木もまばらな林は寒くなる時期には積雪もあるようです。
林を割る様に何本もの岩盤敷きの道が山へと延びています。
道には様々な幅の轍の跡が刻まれており、クルスベルグの物流の歴史を感じることができるでしょう。
道を進んでいると木々の上に山脈が見えてきます。
そのまま進むと頑強で粗野な石造りの建物が見えてきました。
【入山管理所】も兼ねる二階ないし三階建ての建物は、
過去はクルスベルグの屈強な戦士達の屯所にもなっていたとも言います。
クルスベルグの山々の中には町が広く分布しており、管理所があるという事はそこに山の入り口あるということです。
入山する人の流れを監視するという一応の名目はあるものの、
道を眺める窓からは赤ら顔の
ドワーフなどが酒を片手に陽気に歌っていることが多いようです。
さぁ山に入ります。
山の中という事で狭い坑道などを想像しがちではありますが、実際は大きく違います。
クルスベルグの山の町は多くが生産製造を生業とする工房街であり、それらに多くの材料などを運んでくる規模も大きいのです。
大型の牽引獣や搬入搬出を行う大型種族などをスムーズに動かすために、
山の入り口は大きく、入り口すぐの広間は荷受なども行うために広く高く作られています。
広間からは山のあちこちへと通じる道が延びており、道の入り口の上には意匠を凝らしたプレートが行き先を記しています。
プレートは行き先の顔でもあり、それらを管轄する者が技術を誇るものでもあるようです。
荷獣やトロッコの通る道は接触事故などの可能性もあるとのことで、観光客などが入れない事が多いようです。
通路を歩いていると常に何かが打たれたり回ったりする音が響いています。
光散性の苔類が詰まった照明瓶や、光精霊を集めるルーンが通路を照らす下を進みます。
通路、すぐに広間、方々へ延びる通路と繰り返すため、地図と行き先のプレートを疎かにすると迷ってしまうでしょう。
街を歩いて気付くのが【酒場】の多さでしょう。
クルスベルグの酒場は酒場という以外に地球で言う所のコンビニの様にあらゆる役割を兼ねています。
ドワーフなどクルスベルグに住む者の多くが酒飲みであることも要因ではありますが、
精錬や技巧を施す際に真水を使うためか、酒の方が水よりも安価ということから酒が広まったとも言われています。
そんな酒場を覗くと髭を蓄えたドワーフが朝昼晩お構いなしに酒を楽しんでいます。
給仕や店主が止めるのもお構いなしに飲んでいる者も多いですが、熱や硬さなどとの戦いである仕事の合間には
飲んで酒を味わうのも大切な息抜きになっているのでしょうか。
街の中心まで辿り着くとまず上を見上げることでしょう。
山を下から上に突き抜ける大空洞と、その中を延びる巨大な回転する軸。
これぞまさにクルスベルグものつくりの根幹である動力源であり、その軸に様々な歯車を組み合わせることで
軸の回転力を街のいたる所へと伝えていくのです。
山と街の規模により、軸の大きさも本数も様々ですが中心となる軸には特別な名称が付けられているようです。
山の地下は熱源による動力製造と掘っては採り掘っては採りと延び広がる坑道があります。
街によっては、それらを見物できるトロッコ観光なども整備されています。
クルスベルグは過去より続く鉱毒や製造害との戦いの歴史であり、
製造過程で発生する熱や運動力を循環させる構造にも力を入れています。
ただし、山の地下への立ち入りはクルスベルグでも関係者以外は強く禁止されています。
観光の記念などに御土産が欲しくなったのなら酒場の隣の御土産屋に寄ってみましょう。
主に
ノームが座る店頭の奥は小さな工房になっており、様々な工芸品を作ったりなどしています。
方々から運び込んだ食材を、製造作業やクルスベルグでの保存に合わせて加工した食品、
誰にでも扱える簡単なルーンを施された光や音、熱などを発生させる工芸品、
地球に持ち帰るのは難しいですが武具関係も販売しています。
地球からの観光客が増えるに伴い、小さな鉱石の欠片や宝石の原石なども需要が増し、
磨かれて加工などされてワンポイントのアクセサリなどとして人気があるようです。
一頻り観光を終えると上手い具合に山頂に出ます。
雄大な山からの景色では、方角によっては
ラ・ムールの砂漠や
イストモスの平原まで臨めます。
帰りはお呼びがかかるまで煙草をくゆらしているノームの運転手に下山を申し出てみましょう。
頑丈な鋼縄で昇降連動した登山下山が一体になった仕組みなので、下か上かどちらかが振動のルーンにより昇降開始の合図を送ります。
準備完了の合図が送られてくると、下山側のトロッコに重りを積載し発車となります。
思い思いの運転手の掛け声と共に勢い良く線路を下るトロッコは異世界流ジェットコースターでしょう。
下まで行き着くとトロッコは極めて衝撃吸収力を持つ綿肉苔の塊にぶつかり停車します。
もし、もう一度爽快感を味わいたい場合は登山側のトロッコに乗り、再度頂上まで行くと良いでしょう。
それではまた、異世界の風景の何処かで会えることを祈って。
想像、クルスベルグの山の中
- 自然エネルギーとか利用して害を抑えているのかな?山の中だから特にそういうのには気をつけてそう -- (とっしー) 2013-05-19 20:16:21
- 山ごとテーマパークと鍛冶工芸品市みたいな町だった。でも飲み物は酒ばっかだと未成年が困るか -- (名無しさん) 2013-05-23 15:21:33
- アナログ技術と精霊と自然の塊みたいな山の町だー -- (名無しさん) 2015-04-13 23:15:19
- 山山山の国というクルスベルグ。仕事と効率の生産が結びついた山の中は人間が思っている以上に利便性豊かなのかも知れませんね。クルスベルグ独自の要素が交流の中でどのような変化を見せてくれるのか楽しみです -- (名無しさん) 2016-10-02 18:08:27
最終更新:2013年05月18日 20:54