【蠢鬼城】

【ぷろろろろろろろろろろろろろろろろろーぐ】
 荒波が押し寄せる、今にも崩れ落ちそうな絶壁の崖にそびえる城があった。
―――蠢鬼城。
 不安な地に立つ不気味な城。
 年中雨に降られているその城は暗く、暗い。
 この城の存在を知るものは稀有であり。この城を訪れるものは、さらに限られる。
 この城へ通じる一本道は困難な道程であり。その城の門番は、滅多に入城を許可しない。

 まるで城そのものが、人を嫌っているようである―――と誰かが言った。

 そんな城に逃げ込んだ、一人の少年。
 人を嫌う蠢鬼城が少年を迎え入れたのは、如何様な理由であったのか。

【城主ベルモンテ】

 蠢鬼城の一室。
 大きな窓を持つこの大部屋は、蠢鬼城の主の居室である。
 窓から覗く外界は、いつも通りの雨だ。雨粒が城に降る音が、ノイズの様に微かに部屋に響く。
 蠢鬼城の城内は、寒い。一年中雨が降り注ぐこの城には、日光が差すことが無いからだ。
 室内の寒さを和らげるための大きな暖炉が、ぱちぱちと音を立てながら木を喰らい、熱を放っている。
 燃え盛る暖炉の光を頼りにして、少年が居室にある調度品を磨いている。
 隣には、椅子に座り読書に耽る少女があった。
 少年と少女の間に会話は無い。暖炉が燃える音と雨音をBGMにして、時折少女が本をめくる音が鳴るだけだった。
「たーむらー。角みがいてー」
 椅子に座り本を読む少女が、唐突に声を上げた。
 たーむらーと呼ばれた少年が少女の懇願に答えるため、調度品の掃除を一旦切り上げる。
 少年は慣れた手つきで雑巾をバケツに掛け、水精霊を詠び手を洗って、濡れた手を前掛けのエプロンで拭いた。城主である少女の要望を逸早く遂行すため、さっと角を磨くための布巾を取り出した。
「たーむらー。はやくするのじゃー。城主さまを待たせるなど言語同断じゃぞー」
 少女は浮いた足をぱたぱたさせながら、催促の声をあげる。
 その声に急かされるように、少年は足早に少女の元に向かった。
「お待たせしました。城主様」
「…その呼び方は嫌いじゃ」しょんぼりとした動作からの「ふたりきりのときはベルと呼んでと申したじゃろう…?」上目遣いを利用した少女のおねだり攻撃が繰り出された。
 城主の外見は―――内面的な年齢は置いておくとして―――少女と呼ぶべき可憐さだ。外見ボーナスとして、おねだり攻撃の成功率に+60%のボーナス値が与えられる。
 少年は彼女の要求を拒むことができるはずもなく、仕方なし気に少女に対する敬称を改めた。
「すいません、ベルさま」
「ぬっふっふ。そうじゃ、それでよいのじゃ」
 少年が呼び方を変えると、少女はとても上機嫌になった。
 普段から少年が彼女のことをベルさまと呼ぶことができれば、こういった些細な行き違いは無くなるだろう。しかし、少年と少女の関係は小間使いと城主であり、城主がその名を呼ぶこと少年に許したとしても、“城に棲むものたち”がなかなかそれを許しはしない。
「迂闊にベルさまって呼ぶと、僕までクーさんに怒られるんですからね」
「クーはお主のこと気に入っておるからのぅ。口うるさく言うのも、クーの愛情の裏返しじゃ」
 城主ベルモンテのはらからの友人で、現在は城の御意見番として大小様々な仕事に従事しているクーヴェルの話題が槍玉にあがる。クーヴェルは、自由奔放な城主を戒めるために存在してるような、この城の安全装置のような人物である。
「しかし、たーむらよ。おかしいとは思わんか?クーは名前で呼んでもらえるのに、どうして城主の我が名前で呼んでもらえんのじゃー」
 駄々をこねながら少女が頬を膨らませた。
 尖らせた唇から、ぶーと空気が漏れる。
 少女は少年の五倍は生きているはずなのだが、彼女の行動には外見年齢との差異が殆どない。体の成長と共に脳の成長も止まっているのではないだろうか?と少年はたびたび、疑問に思っている。
 しかし、少女の言動の九割は狙ってやっていることで(残りの一割は天然)つまりは、ぶりっ子である。と永年この城で、少女と共に過ごしてきた御意見番のクーさんとメイドのレティさんがそう言っていた。
 少女のぶりっ子にハマりつつある少年は、騙されないようにと気を引き締める。ブンブンと首を横に振った。
「なぁーんで首を振り回すのじゃ?たーむらー」少女は少年の奇行(端から見れば、いきなり首を振るのは可笑しな行動だろう)を不審がりながら「まぁ、良いか。それではたむらよ。そこに座るのじゃ」
 と言って、ベットを指さした。
 おとなしく少女の指示に従い、少年は少女の寝具に腰を下ろす。
 すると、少女も椅子から立ち上がり、手にした本を椅子の上においてから、少年の膝の上に座った。後頭部を、彼の胸に預けている。
「さぁさぁ、たむらよ。とくとく我が角をみがくのじゃー」
 すりすりと頭を押し付けながら、頭部の左右から生えた角を強調する。さらさらの髪が、少年の胸の中で流れていた。
「失礼しますね。ベルさま」
「うむ~。苦しゅうないのじゃー」
 頭を動かすのを止めた少女の髪の毛を横に流して、角全体が見える様にする。
 角は耳の後部を起点として、少女の頭に沿って曲がりながら天に向かって生えている。
 少年が手に持った専用の布巾で、少女の角を根本から天辺に向かって丁寧に拭いていく。
 わずかながらではあるが神力を帯びている少女の角に汚れなどは一つとして無く、つまりは少年の角磨きの仕事は本来あまり意味がない。
 とはいえ「ぬふふっ。くすぐったいのぉー。たむらは角拭きが上手なのじゃぁ~」城主からのお褒めの言葉を貰える数少ない機会なので、少年は彼なりに一生懸命に行っている。

【御意見番クーヴェル】

 左右の角磨きを終えると、少女はそのままベットでお眠りになった。
 少年は、少女の睡眠を邪魔しないように気を使いながら、途中で放棄していた調度品の掃除をして、少女を起こさないようにゆっくりと部屋を後にした。
 とにかく広い蠢鬼城内は、廊下の掃除だけで二週間は掛かる。城で一人しか居ない掃除係りである少年は、毎日の様に広い城内を駆けまわり清掃作業を行なっている。
 少年が掃除するのは、各部屋に置かれている数々の調度品だ。豪華絢爛な調度品の数々を清掃し、元あった場所にしっかりと収める。この作業を、この城にやってきてからもうずっと繰り返している。しかし、いまだ終わる気配すらないのが現状である。
 とは言っても、少年が清掃すべき調度品や宝物の数は、実は城全体にある調度品のほんの一部でしかない。なぜなら、蠢鬼城には少年が入ると二度と帰ってこれなくなる部屋というものがいくつかあって、調度品や宝物のほとんどはそういった“曰く付きの部屋”に在るためである。
 流石に城の掃除に命を懸けることは出来ない少年は、当たり障りの無い部屋の当たり障りのない品の掃除をするだけである。
 そんな掃除の仕事が一段落したところで、少年はこの城の御意見番:クーヴェルに出会った。
 よく言えば、天真爛漫な城主ベルモンテの御意見番―――言い換えるならば、制御装置―――であるクーヴェルさんは、生真面目で責任感が強い。
 城主ベルモンテからすれば、口うるさい姉と言ったところだろうか。しかし、クーヴェル自体にもどこか抜けている面があり、少年から見ると気の利いたお姉さんといったところである。
 数少ない蠢鬼城の住人の一人だ。
 蠢鬼城はとても広いのだが、住んでる人は―――少なくともたむら少年の知る限りでは―――十人にも満たない。“うごめくもの”を知覚できない少年にとっては、この城に棲んでいる自分以外の人は、いまのところ4人だけである。
 だから、というわけでもないが、少年が自分から特定の人物を探してでもいない限り、今回のように城内で誰かとばったり出会うことは滅多にない。
「ちょうど良かった、クーさん。掃除が終わったので報告に行こうと思っていて」
「そうですか。いつもご苦労様です」クーさんは、ぼんやりと虚空を眺めた後で「これからお時間がありますか?」と尋ねてきた。
「えっと。はい、そうですね。夕食までは暇です」
「そうですか。では掃除のお礼に、私の部屋でお茶でもご馳走しましょう」
 少年からしてみれば、城の掃除はタダ同然で衣食住を提供してもらっている彼なりの恩返しである。だから、掃除が終わった後、いつもクーヴェルが労いとしてお茶をご馳走してくれることを、素直に喜べない少年であった。
 だけれども、たいした断る理由もなく、また、お茶を断ったときのクーヴェルの落胆は気の毒になるほどなので、少年は厚意に大人しく甘えることにしている。
「ベルやレティには内緒ですよ」
 クーヴェルはやんわりとしたいたずらっ子のように、僕に耳打ちした。

「どうぞ」
 クーヴェルのお招きを得て、少年は彼女の部屋に入る。毎度のことながら、少年にとっては緊張の瞬間だ。
 クーヴェルの部屋は、彼女の性格を顕著に表している。
 整然とした部屋には埃一つなく、不厚い学問書は綺麗に本棚に収まっている。机の上には何一つものがなく、全体的にどこか冷たい印象を与える。
 けれども…というかやっぱりというか、どこか抜けている部分のあるクーヴェルを象徴するかのように、彼女のベットの近くには今日脱いだであろう衣服―――可愛らしいレースの付いた下着を少年の目は見落とさなかった―――が落ちていた。
「っ」
 脱ぎっぱなしだった衣服に気が付いたクーヴェルは、急いでベットの元へと駆け寄り、衣服を取って布団の中に隠す。
 その電光石火の動きは、少年の知覚の遥か上を行く。人間離れした身体能力に、少年はいつものことながら驚かされる。
 少年は改めて、目の前の可憐な女性が、自分のような人間とは違うのだと認識する。
 そんな彼の思考とは関係なしに、クーヴェルは錆びついた機械のようにギギギッと首を動かし「み、見ましたか?」と少年に問いかける。顔が真っ赤になっている。
 彼女の人間らしい姿に、少年は思わず笑いが零れそうになった。

【給仕レティレイシア】

 少年はクーヴェルの部屋でお茶と談笑を楽しんだ後で、調理場へと向かっていた。
 夕食の準備の手伝いをするためである。
 少年が調理場に入ると、リズミカルな包丁の音が、調理場に響いていた。この城の給仕であるレティが、食材を捌く音だ。
 給仕レティは、少年がこの城を訪れるまで、蠢鬼城内の掃除洗濯料理などなどの家事全般をこなしていた使用人である。
 彼女の家事スキルは凄まじく、当初、少年には小間使いとして立つ瀬がなかったほどである。
 特に洗濯については神業の域である。年中雨に降られている蠢鬼城において、どういう方法かは知らないが、お日様に当てたようなぱりぱりの洗濯物を提供してくれる。
 雨特有の沈んでしまう気分を和らげてくれる、奇跡の洗濯物だ。
 また、調理場を一人できりもりするほどの料理の腕も持っていて、延料理からミズハ料理、スラヴィア料理にマセバ料理と数々のラインナップを持つ。
 家事については完璧超人の彼女だが、唯一掃除だけは人並みだったため、何とか少年は雑用係としての立場を確保できている。
「遅れてすいません、レティさん」
「気にすること無いよ、たまちゃん。ミズハの海中料理にエリスタリアの発酵調理法を応用した新しい創作料理を思いついてね。早めに下ごしらえをしていただけなのさ」
 そう言いながら、レティは華麗な包丁さばきで魚―――人間の身の丈以上はある体長で、何故かイカの足のようなものが体中から生えている不気味な生物も、この世界では魚だ―――を素早く分割し、切り捌いていく。
 生前はモンスター然とした姿であった魚さんも、その体を細切れに切り刻まれて切り身に成ってしまえば、グロテスクな面影はどこにもない。南無。
「主菜の方は、私一人で調理しておくから。たまちゃんは、、、そうね。野菜の水洗いをお願いできるかな」
 言われるがまま、少年は野菜の水洗いを手伝う。実際は少年がやるよりもレティがやったほうがはるかに早く水洗いでき、なおかつ全体の進行から見ても少年が手伝わないほうが早く準備が完了するのだが、レティの「働かざるもの食うべからず」の信条に則って、たむら少年にも仕事が与えられるているのだった。

 料理の準備が終わると、ほぼ同時に寝起きのベルモンテとクーヴェルが食事部屋へとやってきて、着席した。
 ベルモンテとクーの前に先ほどさばいたばかりの魚でつくった料理―――パエリアのようなものだった―――が置かれている。
「さぁ。ベルちゃん、クーちゃん、召し上がれ。今日の食事は私の創作料理だよ」
「いただきますなのじゃー」
「いただきます」
 ベルモンテとクーヴェルが、レティさんの料理に舌鼓を打ちながら、雑談を交わしている。
 いつものように、ベルモンテの食事の作法を注意するクーヴェルとそれを見守るレティさん。少年も、その輪に加わり談笑する。
 しかしながら、城の雑用係である少年には、城主と共に食事をとることは許されてはいなかった。こうして、食事に同席できるだけでもありがたいことではあるのだが、少年は、どこか寂しさを感じていた。
 とはいえ、そういった階級のけじめは―――少なくともこういった場では―――しっかりとつけなければいけない、と少年はクーヴェルに耳にたこができるほど教えられている。 
 少年とレティが食事を頂くのは、必ず、城主の食事が済んだ後だ。

【門番ゼルベルニルヘッグ】

 ベルモンテとクーヴェルの食事後、少年は、レティの頼みで門番に食事を届けるため蠢鬼城の城門を訪れていた。
 蠢鬼城への入城と退城の許可を下す魔物。門番ゼルベルニルヘッグ。
 両手両足に拘束具を付けた少女が今日も、雨降り注ぐ城門の正面に立っている。
 少年を蠢鬼城に招いてくれた人物であり、少年が唯一対等に話すことのできる少女である。
「こんばんわ。ゼルさん」
「・・・たまき」
 門番のゼルさんは、置物のようである。
 彼女は他人に話しかけられたときだけ、生き物に戻る。初めて彼女に出会ったときから、少年はそう錯覚してしまう。
 感情の起伏に乏しい彼女は、初めて出会ったときと同じように少年の名前を呼んだ。
「いつもご苦労様。食事を持ってきたよ」
「・・・レティ?」
「うん。レティさんの作った料理」
「・・・そう。それは安心」
 料理を受け取ると、ゼルさんはゆっくりと食事を始めた。
 以前、少年はベルモンテの作った料理を、ベルさまに言われるがままゼルさんに渡したことがある。
 当然の如く料理が下手だったベルモンテの料理を食べたゼルさんは、以降、少年の手から料理を受け取る際に必ず料理の作り手を確認するようになった。
 少年は今でも、申し訳ないことをした、と反省している。
「外はちょっと冷えるね。ゼルさんは寒くない?」
「・・・平気。寒いのは、たまきが外の精霊に受け入れられていない証拠。私はだいじょうぶ」
「僕って、精霊に受け入れられていないんだ?」
「・・・たまきは異物。仕方ない」
 最近、やっと水精霊を扱えるようになってきた少年は、意外な事実に戸惑った。水精霊を扱えるくらいでは、ここの精霊に受け入れられたことにはならないのか、とすこしだけ意外に思った。
「そうか、受け入れられていなかったのか・・・」
「・・・でも、蠢鬼城にいればだいじょうぶ」
「なら安心だね?」
「・・・そう。蠢鬼城なら安心」
 ゼルとの会話の内容だけでは、どうして城にいれば安心なのか、少年には分からなかったが、彼女の落ち着いた物言いに、根拠の無い安心感を感じることはできたので、それで良しとした。
 そして、会話は途切れた。
 少年はゼルさんの隣に立ち、彼女の食事が終わるのを、降り注ぐ雨を眺めながら待つことにした。

「それじゃあ。僕は帰るよ」
 食事を終えたゼルさんの食器を預かり、城内に戻ることにした。
「・・・たまき。ばいばい」
 ゼルさんは右手の拘束具をガチャガチャと鳴らしながら、城に戻る少年に手を降っていた。
「ばいばい、ゼルさん」
 城内に入る寸前に視線の端で捉えたゼルさんは、変わらず置物のようにポツリと一人、城門の前に立っていた。

【蠢鬼城】

 ゼルさんに食事を届ければ、一日の仕事は終わりだ。おおむねこのようにして、蠢鬼城での少年の一日は過ぎていく。
 自分の部屋に帰り、一日の日記をつける。蠢鬼城の住人との、他愛ない会話を窘める程度のものだが、この城に来てからかかすことのない、少年の日課だ。 
 書き終えて、背伸びをする。
 仕事の疲れが程よく感じられて気分がいいな。と少年は感じた。
 このまま邪魔が入らなければ、今夜はぐっすり眠れるだろう。

 コンコン。
 少年は、まどろみの中で部屋のドアの音に気が付いた。
「たーむらー。一緒に寝るのじゃー」
 元気の良いベルさまが、勢い良く扉をあけて入ってきた。
 城主であるベルさまは入室の許可など関係無しに勝手に部屋に入ってくる。
 少年は迷惑に感じることはなかったが、心臓に悪いな、と常々思っている。
「いいんですか、ベルさま。クーさんに見つかったら大変ですよ」
「よいのじゃー。心配せずとも、クーには仕事を押し付けてきたからの。今夜は部屋から出てこれんじゃろー」
 外界との接触がほぼ皆無であるこの城の城主と御意見番に、どのような仕事があるというのか。少年は知らない。知る必要もない。
 本当に仕事があるのかも疑問であるが、少年は深く考えないようにしている。なぜなら、彼にとっては関係の無いことだからだ。
「ささ、たーむらよ。とくとく来い」
 ほれほれ、といつの間にか僕の布団に潜り込んだベルさまが手招きをする。小さなてのひらが、ひらひらと舞う。
 お招きに逆らうことは出来ず、少年は布団に入った。
 布団のなかは、ベルさまの体温で満たされていてほんのりと温かかった。
「たーむらー。ぎゅっとするのじゃ」
 このベットでのお誘いも、初めのころは気恥ずかしく、その様子をベルさまにからかわれたものだが、今ではすっかり慣れてしまった少年だった。
 …少なくとも、顔が真っ赤になるということは無くなった。彼の心臓ははち切れそうに鼓動しているのだが。
 ベルさまに命ぜられるがまま、彼女の体に腕を回す。彼女の体躯は、少年の胸の内に収まる、抱き心地抜群の小ささだ。
 ベルさまが僕の胸の内で柔らかな体躯をくねらせた。
「ぬふふ。あったかいのじゃー」
 大変満足そうな城主の様子を見て、少年もわずかながらに誇らしい。思わず、小さな笑みが零れた。
 それに気が付いたベルさまも、ほほ笑みを返した。
 どちらからでもなく、互いに頬をすり合わせた。
「すりすり攻撃じゃー。心して受けよ、たーむらー」
 小さく熱を持ったベルさまの、餅のようなほっぺたの感触が伝わる。
 まどろみの中で、互いに抱き合いながら、蠢鬼城での一日が暮れていった。


オチ無し。エロ挫折。

  • ポイントポイントに絞ったチャプターの様な構成は工夫されていると感心する。プロローグで悪魔城を眼前に身構える姿を想像した -- (としあき) 2013-01-29 23:02:57
  • 止まぬ雨をまとう城とかカッコイイなー。キャラ立ちも申し分なし -- (名無しさん) 2013-01-30 01:43:18
  • 横からの独断でコメントタグを切り替えました。問題があれば甘んじて責めを負います -- (ID:9tHJnIB6) 2013-01-30 22:43:16
  • 「ベルさま」と様とは書かなかったりキャラ性際立つ台詞作りは場面含めてイメージが浮かびやすくて楽しい。各章じゃなく各題目ごとの中分類はちょっと使いたくなった -- (としあき) 2013-02-04 22:14:56
  • 城も含めて城主住人全員が何か文献などに影響を受けて舞台を幕間を演じ作って来訪者を手薬煉引いて待っている様な雰囲気が面白楽しい。 ざっくり割り切った構成立ては区切りがはっきりしていて読み易い -- (名無しさん) 2013-02-05 23:13:59
  • ベル様はじめ城の住人の役割とキャラがピンと立っていて楽しい一本。 たーむらが城に住むにいたった経緯と住人の種族が何なのかが気になる所 -- (名無しさん) 2013-06-07 22:17:59
  • たーむらー羨まし過ぎるのじゃー。紹介だけでも十分楽しめたので思わずイベントなどの続きがほしくなる -- (名無しさん) 2013-11-27 18:00:31
  • 今時のファンタジーのテンプレを組みつつ緩いノリとしっかり出来上がっているキャラが面白いですね。オチを何倍にも引き立てるぎゅっとしたのに思わず転がりまわりそうになりました -- (名無しさん) 2016-01-17 18:58:28
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最終更新:2013年11月29日 01:10