【名前】遊臥焔雀(ゆが えんじゃく)
【性別】男
【所属】科学
【能力】記憶脱落(ドロップアウト)レベル3
【能力説明】
その名の通り記憶を脱落させる能力。通常の記憶の他ほんの数瞬前までの記憶すら忘却させる事ができ、能力を掛けられた相手は今自分が何をしようとしていたのかわからなくなる程。
効果はレベル3の精神系能力の中でもかなり強力。しかし、掛けられる相手は有視界内の2人までという制限がある。また、強力故に制御が利かない場合がある。特に感情が昂ぶった時などに暴走の傾向が見受けられる。
【概要】
明知中等教育学院で起きた「伝説の卒業式」で校内抗争を起こした一部クラス不良グループの1人にして、
帝白紫天に明知の現在の状態を告げた男。
元は大企業の御曹司で、将来は両親が築き上げた会社の後継者に目され育てられた。明知には両親の多大なる期待を背負って入学した。
入学した当初から一部クラスだった遊臥は二部クラスや三部クラスを見下す傲慢な性格を惜しげもなく披露した。
両親に過保護に育てられた故かエリート意識が非常に強い遊臥が、下部クラスの人間に対して陰湿ないじめを行う不良グループへ所属するのにそう時間は掛からなかった。
能力を悪用し、証拠を残さない手際の良さで下部クラスの生徒に対し様々ないじめを行った。全ては自分の加虐心を満たす為に。エリートとして選ばれた自分とエリートから脱落した者達との差を実感する為に。
そんな彼を変えたのが当時明知の生徒会長であった帝白紫天。帝白が自分の所属する不良グループに直接乗り込んで来て話し合いを行い、ぶつかり合った結果不良グループを主導する上級生達や同級生の殆どは帝白と喧嘩仲間のような関係になった。
だが、その流れにどうしても賛同する事ができなかった遊臥は自分の意見に賛同する少数派を率いて皆に慕われる帝白を貶めようと能力を使った謀略(遊臥の仲間と帝白が行う決闘中に遊臥が能力を帝白へ使用し、観戦中の一般生徒に帝白の攻撃を向けさせようとした)を決行したが、感情が昂ぶり過ぎた為に能力が暴走し帝白ではなく仲間に能力が掛かってしまい、結果として遊臥の仲間は自分の攻撃を自分で受ける羽目になった。
呆然とする遊臥がヨロヨロと仲間へ近付く中遊臥の意図を悟った帝白は、遊臥の仲間の応急処置をしながら遊臥に対し『選ばれた者が成し遂げた結果に映る価値』について諭し、動揺する遊臥を叱咤しながら一緒に傷付いた仲間を保健室へ連れて行った。
この事件が切欠となり遊臥と彼の仲間達は帝白をまがりなりにも認めるようになり、平和な学院生活を過ごす中で帝白に諭された『選ばれた者が成し遂げた結果に映る価値』について日々悩むようになった。
抗争を抑え、無用な差別を排するための模索を続ける事で学院に雪解けを齎していた帝白が卒業した明知は再び氷河期に入る。
学院長
蕩魅召餌が主導する改革、蕩魅の養子であるエリート模範生
蕩魅綺鵺が新たな生徒会長となった事で反発を起こす生徒達を眺めながら遊臥は『選ばれた者』の成し遂げた結果に次第に困惑するようになる。
「『選ばれた者』が成し遂げた結果は反発や齟齬しか生んでいないんじゃないか?そこにどんな価値があるってんだ?」。遊臥の悩みが深まる中、3年に進級した彼にとって決定的な存在が現れる。明知中等教育学院風紀支部エースにして天秤座(リブラ)の称号を持つ
斗修星羅である。
強大極まる精神系能力で目に付いた「悪」を片っ端から捕縛・矯正し、『女帝』として君臨する斗修の活躍を見る遊臥はこう呟いた。「明知の暗黒時代の到来だ」と。
遊臥から見ても斗修は間違いなく『選ばれた者』の1人であった。そんな人間が「悪」に走る非行生徒の内面や事情を一切鑑みず、有無を言わさぬ強引な矯正を行う。
遊臥は知っていた。斗修の余りにも強引な風紀業務に反発する勢力が水面下で膨れ上がっている事に。しかも三部クラスではなく一部クラスに。その上、そこにはかつて所属していた不良グループで自分に賛同してくれた少数派たる仲間達が最近になって参加した姿もあった。
自分の事を『選ばれた人間』と考えていた遊臥は『選ばれた者達』に絶望した。自虐もいい所だが絶望してしまったのだ。故に、遊臥は斗修と斗修の横暴を止めない仲間達への襲撃を企てる一部クラスの不良グループへ衝動的に加入、「伝説の卒業式」に参加した。
遊臥は斗修を守る
友佐叶依と直接相対し、偶然を装う手際の良さでもって浅くない傷を負わせる事で友佐を斗修から引き離す事に成功する。直後に斗修の能力をまともに食らい、後遺症として精神障害を起こす程の威力により遊臥は卒倒、病院送りにされた。
実害としては友佐への傷害のみ。凶器は持ち込まず、不良グループへの参加は事件発生の直近だった事もあって深く関わっていないと判断され(精神系能力への耐性や精神障害のせいでサイコメトラーの捜査も上手く進まなかった)、学院側の体面的観点も合わさって比較的軽い処分を受けた遊臥だったが、代償は大きかった。
進学予定だった有名高校は中退となり、期待を裏切ったとして両親には勘当を言い渡される。遊臥当人も複数の精神安定剤でようやく小康状態を保てるような精神障害を負った。
『選ばれた者』、いや、本当は選ばれてなどいない『脱落者』である自身の末路に渇いた笑いを漏らし、薄暗い病室で全てを失った自らの人生に近い将来己の手で終止符を打とう―自らの手で名付けた能力のように人生からドロップアウトしよう―そんな絶望的な考えに支配されていた遊臥の前に再び姿を見せたのが、今は
白帝学園に通う『選ばれた者ではないとのたまう人間』帝白紫天だった。
あの時のように呆然とする遊臥を見る帝白は得意の手品を披露しながら遊臥を見舞った。遊臥は知った。帝白が未だに自分の事を『選ばれた者』と見てくれている事に。
何処で聞いたのか、帝白は卒業式の一件を知っていた。帝白が卒業してから現在に至るまでの明知について色々話をする中で遊臥は、てっきり帝白は自分を含めた不良グループの事や事件の中心人物である斗修、彼女の仲間である友佐達風紀委員や歴代生徒会長蕩魅綺鵺・
白雪窓辺・
神輿庭麟子について鋭く批判するんじゃないかと考えていた。
周囲の環境や立場に重点を置くと常々言っていた帝白だからこそ、下手をすれば遊臥の事より管理側である風紀委員や生徒会、果ては学院長について罵詈雑言を並べ立ててもおかしくないと遊臥は捉えていた。しかし、帝白は話を一区切りさせた後簡潔にこう述べた。「選ばれたぬしが成し遂げた今回の結果は、ぬしから見てどんな価値が映っておる?」と。
現在遊臥は退院し、同じく病院送りにされた後に退院した仲間達と共にアルバイトをこなしながら通信制の
サイエンスアカデミー高等学校へ通う毎日を送っている。安定剤の副作用と格闘し、その日の暮らしに困窮しながらも汗水垂らして労働をこなし、夜はインターネットを利用した自宅学習や各施設でのスクーリングに勤しむ。
エリート街道まっしぐらに進んでいた遊臥は自らの愚行で街道からドロップアウトした。自分が行った愚行は今後一生抱えなければならないものであると覚悟している。
だが、それでもこんな自分を『選ばれた人間』であると今でも信じてくれている人がいる。そして、こんな自分を信じてくれて、しかも友として行動を共にする仲間達がいてくれる。
遊臥は内に湧いた確かな希望を胸に、今日も一生懸命にアルバイトへ精を出す。いつか、自らの愚行で傷付けてしまった少女達に面と向かって謝罪できる人間になる為にも。
【特徴】
170センチの中肉中背。七三分けのウェットショート。髪の色は黒。エリートとして身だしなみに人一倍気を使っていた経験はアルバイトにも活かされている。
手際がよく器用。大抵の事は何でもこなせる。昔は形式的にとはいえ人に頭を下げる事にさえ抵抗感があったが、今は一言一言に誠心誠意を込めて挨拶を行っている。
最近は苦学生になった影響か自炊に拘るようになり、比例してドケチになり、数日後までの所用経費を1円単位で調整するようになった。「1ヶ月○○円生活」企画に参加しようものなら優勝候補の一角に数えられるのはまず確実であろう。
普段の服装は古着店で購入した格安の物を着ている。精神安定剤は毎日服用しなければならないが、精神障害そのものは徐々に改善中である。帝白とは時々近況報告などで会ってたりしている。
【台詞】両親の前や公の場では丁寧な物言いだが、それ以外では粗暴な喋り方。こちらが地である。
「父さん。母さん。僕、明知で精一杯頑張ります!!『ハッキリ物事を知る』事をスローガンに掲げているこの学院でなら、僕も立派に成長できると思います!!」
「ククク。さぁ、アンタにとって地獄の始まりだぜぇ帝白会長。人一倍怪我人の発生に気を使うアンタがその手で人を傷付けるんだ!!………えっ?な、なんで…どうしてアイツに俺の能力が!!?」
「俺は…本当に選ばれたのか?だったら、俺は蕩魅親子や斗修と同類なのか?当人の行動のせいで他人の反発を煽るアイツ等と同じ穴の狢?……そんなのって…!!」
「友佐!!そこをどけ!!俺達は…俺はあの『女帝』に用があるんだ!!あんな奴が…『選ばれた人間』の癖にやってる事は俺と一緒の精神操作で!!人の思考を貶めた上に暴君気取りの身勝手野郎がもう……明知の上にのさばっちゃぁいけねぇんだよおおおお!!」
「ホント、アンタって人は…変わらねぇなあ帝白『会長』。アンタと同じリブラの『女帝』とはまた違った意味で容赦ねぇよなぁ。……俺はな、斗修や斗修を肯定ばかりする友佐達に対して抱いたこのムカつきや不満は絶対間違っちゃいねぇって思ってる。アイツ等のせいで歪んだ悪童達を俺は何人も見て来た。ここでアイツ等を排除しねぇと明知が狂っちまう…そんな気がした。アンタが何を言おうとな。そんな俺にアンタは『俺の目に映る価値』を聞くのか?ヘッ…だったら言ってやんよ。…………馬鹿だよ、俺って奴はよぉ。何が『選ばれた人間』だよ。映す価値もねぇクソッタレな絵面しか残ってねぇよ。アイツ等に…とんでもねぇ事をしちまった…!!」
「おはようございます!!ありがとうございました!!またお越し下さいませ!!さぁ、お前等も一緒に腹に力を込めて真剣に!!いらっしゃいませ!!」
「いつかよぉ…斗修や友佐達に面と向かって謝れる人間になろうぜ。今はまだ……も、もうちょっと大人にならなきゃ喧嘩になっちまいそうだからな。ホント勝手だよな俺達ってよ。…アイツ等は正しかった。正し過ぎて眩しくて、俺等悪童の目が眩んじまっただけ…なんだよ、きっと」
【SS使用条件】
特になし
最終更新:2015年11月17日 00:46