『とあるUFOキャッチャー』~ステイル編~
「インデックス。あと少しだ。あと少しで君をそこから救い出せる……」
とあるゲームセンター。
それなりに人が入り、喧しい音を立てるこの店の入り口付近に一台のUFOキャッチャーが
大量のぬいぐるみを景品として抱えて鎮座している。
その景品はツンツン頭や白髪の少年、黒や茶色の髪の少女などの二頭身のぬいぐるみだ。
とあるゲームセンター。
それなりに人が入り、喧しい音を立てるこの店の入り口付近に一台のUFOキャッチャーが
大量のぬいぐるみを景品として抱えて鎮座している。
その景品はツンツン頭や白髪の少年、黒や茶色の髪の少女などの二頭身のぬいぐるみだ。
一人の少年がこのUFOキャッチャーに熱中している。
肩にかかる燃えるような赤い髪。
右の目元にはバーコードの形をした刺青。
黒い修道服。
顔立ちは14、5歳だが、その長身は二メートルに達する。
耳にはピアス、ギラギラ輝く指十本分の指輪。
漂う甘い香水の匂い。
この異様な姿の少年は明らかに異常な空気を発している。
だが、ゲームセンターという人が集まる場所にいながら、誰一人この少年に目を向けない。
少年の姿を目にした人間は、無意識の内に『おかしい』『異常だ』という思いを抱かせない、
一種の暗示のようなものにかかっている。
この力は『魔術』によるものだ。
その力は少年を中心に数十メートル以上に及んで発せられている。
そして、この少年は『魔術師』である。
「くっ……あと少し!あと少し、手を伸ばせば届くんだ」
周囲の喧騒など少年の耳にはまったく耳には入らない。
一つ目のボタンを慎重に押して、離す。
目標は横倒しになった二頭身のぬいぐるみ。
ナイフとフォークを手に愛らしい笑みを浮かべる、白い修道服を纏った銀髪碧眼の少女だった。
二つ目のボタンを押す。防犯実験用特殊プラスティックケース越しにぬいぐるみを見る眼光が鋭くなる。
一つ目のボタンで奥へ、二つ目のボタンで横へ移動するクレーンがぬいぐるみの真上に到達する。
ゆっくりと、クレーンのアームが降下する。
事前に両替した大量の五百円玉も残り僅かだ。
出し惜しみはしなかった。手持ちの紙幣はすべて硬貨へ換金した。
それがなくなれば、この場を一度離れる必要がある。
一度ATMでお金を下ろせば、まだまだ戦い続けられる。
だが、ここを離れた数分の内に、他の誰かが『彼女』を連れ去ってしまうかもしれない。
だから――ここを離れるわけにはいかないのだ。
ちらりと景品の一つとしてあるツンツン頭のぬいぐるみを見る。
この場に『あの少年』はいない。
ならば、自身の力で成し遂げるしかない。
持てる限りの力を振り絞り、今このときにすべてを賭ける。
アームがぬいぐるみをしっかりと掴んだ。
今度こそ――
「君をこの手で救い出してみせる……!」
肩にかかる燃えるような赤い髪。
右の目元にはバーコードの形をした刺青。
黒い修道服。
顔立ちは14、5歳だが、その長身は二メートルに達する。
耳にはピアス、ギラギラ輝く指十本分の指輪。
漂う甘い香水の匂い。
この異様な姿の少年は明らかに異常な空気を発している。
だが、ゲームセンターという人が集まる場所にいながら、誰一人この少年に目を向けない。
少年の姿を目にした人間は、無意識の内に『おかしい』『異常だ』という思いを抱かせない、
一種の暗示のようなものにかかっている。
この力は『魔術』によるものだ。
その力は少年を中心に数十メートル以上に及んで発せられている。
そして、この少年は『魔術師』である。
「くっ……あと少し!あと少し、手を伸ばせば届くんだ」
周囲の喧騒など少年の耳にはまったく耳には入らない。
一つ目のボタンを慎重に押して、離す。
目標は横倒しになった二頭身のぬいぐるみ。
ナイフとフォークを手に愛らしい笑みを浮かべる、白い修道服を纏った銀髪碧眼の少女だった。
二つ目のボタンを押す。防犯実験用特殊プラスティックケース越しにぬいぐるみを見る眼光が鋭くなる。
一つ目のボタンで奥へ、二つ目のボタンで横へ移動するクレーンがぬいぐるみの真上に到達する。
ゆっくりと、クレーンのアームが降下する。
事前に両替した大量の五百円玉も残り僅かだ。
出し惜しみはしなかった。手持ちの紙幣はすべて硬貨へ換金した。
それがなくなれば、この場を一度離れる必要がある。
一度ATMでお金を下ろせば、まだまだ戦い続けられる。
だが、ここを離れた数分の内に、他の誰かが『彼女』を連れ去ってしまうかもしれない。
だから――ここを離れるわけにはいかないのだ。
ちらりと景品の一つとしてあるツンツン頭のぬいぐるみを見る。
この場に『あの少年』はいない。
ならば、自身の力で成し遂げるしかない。
持てる限りの力を振り絞り、今このときにすべてを賭ける。
アームがぬいぐるみをしっかりと掴んだ。
今度こそ――
「君をこの手で救い出してみせる……!」