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【双子と打ち上げ】

「「かんぱーい」」
「か、乾杯」
ゲート祭最終日、屋台を店じまいした後で俺はハーピーの双子に酒場に連れ込まれていた。いつもよりすっごく儲かったし打ち上げ、らしい。
「手伝ってくれてありがとう」
「ほんとに助かった、ありがとう」
「はは、結局最後まで手伝うことになるとは思わなかったけどな」
苦笑しながら、トウモロコシか何かを醸造したものらしいきつめの酒をちびちびいただく。双子は超遠慮なくかっぱかっぱいってるんだが、こいつらこのペースでほんとに大丈夫なのか?
この一月弱、この二人に付き合ったことでいかにこいつらが計画性という言葉から遠いか実感しただけに、酒の飲み方ひとつとってもノープランの勢い任せなんじゃないかとまず疑ってかかるのが癖になってしまった。
屋台自体は双子の親戚らしい近所の養鶏場?みたいなところから販売委託されてのものだったので、仕入れやら加工処理やらの段階から双子に振り回されずに済んだのは心底ほっとした。
まあ、そこの経営者のおじさんも双子の小遣い程度に売れれば御の字くらいでゆるーく考えていたようで、俺が関わったおかげで予想以上の売れ行きになったことには結構驚いていたようだったけど。
しかし、毎年あの調子だったろうに気にしない程度におおらかな人なのか、誤差で済むくらいに普段は儲かってる人なのか。こういうのもオルニトの国民性なのか?
徒然と酒を舐めながら考え事をしていると、俺の両脇から双子が同時にもふっと翼腕で抱きついてきた。
「暑い」
「お酌するよー」
「何か頼むー?」
「あ・つ・い!」
だめだ、へらへらしてる。こっちの話に聞く耳持ってねえ。
そういや、俺からは一応名乗ったけどこいつらの名前って結局まだ聞いてないんじゃないのか。仕事中はてきとうに「双子」とか「バカ姉妹」(さすがに本人には言わん)とかで済ませてたけど。
「あれ、言ってなかったっけ」
「言ってなかったかな」
「言ってなかったかも」
「そうだったかもなー」
「聞いてねーよ」
両脇から酌をしながらも相変わらずハイペースで飲み続けている双子が、そうだったそうだったと異口同音にへらへら同意した。
「私はアエル」
「私はアエルだよ」
「ああ、どっちかがアエルなんだな。で、どっちがアエルなんだ」
そう聞くと、二人は不思議そうに首をかしげた。
「「二人ともアエルだよ」」
おい。
「というか、右と左で目の名前は違うの?」
「右と左で手足に違う名前がつくの?」
「私たちもいっしょだよ」
「“私たち”がアエルなの」
ちょうめんどくさいこと言い出したぞこいつら。
「お母さんのおなかの中にいる時に、お母さんがハピカトルさまの中に巻き込まれて」
「偶然無傷で出てきた後、生まれたのが私たちなの」
「生まれた時からお互いがひとつで」
「それが当たり前なの、って言ったら、旅人さん信じる?」
酒で上気した顔で、同じような目で見上げてくる双子。
しばらく考え込んで、やめた。
俺にとってはどうせ異世界なんぞ不思議で当然なんだ、なら酒の席で考えるだけ無駄なことをうんうん考えたくはないな。
「んじゃ、どっちかにキスしたら両方にわかんのか?」
「わかるー」
「でも出来れば両方にするべきー」
「おっしゃ、まかせい」
んちゅー、と二人ともにデコキスすると、ふひゃひゃと二人して似たような笑い声をあげた。

宴もたけなわだが、そろそろブルーリボンが切れる頃合だった。
デコちゅーをきっかけにすっかりキス魔と化し、酒を飲んでは酒臭い唇でちゅっちゅちゅっちゅしまくるアエル“ども”を一旦引っぺがし、そろそろお別れだと告げると二人ともようやっと焦点の定まった目でこっちを見た。やっぱ飲みすぎだな、バカ姉妹め。
「祭りはまた来年だが、俺はもう一回くらいこっちに来るつもりがあってな。アエルは普段どこで働いてんだ? なんだったら顔出しにいくぞ」
ほぼ一ヶ月の付き合いだ、そのくらいしたって構わんだろう。
すると、アエルは二人して微笑んで言った。
「ディセト・カリマ」
「バラ・クラヴァ」
「「お待ちしています」」
さっきまでの乱痴気騒ぎが嘘のような、何かの誓約のように厳かな接吻だった。
ぽかんとしているうちに、左のアエルがしゅるりとブルーリボンを引き抜いていた。あ、という間もあったかどうか。瞬き一つの間に、俺は荷物ごとたこフェリーの船の上にいた。

ディセト・カリマ。バラ・クラヴァか。
後の名前のほうは覚えがないが、前のほうならよく知ってる。なんとなくあの二人と結びつかないような、しっくりくるような。
まあ、いい。どうせあの二人のことだ、仕事場に戻るのもうっかり遅刻気味とかだろう。ゆっくり計画して、ゆっくり会いにいって問題ないさ。


  • うわぁめんどくさい!付き合っていると脳がトリップしそうなやりとりだけどそれが彼女たちの手管か? -- (名無しさん) 2013-07-09 23:08:48
  • 双子かわゆす -- (名無しさん) 2013-07-10 01:01:30
  • 元があったとはいえキャラ付けと動かし方を完全にモノにしていて素晴らしい。不思議な双子ってのもミステリアス -- (名無しさん) 2013-07-11 23:33:13
  • この双子可愛い。「お待ちしています」のキスでちょっとドキッとした -- (名無しさん) 2014-05-31 10:15:41
  • 不思議な双子に不思議な同じ名前。陽気であっけらかんとした野性味エロさの後ろに双子が持っているものは一体なんだろう -- (名無しさん) 2014-07-25 03:10:11
  • 久々にみたけどこの双子は実に良い -- (名無しさん) 2018-02-24 15:57:54
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最終更新:2013年08月05日 02:06