とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 5-281

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
『とあるUFOキャッチャー』~一方通行・打ち止め編~



 とあるゲームセンター。
 店内の客は決して多くはないが、少なくもない。
 いくつものゲーム機が様々な電子音や音楽を流し、ジャラジャラとメダルが流れ落ちる音が混じる。
 そこへ、一人の小さな少女が駆け足で中に入り込む。
 空色のワンピースの上に男物のシャツを着た少女は、一台のゲーム機の前で急停止。
 後ろを振り返ると、遅れてやってきた白髪の少年に手招きする。
 白い髪に白いシャツ。白尽くめの中で黒いチョーカーと赤い瞳が鮮明に浮かび上がっている。
 少年は必死に杖を突いて少女の下へ辿り着くと、荒い息を整える。
「なんだァ?」
「UFOキャッチャーだよってミサカはミサカは覗き込んでみる」
「俺はやらねェぞ」
「あれを見てってミサカはミサカは指差してみたり」
「……」
 少年が赤い瞳で透明なプラスティックケースの中を覗き込む。
 その中には景品の二頭身のぬいぐるみが山のように積まれている。
 黒髪のツンツン頭、煙草を手にした赤い髪の神父、巫女服の少女、茶色のツインテールの少女……etc。
 その中で、少年の目を引いたのは二つのぬいぐるみだ。
 一つはぬいぐるみの山の頂点に置かれた、白髪の少年のぬいぐるみ。
 もう一つは下の方に転がる、茶色の髪が一房ほど跳ね上がった少女のぬいぐるみ。
 誰が勝手に作りやがった、と怒り混じりの声が洩れる。
 そのぬいぐるみは一つずつしか入っていない。
 しかし、他の店でも置かれてる可能性が――
「ここのお店にしか置いてないんだよってミサカはミサカは調査済みだったり」
「そうなのか?」
「誰が作ったのかは分からないけど作れる人も限られてるよねって
 ミサカはミサカは500円玉を取り出したり」
「確かに作る度胸のある人間は限られてる。ってことは、こいつは何か意味があンのか?
 ――で、おまえはあンな綿詰めの人形が欲しいのかよ」
 跳ね上がった一房の前髪を揺らして、少女は小さく頷く。
 その目には一つのぬいぐるみが映っている。
 山積みのぬいぐるみの頂点で、黒い服を着た白髪の少年が両手、両腕を広げて笑っている。
「人生は何事も経験なんだよってミサカはミサカは妹達の上位固体としての体面を保つべく
 挑んでみたり」
「どっかのミサカがやったのか。まあ、景品だしなァ……。
 取っちまえば、どこで作られたかも分かるか」
 少女が入れた硬貨をゲーム機が飲み込む。




「うう、意外と難しいんだね、ってミサカはミサカは現実の厳しさに打ちのめされたり」
 うな垂れる少女の頭が、こつんっとケースに当たる。
 そう多くはないお小遣いを全部使ってしまったらしい。
 目当ての少年のぬいぐるみは、最初に掴み損ねたときに一番下へ落ちた。
 その後、何度も掴んでは落として、その度ツンツン頭のぬいぐるみとぶつかり、あちこちへ転がり回った。
 筐体に寄りかかっていた少年は『何ですかァ、この情けねェ様は……』とまともに見ていられなかった。
 だが、少女が財布の中身を使い切ると、
「……ったく、こんなもんはなァ」
「叩いた衝撃の向き―ベクトル―を操作すると、検知器に反応して警報がなるかもって
 ミサカはミサカは注意してみたり」
 少年は杖で体を支えながら、財布から硬貨取り出した。
 100円玉を一枚投入。
 安っぽい音楽が流れ、クレーンの動く振動がケースに額をくっつけた少女に伝わる。
 少女はケースの中を見ていない。
 ぼとっという物音した。
 音楽がゲーム一回分鳴り終わる。
 少女は顔を上げて、ケース内を覗き込む。
 少年のぬいぐるみが見当たらない。
 どこにあるの?と、少女が隣を見ると、
「何ですかその顔は?……おい、何涙目になってンだよクソガキ!」
 口の両端を吊り上げて笑う、二頭身のぬいぐるみが少女にパンチ。
「取れたの!?ってミサカはミサカはあなたの意外な特技に驚いてみたり!」
「ここにいるのは誰でしょう?」
 両腕を広げたぬいぐるみが笑っている。
 それを手にした少年がぬいぐるみと同じように笑った。
「学園都市の能力者、その頂点に立つ最強だろォ?これぐらい楽勝なンだよォ」
 突き出されたぬいぐるみを少女が受け取る。
「これで満足したか?さっさと……」
「あのねあのねってミサカはミサカは上目遣いであなたを見たり」
「――で、どれなんだァ」
「言わなくても分かるよねってミサカはミサカはあなたの視線が釘付けだから妬いてみたり」
 数十秒後、小さな少女に良く似たぬいぐるみが少年から手渡される。



 この出来事は、とあるネットワーク上においてリアルタイムで実況中継されており、
 後に同じ容姿をした少女達の間で密かなブームとなる。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
ウィキ募集バナー