【狗侍語り】

これはどうもどうも忝い。 おぉ、これは良い茶ですな。
ふぅむ…浮く島々を抜け森へとそよぎ降りる風が育んだオルニトの“空おろし茶”、美味ですな。
ふむ、わしが何故茶を所望したか不思議に御思いでおられる。
酒は昨晩飲みにけり、今はお茶を一杯と臓(ワタ)が求めるおるのです。

そうそう、“傭兵”について知りたい…でしたな。
わしですか?いえいえ滅相も御座いませぬ。 かような長尺なる獲物を担いではおりますが、只の流れの狗侍でございます。
大きなる門が開いて後、世に和の広がること幾十年経てど、この新天地にはまだまだ無法と蛮力が蔓延っていますれば、
貴殿の様な商人、ましてや猫人が渡り行くには傭兵などが必要でしょうな。
何と?自らも剣を振るわれると?此度は人材派遣業の下調べと?
成程これは逞しき猫商人殿。そうとなればわしも生半可な話は出来ませぬな。
何を勿体振るのかと御思いでしょう。
実は今、貴殿の御眼鏡に適いそうな“戦(イクサ)の記憶”を探し当てた処で御座いますれば ──

義勇戦士団 “陽に吠え月に吠え(シュバルト)”

拠点:西方イストモス内“獣ノ森” / 主要構成:獣人 / 活動範囲:西大陸、新天地
かつてケンタウロスと袂を別ち、森へ山へと移った獣人達。
国がまだ二つに別れ無数の力が闊歩する中で、彼らは互いの結び付きと絆によって生き抜いていた。
辺鄙な地に住むとは言え、イストモスは広大であり彼らの中にも多くの派があった。
その派の中にありて一際目に付く“伊達と酔狂”。それが“陽に吠え月に吠え”で御座います。
彼の団が掲げる信義に惹かれ集まりしはイストモス全域の獣人から、今では山を越え海を渡り世界各地におりまする。
彼らの“信義”に興味がありそうな目をしておられる。 そう思われる様にお話ししておりますれば。
 我ら弱き者達、虐げられし者達の盾であり剣である  切っ先を向けるは威を揮う者達なり
分かり易く言えば、 我らは負けてる方にしか手助けしません ということですな。
勝利し糧を得る傭兵が進んで難局に進撃していく。
過去より弱者となった獣の民のために戦い続けた団の心が、今の世にまで根付いておるのでしょうな。
只、その頑固なまでの雇用様式がちとおかしげなる運びを見せることがありましてな、
最初は負けておった西に雇われ東を敗走させた後、次なる戦いでは再起をかけた東の残党に加担し西を退かせるという、
そういう流れも少なくはなく、人の目によっては悪戯に戦局を長引かせているのにも見えるのでしょう、
“渦巻き(キルゾネ)”“種蒔く者”とも呼ばれ嫌われておる一面もありますれば、お雇いの際には御一考を。
只、彼らも和の広がる世界において戦だけで生計を立て様とはしておらず、そもそも守るが本懐であるために
今では家事手伝いからかきいれ時の商いの応援から人夫までと、戦以外の仕事も広く行っております。
丸くはなっていない獣の牙を笑顔に隠し、助け求める声に応じる…猫商人殿には打って付けでは御座いませぬか?
雇用支払いも金子から物品までそうがめつくない程度で済むことから人気も上々、
何処のギルドの板にも彼の団の名を見ることが出来るでしょう。

中々ためになったとはありがたい御言葉。しかし貴殿の目はもっと教えよと仰っている御様子。
そうですな。今度は甘さ控えめのお団子などを、わしの愚舌が欲している様子(くるりっ)。


いきなりは何なので、ワビサビでやんわりと種ヶ島狗侍をシェアなどさせてもらいました
戦を渡り歩いたであろう彼と彼の一族の記憶の箪笥
続けれそうな時があれば続きます

  • むせる厨ニ臭!狗侍の飄々とした雰囲気もいいな -- (とっしー) 2013-10-03 23:21:18
  • 古めかしくも滑らかな語り口。講談みたいな? -- (名無しさん) 2013-10-08 23:26:12
  • 融通が利かないというか信義を貫くための手段が信義よりも大きくなってるというか。時の流れでおかしくなったようですね(くるり -- (名無しさん) 2013-10-09 02:51:42
  • 傭兵ともちょいと違うような不思議な団体だ -- (名無しさん) 2014-05-13 22:48:16
  • 国に馴染めないはみ出してしまった…そうだ新天地いこう!そんな何でも入る受け皿みたいな国 -- (名無しさん) 2016-09-26 07:00:45
  • 地球とは違う危険の多い異世界で傭兵稼業が広くあるのは自然でしょうか。敗色ある方につくという方針も面白いですね -- (名無しさん) 2017-07-23 19:04:50
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最終更新:2013年10月02日 04:26