とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 5-209

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匿名ユーザー

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夕焼けの紅に染まる学園都市のとある公園で、気だるげにベンチに腰を掛けている上条は、毎度お馴染み電撃娘に追いかけ回されていたのを、なんとか振り切ったところだった。
「はぁ…はぁ……。命の危機が、こう何度も続いてたら上条さんは砕けちゃいますがな!」
誰も居ないはずの公園で、一人愚痴る。
「あらあら、そんな大きな声を出してどうしたんですの?」
「ーっ!?」
突如、背後から声を掛けられ、ビックゥと上条は肩を震わせた。
「白井か…」
「見たところ、とてもお疲れのようですわね」
おもむろに白井は上条の隣に腰を下ろした。
「あ、あぁ……。また御坂に追いかけ回されてな」
「また、ですの?うふふ…この機会に一本、いえ、二、三本どうです?」
「そんなんいるか!」
愛するお姉様の想い人である上条を前に、白井は太もものホルスターから金属矢を抜き放ち、見せ付ける。
「遠慮しなくていいんですわよ?」
うふふふ、と黒い笑みを浮かべながら、いつでも飛ばせるように金属矢を揺らす。
「マジでいらねーよ!」
「えいっ☆」
「ぬぉわぁああああ!」
上条が遠慮するのをお構\いなしに白井は一本、上条の太ももの辺りに金属矢を空間移動させるが、間一髪で上条は脚を開いてそれを避けた。


「…チッ」
「何故に舌打ち!?」
「空耳ですわよ?」
「んなわけあうごぉおおおおう!!」
途中、上条の言葉が絶叫に変わったのは、脇腹の辺りに金属矢が刺さりかけたからであり、それを上条は変に胴体を捻ったために奇声兼絶叫になったのだ。
「む…わたくしの金属矢を勘で避けるなんて、すごい反射神経をお持ちですのね……」
「いやいや、そこ感心しなくていいから!」
はぁはぁぜぇぜぇ、と息を切らせながら上条は必死にツッコミを入れる。
「隙あり、ですわ」
「ぶるぁああああああああああおうぅぅ!」
今度は反対側の脇腹、太もも、足元目掛けて金属矢が出現した。
「危ねーっ!」
「一発くらい当たれ、ですの」
「病院送りになるから遠慮させて頂きます!」
わーわーきゃーきゃー騒ぐ二人。普段は滅多に見られない光景だ。
(この方と一緒に居ると…どこか落ち着く…安心しますわ……)
ベンチにぐったりとしている上条を横目に、白井はそんなことを考える。
(こんな殿方でもあり、困ってる人を命懸けで助けてくれる殿方でもあるのですわね……)
かつて自分を救い出してくれた時の上条の姿を思い出す。
(何も持たず、右手ひとつで来てくれましたわね)
不意に、顔が熱くなった。


「白井」
名前を呼ばれ、白井は我に還る。
何事かと思い、隣の少年を見直した。
「どこか調子悪いのか?」
先程までとは打って変わって、真剣な眼差しで白井を心配そうに見つめている。
「ーっ!」
その眼差しを見て、顔が真っ赤になる白井。
「顔も赤いし、風邪じゃないよな?」
どれどれ、と言いながら上条は白井の前髪をかきあげ、
「?」
「よいしょ、っと」
何をするのかと不思議に思っていると、突然コツン、と額に衝撃が走り、続いて上条の顔が拡大されたた。
(な、ななな、なんですのー!?)
混乱の極み状態に陥る白井。そんな白井を余所に、
「熱は無いみたいだな。調子悪いなら無理すんなよ?」
くっつけていた額を離しす上条。
「え、えぇ。わかり、ましたわ…」
「おkおk、わかったならいい」
白井の間抜けな返事にも、上条はきっちりと返す。
「ーーー♪」
急に、場違いとも思えるアラームが鳴り響く。
「なんだ?」
「風紀委員の仕事、ですわ」
はぁ、とため息をつきながら白井は使いにくい携帯を取り出す。
「はい、ですわ」
「白井さん、事件発生です!」
電話越しの甘ったるい声に、やっと脳が落ち着いてきた。
「えぇ、すぐに向かいますわ」
簡単な説明を受け、白井は電話を切った。


「事件か?」
「そのようですわ」
「誰か困ってるのか?」
「恐らく、いえ、間違いなく困ってる人がおりますわね」
よし、と上条は一息付くと、
「俺も付いていく」
「一般人は下がっていて下さいな」
「困ってるやつが居るのに大人しくしてられねーよ」
白井にはこの少年が本気で言っていることを感じ取れた。
(下がれ、と何度行っても聞きそうにないですわね…)
はぁ、とまたため息を付いて、
「しょうがないですわね、良いですわ。それでは、行きますわよ」
付いてきてくださいな、と言いながら、白井は走り出す。
「了解、っと」
半ば強引に、困ってる人を助けようとしている上条は後に続く。
始末書モノですわね、と走る脚を早めながら、考える。
(でも…殿方さんが一緒ならなんでも出来そうな気がしますわ)
夕焼けの紅が、深い黒になりかけている学園都市を、二人は駆け出して行った。

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