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レポート第2回

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第二回


旅に出たシンは、行商人や父から聞いた周辺の地理を思い返しながら、ともかく真っ直ぐアタゴへ向かっていた。
アタゴは父が研鑽を積み、片腕と引き換えに『最強』を確信したジャポニカの京都。シンがそこを目指すのは当然といって良かった。
父の親友の家に身を寄せる事になっていた事もあり、余り遅くなるのはいけないと寄り道せずに進んでいたシンだが、道中奇兵隊とばったり出会ってしまう。

奇兵隊とは、ジャポニカの騎士団であり、主にIDの違法所持等を扱う機関。即ち治安維持組織である。
そして、シンが父より賜った『小烏丸』は使い古しと言えどIDであり、シンはID所持の許可を得ていない。しょっ引かれるハメになるかと思いきや、シンは全て正直に事情を話し、奇兵隊から仮許可証を頂くという事をやってのけた。可愛い顔して割とやるもんである。

ともあれ、道中は街道を通っていたため特に危険もなく、イチノセキという村へついた。ここは西側からアタゴへ向かおうと思ったら必ず通る村であり、この先には更にニノセキという街もある。
とまれイチノセキで一泊し、更に足を進めてニノセキへ向かおうとしたところ、何やら不安げに街道近くの山を見やる母子がいるではないか。

こういうのを見ると放っておけないのがシンという男であり、その通りホイホイと自ら厄介ごとに首を突っ込んだ。
なんと、父親が食事を盗んだ野鳥を追って山中へと入っていったとのことである。
野鳥といえど人様の食事を盗む程となればそれなりに凶暴なものに違いはなく、母子は心配で堪らない様子。
更には子供に懐に差した刀を見られ、武士と勘違いされ頼み込まれる始末。
後には引けず、元から引くつもりもないシンは父親を追って山の中へと入っていった。

予想通り、父親は三匹の鷹に囲まれ負傷しており、シンは食料と威嚇を用いてほぼ戦わずして父親を救出、急いで山を下りた。
三人の親子に深く感謝され、夕食を共にするシン。
助けた父親はジン・クリヤという元行商人らしく、アタゴにいる親戚の商会に世話になりに行く所だったと言う。

親子と別れ、旅を続けるシン。
ようやくニノセキに到着したところには日も暮れ、そこから更に宿屋探しにこれまた時間をかけ、ようやく『クツワギの宿』という宿屋に決めて休む事にした。
温泉もついている中々の旅館だったが、ひとっ風呂浴びた帰り、部屋の前に何やら怪しい影が。
よくよく見てみると子供であり、部屋を開け様と難儀しているらしかった。
宿屋の主人を呼んで手際よく子供から事情を聞くと、シンの差していた刀に興味津々だったらしい。
将来は兵士になりたいという少年にシンはほんの少し弟の影を感じ、刀を見せてやった。
騒ぎにする事もなく少年を諭して部屋に帰し、ようやくシンはゆっくりと床につくのだった。

さて、ミシュアルはというと。
目を覚ますと、知らない土壁だった。
ミシュアルは死んでいなかったのだ。何故生き残ったか疑問に思うより先に人の気配を感じてそちらを向くと、どこか擦り切れたような雰囲気を纏った男が座っていた。
男の名前はジャッカル・チャカ。トカゲを狙っていた賞金稼ぎのようなものであるらしい。彼がミシュアルを助けたのだ。
ミシュアルから事情を聞き、ジャッカルは納得して暫くこの場所に留まる事を決めた。
確かに、どこに行ったかも知れないトカゲを捜し歩くより確実である。

そしてミシュアルは、いきなり自分の持ち物全てを差し出して、稽古をつけてくれるようジャッカルに頼み込んだ。
自らの力では生き抜いていけない事を、ミシュアルは身をもって知ったのである。
悔しかったのだろうか。それとも、悲しかったのだろうか。その胸の内は分からねど、ミシュアルは本気であった。
足りなければ、出世払いでもなんでもすると言い切るほどに。
ジャッカルはシニカルな笑みと共にその申し出を受け、ミシュアルに稽古をつけることとなった。

それから暫くはトカゲも戻ってこず、ミシュアルはひたすら鍛錬に打ち込み、ジャッカルとの稽古に明け暮れた。
十日ほど過ぎ去った頃、時期は訪れた。トカゲが戻ってきたのである。ジャッカルはミシュアルに同行するかを訪ねると、ミシュアルは頷いた。彼なりに、トカゲとの関係にケジメをつけたかったのである。

そして、数週間ぶりのトカゲとの相対。
ミシュアルは礼と別れを告げ、それとほぼ同時にジャッカルがトカゲへと襲い掛かった。
その強さは圧倒的だった。あのトカゲ達が見るも無残にやられていった。
戦略・戦術・戦闘力全てにおいてジャッカルの方が上回っていたのだ。
味方がやられていく最中、傷を負いながら逃げようとするトカゲ首領ヌワンギだったが、思わぬ相手に背後から首を刈り取られた。
それは、同じトカゲの仲間だったはずのアーロニーロだった。彼は犯罪組織『B・W』の構成員であり、スパイとして潜り込んでいたのだ。
流石のジャッカルも彼には手を出さず、トカゲは壊滅し、アーロニーロは悠々と立ち去っていく。
ミシュアルは、全て見ている事しか出来なかった。

その夜、ミシュアルはトカゲを思って泣いた。どんなクズであっても、彼をここまで生かして育ててくれたのだ。思い入れが全く無いはずがないのだ。
その後、ミシュアルはジャッカルと共に旅に出た。
トカゲ達から奪った……もとい取り返した物品を売却しなければならなかったし、ミシュアルに多少マトモな装備をさせてやらなければこの先ジャッカルとて動き辛かったのであろう。

緊急避難用としてIDを渡し、旅路は続く。途中、ビーンズというジャッカルの知り合いに会った以外は特に何事もなく進んでいったが、オマーンまであと数日と言う距離で馬を駆るマムルークの一団と遭遇した。
マムルークとは、アッサラームの騎士団であり、治安維持組織である。普通ならむしろ守ってくれる人々であるのだが、ジャッカルは脛に傷でもあるのか挙動がおかしくなり、マムルークとすれ違わない様街道から外れたルートを歩き出した。
疑問を感じながらついていくミシュアルだったが、遠くからマムルークの女性と思しき声が警告を発すると、ジャッカルの歩く速度が上昇し、ついに歩きづらい砂漠地帯に足を取られてミシュアルが転んでしまう。

明らかに狼狽した顔をしながらミシュアルを抱えて歩き出すジャッカル。
しかし速度の低下は免れず、随分と世話焼きなのか転んだのを見たマムルークの馬が追いかけてくる始末。
ついには追いつかれるが、そこでジャッカルが奇妙な行動を取る。

  地面に顔を押し付けて、ひたすら正体を隠そうとしたのである。

疑念を感じたミシュアルがどうしたのかと声をかけても無理はない。
しかし、やたらとジャッカルの名を連呼するのは何故か。ちょっと楽しげな顔になってないだろうか、ミシュアル少年よ。
しかし、それでもなんとか正体を知られずにやり過ごせそうだったが、マムルークの女性が目敏くミシュアルの持っていたIDに目をつける。
許可証を出せと迫るが、そんなの持っているわけが無い。すわ犯罪者かとなった時、観念したのかジャッカルが顔を見せた。

その瞬間、マムルークの女性が驚きに固まった。ミシュアルにはもう訳が分からない。
更には、何やら知り合いらしく話し始め、聞くにつけ元同僚か何かだったような内容であり、しかも女性がいきなり泣き出した。
呆気に取られながらも何故かミシュアルは手際良く他の騎士団を少し離れた場所に誘導し、事の成り行きを見守った。

結果、何はともあれ事情を聞くためにオマーンに連行される運びとなったのだった。
結局行き着く先は同じなのだが、状況が大違い。
何故かジャッカルは酷い扱いをされるわ、事情を聞いてもオマーンに着いてからと言われるわ。
ミシュアルにとっては晴天の霹靂に近いものがあっただろう。
とまれ、当初の予定とは大幅に違うものの、オマーンに辿り着く事には成功したミシュアルだった


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