注意
今回、独自設定多いです
公式の設定ではないのでご注意ください
2-2
「楽しい時間は短いっていうよね」
あの子が問いかけてくる
「でも、楽しくなくても過ぎた時間は短いって思うよね」
そう続けたあの子に
「そうだね」
そう返した
「ねぇねぇこんなのどうかな?」
彼女はそう言って笑顔で私のところに服を持ってきた
「ちょっと寒そう」
「でもかわいいじゃーん」
そういいながら私に自分の選んだ服を進めてくる彼女
その様子は車内での真剣な表情を全く思い浮かばせない
まるで別人になってしまったかのようだ
「あなたが本当はどういう理由でこちらに来たかは聞かないし、
割とどうでもいいの」
彼女はそう言って話し出した
「あなたがいつまでいても別に構わないし、施設の連中があなたを連れてきたからって
私はあなたに何かしたりはしない」
その言葉はきっと本当
「ただ、分かってほしいことがあるの」
「
エルフと人間は違うって言うこと
それをちゃんと分かっていてほしい」
彼女は彼とは違う、そう思った
異世界やエルフのことをほとんど知らず、ともすれば適当な嘘でも信じてしまいそうな彼とは違う
「エルフと人間では寿命が違いすぎるわ
あなたのとっては短い間であっても私たちにとってはとても長い時間であったりする」
時間の感覚が違いすぎるの、と彼女は言った
「私たちの時間はあなたの何倍も速く進むわ
もちろんアイツの時間も
アイツと一緒にいるつもりなら、それを忘れないでほしいの」
彼女はあちらの世界やほかの種族を知っている
彼女はエルフに限らず、ほかの種族ともかかわっており
そして、それらの人と正面から向き合ってきたのだろうと
そう思った
話がおわると、彼女はそれまでのような
彼といるときのような、軽いノリに戻ってしまった
目的の店に着いてからも楽しそうに
まるで子供のように服を選んでいる
今も小さめの服の並んでいるあたりで私に着せる服を物色しているけれど
あれ子供用じゃない?
あそこから持ってきた服は絶対に着ないことにする
「あの人は一体何者なんですか?」
そう尋ねた相手は彼女の同僚で、名前は確かスズキ
「彼女が何者か、か」
そう言って彼は少し考え込むようにして、少し長めの髪をいじる
「彼女のことを話す前に、こっちの世界のことを少し話したほうがいいかもな」
そして彼は話し出した
この世界の状況を
私たち、異世界の存在の立場を
ここ数年で、この世界ではこれまでになかった技術がいくつも生まれている
特に医療関係の進歩は目覚ましく、これまでになかった治療法や新薬がいくつも生まれた
当然その急激な進歩には理由があり、
それこそが
ゲートの出現だ
こちらには存在しない物質、概念、それらはこの世界に大きな影響を与えた
世界中が異世界のものに関する研究を競って行い、
各国にはいくつもの研究施設が作られ、中には非人道的な研究を行っているところもある
「それはこの国も一緒だ
もっとも、この国の施設はまともなほうさ、何せ」
彼女が目を光らせているからね
そういって彼は彼女に目を向ける
なんかキラキラした服を選んでいるけど絶対にそんなの着ないからね
て言うか薄いですよそれ
「彼女はこの国の一部の研究施設の監督役だ」
彼女に少し目を向けたあと彼はまた話を続ける
「基本的には異種族に同意を得て研究に協力してもらうんだが、
中には件の施設のように中々成果が出ずに焦って強引な手段に出るところもある」
あの施設は近いうちに何らかの処分が下るだろう、と
彼は言うけれど
正直なところ私はあの施設にはそれほど興味はない
それよりも
「そういう責任ある立場の割には、彼女は若いように見えますが」
「あぁ、まあな」
彼は少し言葉を濁し、目線を下げる
彼女が有能というだけではないということ?
「まぁ、いろいろあるのさ」
それなりに気になる物言いだけど、そこについて聞くよりも
「ねぇねぇ!これ着てみてよ!」
こっちの対応が先か、と
両手に何枚も服を抱えた彼女が駆け寄ってくるのを見ながら
思わずため息がこぼれた
服を買い終わり私たちはあの家へと戻る
ジドウシャの走る音、水たまりの水がはねる音
窓にはぽつぽつと雨粒がぶつかる
車の走る振動に揺られる私の耳にあの子のささやきが聞こえる
「流れる時間の違いなんて、言われなくてもわかってるよね」
そうだね、と
心の中で相槌を打つ
私たちの時間は動かない
私も、あの子も
何百年も変わってない
荒野に村ができ、いつの間にか街になっていても
私たちは何も変わっていなかった
だから、旅に出た
またたく間に姿を変えていく周囲から逃げるように
違う流れの中に身を置いた
彼と同じ部屋で眠り、ここにならいてもいいかもと思った私は
一体いつまでいるつもりだったのか
彼は日々刻々と歳をとり、老いていくというのに
「ついたよー」と彼女に声をかけられる
ふと外を見ればもうそこはあの家だった
彼女を先頭に家に入ると、奥にいたらしい彼がやってきた
「お帰り」と言うその声と姿に心が温かくなる
そして、もう少しだけいようと思う私は
これまでに知り合いを何人も看取ってきたというのに全く懲りていなくて
それがまた、自分が何百年も変わっていないことを感じさせて
いつまでもいるわけにはいかないと
そう思った
- 切ない。けどそれに真正面から向き合う人たちの強さも見た。お姉さんかっこいい -- (名無しさん) 2014-02-17 23:21:42
最終更新:2014年02月17日 23:20