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【ニシューネン市の学び舎】

 ─ お母さん、お父さん、元気ですか?
   今俺は、新天地でも活気溢れるニシューネン市にいます
   今、大ゲート祭の真っ最中なのでここのゲートから日本に一度戻ってみたいと思っています
   祭が終わるとくぐったゲートに戻されるので、一時的な帰郷になりそうですが
   お土産も色々と持って行こうと思ってますので
   楽しみにしていて下さい
    ニシューネン市の駅舎の中、郵便屋から久しぶりの息子より ─


「おにーちゃん、顔を出したらすぐにつまんで引っ張りあげないとダメだよー」
「えっと、穴の近くを叩いたら… おっ!出てきた!」
 指の間に挟まる前に首を引っ込められる
「ヘッタくそだなぁ。見本を見せてやるよ!」
 鮮やかな髪を結った鳥人の少年が穴を叩く
 顔を出したそれを、ひょいと嘴で摘んで返りの付いた手籠に落とす
「うーん上手いなぁ。 おにーちゃんにも嘴があったらなぁ」

ニシューネン市の北にある“フォーリン学舎”。そこから少し北へ向かった郊外。
のどかな草原と丘の片隅で、亜人の子達に混じって人間の青年。
「おぉー!取れた!取れた!」
穴から引っ張りあげたのは、長さ15サンチ程で小指ほどの太さのあるミミズ。
やっと籠の中に一匹入れるも、周りの子達の籠はもう半分近くミミズで埋まっている。
「そろそろお昼にするよーー!」
草原に老狗シスターの声が響くと、無邪気な顔達は一斉に振り返り、立ち上がる。
最後の最後で二匹一緒に顔を出したミミズを掴み取り、物寂しい籠をぶら下げ子供達の後に続く。

 歯衣 渡、帰郷前に新天地の土産でも買おうと金策中
 子供でも出来る小遣い稼ぎと言われた“肉ミミズ採り”に励むも惨敗

「いやぁどうもすみません。お昼まで御馳走になっちゃって」
孤児達の多く通う学舎だが、暗い雰囲気はなく子供の笑い声や何やらがひっきりなしに飛び交う。
昼飯時ともなるとそれは一層賑やかになる。
「タダじゃあないよ。ミミズもろくすっぽ採れなかったんだ、これからあんたにゃ学舎の外壁掃除でもやってもらおうかね」
ミミズ採りは初体験だが、壁磨きだのは清掃バイトでやったことは何度かある。
「はい!よろこんで!」
思わず癖になっている返事をしている隙を隣の猫人の子に突かれ、皿の蒸かし芋をひょいとかっさらわれる。
「あいたっ!」
ごつんと猫人の子の頭を打った土茶色の鱗が生え揃う拳。
「こーら、他人の物を取ったが駄目やいつもゆーたろが」
陸棲の岩蜥蜴人のシスターが、ポロリと落ちかけた芋を素早い手捌きで皿に戻してくれた。
「やんなら賭けで勝ったがにせんか。ホレ」
猫人の皿とこちらの皿の間に賽子が置かれる。
「あんちゃん、芋賭けて勝負や!」
にゅっと猫手で突き出された賽子に思わずたじろぐ。
「あまり子供に賭け事教えンじゃないよ!」
蜥蜴シスターの頭をごいんと鉄の拳が打つ。 義手だ。
「ここは授業と仕事の両方をやっているんですか?」
眉毛も目じりも垂れた老いた狗人。
右腕の義手が新天地で生き抜くという意味を物語る。
「どの道一人立ちして生きていくからね。孤児なら尚更しっかりしないと。
子供のうちからあれこれやっときゃ仕事も覚えるし金の有り難味も分かって一石二鳥さね」
 成る程、確かにその通り。 どこに行くにせよ、先立つものは労働からだ。
「せんせー!あのおねーちゃんが鍋の茹でミミズ全部食べちゃったよー!」
子供達のあんぐりとした表情の先、山盛りの茹で肉ミミズをばっくばっくと貪る海賊帽。
口の周りにソースが付くのもお構いなしの満面の笑顔は、半分が髪で隠れて見えない。
「パスタみたいで美味しい!」
「やれやれ…あんだけ食ったら相当働いてもらわないといけないねぇ。
あんた、あの子と一緒に森に行って“吠え株菜”あたり獲ってきておくれ」
「ええ?! 俺ですか?!」
「あーあー、カナデ食堂で祭の客が多すぎて野菜ば切れるじゃいうて困ってたが? いつもの三割増しで買う言うとったが」
視線の先で海賊帽の少女は空の鍋を覗き込んで悲しそうな顔をしている。
「心配しなくてもいいよ。 あの娘は外で子供らに襲い掛かってきた“岩食み百足”を錨の一撃でノしたしね。
頭潰しても七日は生きるアレを一撃とは驚いたよ。」
「は、はぁ… とりあえず森へ行って見れば何とかなります?」
「おう、鳴き声がでかいがすぐに分かるがや。 齧られんよーにだけ気をつけや」
「え?齧られるんです?」

 働かざる者、食うべからず
 当然の摂理の中で日々を送る子供達
 きっと逞しく育つに違いない


  • アウトローも黙らせれそうなシスターがいい味出ている。働きながら学ぶ子供たちのパワーは微笑ましい -- (としあき) 2013-06-25 13:06:56
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最終更新:2013年06月19日 12:40