「はぁー……」
台所に立つ美琴は大きく溜め息をついた。
溜め息の理由は先程の失敗である。
上条は全く悪くないのに、おもいっきり怒ってしまった。
さすがにあれは理不尽だっただろう。
病人なのだから咳ぐらいするだろうし、元はと言えば美琴自身が妙に意識してしまった事が原因なわけで、上条が怒られるのは筋違いというものである。
その後、落ち着きを取り戻し我に返った美琴は、「お、お粥持ってくるわね!」と言って逃げるように台所へ姿を消し現在に至る。
「(うぅぅ……またやってしまった……)」
またもや凹み気味の美琴。
「(はぁー……嫌な奴って思われたかな……)」
上条にどう思われているか、とても心配な美琴さん。
気になる相手にはやはりいい印象を持っていてもらいたいものだが、先程の事は自分が上条の立場だったら、間違いなく最悪の印象だろう。
そう思うと泣きたくなってくる。
とはいえ、落ち込んでばかりもいられない。
お粥を持ってくると言って台所に来たわけなので、早々に食事の準備をして戻らなければならない。
なんとか沈んだ気持ちを切り替えると、お粥の出来を見るため炊飯器の中を確認する。
お米を研いで水を入れてスイッチを押すだけ、という単純かつ簡単な作業とはいえども初めての料理、うまく出来ているかどうかやはり気になる。
恐る恐る炊飯器の蓋を開けて覗き込もうとすると、蓋を開くと同時にムワっとした蒸気が立ち上りお米の香りがしてきた。
「……見てくれはいい感じね」
蒸気の先に見える炊飯器の中身はきれいなお粥が出来上がっており、見てくれは申し分ないようだが、問題は味である。
妙に失敗続きの本日の美琴さん的には、肝心な味の部分をミスしてないか心配である。
とりあえず、砂糖と塩を入れ間違ってはいないはずだと思い出しながら、何はともあれ味見をしてみる。
さすがに味見もしないで上条に出そうとは思わなかった。軽くお粥を混ぜると少量小皿に取り、そして恐る恐る口を付けてみる。
「ん……熱っ……!」
出来たてのお粥はなかなか熱かったが、
「……美味しい。問題なさそうね」
味は文句のつけようがないほど申し分ない出来だった。
ミスがなかった事にホッと胸を撫で下ろす。
「……じゃあ後は味噌汁を温め直すだけね」
一旦炊飯器から離れると、今度はコンロの前に立つ。
温め直す前に、一度中身を確認しようと鍋の蓋をパカッと開けると、
「……え?」
美琴はそのまま固まってしまい、すぐさま鍋の蓋を閉めた。
「(なに? 今の何?)」
今目にしたものが何なのかわからなかった。
意を決してもう一度蓋を開けてみるが、目にしたものはやはり先程と変わらない。
「なによこれはー!」と絶叫したい気持ちをなんとか踏み止め鍋の中身を確認すると、何やら大量の緑黒い物体が溢れんばかりに浮いていた。
先程は一瞬見てすぐに蓋を閉めてしまったためわからなかったが、よく見て緑黒い物体の正体を確認すると、それは大量のワカメだった。
「……なんで?」
正体がわかれば当然疑問が湧くが、理由は結構単純だったりする。
味噌汁を作っていた時、具に乾燥ワカメを使っていたのだがそれが原因である。
まあ美琴はお嬢様であるから知らなかったのかもしれないが、乾燥ワカメは水に浸すと増量するわけで、元の量の何倍にもなる。
美琴が見たレシピには乾燥ワカメではなく生のワカメの分量が明記されていたため、知らずに生ワカメと同じ分量の乾燥ワカメを投入した結果がこれというわけだ。
おかげでおもいっきり増量したワカメが浮いている。
乾燥ワカメの入った袋の裏面表記と先程見たレシピを見て確認すると、美琴はこの惨状の真相に納得する。
「何でこんなミスするかな……」
あまりにも単純というか、ある意味あり得ないようなミスに自分が嫌になりそうだった。
が、落ち込んでばかりもいられない。
増量した大量のワカメに汁気の大半を吸われ、味噌汁があまり残っていないのでなんとかしなければ。
とりあえず汁を注ぎ足せば問題ないだろうという事で、汁だけもう一度作る事にする。
あまり時間もかけてられないので、テキパキと急いで準備を始めた。
台所に立つ美琴は大きく溜め息をついた。
溜め息の理由は先程の失敗である。
上条は全く悪くないのに、おもいっきり怒ってしまった。
さすがにあれは理不尽だっただろう。
病人なのだから咳ぐらいするだろうし、元はと言えば美琴自身が妙に意識してしまった事が原因なわけで、上条が怒られるのは筋違いというものである。
その後、落ち着きを取り戻し我に返った美琴は、「お、お粥持ってくるわね!」と言って逃げるように台所へ姿を消し現在に至る。
「(うぅぅ……またやってしまった……)」
またもや凹み気味の美琴。
「(はぁー……嫌な奴って思われたかな……)」
上条にどう思われているか、とても心配な美琴さん。
気になる相手にはやはりいい印象を持っていてもらいたいものだが、先程の事は自分が上条の立場だったら、間違いなく最悪の印象だろう。
そう思うと泣きたくなってくる。
とはいえ、落ち込んでばかりもいられない。
お粥を持ってくると言って台所に来たわけなので、早々に食事の準備をして戻らなければならない。
なんとか沈んだ気持ちを切り替えると、お粥の出来を見るため炊飯器の中を確認する。
お米を研いで水を入れてスイッチを押すだけ、という単純かつ簡単な作業とはいえども初めての料理、うまく出来ているかどうかやはり気になる。
恐る恐る炊飯器の蓋を開けて覗き込もうとすると、蓋を開くと同時にムワっとした蒸気が立ち上りお米の香りがしてきた。
「……見てくれはいい感じね」
蒸気の先に見える炊飯器の中身はきれいなお粥が出来上がっており、見てくれは申し分ないようだが、問題は味である。
妙に失敗続きの本日の美琴さん的には、肝心な味の部分をミスしてないか心配である。
とりあえず、砂糖と塩を入れ間違ってはいないはずだと思い出しながら、何はともあれ味見をしてみる。
さすがに味見もしないで上条に出そうとは思わなかった。軽くお粥を混ぜると少量小皿に取り、そして恐る恐る口を付けてみる。
「ん……熱っ……!」
出来たてのお粥はなかなか熱かったが、
「……美味しい。問題なさそうね」
味は文句のつけようがないほど申し分ない出来だった。
ミスがなかった事にホッと胸を撫で下ろす。
「……じゃあ後は味噌汁を温め直すだけね」
一旦炊飯器から離れると、今度はコンロの前に立つ。
温め直す前に、一度中身を確認しようと鍋の蓋をパカッと開けると、
「……え?」
美琴はそのまま固まってしまい、すぐさま鍋の蓋を閉めた。
「(なに? 今の何?)」
今目にしたものが何なのかわからなかった。
意を決してもう一度蓋を開けてみるが、目にしたものはやはり先程と変わらない。
「なによこれはー!」と絶叫したい気持ちをなんとか踏み止め鍋の中身を確認すると、何やら大量の緑黒い物体が溢れんばかりに浮いていた。
先程は一瞬見てすぐに蓋を閉めてしまったためわからなかったが、よく見て緑黒い物体の正体を確認すると、それは大量のワカメだった。
「……なんで?」
正体がわかれば当然疑問が湧くが、理由は結構単純だったりする。
味噌汁を作っていた時、具に乾燥ワカメを使っていたのだがそれが原因である。
まあ美琴はお嬢様であるから知らなかったのかもしれないが、乾燥ワカメは水に浸すと増量するわけで、元の量の何倍にもなる。
美琴が見たレシピには乾燥ワカメではなく生のワカメの分量が明記されていたため、知らずに生ワカメと同じ分量の乾燥ワカメを投入した結果がこれというわけだ。
おかげでおもいっきり増量したワカメが浮いている。
乾燥ワカメの入った袋の裏面表記と先程見たレシピを見て確認すると、美琴はこの惨状の真相に納得する。
「何でこんなミスするかな……」
あまりにも単純というか、ある意味あり得ないようなミスに自分が嫌になりそうだった。
が、落ち込んでばかりもいられない。
増量した大量のワカメに汁気の大半を吸われ、味噌汁があまり残っていないのでなんとかしなければ。
とりあえず汁を注ぎ足せば問題ないだろうという事で、汁だけもう一度作る事にする。
あまり時間もかけてられないので、テキパキと急いで準備を始めた。
一方その頃、美琴が台所に去った(逃げた?)後もベットで横になっていた上条さんだったが、今彼はちょっとばかりピンチ(?)に陥っていた。
「……トイレ行きたくなってきた……」
生理現象が催してきていた。
上条は現在まともに動けない状態なので、ピンチと言えばピンチかもしれない。
美琴の手を借りれば何の問題もないかもしれないが、今彼女はここにいない。
台所に姿を消して結構経つが、未だ戻ってくる気配がないのは何かあったのだろうか?
まあ何かあったにしては先程と比べると静かすぎるので、単に準備に手間取っているだけなのかもしれない。
とはいえ、たとえ今この場に美琴がいたとしても「トイレ連れて行ってくれ」というのは言い辛いし、恥ずかしいものがある。
出来れば自分でなんとかしたいところだが、生憎と上条は身体が動かせない状態。
いいかげんに少しは動くようになってくれていないかなと、試しに手を動かそうとしてみると、
「ん……?」
ぎこちないながらもなんとか動いてくれた。
他の個所も試してみると、同じようになんとか動くようになっていた。
どうやら麻痺から回復しつつあるようだ。
多少痛みは走るが、全く動けなかった先程までと比べれば大分マシである。
これなら何とか自分一人でトイレに行けるのではと、リハビリがてら試しにベットから起き上がろうとしてみる。
「ん……っ……」
ぎこちなく少々時間を要しながらも、なんとか上体を起こす事に成功。
多少の痛み、キツさはあるが問題はなさそうだ。
「これならいけるか?」と思いベットから出ようとしてみる。
「っと、ととととと……!」
床に足を付けて立ち上がろうとしてみると、長い間横になっていたためかバランスがうまくとれずグラつく。
それでも何とか立つ事は出来そうだと、フラつく身体のバランスを取ろうとしていると、
「……トイレ行きたくなってきた……」
生理現象が催してきていた。
上条は現在まともに動けない状態なので、ピンチと言えばピンチかもしれない。
美琴の手を借りれば何の問題もないかもしれないが、今彼女はここにいない。
台所に姿を消して結構経つが、未だ戻ってくる気配がないのは何かあったのだろうか?
まあ何かあったにしては先程と比べると静かすぎるので、単に準備に手間取っているだけなのかもしれない。
とはいえ、たとえ今この場に美琴がいたとしても「トイレ連れて行ってくれ」というのは言い辛いし、恥ずかしいものがある。
出来れば自分でなんとかしたいところだが、生憎と上条は身体が動かせない状態。
いいかげんに少しは動くようになってくれていないかなと、試しに手を動かそうとしてみると、
「ん……?」
ぎこちないながらもなんとか動いてくれた。
他の個所も試してみると、同じようになんとか動くようになっていた。
どうやら麻痺から回復しつつあるようだ。
多少痛みは走るが、全く動けなかった先程までと比べれば大分マシである。
これなら何とか自分一人でトイレに行けるのではと、リハビリがてら試しにベットから起き上がろうとしてみる。
「ん……っ……」
ぎこちなく少々時間を要しながらも、なんとか上体を起こす事に成功。
多少の痛み、キツさはあるが問題はなさそうだ。
「これならいけるか?」と思いベットから出ようとしてみる。
「っと、ととととと……!」
床に足を付けて立ち上がろうとしてみると、長い間横になっていたためかバランスがうまくとれずグラつく。
それでも何とか立つ事は出来そうだと、フラつく身体のバランスを取ろうとしていると、
スルッ……!
「え?」
何か踏んだわけでもないのに足が滑った。
「ちょっ!? 待っ……!」
静止の声を叫ぶが、その願いが届く事はなく、上条は盛大にバランスを崩す。
「と、と、ととととと……」
なんとか体勢を整えようとするが、ただでさえバランス感覚が狂っている状態の上条にそんな事が出来るはずもなかった。
何か踏んだわけでもないのに足が滑った。
「ちょっ!? 待っ……!」
静止の声を叫ぶが、その願いが届く事はなく、上条は盛大にバランスを崩す。
「と、と、ととととと……」
なんとか体勢を整えようとするが、ただでさえバランス感覚が狂っている状態の上条にそんな事が出来るはずもなかった。
ズベシっ!
「へぶっ!?」
そのままバランスを崩し盛大に転んだ。
そのままバランスを崩し盛大に転んだ。
味噌汁注ぎ足し分調理中の美琴の元に、何やら上条の悲鳴のような声と大きな物音が聞こえてきた。
「な、なに……?」
突然の事にビクッとし、手に持っていた物を落としそうになる。
今の上条の悲鳴と大きな物音は一体何だろうか?
何事かと思い料理を中断して急いで戻ってみると、
「えっ……!?」
上条がベットの側に倒れて床に突っ伏していた。
「いつっっ……は、鼻打った……」
「ちょ、ちょっと、どうしたのよ!?」
鼻を押さえて起き上がろうともがいていた上条に慌てて駆け寄る。
「あ、御坂……」
「だ、大丈夫なの?」
「あ、ああ……まあなんとか……」
「ほら……」
倒れている上条に手を貸し助け起こす。
先程の事もあり、上条と触れ合う事に結構心臓ドッキドキの美琴さんだが、今はそれどころではないと自分に言い聞かせる。
「あ…うん……わりぃ……」
美琴の手を借りて、上条はのっそりとぎこちない動きだが身体を起こし、ベットを背に付けそのまま床に座る。
「いつっっ……」
「全く、何やってんだか……。とりあえず、ベットに……」
「あー、ちょっと待ってくれ……。その前に、その……トイレに行きたいんだけど……」
「……へ? と、トイレ……?」
「ああ。そのー……わりぃけど肩貸してくんないか?」
「えっ……?」
そう言われてちょっと戸惑う美琴。
肩を貸すという事は今以上に密着することになるわけで……。
「(……どうしよう?)」
今までも散々上条と密着やら何やらやらかしておいて、何を今更と思うかもしれないが、まだ先程の件が未だに尾を引いているようで抵抗があるようだ。
実際の今も結構我慢しててヤバかったりする。
とはいえ、実際のところ美琴に選択の余地はないようなものだ。
早くトイレに連れて行ってやらないと、上条が我慢できなくなるかもしれないわけで……。
つまり、『出来ない=上条さんが大変な事に……!』になるわけである。
さすがにそれはまずい。
というか美琴としてもそれは嫌だ。
と、いうわけで……、
「御坂? どうし……」
反応のない美琴が気になった上条が声をかけようとしたその時、
「……あーもー、しょうがないわねー!」
急に美琴が叫んだ。
「ほら、肩貸してあげるから、さっさと行くわよ……!」
半ば開き直り気味の美琴は、さっさと上条の腕を取った。
「な、なに……?」
突然の事にビクッとし、手に持っていた物を落としそうになる。
今の上条の悲鳴と大きな物音は一体何だろうか?
何事かと思い料理を中断して急いで戻ってみると、
「えっ……!?」
上条がベットの側に倒れて床に突っ伏していた。
「いつっっ……は、鼻打った……」
「ちょ、ちょっと、どうしたのよ!?」
鼻を押さえて起き上がろうともがいていた上条に慌てて駆け寄る。
「あ、御坂……」
「だ、大丈夫なの?」
「あ、ああ……まあなんとか……」
「ほら……」
倒れている上条に手を貸し助け起こす。
先程の事もあり、上条と触れ合う事に結構心臓ドッキドキの美琴さんだが、今はそれどころではないと自分に言い聞かせる。
「あ…うん……わりぃ……」
美琴の手を借りて、上条はのっそりとぎこちない動きだが身体を起こし、ベットを背に付けそのまま床に座る。
「いつっっ……」
「全く、何やってんだか……。とりあえず、ベットに……」
「あー、ちょっと待ってくれ……。その前に、その……トイレに行きたいんだけど……」
「……へ? と、トイレ……?」
「ああ。そのー……わりぃけど肩貸してくんないか?」
「えっ……?」
そう言われてちょっと戸惑う美琴。
肩を貸すという事は今以上に密着することになるわけで……。
「(……どうしよう?)」
今までも散々上条と密着やら何やらやらかしておいて、何を今更と思うかもしれないが、まだ先程の件が未だに尾を引いているようで抵抗があるようだ。
実際の今も結構我慢しててヤバかったりする。
とはいえ、実際のところ美琴に選択の余地はないようなものだ。
早くトイレに連れて行ってやらないと、上条が我慢できなくなるかもしれないわけで……。
つまり、『出来ない=上条さんが大変な事に……!』になるわけである。
さすがにそれはまずい。
というか美琴としてもそれは嫌だ。
と、いうわけで……、
「御坂? どうし……」
反応のない美琴が気になった上条が声をかけようとしたその時、
「……あーもー、しょうがないわねー!」
急に美琴が叫んだ。
「ほら、肩貸してあげるから、さっさと行くわよ……!」
半ば開き直り気味の美琴は、さっさと上条の腕を取った。
「え……あ、ああ……す、すまねぇ……」
「べ、別にいいわよ……あ、アンタは病人なんだがらさ……ほら、立てる?」
「あ、ああ……ちょっと…待ってくれ……よっ…と……!」
美琴の手を借りてゆっくりと立ち上がろうとする。
「(う……か、顔が近い……)」
上条との密着度も気になるが、それ以上に肩を貸した状態は二人の顔は物凄く接近する。
まあ、上条は特に気にした様子はないが。
「ん? どうした?」
「な、なんでもないわよ……! そ、そんなことより、さっさと立ちなさい! さっさと……!(ち、近いんだからこっち向くなー!!!)」
「早くしろって……無茶言うなぁ……」
と言いつつも、美琴に急かされるままにとりあえず早く立とうとする上条さん。
先程コけた分の影響はそれほどないようで、何とか立ち上がる事はできそうだが、
「……っと、と、と、と、と……」
未だ平衡感覚が狂っているようで少々フラつく。
また先程みたいにコけないようにしようと上条はバランスを取ろうとするが、
「っ……!?」
その結果、美琴にさらに寄りかかる形になり、二人はより密着することとなり、当然顔もさらに近付く。
この状況に美琴もビクッと激しく反応し、ガチガチに固まる。
「あ、わりぃ……痛かったか?」
美琴の身体が強張った事に気付くが、上条はその反応をおもいっきり勘違いしていた。
上条との密着度が増した事&顔が近い事でガチガチになっているのだが、美琴がそれを口にする事ができるはずがなかった。
「わりぃけど……ちょっと我慢してくれ……あともうちょっとなんで……」
そんな美琴の心情何て露知らず、上条さんはおもっいきり美琴の身体に寄りかかって立ち上がる。
「ふぅー……」
立ち上がるまでにかかった時間は一分もかかってないだろうが、美琴には何十倍、何百倍もの時間に感じられた。
「(やば……頭クラクラしてきた……)」
極度の密着状態から解放されたものの、この状況は非常に心労に悪い。
とにかくこの危険な状況を早いところ終わらせようと思った、のだが、
「べ、別にいいわよ……あ、アンタは病人なんだがらさ……ほら、立てる?」
「あ、ああ……ちょっと…待ってくれ……よっ…と……!」
美琴の手を借りてゆっくりと立ち上がろうとする。
「(う……か、顔が近い……)」
上条との密着度も気になるが、それ以上に肩を貸した状態は二人の顔は物凄く接近する。
まあ、上条は特に気にした様子はないが。
「ん? どうした?」
「な、なんでもないわよ……! そ、そんなことより、さっさと立ちなさい! さっさと……!(ち、近いんだからこっち向くなー!!!)」
「早くしろって……無茶言うなぁ……」
と言いつつも、美琴に急かされるままにとりあえず早く立とうとする上条さん。
先程コけた分の影響はそれほどないようで、何とか立ち上がる事はできそうだが、
「……っと、と、と、と、と……」
未だ平衡感覚が狂っているようで少々フラつく。
また先程みたいにコけないようにしようと上条はバランスを取ろうとするが、
「っ……!?」
その結果、美琴にさらに寄りかかる形になり、二人はより密着することとなり、当然顔もさらに近付く。
この状況に美琴もビクッと激しく反応し、ガチガチに固まる。
「あ、わりぃ……痛かったか?」
美琴の身体が強張った事に気付くが、上条はその反応をおもいっきり勘違いしていた。
上条との密着度が増した事&顔が近い事でガチガチになっているのだが、美琴がそれを口にする事ができるはずがなかった。
「わりぃけど……ちょっと我慢してくれ……あともうちょっとなんで……」
そんな美琴の心情何て露知らず、上条さんはおもっいきり美琴の身体に寄りかかって立ち上がる。
「ふぅー……」
立ち上がるまでにかかった時間は一分もかかってないだろうが、美琴には何十倍、何百倍もの時間に感じられた。
「(やば……頭クラクラしてきた……)」
極度の密着状態から解放されたものの、この状況は非常に心労に悪い。
とにかくこの危険な状況を早いところ終わらせようと思った、のだが、
スルッ……!
一歩踏み出した美琴の足が滑った。
「え?」
「っ!?」
「なんで!?」と思う間もなく、肩を組んでいる上条も巻き込んで、二人はバランスを崩す。
肩を組んだ状態&上条の身体の不調も相なって、体勢を整える事はできそうになかった。
「え?」
「っ!?」
「なんで!?」と思う間もなく、肩を組んでいる上条も巻き込んで、二人はバランスを崩す。
肩を組んだ状態&上条の身体の不調も相なって、体勢を整える事はできそうになかった。
ボフッ……!
しかし運が良かったのか、倒れたのはベッドの上だった。
「はぁー……ベットの上で助かったな……」
「そう…ね……」
いや、この状況は運が良かったと言っていいのだろうか?
仰向けに倒れた上条の胸の中に、美琴がすっぽり収まっる形で倒れ込んでいた。
たぶん、上条が咄嗟にかばってこんな形になったのだろう。
この状況に二人ともカチコチに固まる。
さすがの上条もこの状況はヤバいと思ったのか、二人の顔はもうこれでもかというくらい真っ赤だった。
「はぁー……ベットの上で助かったな……」
「そう…ね……」
いや、この状況は運が良かったと言っていいのだろうか?
仰向けに倒れた上条の胸の中に、美琴がすっぽり収まっる形で倒れ込んでいた。
たぶん、上条が咄嗟にかばってこんな形になったのだろう。
この状況に二人ともカチコチに固まる。
さすがの上条もこの状況はヤバいと思ったのか、二人の顔はもうこれでもかというくらい真っ赤だった。