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【RED2】

前の話【RED】

5.
「チッ!みんな中でどんちゃんやってんのに歩哨なんてついてねえ」
「ぼやくなよ。気が滅入るし、ボスに聞かれたら事だぞ?」
夜、酒場の外で歩哨をしているゴブリンとトロルが言葉を交わす。
はっきり言って二人共やる気はない。
それはそうだ、30人程からなる武装集団に歯向かうような奴はそうそういない。
特にここは街の首長が私兵を殆ど持っていないため、他の有力都市の首長が兵を差し向けない限りそうそう襲撃などは受けないはずなのだ。

「じゃあ、俺は向こうを見てくるからここの見張りをしっかりやっててくれよ?侵入者がカチコミに来るかもしれないって話だからな」
トロルがのっしのっしと別の監視場所に移動するのをゴブリンは手をひらひらさせて見送る。
「はぁ…たくっ、やってらんねえな…」
「本当に」
「!?」
ぞぶり…
返って来るはずのない返事に驚き振り向こうとしたゴブリンの口を後ろから抑えて喉元を大振りのボウイナイフで一刺しにする。

そのまま篝火などを避け、近くの物陰にビクビクと痙攣するゴブリンを引きずり込み静かにナイフを抜く。
弾がギリギリしか無いからしょうがないけど趣味じゃないんだよな。こういうのは…
死体を目立たないように隠し、心の中で愚痴をこぼしながら僕はナイフを拭い、次の歩哨に忍び寄る…


「…準備は出来たのか?」
「ええ!そりゃまあバッチリと」
弾の補充が終わり自室から酒場部分へ降りてきた俺の問いかけにユーリが軽く答えて指を鳴らす。
剣槍斧などを持った10人の部下が整列する。

俺はスツールに軽くもたれながらそれを眺めてさらに問いかける。
「あと10人ほどは?」
「へい、すでに外の警戒に当たらせてやす」
準備万端という顔で俺に答えを返す。
間抜けめ!
「…篝火や松明すらも焚かずにか?」「は?」
ユーリが窓の外を見る。
あいつの顔に付いてるのが節穴でも外が真っ暗闇で人が動いている気配が無いことぐらいは分かるだろう。
「来るぞ」

酒場の窓を何かがぶち破り外の様子を伺っていたユーリをぶっ飛ばした。
「ああ!ユーリの兄貴」「大丈夫ですかい?」
部下のうち何人かがぶっ倒れたユーリに駆け寄り、他が窓をぶち破って入ってきた何かに恐る恐る近づく。
「クソ!なんだこりゃ……?」「お、おい、これうちのアントンじゃ?」「な!?」
ぶち込まれたのはどうやらうちの部下らしい。
そいつはロープでぐるぐる巻にされてボコボコに殴られたらしい顔でうめいている。

「おい!大丈夫か?アントン」「クソ!ひでえ事しやがる」「待ってろ。今、縄を解いてやるからな…」
俺は即座にバーのカウンターの向こうへ飛び込む。
嗅ぎ慣れたような臭いがしたからだ…

「ん、何だこりゃ?火が付いてるぞ……!?」
部下たちが不思議がる声と同時に轟音と爆風が酒場の中を吹き荒れた…

6.
僕は仕掛けが終わった後、屋根から降りて物陰に隠れて爆発音を聞いていた。
しばらく経ってあらかたの掃除が終わっただろうと扉の吹き飛んだ戸口から酒場の中を伺う。
中はそこら中に燃え移った炎が瓦礫の散乱する店内を照らし、瓦礫の中から幾つかのうめき声が聞こえる。
ケチらずもう少しダイナマイトを突っ込めば良かったかもしれない。
そう思いながらリボルバーを構えてゆっくりと店内に入る…

店内は酷い有様だった。彼の仲間だろうたくさんのヒトが爆発に巻き込まれて肉片が散らばり、生きている者も手足を吹き飛ばされて呻いている。
正に地獄のような状態だ…自分でやっといて言うのもなんだけど…

僕は油断なくリボルバーを構えながらそこらの死体や半死体を足で転がして風体を確認する。
いない…彼らしきヒトは一人も…
「Quién es?」

振り向きざまに声が聞こえた方へ射撃する。
が…

金属が爆ぜるような音から一瞬遅れて左肩に衝撃を感じる。
「っ!!」
とっさに折り重なった瓦礫の後ろに飛び込んで退避。
するとボロボロになったカウンターをひらりと越えて銃を構えた無傷のそいつがこちらへ歩いてくる。
…それでさっきのはこちらの銃弾が向こうの銃弾で弾かれた上に応射されたのだということに気づいて背筋が寒くなる。

「おいおい、人が丁寧に地球語で聞いてやってんのに鉛弾で返事するとはいい趣味だなアミーガ…」
5フィート程の距離でピタリと止まると実に楽しそうに口元を歪めてそいつが僕にそう言った。
僕は撃たれた左肩を見る。
出血はそうでもないが左手はしびれて使えない。
しかもこんな瓦礫の盾じゃ気休めぐらいにしかならないので有り体に言うと非常にまずい状況…

「おや、お返事は?」
言ってそいつが銃を構える。
「Howdy…いやHolaの方がいいですかね?…ミスター・スパニッシュ」
布で手早く腕の止血と固定をしながら時間稼ぎにそう答える。
「アメリカじゃスペイン語を公用語で使ってるって聞いたぜ?」
「…いつ聞いたのか知りませんけど今のアメリカの公用語は英語ですよ」
彼は何がウケたのか腹を抱えてケラケラ笑っている。
固定は終わり、後はなんとか機会を作らないと…
「それで…あなたは?」
「…ウチに突っ込んできたテメエから先に答えるのが筋だろう?」
そう言って軽い調子から一瞬でひりつくような重い重圧を与えてくる。

「名乗るほどのもんじゃありませんよ。ただの賞金稼ぎです」
「ただの賞金稼ぎがここまでやるか?」
彼が撃鉄に親指を乗せる。
周りは炎で包まれ始めているのに彼がかけてくるプレッシャーで冷や汗が止まらない。
「ええ、地球人ですからね…目的を果たすためならなんだって使いますよ」
位置は悪くない、でももう少し会話で彼の意識を逸らしておきたい。
チャンスは一度キリなのだから…

「貴方だってそうでしょ?」
「…」
僕は瓦礫の盾越しに向こうの人物を見やる。

「Mr.………RED!」
瓦礫の向こうに銃を構えて佇む彼、放つ重圧に反して低い背と細身の身体に眼光鋭いゴブリンの男、なにより自身を照らす炎よりなお赤いその肌…それこそ探していた賞金首の特徴。
そうこの街を根城に郎党を率いて交易路で狼藉を働く悪党、ブラッドスキンのレッド。
3つの旅商団を喰い散らかしたその首の値段は破格の都市金貨1000枚。
僕は彼の名を言いながらそれをベルトから素早く引っこ抜く。

「…俺をその名で呼ぶな!!」
いきなり激昂した彼が撃鉄を上げ引き金を引き絞り、そして…


【RED3】に続く


9/28 微修正

  • 意外とあっさり進んでのREDの登場。 もっとドンパチ乱戦最高潮の中でドバーンと登場するかと思っていました。 この喧騒劇、意外なオチが待っていそう -- (名無しさん) 2013-09-27 03:30:17
  • 言われると映画DVDのチャプターみたいな分け方に感じる。そこで続くのかー!と思いつつもいきなり撃つんかいと -- (名無しさん) 2013-09-27 23:44:03
  • テンポいい。レッドの過去が明らかになるのは次作あたりかな。そういえば主人公の賞金稼ぎの素性も謎? -- (名無しさん) 2013-10-08 23:48:03
  • 俺も次回をずっと待っているんだが -- (名無しさん) 2013-10-08 23:50:32
  • 命のやり取りの場にある割り切った空気が淡々と進む戦況描写から伝わってきます。中途半端な良心も理性も抜きで目的同士が撃ち合うのは緊張感があります -- (名無しさん) 2017-07-02 18:05:16
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最終更新:2013年10月14日 19:32