信を行うのは、監視カメラの前にいるのと同じ意味をする。
『………それは大丈夫だ。『隠す』魔術は専門だろう?』
男は神裂の言葉に答えると少し間を空けて再び口を開く。
『そこで同じ技術を持つのは、あなた位だろう、見つけれるのはあなただけだ』
男の声に感情は無く、ただボソボソと小さくしゃべるだけであった。
変わらない仕草にほっとする。
「良かった、生きていてくれたのですね」
神裂は心から嬉しそうに言った。
「でも……どうして」
神裂の言葉を無視して男は続けた。
『時間が無い単刀直入に言う、俺はもうすぐ死ぬと思う』
ッザ
テレビのノイズの様に映像が一瞬ぶれた。
『俺が死んだ…ら代わ…に』
男の言葉が途切れ途切れになる。
(これは通信術式の妨害……!?でもどうして、誰が!?)
『……を守っ…て……く…れ』
更に映像は悪くなる。
洗練され、鍛えられた体が反射的に魔術を感知したのだ。
妙に懐かしい感覚の魔術に体が知っている事には気づかない。
とっさにタンスに立て掛けていた刀を取るとベッドから飛んだ。
足が床に付くと直ぐに刀を抜く体制に入る。
部屋のドアと丁度、正反対の灰色の壁に紫色の線が走っていた。
その線は角が付かないように半径1M程の円を作っていた。
神裂はまだ構えている。
紫の線で囲まれた円の中から一つの映像が浮かび上がってきていた。
浮かび上がった物がみるみるうちに輪郭を作り、はっきりとした映像に変る。
(………これは通信用の術式?)
映像には真っ白なフードを被った人間が現れた。
すっぽりと被ったフードで目は見ることができない。
『警戒を解いてくれ、戦う気は無い』
映像に映る人間の口の動きと共に神裂の耳に声が聞こえる。
少し低い、男の声だ。
イギリス語では無く、久々に聞くなまりの無い日本語。
「!」
その声を聞いた時、神裂の顔色が変わった。
「あ……あなたは」
戸惑いと迷い、そして喜びが浮かんだ。
「今どこにいるんですか!?心配したんですよ!!」
その男は神裂にとって知り合い以上の存在であった。
自分の幸福に巻き込まれた男が目の前に居た。
「何で今まで連絡が無かったんですか!?」
神裂の声に男は何も言わない。
神裂は気にせず言葉を出す。
「それに、何故こんな所に通信術式を!?」
この寮には様々な魔術師が存在する。
そんな所に魔術で通信を行うのは、監視カメラの前にいるのと同じ意味をする。
『………それは大丈夫だ。『隠す』魔術は専門だろう?』
男は神裂の言葉に答えると少し間を空けて再び口を開く。
『そこで同じ技術を持つのは、あなた位だろう、見つけれるのはあなただけだ』
男の声に感情は無く、ただボソボソと小さくしゃべるだけであった。
変わらない仕草にほっとする。
「良かった、生きていてくれたのですね」
神裂は心から嬉しそうに言った。
「でも……どうして」
神裂の言葉を無視して男は続けた。
『時間が無い単刀直入に言う、俺はもうすぐ死ぬと思う』
ッザ
テレビのノイズの様に映像が一瞬ぶれた。
『俺が死んだ…ら代わ…に』
男の言葉が途切れ途切れになる。
(これは通信術式の妨害……!?でもどうして、誰が!?)
『……を守っ…て……く…れ』
更に映像は悪くなる。
「今、何所にいるんですか!」
神裂が映像に向かって叫ぶ、この手の術式は専門外だ。
修復する事は出来ない。
『日……本』
もはや映像はテレビのノイズの様にしか映らない。
かき消える様な声が神裂に届く。
『頼………む、……ね…え…さ……ん』
ッブという音と共に映像は消え、そこは元の灰色の壁に戻っていた。
「・・・・・・」
神裂は無言で強く刀を握ると、布団には向かわずタンスへと向かった。
いつもの戦闘の為の服に着替えるために。
たった一人の弟に会いに行くために。
現在、深夜1時、時差が有るので日本は午前の10時だ。
飛ばせば夜には付く事が出来る。
ベッドから飛んだ拍子に落ちた絵本が目に映った。
少年が一番好きだった絵本を神裂は拾うと優しく机の上に置いた。
神裂が映像に向かって叫ぶ、この手の術式は専門外だ。
修復する事は出来ない。
『日……本』
もはや映像はテレビのノイズの様にしか映らない。
かき消える様な声が神裂に届く。
『頼………む、……ね…え…さ……ん』
ッブという音と共に映像は消え、そこは元の灰色の壁に戻っていた。
「・・・・・・」
神裂は無言で強く刀を握ると、布団には向かわずタンスへと向かった。
いつもの戦闘の為の服に着替えるために。
たった一人の弟に会いに行くために。
現在、深夜1時、時差が有るので日本は午前の10時だ。
飛ばせば夜には付く事が出来る。
ベッドから飛んだ拍子に落ちた絵本が目に映った。
少年が一番好きだった絵本を神裂は拾うと優しく机の上に置いた。
日の射す森の中で、男がはじけ飛んだ。
足元に描かれた紫の円が同時に消える。
男は無言で立ち上がった。
(通信の魔術回路に無理矢理割り込みやがったな……)
通信の途中で別の力が働き、術式の失敗により体にリバウンドで返ってきたのだ。
それは魔術の詠唱を割り込む強制詠唱(スペルインターセプト)と似た様なもので、
通信の術式を横から割り込んだのだ。
通信の術式は電話と同じ様にAからBに回線を繋ぐので、
この回線のAとBの間に割り込む事が可能だ。
だが、
それには自分の場所と繋いだ場所が解らなければ割り込む事は出来ない。
男は軽く舌打ちをする。
(クソが……何処でも見張ってやがるか)
下はダボダボの黒いズボンに上は真っ白なトレーナー。
トレーナーに付いたフードは今もすっぽりと被っている。
黒い運動靴の紐は両方共キッチリと結んである。
両手に黒の革手袋、腰に巻いた小さな鞄にはチョークの様な白い棒がビッシリに入っている。
端から見ればかなり暑そうに見えるこの格好は男の戦闘スタイルだ。
男は鬱陶しそうにまっ白いフードを取った。
フードが取れると共にサラサラとした日本人を示す黒髪が現れた。
男は青年と言うには幼く、少年と言うには老けて見えるが、まだ少年という年代ではある。
だが少年には少しおかしい物があった。
それは黒髪とは不釣り合いな赤い瞳。
その目は森を抜けた先を見ていた。
森が抜けた先に学園都市が存在する。
足元に描かれた紫の円が同時に消える。
男は無言で立ち上がった。
(通信の魔術回路に無理矢理割り込みやがったな……)
通信の途中で別の力が働き、術式の失敗により体にリバウンドで返ってきたのだ。
それは魔術の詠唱を割り込む強制詠唱(スペルインターセプト)と似た様なもので、
通信の術式を横から割り込んだのだ。
通信の術式は電話と同じ様にAからBに回線を繋ぐので、
この回線のAとBの間に割り込む事が可能だ。
だが、
それには自分の場所と繋いだ場所が解らなければ割り込む事は出来ない。
男は軽く舌打ちをする。
(クソが……何処でも見張ってやがるか)
下はダボダボの黒いズボンに上は真っ白なトレーナー。
トレーナーに付いたフードは今もすっぽりと被っている。
黒い運動靴の紐は両方共キッチリと結んである。
両手に黒の革手袋、腰に巻いた小さな鞄にはチョークの様な白い棒がビッシリに入っている。
端から見ればかなり暑そうに見えるこの格好は男の戦闘スタイルだ。
男は鬱陶しそうにまっ白いフードを取った。
フードが取れると共にサラサラとした日本人を示す黒髪が現れた。
男は青年と言うには幼く、少年と言うには老けて見えるが、まだ少年という年代ではある。
だが少年には少しおかしい物があった。
それは黒髪とは不釣り合いな赤い瞳。
その目は森を抜けた先を見ていた。
森が抜けた先に学園都市が存在する。
少年は視線を外すと近くの太い木へと移した。
腰に巻いた小さな鞄から一本の真っ白なチョークを取り出すと太い木に器用に円を描く。
続いてその円の中に三角を書き入れる。慣れた手つきで三角の中にビッシリと文字を書き入れた。
文字には様々な天使の名前が英語で書かれている。そこに魔方陣が出来上がっていた。
チョークを投げ捨てると、書いた円に革手袋をはめた右手で魔方陣に手を付いた。
ぽうっと紫色に魔方陣が光りだした。
『極力連絡は避けてもらいたいんだけどな、』
魔方陣から男の声がした、通信の術式だ。
「……ターゲットの確認だ」
少年が男に向けた声は知り合い同士とは思えない殺意が込められていた。
『確認せずともすでに書類は渡しただろう?まどろっこしいのは無しだよ罪人』
男の罪人という言葉に少年が一瞬反応を見せた。
「………」
少年は黙り込んだ。更に殺意を広げて通信の魔方陣を睨む。
『クククク正直だ、安心しろよ『今』は無事だ』
男の『今は』という言葉に少年は赤い瞳で魔方陣を睨む。
『なんなら声を聞かせてあげようか?』
男の楽しそうな声と共にジャラッと鎖の様な音がした。
『キャァッ!』
少女のか細い声が魔方陣から聞こえた。
「!」
少年が目を見開く。
先ほどまでの殺意が消え、あまり動かなかった表情に恐怖の色が浮かぶ。
『聞こえたか?聞こえたか?ククク』
男の楽しそうな言葉が少年の耳に入る。
『こんな女の何所がいいんだか……僕だったら見捨てるけどね、罪人が正義気取りか?クク」
少年が男の正義という言葉に反応した。
「正義?俺が?……俺は善人じゃ無ェ…依頼が終われば殺してやるよ、糞野郎が」
少年は殺してやる、と何度も口ずさむ。
『しっかりと殺れよ、僕は監視しているからねェ、怖くなってオネーチャンに連絡するなよ』
馬鹿にした様に言った後、楽しそうな笑い声と共に通信が切れた。
少年がギリッと歯を食い縛る。
少年は善人では無い、壊す事のみで存在意義を示す。
その赤い眼がそれを示していた。
腰に巻いた小さな鞄から一本の真っ白なチョークを取り出すと太い木に器用に円を描く。
続いてその円の中に三角を書き入れる。慣れた手つきで三角の中にビッシリと文字を書き入れた。
文字には様々な天使の名前が英語で書かれている。そこに魔方陣が出来上がっていた。
チョークを投げ捨てると、書いた円に革手袋をはめた右手で魔方陣に手を付いた。
ぽうっと紫色に魔方陣が光りだした。
『極力連絡は避けてもらいたいんだけどな、』
魔方陣から男の声がした、通信の術式だ。
「……ターゲットの確認だ」
少年が男に向けた声は知り合い同士とは思えない殺意が込められていた。
『確認せずともすでに書類は渡しただろう?まどろっこしいのは無しだよ罪人』
男の罪人という言葉に少年が一瞬反応を見せた。
「………」
少年は黙り込んだ。更に殺意を広げて通信の魔方陣を睨む。
『クククク正直だ、安心しろよ『今』は無事だ』
男の『今は』という言葉に少年は赤い瞳で魔方陣を睨む。
『なんなら声を聞かせてあげようか?』
男の楽しそうな声と共にジャラッと鎖の様な音がした。
『キャァッ!』
少女のか細い声が魔方陣から聞こえた。
「!」
少年が目を見開く。
先ほどまでの殺意が消え、あまり動かなかった表情に恐怖の色が浮かぶ。
『聞こえたか?聞こえたか?ククク』
男の楽しそうな言葉が少年の耳に入る。
『こんな女の何所がいいんだか……僕だったら見捨てるけどね、罪人が正義気取りか?クク」
少年が男の正義という言葉に反応した。
「正義?俺が?……俺は善人じゃ無ェ…依頼が終われば殺してやるよ、糞野郎が」
少年は殺してやる、と何度も口ずさむ。
『しっかりと殺れよ、僕は監視しているからねェ、怖くなってオネーチャンに連絡するなよ』
馬鹿にした様に言った後、楽しそうな笑い声と共に通信が切れた。
少年がギリッと歯を食い縛る。
少年は善人では無い、壊す事のみで存在意義を示す。
その赤い眼がそれを示していた。