「ッガ!?針金蟲を空中で広げても、領が移動していると通信が安定せん! 切れる前にこれだけは…
(カタカタタタッ)医者(ドク)さんは 少し場の空気を 考えて発言して下さい(ターンッ)っと」
「博士、話がある」
「トヤマっ!?」
「ん?役目の最中であったか?」
「~ッガ~…切れてしまいましたか。 いえ、少しばかり“網”に繋いで“会合”に参加していたところでして。
丁度、錆雲海に入りまして通信も切れましたので構いませんよ。何で御座いましょう?ハニンム様」
所狭しと複雑怪奇な機器が置かれ提がり散乱する一室の中、首幹に粘糸で繋いだ板を四本腕の二本で持ったまま、
白衣着るジガバチ人が振り返る。
部屋に入ってきたのは体の随所に白銀の綿毛を湛える蜜蜂人。少し思案げな面持ちで顎をさする。
「火急ではあるが、博士、領より先行してエリスタリアに赴いて欲しい」
「ガッ?何と、ワタシが研究に勤しんでいる間に
エリスタリアへと向かっておるのですか。しかも領ごと。女王の意向にしても思い切りましたな。
して、ワタシが先にエリスタリアに行って何を?」
ハニンムは深い溜息を一つつく。
「女王が求める“美のための素材”を入手してきて欲しいのだ。 それも、早急に」
「ガッ!確かにこのまま領がエリスタリアに着けば戦争は必須ですしな! しかし女王はどうやっても美しくなりたいのですなぁ」
「領が着く前に厄介ごとがあるのだよ…」
「ガッ?」
「“ズスーハ”が直に出撃するのだ」
「“緋ノ魂(ヒノタマ)”ガッ?! それはもういきなり争いの猛火が吹き荒れますな!
…そう言えば先週、頼まれていた火翔蟲群射出房と熱体液長蟲を納めましたが、女王は既に意を決していたと言う事でしょうか?」
マセ・バズークの空の雲上を、重低音を響かせて真っ直ぐエリスタリアへと進む巨大な“蜂の巣(六角形集積塞)”。
小さな山程はあろうかという巣そのものが領地であり、それを治めるは蜂人にて知識追求欲を肥大させて生まれた“識の女王”。
巣に寄る鬼蜻蛉や飛甲蟲を蹴散らしながらゆっくり、ゆっくりと推進する。
「少し前になる。久方振りに網を繋いだ女王が突如“ミソジ”という言葉を連呼し始めてな…
それから急に各地への美素材追求行動が激しさを増しているのだ。 最早、侵攻の域である」
「分かりました。向かいましょう。
世界樹の神血を採取するための油吸蟲は完成していますので」
博士が手元の板を数度叩くと、巣の下部房にて巨大機構が動き出す。
合わせて数匹の巨大甲蟲が滑走台に載せられた。
「任務を速やかに完遂するために私も同行しよう。 世界樹の防衛網を出来得る限り停止させておく」
「ガーッ!“護女王の三蜂姫”が一姫、“賢姫 ミチュ・ハニンム”様自ら?! これは任務達成も確実ですな!」
「からかうでない。 私は何としても本格的な戦争になる前に何とかしたいだけなのだ。失敗は許されない」
程無くして下部房が開く。
大量の運搬飛蟲が羽ばたきはじめ、空輸体勢を取る。
「ミチュ、すまない。 我も行けば直ぐに終わるのだろうが…」
「いいのよ、クゥ。 貴女には女王を護るという役目があるから。 私も全力で征(い)きます」
曇った空に飛び立つミチュと、吊られ飛ぶ巨大甲蟲とその背に跨るジッガー・バチェ博士。
空を飛べぬ巨大な荷物は空の野生蟲にとって恰好の獲物であるはずなのだが、
ミチュの先導する空路には一切の外敵がやってこないのだ。
やがて海上を進み、
ミズハミシマを掠め越えた一行は、エリスタリア“夏季領”の内湾へとさしかかった。
例え領の全てが滅び氏族の全てが失せ様とも
それが女王の意思であれば従うのみ
- 誰かが蟲人に教えてやるべきだった。ネットの言葉に惑わされるなと -- (名無しさん) 2013-10-22 21:51:38
- 空にというか巣が領地に?移動要塞が領地の蟲人氏族って他にもいそう -- (としあき) 2013-10-29 22:00:22
- マセバズークの蟲人はディルカカの意向に沿って活動している種族のように思えて実のところは与えられた力をもって領地ごと各々が思うままに生きている感じがしますね -- (名無しさん) 2017-09-24 16:51:35
最終更新:2013年10月19日 12:19