「結局総勢何人になったんだよこれ」
剣道部の犬塚勇馬先輩が呆れかえるのも無理はない。
3月なかばの肌寒くも春の訪れを間近に感じるその日、自分たちは淡路
ゲート前にいた。
その人数たるや50名を軽く越える。
発端は剣道部3年女子の浮田あすなろ先輩の唐突な提案による。
卒業したらみんな離れ離れだ。だから最後に皆で旅行に行こう。
その企画は剣道部のみならず多方面に話が広まり、参加者がうなぎ昇りに増え続け、
奥山先輩が手芸部を呼び、杉浦先輩を中心として水泳部が参加し、どういう経緯か陸上部にまで話が通り、
陸上部2年女子部員月光カナタの「旅館で仕事をしてる親戚がいる!」宣言により、
行き先はなんと<向こう側>
ミズハミシマ陸地の名勝にある古い館「ツキヤマ邸」へと定まったのである。
では、何故自分までこれに参加しているのかと言えば、答えは単純なのだ。
「はとむらー!これ見てよこれ。ゲートまんじゅうだってさはとむら。
日本って何でどこに言ってもこういう地元まんじゅう作るんだろうねはとむら。
これ中身どうなってんだろう。1個食べてみなよはとむら。あとお茶ないのはとむら」
えらく遠い土産屋から、我が新聞部の部長である守屋てゐさんがスカートヒラヒラさせながら走ってきた。
つまり、巻き込まれたのである。一応名目は同行取材という事になっている。
こんにちは、鳩村耳音です。
実はゲートをくぐって<向こう側>に行くのは生まれて初めての体験だ。
巻き込まれたとは言え、ワクワクしているのには変わらない。まんじゅうクソマズいなこれ。
目の前には光の柱を取り囲むようにして立ち上がった巨大な壁がある。
かつて発生した悲惨な事件「世界同時多発ゲートテロ事件」以後に設置された施設だ。
ものの本によれば、それは海上要塞と言っても過言ではないほどらしく、
これを建造するために国の土木予算の4割を投入したとかで、予定されていたダムが3つほど予算白紙になったのだとか。
壁にはいたるところにレーダーが貼り付けられており、外観はむしろイージス艦の艦橋のようだ。
入口でのチェックを受けて中に進むと、まるでSF世界のような有様だった。
「本当に光の柱なんだ・・・」
誰かが呟いたのが聞こえたが、まさにそうとしか表現できなかった。
二つの世界は物理的に接続されているのではなく、『神力』によって結ばれているのだ。
何故神は二つの世界を結びつけたのだろう。この旅でその意味を理解できるのだろうか。
そう思いつつ周囲に目を向けると、地球人と亜人のカップルばっか目についてイライラしてきた。
もしかしたら理由は酷く単純なのかもしれない。あとまんじゅうクソマズい。
転送自体は一瞬のものだった。
数年前に転送事故が多発していて問題になった事があったが、今はもうそんな事は起こらない。
大延国の神に供物を捧げることでゲートを安定させたとか、そういう事らしい。
恐ろしい神もいたものだと思う。
「これでもうミズハミシマに到着したのか。
あんまり地球とかわらない気がする」
みんなキョロキョロと周囲を見渡している。
犬塚先輩と奥山先輩は慣れているのか随分と落ち着いている。
蛇神先輩は大はしゃぎしているが、あの人出身はミズハミシマだったと思うんだが。
そう思いつつ上を見上げて、はしゃぐ理由を理解した。
頭上は全て海だった。
自分たちは今、海の底にいるのだ。
「はとむらあれ見てよ、あれ凄いよ。名前なんて言うのさはとむら」
もう一人はしゃいでる人がいた。
守屋先輩が指差した方に視線を向けると、巨大にも程がある魚影が見えた。
魚影と言ったが正確ではない。自分の知識の中では、あれは魚ではなく魚竜と呼ぶべきものだ。
「エラスモサウルスにしか見えませんが・・・そんなハズもないし・・・」
周囲の魚を優雅に捕食しながら、巨大な魚影は頭上を通り過ぎていった。
ふと、こんな簡単にゲート近辺に生物が近寄れるのなら、間違って地球に転送される事もあるのではないか。
あれが地球に現れたら、大騒ぎになるだろうな、そんな事を思い浮かべた。
ゲート周辺の貿易港であるアキツまで馬車で移動した。
つらっと馬車などと言ったが、厳密に言えば馬ではない。何とドラゴンである。
自分は生まれて初めて身近でドラゴンを見た。そこには図鑑でしか見た事のない生物がいた。
まるでばんえい競馬の馬みたいな巨体に、角とヒゲが目立つ頭部、全身は緑色の鱗で覆われている。
翻訳精霊によって「竜馬」と呼ばれるそれは、どちらかと言うとドラゴンというよりも麒麟の外見に近いように思う。
アキツから船に乗って5時間ほどかけて、ようやく目的地の島に到着した。
島の港には2人の出迎えが来ていた。
一人はまるで直立する陸ガメのような風貌で、高齢の男性のようだ。おそらく鱗人だろう。
もうひとりは旅館の仲居さんのような服装をした女性で、こちらも鱗人のようだ。
月光カナタが先行して船から下りると、仲居風の女性と親しげに話しているのが見える。
彼女が月光の言う親戚なのだろうか。
月光カナタが下船したのを皮切りに、皆次々と下船し始める。さて、自分も下りるとするか。
港から「ツキヤマ邸」までは、さほどの時間もかからなかった。
今、自分の目の前には「ツキヤマ邸」の姿が見える。
その規模たるや尋常ではなく、もはや城郭か何かと言ったところだ。
重厚な作りの門を通ると、見事としか言い様のないエントランスに出た。
正面には本館が中央にあり、それは平屋ながらも瀟洒で歴史を感じさせる館だ。
その左右に楼閣があり、それぞれ5層をなしている。この楼閣が城郭を思わせるのだろう。
特筆すべきはその建材と建築技法である。強いて言うならば19世紀に建てられた和洋折衷の邸宅に近い。
主要部材は木と石であり、石積みの基礎に壁は板張りで一部がレンガ。屋根はおそらくスレート葺きだろう。
自分が熱心に細部ディテールを見て興奮しながらデジカメで撮りまくっていると、
仲居さんらしき鱗人の女性が笑いながら自分に話しかけてきた。
「そんなにいっぱい写真を撮っていたら、すぐにフィルムが無くなってしまいますよ」と。
「これはデジカメだから大丈夫ですよ。予備のバッテリーも持ち込んでます」
と自分が言うと、鱗人の女性はすぐに合点がいったようであった。
「あ、デジカメって知っています。
でもあれ、光精霊たちにすぐイタズラされるから使い勝手が良くないって・・・」
そう言いつつ、鱗人の女性は自分のデジカメを覗き込む。
光精霊?自分が今ひとつ理解できぬままデジカメを一緒に覗き込むと、プレビュー画面には建築物は写っていなく、
かわりにふざけるにも程がある表情の、黄色とも何色ともつかぬ人影が写っていた。
「ああ、大変!やっぱり捕らえられていました」
鱗人の女性はデジカメのフタを開けてブンブンふりまわし始めた。すると、カメラから黄色い光が漏れ出た。
「もう!カメラには気をつけてってセージさんに言われたでしょ」
女性が光に話しかけると、光は目の前でフラフラと飛び回ってから、遠くへと飛び立ってしまった。
「今のが精霊なんですか」
自分が尋ねると、女性はニコリとしてうなづいた。
今日は生まれて初めて見るものが多すぎる。
それにしても、これでは写真撮影は困難だな。
「二つほど質問をしてもいいですか。一つはあなたのお名前。
そしてもう一つは、『セージさん』がどうやって写真撮影をしていたかって事です」
自分がそう言うと、鱗人の女性は驚いた表情をしながら言った。
「私はゲッコウといいます。
カナタちゃんとはちょっと遠いんですけど親戚で、あの娘がトツクニに行ってから頻繁に連絡をとっていたんです。
ちょっとその、チキュウの事を詳しく知りたいなって」
「つまり、『セージさん』がどんな暮らしをしているのかを知りたかったと」
「セージさんも色々と教えてくれるんですけど、よくわからない事も多くって。
あの、セージさんとお知り合いなんですか?やけに詳しいような・・・?」
「いや、これは自分の悪い癖です。セージさんとは面識はありません。
それで写真撮影の件なんですけれど」
「特別なことはしてなかったですよ。ただ、セージさんは光精霊を助手にしてました。
こちらに来るたびに、カンデンチ1個で契約したとか言ってましたよ」
助手。そういうのもあるのか。
「それでは私は食事の用意もありますので。また後ほど」
そう言うと、ゲッコウさんは急ぎ足で館に入っていった。あ、転んだ。
自分の部屋に案内され、ようやく一息つく。
精霊を助手にだなんて自分にはできそうにもないので、建物のディテールは原始的にスケッチする事にした。
あとで館全体を探検しにいこう。何かちょっとワクワクするな。
スマフォの画面をチラリと見ると、当然ながら電波はゼロ。
しばらくはシャーロックからメールがくる事もなく、ノンビリと過ごせるというものだ。
こっちが利用している面もあるけれども、こっちが使われている事も多い。
たまには距離をおかないと、自分もあの『化け物』に取り込まれそうで怖い。
そういう意味では、今回ここに連れてきてくれた守屋先輩に感謝しなきゃダメかもしれないな。
そう思っていると、ガラリとふすまが開いた。そこには守屋先輩の姿があった。
「はとむらいるー?入るね。あ、ノック忘れた。別にいいよねはとむら。
そろそろ晩御飯だってさはとむら。あと、食べ終わったら取材に行くからねはとむら。
この『ツキヤマ邸』はアヤシイわよー。何せミズハミシマの古い館なのに、壁中に写真が飾ってあるの。
これはもう『写真館殺人事件』しかないって思ったワケ。きっと今夜誰か死ぬわよ。
そしてそれを解決する名探偵はとむら!そしてそれを記事にする私!着いて来て良かった!」
久々に酷いな。まったく感謝に値しない。
「そういうのはいいですから、先輩も今夜くらい大人しく女子会にでも出ていてください」
貴重品だけは身につけて自分は部屋を出た。
守屋先輩は不服そうに唸ると、言葉を続けた。
「女子同士で話しててもくだらないウワサ話ばっかりで飽き飽きしちゃうのよね。
さっきも十津那で誰が一番イケメンかなんて話で盛り上がっててさぁ。
あ?何その表情。自分はその中に出てきたか気になるんでしょはとむら?
知りたいの?ん?どうなのさ?んん?」
ウゼェ・・・
しかもこの人、絶対にウワサ話に飽きてない。
「別に知りたくないですよ」
「一番話題にあがってたのは犬塚君だったね。でもこれは奥山さんもいたし仕方ないかな。
浮田さんが川津くんを推してたけどあんまり同意されてなかったね。
あとは当然のようにクラハくんも名前があがってたけど、外見重視の意見よね。変わり者だし。
杉浦さんが歴研の弓橋くんがいいって言ってたけど、そんなカッコよかったかなぁ。
後輩だと元原ナントカくんって子がカッコイイんだってさ。今度見に行こうかな」
知りたくないって言ってんのにさ。話したくて仕方ないって顔してるし。
はぁ・・・仕様がない。
「で、自分は話題に出てたんですか」
すると守屋先輩は我が意を得たりといった風でさらに饒舌に話し始めた。
「んもーやっぱり気になってんじゃんはとむら。素直じゃないなあはとむら。
ザンネンながらアンタをイケメンだって推してたのは私だけだったよはとむら。案外人気無いんだね。
つーかアンタはこう、無駄にマジメっぽいのがダメなのよね。もっとチャラくできないの。
チャラ男にしなさい。チャラ男に。そしたら腹抱えて笑ってあげるから。
知名度だけは妙に高くて気持ち悪かったけど。ラクロス部まで知ってて吹いた。
アンタ何か悪い事でもやってんじゃないのはとむら」
あなたの取材という名の試練のせいで知名度ばっかり伸びるんですよ。
そうこうする内に、大宴会場へとたどり着いた。
剣道部を中心に、50数名の十津那学園生が集まっている。凄いなこれ。
出てくる料理は素朴な味付けながらも、これまで見たことがなく、反面どこか見覚えのある食材や料理のオンパレードで飽きがこない。
この焼き魚だって、本当に魚なのかどうかもわからない。今朝ゲートで見た魚竜かもしれない。
逆に「これが今、大延国で流行中の『大都焼き』です!」と仲居の鱗人さんが紹介した料理は、
この場にあまりにもそぐわない、どうみてもお好み焼きといった風な料理だ。
異世界の料理は本当に面白い。これは本気で取材してみる価値があるかもしれない。
食事が終わると今度は剣道部を中心にしての余興が始まった。運動系はこういうの好きだよなぁ。
うわ、守屋先輩歌うのかよ・・・歌唱力ジャイアンなのに。
耳が壊れる前にここを逃れようと、自分は廊下へと居場所を移した。
廊下に出ると、一人の女性が男性に肩を抱かれて涙を流していた。
っと、川津先輩と浮田先輩だな。修羅場かもしれないからここも逃げよう。
廊下をフラフラと歩き続け、気がつくと正面玄関にたどり着いていた。
そこには多数の写真が丁寧に額に入れられて飾られていた。
多くはこの島の風景写真だったが、何点かは人物写真が混ざっていた。
その全てが、笑顔で写るゲッコウさんの写真だ。
いや、全てでは無いな。1枚だけ明らかに日本人と思わしき男性の写った写真があった。
不意打ちで撮られたのか、慌てふためいた表情で写っている。
この人が『セージさん』って事なんだろうな。
「宴会はもう終わっちゃいましたか?」
後ろから声をかけられた。ゲッコウさんだ。
「どうも疲れてしまって、散歩してたんです。
この写真、セージさんですか」
「ええ、そうです。ここに飾ってある写真は、全部彼が撮ったんですよ。
こっちでは写真がまだ珍しくて、おかげで『ツキヤマ邸』にもお客様が集まり始めました。
ツキヤマ様も龍神様より賜った、客人は手厚くもてなすべしの勅命を果たせてご満足されております。
そうした感謝の気持ちを忘れぬよう、玄関先に彼の写真を飾りなさいと言われまして・・・
本当は私の部屋だけに飾っておきたかったのにぃ・・・」
ゲッコウさんはフニャフニャのニヤケ顔になってそう言った。ノロケか。
「それじゃあ、自分は部屋に戻りますんで」
そう言ってゲッコウさんと別れ、中庭の方に足を運んでみると、そこには肩を寄せ合って口づけする人影が見えた。
まあ、どう見ても犬塚先輩と奥山先輩だな。あれ。
イライラしながら本館左右にあった楼閣の方に行ってみると、何故か階下に門番のように立ちふさがる鱗人がいた。
「何かあったんですか?」
自分がそう聞くと、鱗人の男性は左右に首を振るばかりであった。
上に行ってみたいと伝えると、鱗人の男性(アシュギーネという名らしい)は「すぐ戻る事となるぞ」とだけ言った。
何のことだか・・・そう思いつつ4階まで上がってみると、上階から女性のあえぎ声が響いてきた。
うわー・・・旅行先でヤッちゃってるのかぁ。誰だよまったく。いや、詮索するのもマズいか。
邪魔してもマズかろうと下に降りていくと、「だから申したであろう」とアシュギーネ氏が呟いた。
学園から外に出てもリア充爆発なのか。酷い世の中だ。
大人しく自分の部屋に戻ろう。そしてもう寝よう。
そう思ってそそくさと自室に戻ると、そこにはケータイの周りに群がる光るマリモのようなよくわからない何かと、
持ち込んだお菓子を食い散らかした挙句に、自分の布団を占領して眠りこける守屋先輩の姿があった。
「いい加減にしろ!」
思わず口にしてしまったが、守屋先輩は寝返りを打っただけだった。またパンチラしてるし・・・はぁ
とりあえず布団をかけ直してから、ケータイを拾い上げる。なんだろう、この光るマリモ。
すると光るマリモはケータイの周囲まで浮かび上がり、クルクルと飛び回り始めた。
そういう生き物なのかな?と思い光るマリモの一つを凝視すると、マリモの中に人の顔らしきものが見えた。
驚く自分の耳に、微かに(・・・怒ってますか?)という声が響いた。
「あ、いや、さっき怒鳴ったのは先輩に対してで、あなたにではなくてですね」
しどろもどろでそう言うと、光るマリモはニコリと笑って、こう言った。
(・・・お手紙をお持ちしました)
手紙?しかし手紙は見当たらない。ふとスマフォを見ると、メールの着信があった。シャーロックからだった。
何で異世界に来たのにアイツからのメールが届くんだ!そう叫びそうになって、気づいた。
手紙ってこれか。光るマリモは電波の代わりか何かなのだろうか。
『やあハトソン君。休暇を満喫しているかね。
私は今、実に面白い事件を3つほど解決させたところだが、探偵役が居ないから最後のしめが出来ないでいるよ。
さあ、さっさと帰ってきてくれたまえ。それとお土産はミズハ特産の海砂糖で十分だよ・・・』
その後も文章が続いていたようだが、自分は読む気がサラサラなかった。
(・・・お返事は?)
「マリモ・シタンって娘に、お土産を持って帰るけど何が欲しいかってメールを送りたいんだけど」
(・・・シャーロック様には送らなくともよろしいのですか)
「いいんだ。アレにはそんな気遣いはいらない」
(・・・それでは)
そう言うと、光るマリモたちは窓から外へと出て行ってしまった。
不思議な生き物もいたものだな。
結局その晩は布団をもうひと組引っ張り出して部屋の隅っこで寝た。
何でこんな目に会わなければならないのか。そう自分の運命を呪いながら。
しかも次の日の朝は守屋先輩に「やーい草食系」の声で起こされた。
何が草食系か。フザケるのも大概にして欲しい。
それでもこの先輩と毎日のように顔をあわせる生活もこれでおしまい。卒業してしまうのだな。
そう思えば、この最後の酷い旅もまた感慨深いものがある。
その後も散々観光だの何だのと堪能して、1週間後に自分たちは再び地球へと戻ったのだ。
「いやー、いい旅だったねはとむら。ちょっと疲れたけど、それでも楽しかったねはとむら」
本当に疲れているのかまったく疑問な笑顔で、守屋先輩が言った。
自分はほんの少しだけ真顔になった。
「守屋先輩。ご卒業おめでとうございます。卒業式の日にも言いましたが。
この2年間、新聞部としてご指導ご鞭撻いただき、本当に感謝しています。
ありがとうございました。そして、また会う日まで」
さすがの守屋先輩も目尻に涙をためた。
「はとむらのくせに泣かせるんじゃないわよ。まったく。
そうよね。『また会う日まで』アンタも新聞部として精進しなさい。
私はいつでもアンタを鍛え上げてあげるんだからね」
半ば泣きかけて、彼女はそう言った。
そうして新学期が始まった。
新学期そうそうにシャーロックが勝手に手がけていた3つの事件の探偵役をこなして、自分は新聞部の部室に足を運んだ。
いよいよ3年生。高校生活最後の部活動が始まるのか。
とは言えユルい新聞部だ。いつも通りに紅茶を煎れ、のんびりする所から始めるとするか。
そう思ってお茶を沸かし始めたところで、入口のドアが開いた。
「はとむらー!取材ネタ決まったー?」
と言いつつ、我が新聞部の元部長である守屋てゐさんがスカートヒラヒラさせながら部室に乱入してきた。
「・・・何でですか」
そう尋ねるのが精一杯だった。
「私?受験失敗して浪人してんの。予備校に通うお金もないしここで勉強してるんだー。
あ、このスコーンとゼリービーンズ食べていいの?はとむら。
いただきますはとむら。あと紅茶もいただきますはとむら。
そうそう、本題ね。ネタが決まってないなら、良い話があるぞ」
守屋先輩は一人でペラペラと語りながら自分のスコーンとゼリービーンズを食べ散らかし始めた。
ふと、写真館殺人事件』という単語が脳裏をよぎった。犯人は自分。即座に解決だね。
はぁ。今年もステキな年になりそうだ。
浪人生が・・・新聞部部室に居る。
お題
「フィルム」「チャラ男」「また会う日まで」
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- 一般常識というかお固い性格な人が異世界に行ったときのサプライズやカルチャーショックは大きいのでしょうか。いつもと違う風景と空気の中だといつもと同じ関係の二人にも変化が?浪人生活は厳しいですが -- (名無しさん) 2016-06-05 19:35:26
最終更新:2014年08月31日 02:02