昼休み、昼食の時間。
上条は弁当を食べていたのだが、姫神たちは天花がいるせいで遠慮して何となく近寄れないでいた。
「天花、なんで浮いたまま入ってきたんだ?」
呆れたように上条が訊く。天花は照れたように頭をかいた。
「へへへ、あの、暴走させちゃって。制御するのが駄目なの」
「ふーん……ってうわっ! なんだよ?」
男子代表、上条の悪友である青髪ピアスと土御門が袖を強く掴む。
その目にはギラギラと強い光が。
「カミやん……転校初日で転校生と打ち解けるその能力は何なんやねん……!」
「いくらなんでも節操がないんじゃないかにゃー?」
転校初日……まぁそうだ。けれども、天花は義妹、らしいし。
だが、そんな事を言ってしまったらまた波乱が起きそうだ。それは避けたいなぁ、とぶつぶつ呟いていたら。
「……はじめまして、あなたの名前は?」
「あー天花、その青い方が青髪ピアス、サングラスの方が土御門元春な」
「その投げやりな返答は何なんや!」
「カミやんの趣味は転校生なのかにゃー!?」
ウルサイナァと天花が耳を塞ぐ。
「ああもう! おれは妹よりかお姉さんの方が好みです!ってあ」
「あーぁ……」
呆れたような声を出したのは天花である。
しばらくこう着状態が続く。天花が窓を開き、逃走経路を確保した。
「……妹?」
「妹って、……上条、天花?」
上条は天花の方を見る。天花は溜息をつくと、上条の首に手をまわした。
ずーっとこちらをうかがっていた姫神などの一部女子への見せつけである。
逃走するのは面倒だからやめにしたらしい。
「えへへ、妹ではないかなぁ、ね、お義兄ちゃん?」
「うわわわわ!?」
それなりに大きめの胸が上条にあたる。それを気付いていて気付かないふりをする。
ちなみに、青髪と土御門はフルフルと怒りに震えています。
「さーって、私校内探検してくる。当麻の邪魔になってもあれだし」
邪魔って言うか……天花がヒートアップさせたこいつらをどうにかして―っ! と心の中で叫ぶ。
そんな上条にいたずらっぽく微笑みかけた天花は、先ほどからちらちらこちらを見てた女子達の方へ行った。
校内探検は何処へ。
「かーみーやん? 一体どういう事か説明してもらえますかにゃー?」
「まっ、まて土御門! これには深いわけが―――!?」
「このもてもてがっくらえ怒りのてっつい!」
「げぼっ!?」
腹にクリーンヒット。椅子と共に倒れる上条。
天花は呑気に自己紹介をしていた。
「私は上条天花、貴女は?」
「……姫神。秋沙」
「ふぅん、秋沙ちゃんか、これからちょっとよろしくね」
微妙な言葉づかいに姫神は首を傾げた。吹寄も姫神の隣で不思議そうな顔をしている。
「あ、私は吹寄制理。よろしく天花」
「うん。よろしくね制理ちゃん」
そういって、天花は幸せそうに笑った。
上条は弁当を食べていたのだが、姫神たちは天花がいるせいで遠慮して何となく近寄れないでいた。
「天花、なんで浮いたまま入ってきたんだ?」
呆れたように上条が訊く。天花は照れたように頭をかいた。
「へへへ、あの、暴走させちゃって。制御するのが駄目なの」
「ふーん……ってうわっ! なんだよ?」
男子代表、上条の悪友である青髪ピアスと土御門が袖を強く掴む。
その目にはギラギラと強い光が。
「カミやん……転校初日で転校生と打ち解けるその能力は何なんやねん……!」
「いくらなんでも節操がないんじゃないかにゃー?」
転校初日……まぁそうだ。けれども、天花は義妹、らしいし。
だが、そんな事を言ってしまったらまた波乱が起きそうだ。それは避けたいなぁ、とぶつぶつ呟いていたら。
「……はじめまして、あなたの名前は?」
「あー天花、その青い方が青髪ピアス、サングラスの方が土御門元春な」
「その投げやりな返答は何なんや!」
「カミやんの趣味は転校生なのかにゃー!?」
ウルサイナァと天花が耳を塞ぐ。
「ああもう! おれは妹よりかお姉さんの方が好みです!ってあ」
「あーぁ……」
呆れたような声を出したのは天花である。
しばらくこう着状態が続く。天花が窓を開き、逃走経路を確保した。
「……妹?」
「妹って、……上条、天花?」
上条は天花の方を見る。天花は溜息をつくと、上条の首に手をまわした。
ずーっとこちらをうかがっていた姫神などの一部女子への見せつけである。
逃走するのは面倒だからやめにしたらしい。
「えへへ、妹ではないかなぁ、ね、お義兄ちゃん?」
「うわわわわ!?」
それなりに大きめの胸が上条にあたる。それを気付いていて気付かないふりをする。
ちなみに、青髪と土御門はフルフルと怒りに震えています。
「さーって、私校内探検してくる。当麻の邪魔になってもあれだし」
邪魔って言うか……天花がヒートアップさせたこいつらをどうにかして―っ! と心の中で叫ぶ。
そんな上条にいたずらっぽく微笑みかけた天花は、先ほどからちらちらこちらを見てた女子達の方へ行った。
校内探検は何処へ。
「かーみーやん? 一体どういう事か説明してもらえますかにゃー?」
「まっ、まて土御門! これには深いわけが―――!?」
「このもてもてがっくらえ怒りのてっつい!」
「げぼっ!?」
腹にクリーンヒット。椅子と共に倒れる上条。
天花は呑気に自己紹介をしていた。
「私は上条天花、貴女は?」
「……姫神。秋沙」
「ふぅん、秋沙ちゃんか、これからちょっとよろしくね」
微妙な言葉づかいに姫神は首を傾げた。吹寄も姫神の隣で不思議そうな顔をしている。
「あ、私は吹寄制理。よろしく天花」
「うん。よろしくね制理ちゃん」
そういって、天花は幸せそうに笑った。
「ちくしょう……酷い目に遭った」
「あはは、楽しかったね♪」
「楽しめたようでなによりですよっと」
元はと言えば天花の所為でひどい目に遭ったのだが、今更言ってもしょうがないし、多分こういう人間は後悔しない。
昨日より三割増しのつやつやした顔をしている。よほど楽しかったらしい。
二人はスーパーによって今日の晩ご飯を買ったところだ。今日はハンバーグを作ってあげる、と天花がそれはもういい笑顔で言ったので好意に甘えることにした上条。
元々、天花の方が数倍料理がうまい。だから当然でもあった。
「あ、……逃げよう天花」
「なにからよ?」
天花の腕をつかみ、くるりと向きを変えると後ろから声が響いてきた。
ちなみに、我が義妹は楽しそうに挨拶をしています。
「あ、こんにちはー、私は天花ですけどえーっと名前は」
「御坂美琴、だけど……アンタこの馬鹿の知り合いなの?」
「はいー。ふーん。そっかー美琴ちゃん」
御坂が空気をバチバチ言わせながら上条に不穏な目線を投げかけた。
なんかヤバイ、と肌でさとる上条。退路を探して目を泳がせた。
しかし、そんな二人の空気を壊したのは。
「貴女にお兄ちゃんは渡せないよ。私の当麻を傷つけるつもりなら来ないで頂戴?」
は?と上条が目を点にした。せざるを得なかった。
「ツンデレって苦手なの。ツンツンしてるうちに、大切な人が居なくなっちゃっても知らないよ」
そう言うと天花は上条の首に手をまわした。同い年で身長の差がそこまでないからこそできる芸当だ。
天花にとっても御坂は年下なのである。
「アンタ……、何、言ってんのよ」
「ふふ、でも貴女が本気でお兄ちゃんを欲しいと思うなら私も考える」
「……えーっと? 何がどうなってるのか上条さんはさっぱりなんですけども」
「おにいちゃんったらだめだなぁ。さて、私は帰ってるよ」
「天花?」
言うだけ言って、彼女は立ち去った。
微妙に気まずくなった御坂と上条が取り残される。
「……ねぇ、あの、子は誰?」
「義理の妹。御坂、何の話をしてたんだ、あいつ」
「あ、んた……」
何かを言いかけて、口を閉じた。
実際は、(アンタの話でしょうが)と小さく呟いていたのだが。
でも、と天花が去った方向を見つめて御坂が思う。
「――とうに妹、かしら」
「なんかいったか?」
「あ、ああああなんでもないわよ! アンタはなんでそんなに女と一緒にいるわけ!?」
そんなに、いるだろうかと上条は考え込んだ。
「いる、か?」
「いるわよ! 大体、事件ばっかに首突っ込んでろくなことにならないってのよ」
それについては否定できないので、曖昧に笑って誤魔化す。
実は、左手にこの間色々あってまだ包帯が巻いてあったりするため尚更だ。
この傷を知ってるのは小萌先生だけだけれども、小萌先生にも呆れかえられていた。
「アンタも色々学んで、怪我しないようになるとかできないの?」
「うーん、病院行かないですむって言うのは夢だよな、ってしまった!?」
「やっぱしょっちゅう病院行ってんの!? 馬鹿じゃないの」
罵倒しようと御坂が口を開いた時、ふとさっきの少女の声を思い出す。
――大切な人が居なくなっちゃっても知らないよ
(だぁー! 私は別にっ、コイツがっ、大切なわけじゃ!)
熟れた林檎のように真っ赤になって顔を横に振り回す。
以外に乙女だ。いや、ツンデレはすべからく乙女なのか。
「あああああっもー」
「おい、御坂。おれは何か悪いことしたのかぁああああああっ!?」
バジバジィっ、という雷の音が、何度か第七学区に響きわたった。
「あはは、楽しかったね♪」
「楽しめたようでなによりですよっと」
元はと言えば天花の所為でひどい目に遭ったのだが、今更言ってもしょうがないし、多分こういう人間は後悔しない。
昨日より三割増しのつやつやした顔をしている。よほど楽しかったらしい。
二人はスーパーによって今日の晩ご飯を買ったところだ。今日はハンバーグを作ってあげる、と天花がそれはもういい笑顔で言ったので好意に甘えることにした上条。
元々、天花の方が数倍料理がうまい。だから当然でもあった。
「あ、……逃げよう天花」
「なにからよ?」
天花の腕をつかみ、くるりと向きを変えると後ろから声が響いてきた。
ちなみに、我が義妹は楽しそうに挨拶をしています。
「あ、こんにちはー、私は天花ですけどえーっと名前は」
「御坂美琴、だけど……アンタこの馬鹿の知り合いなの?」
「はいー。ふーん。そっかー美琴ちゃん」
御坂が空気をバチバチ言わせながら上条に不穏な目線を投げかけた。
なんかヤバイ、と肌でさとる上条。退路を探して目を泳がせた。
しかし、そんな二人の空気を壊したのは。
「貴女にお兄ちゃんは渡せないよ。私の当麻を傷つけるつもりなら来ないで頂戴?」
は?と上条が目を点にした。せざるを得なかった。
「ツンデレって苦手なの。ツンツンしてるうちに、大切な人が居なくなっちゃっても知らないよ」
そう言うと天花は上条の首に手をまわした。同い年で身長の差がそこまでないからこそできる芸当だ。
天花にとっても御坂は年下なのである。
「アンタ……、何、言ってんのよ」
「ふふ、でも貴女が本気でお兄ちゃんを欲しいと思うなら私も考える」
「……えーっと? 何がどうなってるのか上条さんはさっぱりなんですけども」
「おにいちゃんったらだめだなぁ。さて、私は帰ってるよ」
「天花?」
言うだけ言って、彼女は立ち去った。
微妙に気まずくなった御坂と上条が取り残される。
「……ねぇ、あの、子は誰?」
「義理の妹。御坂、何の話をしてたんだ、あいつ」
「あ、んた……」
何かを言いかけて、口を閉じた。
実際は、(アンタの話でしょうが)と小さく呟いていたのだが。
でも、と天花が去った方向を見つめて御坂が思う。
「――とうに妹、かしら」
「なんかいったか?」
「あ、ああああなんでもないわよ! アンタはなんでそんなに女と一緒にいるわけ!?」
そんなに、いるだろうかと上条は考え込んだ。
「いる、か?」
「いるわよ! 大体、事件ばっかに首突っ込んでろくなことにならないってのよ」
それについては否定できないので、曖昧に笑って誤魔化す。
実は、左手にこの間色々あってまだ包帯が巻いてあったりするため尚更だ。
この傷を知ってるのは小萌先生だけだけれども、小萌先生にも呆れかえられていた。
「アンタも色々学んで、怪我しないようになるとかできないの?」
「うーん、病院行かないですむって言うのは夢だよな、ってしまった!?」
「やっぱしょっちゅう病院行ってんの!? 馬鹿じゃないの」
罵倒しようと御坂が口を開いた時、ふとさっきの少女の声を思い出す。
――大切な人が居なくなっちゃっても知らないよ
(だぁー! 私は別にっ、コイツがっ、大切なわけじゃ!)
熟れた林檎のように真っ赤になって顔を横に振り回す。
以外に乙女だ。いや、ツンデレはすべからく乙女なのか。
「あああああっもー」
「おい、御坂。おれは何か悪いことしたのかぁああああああっ!?」
バジバジィっ、という雷の音が、何度か第七学区に響きわたった。
「てんげ……? 夜なんだよ……?」
「インデックスちゃん。私の事はいいから」
「でも、昨日も眠ってなかった」
「いいから、かみ……お兄ちゃんには黙ってて」
そっと、インデックスを寝かしつけて天花は微笑んだ。
昨日も、同じように寝かせたが、やはり可愛い。同時に、この子が羨ましくて憎らしくて仕方がない。
そう思いながらも、天花はインデックスを好いている。だって、この子には何の罪もありはしない。
部屋を出て、寮の外へ向かう。音をたてないように深夜の第七学区を天花は歩きだした。
正しくは、第七学区空中を。
そうして、思わぬ人物に出食わした。
「……天花、じゃないかにゃー? こんな時間にどうしたんだぜい?」
「それは、土御門さんも同じでしょう?」
天花も土御門も、相手の大体の状況を察していた。
確証は二人ともない。そして相手の行動を止める気も、またなかった。
「……一つ、聞きたいことがある」
がらりと言葉の調子を変えて、土御門は少女に問うた。
「お前の体……どうなってるんだ」
「あら、もしかして、土御門さんは知っていたの」
対する少女は顔色一つ変えず。
動いたことと言ったら、顔に手を添えて微笑んだくらいで。
「インデックスちゃん。私の事はいいから」
「でも、昨日も眠ってなかった」
「いいから、かみ……お兄ちゃんには黙ってて」
そっと、インデックスを寝かしつけて天花は微笑んだ。
昨日も、同じように寝かせたが、やはり可愛い。同時に、この子が羨ましくて憎らしくて仕方がない。
そう思いながらも、天花はインデックスを好いている。だって、この子には何の罪もありはしない。
部屋を出て、寮の外へ向かう。音をたてないように深夜の第七学区を天花は歩きだした。
正しくは、第七学区空中を。
そうして、思わぬ人物に出食わした。
「……天花、じゃないかにゃー? こんな時間にどうしたんだぜい?」
「それは、土御門さんも同じでしょう?」
天花も土御門も、相手の大体の状況を察していた。
確証は二人ともない。そして相手の行動を止める気も、またなかった。
「……一つ、聞きたいことがある」
がらりと言葉の調子を変えて、土御門は少女に問うた。
「お前の体……どうなってるんだ」
「あら、もしかして、土御門さんは知っていたの」
対する少女は顔色一つ変えず。
動いたことと言ったら、顔に手を添えて微笑んだくらいで。
「魔術の事を」
土御門は知っている。そして、問うまでもなく少女の体がどうなっているか分かっていた。
「さあな。だが天花、お前眠れないのではなくて、眠る必要が」
「あら、それ以上は言っちゃ駄目だよ。だって、私の呪いは幻想殺しでも治せない。それに私、夜の街を歩くのは好き」
「一つ教えろ。自分で選んだのか」
「そうだよ。いいの、もう」
ほんとうにいいのか、と重ねて問うてくる土御門に天花は笑った。
「ねぇ、皆して一週間夢を見てるだけだよ。だから、そうだ。土御門さんだけが真実を知ってればいい」
「おれにおしえるのか?」
「ええ。貴方ならいいわ」
だって、お兄ちゃんの友達だもの。
「さあな。だが天花、お前眠れないのではなくて、眠る必要が」
「あら、それ以上は言っちゃ駄目だよ。だって、私の呪いは幻想殺しでも治せない。それに私、夜の街を歩くのは好き」
「一つ教えろ。自分で選んだのか」
「そうだよ。いいの、もう」
ほんとうにいいのか、と重ねて問うてくる土御門に天花は笑った。
「ねぇ、皆して一週間夢を見てるだけだよ。だから、そうだ。土御門さんだけが真実を知ってればいい」
「おれにおしえるのか?」
「ええ。貴方ならいいわ」
だって、お兄ちゃんの友達だもの。