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「ち、ち、く……しょう……あの暴力スリ、今度会ったら……はぁ、はぁ………か、かみじょーさん必殺の一撃を……ぜぇ、ぜぇ…………」
結局あのスリに逃げられた上条は、自分の部屋がある学生寮に帰ってきていた。
エレベーターに貼られた『現在調整中です。階段をお使いください』という張り紙を恨めしそうに数秒見つめるが、使えない物は使えないので素直に階段で自室を目指す上条。だが朝は使用禁止になって無かった所から考えて、やはり不幸だった。
エレベーターに貼られた『現在調整中です。階段をお使いください』という張り紙を恨めしそうに数秒見つめるが、使えない物は使えないので素直に階段で自室を目指す上条。だが朝は使用禁止になって無かった所から考えて、やはり不幸だった。
逃げられた原因は単純明快。
全力でスリを追い、距離もいくらか縮まってきたとき、スリは急に方向転換をして路地裏の道に入ろうとしたのだ。
これを今まで以上のスピードで追う上条、これまで何度も無能力者集団とやりあってきた上条には分かる。路地裏は彼らのホームグラウンド。縄張り。
逃げ込まれたらマズイ。そう思い、スピードを上げたのが間違いだった。
自らの経験をもっとよく思考すれば、こうなるかもしれない位の事は予想できたのに。
これを今まで以上のスピードで追う上条、これまで何度も無能力者集団とやりあってきた上条には分かる。路地裏は彼らのホームグラウンド。縄張り。
逃げ込まれたらマズイ。そう思い、スピードを上げたのが間違いだった。
自らの経験をもっとよく思考すれば、こうなるかもしれない位の事は予想できたのに。
路地裏へと逃げたスリを追うため、上条も路地裏へと入ろうとしたその瞬間
ドゴン!!というすさまじい音が「自分の腹から」体全体に伝わってきた。ガハッツ!!と肺の酸素を強制的に吐き出させられ、上条はその場にうずくまる。
「奇襲」の2文字が頭をよぎる。対多数戦に有効なこの手は、上条がよくやる事でもあった。
「奇襲」の2文字が頭をよぎる。対多数戦に有効なこの手は、上条がよくやる事でもあった。
喧嘩慣れしている上条は自分の実力を熟知していて、勝てるのは1対1まで。2対1なら危ういし、3対1なら迷わず逃げる…………のだが時々、逃げても逃げても追いかけてくる奴らがいたりする。
そんな時、手頃な脇道に入り、呼吸を整え準備をし、1番初めに入ってきた奴を殴り飛ばすのだ。逃げていると思っている&大人数と言う事で油断しきっているからこれがやたらと効く。さらに1人撃破する事で相手の指揮も乱れ、逃げ果せるチャンスも大きくなる。
…………まさかそのシュチュエーションを自分が受ける事になろうとは。
上条が蹲ったまま顔だけ上げると、案の定スリは逃げ果せた後だった。
そんな時、手頃な脇道に入り、呼吸を整え準備をし、1番初めに入ってきた奴を殴り飛ばすのだ。逃げていると思っている&大人数と言う事で油断しきっているからこれがやたらと効く。さらに1人撃破する事で相手の指揮も乱れ、逃げ果せるチャンスも大きくなる。
…………まさかそのシュチュエーションを自分が受ける事になろうとは。
上条が蹲ったまま顔だけ上げると、案の定スリは逃げ果せた後だった。
「…………はぁ……これで少なくとも上条さんの1週間の食事は朝昼晩と食パン、そしてインデックスに頭を喰い千切られる事は決定ですはい……」
部屋で待つ超大食修道女の怒りをどうやって和らげようか考える上条が、自分の部屋がある階へと続く階段の途中の踊り場で立ち止まってから5分が経過しようとしていた…………その時だった。
「?」
踊り場から、ふと自分の部屋を見上げると、なにか違和感をおぼえる。階段を登り切り、近づいて違和感を確かめようと……した。
近くに行くまでも無かった。僅かだが確実に「ドアが開いている」
踊り場から、ふと自分の部屋を見上げると、なにか違和感をおぼえる。階段を登り切り、近づいて違和感を確かめようと……した。
近くに行くまでも無かった。僅かだが確実に「ドアが開いている」
「んなッ!!」
上条は迷う事無く駆け寄り、ドアの具合を確かめる。
上条は迷う事無く駆け寄り、ドアの具合を確かめる。
インデックスが部屋に居るならドアが開いているという事は無い。
部屋の合鍵も渡してあるから自由に外出が出来る……よって、鍵をかけ忘れたまま出かけるという事も無いはずだった。
部屋の合鍵も渡してあるから自由に外出が出来る……よって、鍵をかけ忘れたまま出かけるという事も無いはずだった。
考えられる可能性は………………かなり絞られてくる。
上条は、自身の不幸体質というのがあるから断言はできないが、ただの空き巣ではないと考えていた。
ただの空き巣が、学生寮、それも平凡な高校の平凡な高校生の部屋に狙いを定めるわけがない。それにこんな上の階じゃ無く、逃げやすさを考慮した下の階を狙うだろう。
ただの空き巣が、学生寮、それも平凡な高校の平凡な高校生の部屋に狙いを定めるわけがない。それにこんな上の階じゃ無く、逃げやすさを考慮した下の階を狙うだろう。
…………魔術関連が1番高い、と上条は思う。
禁書目録―10万3000冊の魔道書を管理するインデックス。
ローマ政教の30億人に命を狙われている上条。
ローマ政教の30億人に命を狙われている上条。
そっちの方がよっぽど納得がいく。実際には納得いってほしくないのだが、それ以外に思いつかない。
よって、誰かが無理やりこじ開けたのではと思ったのだが、その様な後は全く無い。空いている事を除けば、極々自然な状態だった
よって、誰かが無理やりこじ開けたのではと思ったのだが、その様な後は全く無い。空いている事を除けば、極々自然な状態だった
だが油断は出来ない。上条の経験上、魔術師ってのは何でもありのとんでも集団だ。
聖人だったらその腕力だけでドアをへし曲げる事が出来るだろう。スパイ業を兼ねている者なら合鍵ぐらい持ってそうだし、タバコ好きの者なら人払いかなんかで人目に付くこと無く行動していそうだ。
だからいとも簡単に、かつ自然に、部屋へ侵入する事が出来る魔術だってあるかもしれなかった。
(インデックスは今どこだ!?携帯……ってどうせまた充電切れてんだろうな…………)
このドアの先、自室には上条もしくはインデックスを狙う奴らがいるかもしれない。
ここでインデックスを呼ぶわけにはいかない、だが中で人質にされている場合だってあるかもしれない。
ここでインデックスを呼ぶわけにはいかない、だが中で人質にされている場合だってあるかもしれない。
上条はドアを近距離で穴があくほど睨みつける。
その手はドアノブまであと数センチの所で止まっていた。
その手はドアノブまであと数センチの所で止まっていた。
(……くそっ!どうする…………)
入るべきか、入らざるべきか
(……どうする…………!!)
と、ここで上条の意識は一度途切れかける。
ドアがいきなり内側から思いっきり開いてきたからだ。
超視近距離でドアノブとにらめっこしていた上条は、問答無用で手すりがある方の壁にぶっとばされる。
ドアがいきなり内側から思いっきり開いてきたからだ。
超視近距離でドアノブとにらめっこしていた上条は、問答無用で手すりがある方の壁にぶっとばされる。
「そげふ!!??」
「………………なんだ、少年でしたか……んなとこでなにやってんです?」
「………………なんだ、少年でしたか……んなとこでなにやってんです?」
顔を押さえてのた打ち回る上条の耳に、聞き覚えのある、少し生意気な女の子の声が聞こえてきて、上条はガバッ!と顔を上げる。
「な……!!」
「ちょうどよかったです、色々話したい事がありますんで早く入ってください」
「ちょうどよかったです、色々話したい事がありますんで早く入ってください」
いやそこ俺の部屋だし、そもそも俺に対する謝罪の言葉は無しですかそうですか、んでもってインデックスはどこ行った、つーか人の家に勝手に上がり込んでんじゃねえ。
と、言いたい事は色々あったが、とりあえず上条の口から出たのはその声の主の名前だった。
「アニェーゼ!!なんでお前がここに!!?」