とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 5-415

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集
もしも二人が…


一端覧祭も終わり、本格的に冷え込んできた11月のとある休日。上条当麻と御坂美琴は第一七学区にある映画館を訪れていた。一端覧祭の時に起きた魔術師との戦いが一段落して最終日のメインイベント、全校生徒が集うダンスパーティーに、御坂美琴に誘われるがままに誘われて、踊った。
そして、フィナーレの前に告げれられた、突然の告白。
人生初の告白に、最初は冗談かと思ったが、彼女の今にも泣きだしそうな表情から、これが冗談ではないことは分かった。こんな可愛い女の子から想われて、ノックダウンしない男なんていない。上条当麻は彼女をそういう目で見たことはなかったが、客観的に見れば非常に魅力的な女の子だった。とても優秀で、上条当麻とは抱え離れた世界にいる人間だと思っていたが、そうではない。むしろ、彼女を知れば知るほど普通の女の子ということが解る。幾度となく、彼女の協力を得て助かった事件も多くあり、彼女を女の子と意識し始めると、何だか胸が熱くなった。
返事はもちろん、OKだった。


そして、今、こうしてここにいる。
御坂美琴は映画館の館内にあるロビーのソファーで寛いでいた。上条当麻は買ってきた二つのジュースを、目をトロンとしている美琴の両頬に押し当てた。
「わひゃあ!」
可愛い声で、予想通りのリアクションを取った美琴に上条は笑った。
「お前さ。寝不足で映画を見たいなんて言うなよ。確かにこの映画は今日で終わりだけど、ネット配信されるのを待っておけばよかったじゃないか…」
「……」
美琴は黙り込んでしまった。
あちゃあ、と言い過ぎたと上条は思って色々と言ってみたが何の反応もなかった。美琴は俯いたまま、何かを呟いていた。
「……だもん」
あまりに小さな声だったので、上条は耳を傾けた。
「え?」
「………なんだもん」
「美琴、聞こえないん…」
上条は美琴の耳元に顔を近づけて、彼女のか細い声を聞き取った。


「当麻との初デート…嬉しくて、眠れなかったんだもん…」


(――――――――っ…)
美琴は今にも泣きそうな顔をして、顔を真っ赤にさせていた。
上条は美琴の隣に座って。無言で彼女の肩を思いきり抱き寄せた。
「わひゃあ!」
可愛い声で、予想通りのリアクションを取った美琴に上条は笑って、耳元で囁いた。
「…お前、可愛すぎ」
「なっ!!」


美琴を抱き寄せたまま、二人はじっとしていた。先ほど買ってきたジュースを飲みながら、取りとめもない話をしていた。学校のこと、テレビのこと、友達のこと、先生のこと、そして『妹達』のこと…
美琴が寝不足なので、ローテンションの会話のままで、ジュースを飲み終えた後も二人はソファーに座ったままだった。次の映画はすでに始まっていて、周囲に人影はない。
「ねえ、当麻」
「なんだ。美琴」
「……私のこと、好き?」
「…いきなり何だよ」
「売店の子、誰?」
ぎくっと、上条は身を震わせた。その挙動不審ぶりを直に感じ取った美琴はジト目で上条を睨みつけた。いくら中学生と言えど、『超能力者(レベル5)』の第三位。その殺気は伊達じゃない。
「…ク、クラスメイ…」
「アンタのクラスには金髪の外人がたくさんいるの?」
「…髪を染めたジャパニーズしかいません」
「やっぱり私のこと、遊びなんだ」
「…俺ってそんなに信頼無いか?」
「…女の子に関しては、ね」
美琴の鋭い目つきに耐えかねた上条は視線を逸らすと、ツンツンした黒髪を掻いて、小さくため息をついた。確かに思い返してみれば、最近親しくなった女の子は両手には数えきれないほどいる。上条は事情があると言っても納得してくれないだろうということは分かっていた。
上条はもう一度大きく息を吸うと、
少年は行動に出た。


「美琴、好きだ」


上条は美琴を見据えて言った。周囲には誰もいない。防音材に囲まれた会場から漏れ出す、放映されている映画の小さな音だけであって、上条の声は周囲に響き渡った。
美琴はみるみる顔を赤らめた。言葉を放つ前に、上条の顔が近づいてきて、その口を塞がれてしまった。


チュッ


頬を染め、目を見開いている彼女に、上条は優しく微笑み、魔法の言葉をかけた。
「愛してるよ」
上条は美琴のリアクションに満足すると、彼女の持っていたアルミ缶を持った。自分の分とダストシュートに捨てようと席を立った時、ふいに右手に力がかかった。振り返ると、そこには俯いたまま上条の手を握る美琴の姿があった。
「…ねえ、当麻」
「…何だ?」
茶色のショートヘアーを揺らせながら、顔を真っ赤にした彼女の表情が上条の目に入った。
「…この後、時間ある?」
その声に、その表情に上条の心に何か迫るものがあった。急に顔が熱くなった上条は美琴の顔を直視できなかった。そして、彼には似つかわしくない小さな声で、彼女に言った。
「…当たり前だろ」
手を繋いで映画館を後にした。
映画館を出るまで、二人は顔を合わせられなかった。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
ウィキ募集バナー