第二章 十一月のとある日 錬金術師との親交Ⅰ
バチカンの大聖堂
そこは世界最高峰の霊地にある世界最大の聖域ともいえる。その地下深くにその部屋はある。
部屋の前には13~14歳ぐらいの東洋人…日本人らしき少年が立っている。少年は部屋には入ろうとせず作業が終わるのを待っていた。前にこの部屋が開いたのは三日前のこと。そろそろ終わるはずだ。
そこは世界最高峰の霊地にある世界最大の聖域ともいえる。その地下深くにその部屋はある。
部屋の前には13~14歳ぐらいの東洋人…日本人らしき少年が立っている。少年は部屋には入ろうとせず作業が終わるのを待っていた。前にこの部屋が開いたのは三日前のこと。そろそろ終わるはずだ。
「憮然。ホテルで待っていろと言ったはずだが?」
三日ぶりに部屋から出きたのは15歳ぐらいのこれまた少年だった。
緑色に髪を染めオールバックにしブランド物の衣服で身を固めている。しかし良くみれば髪は所々はねており着ていた衣服もシワができていた。如何にも今まで徹夜してましたと言っているようなものだ。名をアウレオルス=イザート。ローマ正教に属する錬金術師だ。
緑色に髪を染めオールバックにしブランド物の衣服で身を固めている。しかし良くみれば髪は所々はねており着ていた衣服もシワができていた。如何にも今まで徹夜してましたと言っているようなものだ。名をアウレオルス=イザート。ローマ正教に属する錬金術師だ。
「アウレオルス。君さ仕事熱心なのはいいけど。たまには休むことを覚えれば?」
「愚問。未だ我が目的も果たせぬというのに休むなど考えられぬ」
「愚問。未だ我が目的も果たせぬというのに休むなど考えられぬ」
やれやれと日本人の少年が苦笑する。持っていたカバンから何かを取り出した。
「とりあえず英国行きのチケットと宿泊先の手配。そして清教側との密談場所の確保。その他もろもろ君に言われたモノは揃えといた」
「当然。わざわざその為に貴様を呼んだのだ。しかし礼を言おう。清教側に知り合いなどそうそういるものではない」
「当然。わざわざその為に貴様を呼んだのだ。しかし礼を言おう。清教側に知り合いなどそうそういるものではない」
正、清、成。
ローマ正教は、「世界の管理と運営」
イギリス清教は「魔女狩りや異端狩り」
ロシア成教は「オカルトの検閲と削除」
と十字教の三大宗派はそれぞれ異なる方向へと進化し個性化していった。その為互いに相容れずにいた。
ローマ正教は、「世界の管理と運営」
イギリス清教は「魔女狩りや異端狩り」
ロシア成教は「オカルトの検閲と削除」
と十字教の三大宗派はそれぞれ異なる方向へと進化し個性化していった。その為互いに相容れずにいた。
そしてそれこそがアウレオルスが決断した理由でもある。
魔女の脅威から罪なき人々を助ける。その為に教会に属しながらもアウレオルスは魔道書を書き続けた。それは確かに人々を助けた。しかしローマ正教は自分ら正教徒にしか助けなかったのだ。
アウレオルスは清教と接触することにした。多くの人を助けるために。
そして仲介役にこの少年を選んだ。特定の組織に属さずに聖人というチカラを武器にあらゆる組織との繋がりをもつこの少年に。
アウレオルスは清教と接触することにした。多くの人を助けるために。
そして仲介役にこの少年を選んだ。特定の組織に属さずに聖人というチカラを武器にあらゆる組織との繋がりをもつこの少年に。
第二章 十一月のとある日 錬金術師との親交Ⅱ
「まぁ君には黄金錬成(アルス=マグナ)について色々教えてもらったし…でもいいのか本当に?」
他組織との無断で接触することは裏切りにとらえられない。(一応この接触は非公式での会談という形であり事前に許可をとっている。まぁ、世間話程度なら問題はないのだが)
「当然。貴様にも叶えたいモノがあるように私にも叶えたい願がある」
一年ほど前にアウレオルスが初めてこの少年に会った時に少年は言っていた。友を救いたいと。
それ以来親交が続いている。
それ以来親交が続いている。
「魔女、魔術師、幽霊や悪魔に、狼男、吸血鬼。いまだこれらを退ける手段は乏しく人々は苦しんでいる。それを救いだすのが我が命題だ」
「狼男に吸血鬼ねぇ…」
「無論例えだ。カインの末裔など在ろうはずない。だが仮に存在していても私はすべての人々を救う。ただそれだけだ」
「狼男に吸血鬼ねぇ…」
「無論例えだ。カインの末裔など在ろうはずない。だが仮に存在していても私はすべての人々を救う。ただそれだけだ」
危うい。
少年は何時も思う。この錬金術師は気づいていない。その命題の矛盾に。悪がなければ正義などない。全ての人を救うというならば悪すら救わなくてはならない事。そして悪など他人からの評価でしかない事に。
少年は何時も思う。この錬金術師は気づいていない。その命題の矛盾に。悪がなければ正義などない。全ての人を救うというならば悪すら救わなくてはならない事。そして悪など他人からの評価でしかない事に。
「どうかしたのか?」
「いや何でも…。そういえば学園都市には『吸血殺し(ディーブブラット)』という能力者がいるらしい」
「『吸血殺し(ディーブブラット)』?」
「そう。問答無用でカインの末裔を誘いだし自身を咬ませ灰に戻すチカラさ」
「否定。ありえないな。そもそも科学主義の連中が吸血鬼の存在を肯定するわけがない」
「別にどっちでもいいんだよ。あいつ等にはただ珍しいチカラだから研究しようってだけなんだから」
「正に都市伝説だな」
「いや何でも…。そういえば学園都市には『吸血殺し(ディーブブラット)』という能力者がいるらしい」
「『吸血殺し(ディーブブラット)』?」
「そう。問答無用でカインの末裔を誘いだし自身を咬ませ灰に戻すチカラさ」
「否定。ありえないな。そもそも科学主義の連中が吸血鬼の存在を肯定するわけがない」
「別にどっちでもいいんだよ。あいつ等にはただ珍しいチカラだから研究しようってだけなんだから」
「正に都市伝説だな」
付き合いきれないとアウレオルスは歩き出す。時間は無限ではないのだ。これから英国に向かう。
「ああそうだ忘れてた。はい」
少年はカードを投げアウレオルスは受けとった。
「何だこれは?」
少年はカードを投げアウレオルスは受けとった。
「何だこれは?」
カードには『Index-Librorum-Prohibitorum』としか書かれていない。
「禁書目録?」
「そう入館(面会)許可状だよ」
「そう入館(面会)許可状だよ」
聞いたことがある。英国の叡智の結晶。10万3000冊の魔道書を記憶する生きる魔道図書館だと。
「特別に許可を取った。役にたつだろ?」
「自然。楽しみが増えた」
「じゃな。俺はお土産を買って帰るよ」
「自然。楽しみが増えた」
「じゃな。俺はお土産を買って帰るよ」
少年は歩きだす。少年は予測もつかなかった。この事で錬金術師が道を踏み外す要因になるのを。そして救いたい友がそれに巻き込まれることを…。
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