とある魔術の禁書目録 Index SSまとめ

SS 5-625

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匿名ユーザー

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「美琴ちゃん。そんなかたまらなくったっていいじゃない。ああ、ほらあそこでお茶しましょ」
「アンタ、どうして私を呼び出したの?」
 ぐいぐい腕を引っ張って行く少女に少し呆れを覚えつつ、美琴は聞いた。
 それなりにおしゃれな茶店の前で、彼女は足を止めた。心底不思議そうに顔を横に傾ける。
 くるり、と素早くその場でターンして振り向いた少女。その拍子に長く綺麗な髪が風にゆられる。
 少女は口に指をあてて、にっこりと言った。

「私の為だよ」

 ほら早く、と美琴を急かす。しょうがないかと妥協(年上に)して、彼女に連れられて店へはいった。
「お姉さん。私にアップルティーのあったかいの下さい。美琴ちゃんは?」
「……レモンティーで」
「あら、紅茶は好き? 私、大好きなの」
 砂糖を入れてあのちょっと甘くて、ほんの少し苦い味と、フルーティーな香りがいいからね、と呟く。
 それから、外を眺め始めた。ほんのちょっぴりだけ切なそうに。
「何の用?」
「ん、んー」
 外に面白いモノなど無い筈なのに、外に集中してこちらを見ようとしない。
 けれど、大声を出すのも淑女のマナーとしてどうかと思って静かに待つ。
 ……いや、もう十分ぐらいたったから、いいのか。
「あの……」
「聞きたいこと、あるのではないの?」
 唐突に、そんな事を言われてびくぅっと動いてしまった。
 ちょっと下に目をやる。それからそろお、と視線を戻すと、静かで、透明な眼差しを真っ直ぐに向けられていた。
「あるでしょ?」
「……どうして、私をよんだの」
「それは……あ、紅茶が来た。これを飲んで話そう?」
 熱い紅茶を持ち上げて微笑する彼女は、いっそ何処かのお嬢様のようだった。
「アンタと、あのバカはどういうかんけ――」
「だめだよ。意地を張ったら失くしてしまう。ねぇ、名前を呼んでよ。ばかじゃなくて、当麻と」
 カァアアア、と赤くなる音が聞こえる気がした。
 何故赤くなるのかよく分からないけれどもとっても恥ずかしくて死にそうなぐらい顔がほてってしょうがないのだ。
「とっ! 当麻、とどういう関係?」
「義妹。そう、義妹なの。でも安心して。私には当麻を閉じ込める事は叶わないしね」
「……へ?」
 閉じ込めるとはまるで鳥のようだ、と場違いな事を思う。
 それにしても運ばれてきた紅茶が熱すぎてもてない。普通、もうちょっと冷めてるものだが、此処は学園都市だし――、
「なんで、もてるの?」
 平然と紅茶を持ち上げている天花に質問をぶつけてみた。彼女は何の事だか分からなかったようで、ほえ?と呟いた。
「え、ああ、紅茶。うーん、熱い、かな? 私、温度を感じにくい体質なの」
「それと、一つ」
「なぁに?」
「貴方……何?」
 いきなり現れて。いきなり当麻と、ベタベタして。
 何故、受け入れるのか、何故不安に思わないのか。
 そんな問いに、平然と天花は答える。
「天花、だよ」



「土御門さん、私のこーどー気になる?」
「まぁな」
「優しい、ね」
 美琴が去った茶店で向き合って紅茶をすすっていた。
 普通、そこは飲むのだろうが、二人してすすっていたのだ、天花も土御門も。
「そうか?」
「私が、どうしてこんなになったのか、聞いたでしょう? こうしたのは私の意思よ。それでも、ちょっとだけ、良心がうずいてしまうようなキミは優しいよ」
 例え、その手が汚れていたとしても、それに心を痛めるのならば善人。
 ――そう考えるのは間違っているだろうか。その答えは、誤りでしかないのだろうか。
 それでも構わないと、天花は思うけれども。
「見届けてくれるの?」
「聞いた以上はな。もしも、お前が『失敗』したら話す」
「いいよ。でも、成功したら、最後までばれなかったら。黙っててね」
「約束はしておこう」
 でもそれが守られるなんて甘っちょろい事考えるんじゃないぞと言った土御門に、天花は声をたてて笑う。
「ああ、やっぱり優しいなぁ、土御門さんてば」
「お前の保険だしな」




(てんげは、おかしいんだよ)
 別に、彼女を疑いたいわけではない。
 でも、確かに天花は、インデックスの言うように、おかしい。行動も、言動も。
 微妙におかしな選び方をされた言葉、寝ずに夜徘徊する、上条の知り合いには片っ端から声をかけてこそこそ話し込む事がある等々。
「おにーちゃん、ご飯」
「ああ、後で食うから」
「……」
 一応、風呂の時以外は上条の私室と化している風呂場、のドアに、少女のシルエットが映ったまま動かない。
 シルエットが立ち去ろうとしないので首をひねっていると、ストンと彼女は壁越しに座り込んだ。
「悩んでる?」
「え、まぁ」
「私の所為?」
 やはり、この義妹は鋭い。そして狡い。
 気付いてるなら、何も言わなくてもいいだろうに。
「別に」
 嘘がつけなくなってしまうではないか。
 おかしな言葉は、きっと彼女がなるべく嘘をつかないようにするため。
 天花が全く嘘をついていない訳は無いけど。
「そっか」
 上条もドアにもたれかかる。天花もそれは嘘だと分かった上で何も訊かなかった。
「ごめんね。私、我儘だから。迷惑かけちゃう」
「大丈夫。あんまり気にやまなくったって平気だぞ? それならあのシスターも何もせずに居座ってるんだし」
 別にそれが嫌なわけではないが。
「そうかぁ。でも、」
「ん?」
「ごめんね。迷惑、かけちゃうから」
 だから気にすんなって、と返すと、ありがとう、と返ってくる。
 たいした事でもないだろうに、と上条は苦笑した。


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